ポノスからリリースされた「本当の幸せ」をレビュー。瞑想しながら空を飛び、本当の幸せを探すというスマートフォン向けカジュアルアクション。その魅力である、ポノスらしい脱力系の笑いを中心に紹介する。
「本当の幸せ」は、ポノスからリリースされたスマートフォン向けカジュアルアクション。ポノスといえば「にゃんこ大戦争」が代表作。「にゃんこ大戦争」は、正統派のラインディフェンスゲームをベースとしながら、奇抜なねこのデザインによる「笑い」が魅力となっていた。本作、「本当の幸せ」も「笑い」が魅力。脱力系のネタによって、思わずクスっと笑ってしまう…そんな作品に仕上がっている。
リラクゼーション×脱力系ネタ!色んな意味でリラックス
タイトルにもなっている「本当の幸せ」を探すことが本作の目的。そのために主人公は瞑想し、本当の幸せ目指して空を飛んでいく。操作はシンプルで、画面左側をタッチしていると左に移動しつつ上昇、画面右側をタッチしていると右に移動しつつ上昇。障害物を避けつつ飛び、最上部に存在する巻物に接触するとステージクリアだ。
…人によっては、「本当の幸せを探す」「瞑想」などといった用語が出た点で、十分ユーモラスなテイストを感じると思う。ただ、本作はヨガやマインドフルネスといったリラクゼーション系コンテンツのパロディとして演出されている。なので、実際の「瞑想」を踏まえておくと、より笑えるだろう。
そもそも本作はビジュアルやBGMは、ヨガやマインドフルネスなどの「瞑想」アプリを思わせるものになっている。リラクゼーション系のビジュアルに、ヒーリング系ミュージック。一見、気持ちがリラックスして癒されそうな雰囲気を持っている。しかし、そこに出てくるのが「雑念」!
瞑想とは、未来の不安や過去の記憶などでいっぱいになっている頭をクリアにすることでリラックスしようという行為。だけど我々は、意識的に頭をクリアできるわけじゃない。なので、何かに意識を集中させる。たとえば、親指の指先に意識を集中すると、頭の中が「親指の指先」に占有されて、未来の不安や過去の記憶を考えなくてもよい…というわけだ。とはいえ、そうそう上手くはいかない。「今夜何食べようかな」とか「早く日曜日来ないかな」とか、次から次へ余計な考え…つまり「雑念」が湧いてくる。こうした「雑念」が本作にも登場するわけだ。
「雑念」はそのままストレートに「言葉」として登場するほか、キャラクターとしても登場する。いずれも、接触するとダメージ。なので、回避しなければならないが、「雑念」自体が動くし、キャラクターとして登場する「雑念」にいたっては、シューティングゲームのようにこちらへ「弾」を撃ってくる。しかも、本作の操作は左右の動きと上昇が連動した独特なもの。このため、単に回避といってもなかなか歯ごたえがある。本作の「ゲーム性」を担う部分がここだ。
同時に「雑念」は本作の「笑い」を担う部分でもある。まず純粋に「見てくれ」が面白い。キャラクター化された「雑念」もビジュアル的なインパクトを持っているが、なによりも「言葉」。あきらかにリラクゼーション系の癒し空気の満載な中、出てくる言葉の中には「お金さえあれば幸せ」だの「仕事やめたい」だのいったネガティブなものが混ざっていて非常にシュールだ。
そのネガティブなワードが文章となることで、さらなる笑いを誘う。「言葉」そのものは単語レベルなのだが、画面上へスクロールすることで複数の「言葉」が繋がり、文章のように見えるのだ。たとえば、「雷を帯びた」「チャコペン」といった具合。「チャコペン」って、裁縫で生地にマーキングする時に使うペンだと思うのだけど、雷を帯びてたら生地が燃えてしまうような…。いちいち突っ込むことに意味はないのだが、プレイしていると思わず突っ込んでしまう。この、「雑念」にいいようにもてあそばれている感も本作の魅力のひとつだろう。
なお、ステージに登場するのは「雑念」だけではない。コインも登場し、接触することでゲットできる。ゲットしたコインは、「かいもの」に使用可能。「かいもの」によって、タイトル画面の自分の部屋にモノが増え、どんどん豪華になっていく。
ちなみに「かいもの」で買える品も、ネタ要素となっている。「たった一分で英語が話せる本」だとか「持っているだけで幸せになれそうな気がするツボ」など、怪しい通販が売っていそうな品ばかり。買うことでタイトル画面がゴージャスになっていく反面、胡散臭さも強くなっていくのがおもしろい。
そして、タイトルにもなっている「本当の幸せ」もネタ要素だ。本作で「本当の幸せ」を手に入れるためには5ステージクリアする必要がある。5ステージ目は「雑念」が少なくコインの多いボーナス的なステージになっており、その最上部に「本当の幸せ」があるという趣向。
ではその「本当の幸せ」は何かというと…おみくじ的な一言ネタ。5ステージクリアした後でのこの一言ネタは、なかなか脱力感が強い。なお、「本当の幸せ」を手に入れた後タイトル画面に戻ると、タイトル名に変化が発生。たとえば最初に「本当の幸せ」へ到達した際にはタイトル名が「本当の本当の幸せ」へと変化する。脱力感を覚えた反面、芸の細かさに感心した。
ハイスコアを目指せば歯ごたえアップ!懐の深いアクション
「雑念」を避けて上を目指せばOK…と、本作のゲーム性は非常にシンプルにまとめられている。先に書いた通り、本作は左右移動と上昇が個別に行えない。この操作のクセがあるため、シンプルといっても歯ごたえはある。ただ、ゴール地点の巻物に到達することだけを目指すのであれば、それほど難易度は高くない。気軽にサクッとプレイ可能。まさにカジュアルゲームといった趣きだ。
ただ、これがより多くのコインを取ろうだとか、ノーダメージクリアを目指そうだとかいったハイスコアプレイを意識し出すと、一気に難易度がアップする。複数の「雑念」が密集している場所や「雑念」がコインに重なっているような場所では、接触判定ギリギリの場所を進まねばならない。そのためには操作技術を求められる。
カジュアルゲームというと、シンプルと同時に「カンタンなゲーム」という印象を持っている人も多いかもしれない。確かに本作も、クリアするだけならカンタンなのだが、プレイの仕方によっては歯ごたえも味わえる。懐が深い。この点が、本作をゲームとして見た時の魅力だろう。
意外にもリラクゼーション効果あり!?疲れた時に楽しめる作品
ここまで紹介してきた通り、本作はリラクゼーション系コンテンツのパロディネタがタップリ詰め込まれた一本。いわゆるバカゲーだ、ただ、本作の脱力ネタもバカにはできない。そもそも「リラクゼーション」とは、「リラックス」した状態になることらしい。では「リラックス」とは何かといえば、「緊張した状態にないこと」。つまり、「脱力」も「リラックス」と言えないこともない。となると、本作もある意味、リラクゼーション系コンテンツと言えるだろう!
…と、冗談はさておき、実際本作を日常でストレスを感じた時にプレイすると、アクションに集中できるため、ストレスを忘れさせてくれる。また、脱力系のネタを「くだらない…!」と笑うことによって、疲れた心に少し余裕も生まれる。そういう意味では、心の癒しとしてスマホにインストールしておきたい一本。愛すべきバカゲーのひとつだ。