2020年12月17日にPS4/Nintendo Switch/PCにてリリースされる「チルドレン・オブ・モルタ~家族の絆の物語~」のレビューをお届けしよう。
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「チルドレン・オブ・モルタ~家族の絆の物語~」は、EXNOAが販売するアクションRPG。2019年9月にリリースされた「Children of Morta」の日本語ローカライズ版だ。
対応機種はPS4/Nintendo Switch/PCの3機種で、PS4版とNintendo Switch版はいずれもパッケージ版とダウンロード版の2種類の型式で販売される。パッケージ版には予約特典としてスペシャルアートブックが付属する。88ページすべてがカラーページという豪華仕様となっているので、このレビューを読んで本作を気に入りそうだと感じた方はこちらをゲットするのがおすすめだ。
なお、PC版のプレイにはDMM GAME PLAYERのインストールが必要となる。
物語を彩る、土師孝也さんのナレーション、陰鬱ながら美しいグラフィック
本作でプレイヤーが操作するのは、世界の秩序を守ることを宿命づけられた一族の末裔、“ベルグソン家”の人々。異変に気づいた祖母・マーガレットに従い、一家はモルタ山の頂上から流れ出る瘴気がもたらす世界の“堕落”に、団結して立ち向かうことになる。
ベルグソン家の面々はその多くが戦闘の訓練を受けており、戦えない者たちも、鍛冶や錬金術といった技能によって戦う者たちをサポートする術を身に着けている。
ゲームの流れとしては、ベルグソン家の暮らす家が拠点となっており、その地下にある“聖域”から“堕落”を食い止めるために向かうべきダンジョンにワープ。このとき、併せて一家の誰を操作するかを選択する。そしてダンジョンを攻略していき、最後に待ち構えるボスを見事撃破すればストーリーが進展、新たなダンジョンに向かえるように。途中で力尽きて倒れた場合、モルヴ(お金)を持ち帰って、これを消費して鍛冶・錬金術によって一家の戦闘能力を強化。クリアできるまでダンジョン攻略を続けることになる。
なお、筆者のプレイ環境はPS4(Proではない)だったのだが、家からダンジョンに向かうときや、ダンジョンの階層を移動するとき、30秒~50秒程度の長めのロード時間があったことは明記しておく。
ベルグソン家の人々には台詞といったものはなく、ストーリーはすべてナレーションによって語られるのが本作の特徴。このナレーションは、すべて日本語音声にローカライズされている。
日本語のナレーションに起用されているのは、洋画の吹替を中心に様々な作品への出演経験を持つベテラン声優・土師孝也さん。ゲーマーにとっては、近年では「METAL GEAR SOLID V:THE PHANTOM PAIN」の“スカルフェイス”や「SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE」の“梟(ふくろう)”、「Fate/Grand Order」の“新宿のアーチャー”などを演じた方と言えばピンと来るかもしれない。土師さんの渋い美声による情感豊かな語りは、作品の厳かな雰囲気に完璧にマッチしており、日本語版でプレイする者の特権と言えるだろう。
ビジュアル面にも触れておこう。きめ細やかなドットによるグラフィックは美しく、描かれるのは瘴気によって“堕落”しつつある世界でありながら、その陰鬱な空気感にすら惚れぼれさせられる。また、ベルグソン家の拠点となる家の北欧風の内装も、本作における“安らぎ”を象徴する場所に相応しく、温かみのあるデザインが素晴らしい。
次の行動を選択する際のセレクト画面では、一家の面々が思いおもいの時間を過ごしている様子が描かれているのだが、ここでの行動は自分の趣味に打ち込んでいたり、ほかの家族と一緒に憩いの時間を過ごしていたり、次の戦いの準備をしていたり……。全員にいくつものパターンが用意されていて、それぞれの個性を演出。プレイヤーの一家への愛着に繋がっている。このシーンのほか、ストーリーが進行する際のデモシーンでも、キャラクターたちは細かくアニメーションしており、家族へのいたわりといった繊細な感情が読み取れる仕草などには胸を打たれる。
日本語ローカライズの味わいも含め、上記のような雰囲気づくり全般が、本作の大きな魅力のひとつと言って良いだろう。
キャラクターによる操作感の違いと、“ローグライト”が生み出す探索の楽しさ
序盤でダンジョン攻略の際に操作できるキャラクターは、大剣と盾を用いて戦う父親・ジョンと、弓の使い手である長女・リンダだけだが、ストーリーが進展するとほかの家族も戦いに向かえるように。若さゆえ、危険がともなう戦いに身を投じることを許可されていなかった者が成長を認められたり、家を出ていた者が、家族の危機を知って戻ってきたり。操作キャラクターの追加にも丁寧なストーリーが付随しているため、全員に感情移入できるはずだ。
操作感は、誰を操作するかでかなり異なってくる。ジョンなら盾で敵の攻撃を防ぎながら、パワフルな近距離攻撃で攻めることになるが、次男のケヴィンや長男のマークなら素早い身のこなしを活かして敵の攻撃をかわしながら戦うことに。リンダや次女のルーシーは遠距離攻撃を得意とするため、いかに敵から距離を取って戦うかが重要となる。
“ローグライト”と呼ばれるジャンルの一種である本作では、ダンジョンは訪れるたびに構造が変化。また、ダンジョンを出るときはアイテムによる強化が失われるため、強化の組み合わせも攻略のたびに変わる。これらによって毎回微妙に攻略法が変わり、何度挑戦しても探索はワンパターンになりすぎない。
本作の場合、前述した鍛冶・錬金術による家族全員への戦闘能力の強化と、家族ひとりひとりに設定された個々のレベル、レベルを上げることで獲得できる固有スキルは、ダンジョンを出ても引き継がれる。そしてこれらの成長要素や個々のスキルをしっかり活かさないと苦戦を免れない程度にダンジョン内での戦闘はなかなか骨太な難易度となっている。
スキルを駆使して難所を切り抜けろ!戦略性と爽快感を両立した戦闘システム
本作の戦闘はかなりテンポが速く、また状況によっては大量の敵が一度に登場するため、これをいかに倒していけば良いかという操作キャラクターごとのコツを見出すことが重要となる。
こちらの攻撃をヒットさせれば多くの敵は怯むので、一対一ならば苦戦することも少ないが、大勢に一気に迫られると、攻撃範囲の外にいた敵から反撃を受け、ダメージを受けやすい。また、開けた場所で、近づいてくるタイプの敵と遠距離攻撃を放ってくるタイプの敵に同時に攻められたりすると、苦戦は必至。
回避行動がゲージ消費式になっている点も本作の難易度を高めている。回避行動を連続で使える回数はキャラクターごとに限られており、やたらに動き回って敵の攻撃を避けることはできないのだ。ケヴィンなどの身のこなしが売りのキャラクター以外は、ここぞというときだけ使用するのが無難だ。
この若干不自由な回避行動の制限を補って活躍するのが、それぞれのキャラクターがレベルアップによって覚える固有スキルの能力。周囲の敵を弾き飛ばす、前方の敵を後退させる、敵の視界から姿を消すなどの能力を効率的に使って、難所を乗り越えていくのが戦闘のセオリーとなっている。アクティブスキルはその多くが一度使うと一定時間使用不能になるが、本作ではダンジョン内でのHPの回復手段が限られているため、少しでもダメージを受けそうになったら惜しみなく使うのがおすすめ。通常攻撃、スキルの使用共に、それぞれのアクションは実に爽快で、様々な判断がバッチリ上手く行って、難所を切り抜けたときの達成感は大きい。
どのキャラクターも、使えるスキルはレベルが上がると増えていき、一方で敵の攻撃も後半のダンジョンになるほど苛烈になっていく。これによって、その時点で使用可能なすべてのスキルを、ここぞというとき使えるようにならないと攻略は難しい。この徐々に増えていく“戦闘の情報量”による難易度勾配が本作は絶妙だ。
加えて、持っているだけで効果を発揮する“聖なる恵み”、一度使うと無くなるためここぞというときに使用したい“お守り”、スキル同様、使うとしばらく使用不可になるが、ダンジョンから出るまでは何度でも使える“聖遺物”といったランダムで入手できるアイテムも、攻略の幅を広げてくれている。ダンジョンに仕掛けられたトラップを利用して敵を撃破できるのも楽しいところ。
もちろん、ダンジョンの最後にはこれまでのスキルを総動員することでやっと勝てる、強力なボスも待ち構えている。
華麗に大立ち回りを行うよりも、敵を少しずつ狭い場所に誘い込んで撃破するちょっと不格好な戦い方のほうが安全だったり、攻略の成否が回復アイテムが良いタイミングでドロップしてくれるかどうかによるところが大きい印象だったりと、気になる点もいくつかある。しかし総合すると「不自由があるからやりくりが楽しい」タイプのアクションとして、戦略性と爽快感、パターン構築とアドリブの楽しさを両立した見事なプレイフィールだと言えるだろう。
大いなる悲しみや絶望に立ち向かう、家族の絆に胸を打たれる
ダンジョンの構造が毎回変わることによる変化は、戦闘やアイテムのドロップそのものだけではない。アイテムを手に入れるために用意された小部屋で「ポン(PONG)」のようなミニゲームがはじまったり、3つあるうち正解のパネルを踏まないとダメージを受けてしまう運試しをさせられたり……。些細な要素ではあるものの、攻略に多少のメリハリを添えてくれている。
また、人助けのサブクエストがはじまることも。助けることが成功すれば、大きな報酬を得ることができるだろう。
アクション面や成長要素もしっかり面白いものの、本作の特筆すべき持ち味は映像表現も含む世界観、そして攻略に伴って語られるストーリーにあるように思う。戦いの中でベルグソン家に降りかかる、大きな悲しみ、そして絶望。大切な家族とともに、それらに勇気を持って立ち向かう姿には、きっと心を揺さぶられる瞬間があるはず。それに、悲壮な物語だからこそ、彼らが戦いを離れたひとときの何気ない描写にこそ、不意に胸を打たれてしまう。
ちなみに今回のレビューではひとりプレイしかできなかったが、本作はオフラインでふたり協力プレイも楽しめる。年末年始、家族や知人と一緒に過ごす時間が多い方は、この「家族の絆の物語」で、周囲にいる大切な人たちとの絆を、試してみるのも良いかもしれない。
Published in Japan by EXNOA LLC. (C) 11 bit studios S.A. and Dead Mage Inc. Children of Morta, the Children of Morta logo, the 11 bit studios logo and the Dead Mage logo are trademarks of 11 bit studios S.A. and/or Dead Mage Inc. All rights reserved.
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