スクウェア・エニックスより2021年4月22日に発売予定のPS4/Xbox One/Steam用ソフト「NieR Replicant ver.1.22474487139...」。本作の一部ステージを体験する機会をいただいたので、本稿では実際にプレイしてみて分かったことをお伝えする。

目次
  1. グラフィックの向上、フルボイス化、いずれも“バージョンアップ”と呼ぶに相応しい出来
  2. 爽快感大幅アップ!「NieR:Automata」に近い手触りの戦闘アクション
  3. 「ニーア」らしい遊び心などのおもしろさは健在
  4. 武器の切り替えやパリィ、オートバトルなど……まだまだある戦闘アクションの変更点
  5. 新アレンジの楽曲群や、追加エピソードにも乞うご期待!

「NieR Replicant ver.1.22474487139...」は、2010年4月22日に発売されたPS3用ソフト「ニーア レプリカント」のバージョンアップ作品。心優しい少年が、不治の病“黒文病”を患ってしまった妹・ヨナを救うため“封印されし言葉”を探すという物語はそのままに、グラフィックやゲームプレイなど、いくつもの要素に改良が施されている。

ちなみに筆者の「ニーア」シリーズのプレイ歴をお伝えすると、前作「NieR:Automata」は全エンディング到達済みで、本作の原点である「ニーア レプリカント」は未プレイ。ただ、発売当時Xbox 360ユーザーだったことから「ニーア ゲシュタルト」はプレイしている。

「ゲシュタルト」は「レプリカント」と一部設定が異なるものの、大枠のストーリーやゲーム内容は同一だ。したがって、このプレビューは当時プレイした「ニーア ゲシュタルト」との比較によって「NieR Replicant ver.1.22474487139...」がどのようにバージョンアップされているかをお伝えする、ということになる。

文中で“原作”という言葉が出てきた場合は、「ニーア ゲシュタルト / レプリカント」の両方、またはいずれかに備わっていた特徴を差すものと思ってほしい。

グラフィックの向上、フルボイス化、いずれも“バージョンアップ”と呼ぶに相応しい出来

今回、プレイ範囲に指定されたセクションは大きく分けて3つ。序盤で主人公が少年期のときに訪れる「ロボット山」と「崖の村」、それからすべての武器が解禁されている中盤の青年期のデータを使っての、「北平原」での戦闘だ。

最初にプレイしたのは「ロボット山」。プレイをはじめた時点で、背景及びキャラクターモデルのグラフィックの向上はハッキリと見て取れた。前世代ハードのグラフィックはいま見るとややぼやけた印象を受けるが、本作は現行ハードに相応しいくっきりとした描写が成され、その鮮明さに耐えうる細部のディテールの作り込みも行われている。この辺りは、さすがに公式が“リマスター”ではなく“バージョンアップ”と謳っているだけある手の加えようだ。

「ロボット山」ではふもとで暮らす兄弟の依頼を受け、侵入者を見つけると襲いかかってくる防衛ロボットがひしめくダンジョンを探索することになるのだが、この兄弟との会話イベントでさらなる変更点に遭遇する。原作ではボイスなしで進行していったイベントで、主人公、兄弟たち共に、すべての台詞がボイス付きになっているのだ。

本作ではこの兄弟だけでなく、すべてのキャラクターの台詞がフルボイス化されている。どんな些細な会話、物語上重要ではないキャラクターにもボイスが付いているということで、より作品世界への没入感は高まるのではないだろうか。

ちなみにボイス関連だと、作中で主人公をサポートしてくれる“白の書”の声優は池畑慎之介(ピーター)さんから安元洋貴さんへと変更になっているのだが、安元さんの演技自体は“白の書”にとてもマッチしているように感じられた。原作のキャスティングに特別強いこだわりがなければ、違和感は生じないように思う。

爽快感大幅アップ!「NieR:Automata」に近い手触りの戦闘アクション

ダンジョンに入ると、いよいよ戦闘を行うことに。原作における戦闘時のアクションは、剣戟を中心になかなか楽しい攻防が味わえたものの、ややもっさりした印象も強かった。本作は「NieR:Automata」に近い手触りを目指したというだけあって、戦闘のスピード感、斬撃を敵に浴びせる手応え、それらによる爽快感は格段に増していると感じた。

敵を“ロックオン”する機能も追加されており、これを使えば自動的に標的のほうに攻撃が向くようになった。近接攻撃はもちろん、白の書が放つ魔法弾も、手動で狙わずとも良くなっており、この点での快適さも向上している。

左スティックを敵の側に倒しながら回避ボタンを押すと、敵の背後への“回り込み”が発生し、このアクションの軽快なレスポンスも好感触。アンドロイドだった「NieR:Automata」のプレイアブルキャラクターと比較するとあそこまで鋭い操作感ではないものの、爽快でありながら生身の人間が繰り出すアクションとして納得感のある調整になっており、絶妙な塩梅だ。

また、本作は戦闘中もフレームレートは60fpsを維持しているとのこと。正直筆者はこのあたりを認識する能力がやや弱いのだが、それでも戦闘の手応えや気持ちよさへの高フレームレートの貢献は、感覚レベルでは大きかったように思う。それくらい、ストレスを感じることなく、常にレスポンスの良好なアクションを満喫することができた。

ほかにも戦闘に関わるプレイフィールの改善はいくつかあるのだが、「ロボット山」、「崖の村」で味わえたのはあくまで序盤で解禁されている要素のみ。それ以外の要素については、「北平原」でのプレイについて書く箇所に譲ろうと思う。

「ニーア」らしい遊び心などのおもしろさは健在

しばらくプレイを続けていると、“「ニーア」シリーズといえばこれ!”と言える演出の数々に遭遇し、懐かしい気持ちにさせられた。たとえば、特定のシチュエーションで自動的に固定されるカメラアングル。3Dアクションである本作が、それらの場面では見下ろし視点や横スクロールの2Dアクションのような感覚になる。

演出面では「崖の村」で共闘することになる女戦士“カイネ”が敵を口汚く罵るとき、その言葉の下品さのあまり「ピー」という自主規制音が入るという演出には、緊迫したシーンでもちょっとニヤリとさせられてしまう。こういった遊び心を感じられる要素の数々は、原作から変わっていない魅力だ。

また、「ロボット山」、「崖の村」共に巨大なボスとの戦闘が待っているのだが、このふたつのボス戦がシチュエーション、攻略法ともにまるで異なっているのが、改めて比較してみると興味深い。

「ロボット山」のボス戦は、宙に浮く巨大なロボットが相手。円状の足場を駆け回り、宙に浮く相手に攻撃を加えつつ、ステージギミックの爆弾を弱点目掛けて放り投げ、致命傷を与えていくことになる。

一方の「崖の村」での戦いは、逃げ回る巨大なマモノを追いかけながらのカイネとの共闘という、ロケーション的にもシチュエーション的にも起伏に富んだ戦闘となっている。一定のダメージを与えると、敵の身体に時計のようなアイコンが出現。このアイコンの針がひとまわりするまえに一定のダメージを与えれば、次の戦闘フェーズに進むことができる。十分なダメージを与えられなかった場合は回復されてしまうので、ここでは自分がダメージを受けるのもいとわず、攻撃優先で立ち回ったほうが良いだろう。

前述したカメラアングルの固定といい、このシリーズはゲームプレイに緩急やバリエーションを持たせるちょっとした工夫がおもしろい。やっていることはそこまで変わらなくとも、こういった変化がストーリーとも呼応していたりと、世界観や物語まで加味した総合的なゲームデザインというものを意識されているように感じる。

こうした細部のこだわりも、このシリーズが長年支持され続ける要因として、決して些細なものではないのかもしれない。

そして「ロボット山」、「崖の村」のプレイを終えてから展開されるそれぞれのイベントを見た筆者は、「ああ、こういう展開だったな」と、10年ぶりに目にするこれらの結末にまたも懐かしさが込み上げてきた。切なく、残酷さもありながら、それでも希望を信じたくなる温かさこそが、このシリーズを「ニーア」たらしめているのだろう。

原作未プレイの方のためにストーリーのネタバレは控えるので、これらのエピソードの結末は、ぜひ自身の手で確かめてみてほしい。

武器の切り替えやパリィ、オートバトルなど……まだまだある戦闘アクションの変更点

最後に、青年期のデータを使っての「北平原」でのゲームプレイで体験した要素についても書いていこう。

ここでは、使用する武器を初期から使える“片手剣”のほか、“両手剣”と“槍”の計3種類を切り替え、それぞれの感触を試すことができた。バランスに優れて使いやすい“片手剣”、大振りで隙も大きいが、リーチや威力も大きい“両手剣”、リーチの長い連撃が強力だが、大勢に取り囲まれたときは若干不便な“槍”。いずれも性質がハッキリ異なっているため、使い分けが楽しい。もちろん、どの武器にも原作からの手触りの向上はしっかり反映されていた。

また、これも本作における追加要素で、十字キーの左、右、下に設定されたショートカットを使えば一瞬で武器種の切り替えが可能に。これを駆使した連撃を放つことができるなど、アクションゲームとしての戦闘スタイルの幅も広がっている。

それから、序盤から解禁されている要素ではあるものの、「ロボット山」、「崖の村」ではあまり使う機会がなかったためこの「北平原」で使い心地を試した要素として、敵の攻撃をタイミング良くガードすることで発生する“弾き返し”(=パリィ)がある。

パリィの直後に攻撃ボタンを押すことで発生する特殊な追撃は威力が大きい上に見た目も派手で、決まると非常に爽快だ。大勢の敵に囲まれていると成功させるのが難しくなるので、状況にあわせて回避と使い分けていくのが良いだろう。

基本的な操作をひと通り試せたところで、また別の追加要素も試してみた。難易度“EASY”を選択したときに設定できる、“オートバトル”だ。

「NieR:Automata」では難易度“EASY”でのみ使用できるプラグインチップの効果として細かく設定できたオートバトル。本作ではこの設定はメニュー画面から変更が可能で、アイテム、武器攻撃、魔法攻撃、ガード/回避の計4種類の項目のオート設定を個別で切り替えることができた。

「武器と魔法はONにしてかっこいいコンボを決めたいが、回避やガードは自分でやってみたい」とか、「基本的に自分で操作したいけどゲームオーバーにはなりたくないから、倒れるまえに自動で回復するように、アイテムだけオートにしよう」のような細かいニーズにも対応してくれるので、アクションゲームが苦手な方はいろいろ試してみるといいだろう。

筆者はアクションゲームが好きなほうだが、それでもオートバトルのお手軽かつ爽快なプレイフィールはかなり魅力的だった。難易度自体もゲームの途中からでも変更可能とのことなので、どうしても先の物語が気になったときは、オートバトルを使って難所を突破してしまってもいいかもしれない。

新アレンジの楽曲群や、追加エピソードにも乞うご期待!

今回のプレイ範囲でも体験できた変更点のうち、ここまでに紹介しなかったものとして、「ゲーム内のすべての楽曲が新規収録による新アレンジになっている」という点がある。なぜ紹介しなかったかというと、あまりに馴染みすぎて、新アレンジになっていることに気づけなかったからだ。

音楽を担当したMONACAさんに少々申し訳ない気もするのだが、それだけゲームに見事に調和したアレンジになっているということなのだと思う。また、今回アレンジされた楽曲群は、前半部は原曲のイメージを踏襲しつつ、後半で新鮮な展開を見せるものが多いという。その威力は、ドラマティックなイベントが増えるゲーム中盤~終盤で本領を発揮するのかもしれない。このあたりも、製品版をプレイする際に注目してほしいポイントだ。

また、公式配信でも言及されているが、本作には新たなエピソードも複数追加されているとのこと。この辺りは、今後明かされる新たな情報に期待してほしい。

「NieR Replicant ver.1.22474487139...」は、「ニーア」シリーズの原点となる物語をいま新たに語り直すため、細部に渡って最善を尽くした文句のつけようのないバージョンアップ作品になりそうだ。

原作をプレイした人も、「NieR:Automata」からこの機会に遡ってプレイする人も、これから「ニーア」にはじめて触れる人も。発売を楽しみに待っていてほしい。

※画面は開発中のものです。

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