オンライン上で8月24日~26日にわたって開催の「CEDEC2021」。ここでは、8月24日に行われたセッション「BLUE PROTOCOLにおけるキャラクタークリエーション~誰でも簡単!異世界転生のお手伝い~」の内容をお届けする。

本セッションでは、個性的かつ魅力的なキャラクターを誰でも簡単に作れる「BLUE PROTOCOL」のキャラクタークリエーションについて、チーム体制からコンセプト、実際にリリースの形になるまでの生い立ちや実装の話までが解説された。本セッションは主に、前半がキャラクター班によるキャラクタークリエイションの手法について、後半がエンジニア視点からの工夫が解説されており、本稿では主に前半部分について取り扱っていく。

「BLUE PROTOCOL」のキャラクタークリエイトは、アニメの設定画のような感覚で触れるように体や顔をグルグルと回さずに、いっぺんに複数の角度から見られるように工夫されている。また本作はオンラインゲームなので、自分のキャラクターの他に他人のキャラクターも存在。その見た目が崩れているとアニメでいう作画崩壊のような状況が発生してしまう。そのため顔パーツの位置調整機能や体の部分ごとの調整機能が廃止されている。

キャラクリの制作には、企画、エンジニア、アートディレクター、キャラクター班、モーション班、UI班という6つの部署が関わっており、プレイヤーが一番最初に触れる玄関であるということ念頭に制作されているという。

まずは、アニメの設定画のようなレイアウトの作成手法についてが解説された。キャラクリエイトマップには全身の前と後ろ用のアクターが2体、顔用のアクターが3体置かれている。それぞれのアクターの前にカメラが置かれており、カメラで作成した画像をキャラクリ画面上に2Dテクスチャとして配置、切り抜きを行い一画面内に重ね合わせて使用している。

キャラクターは、髪の毛、上半身、下半身、手、足、帽子、後頭部、顔パーツ群、アンダーウェアという全9部位とアクセサリで構成されており、衣装として交換できるパーツは上半身、下半身、手、足、帽子になる。着せ替えを楽しめるよう、衣装の各部位には値を構成するネイキッドパーツが用意され、着脱が可能となっている。

これらのパーツは体や顔の起点となる全ての骨が入ったアセットに合体させて、一体のアバターに組み立てられる。骨は男女全年代で共有となっており、おじさんキャラと少女のキャラで同じモーションファイルが使用可能だ。

キャラクリに使用しているデータは3つあり、個々のパーツの色々な情報を保持する「キャラパーツデータ」、IDとキャラパーツを結びつける「表データ」、キャラクリでつくられるキャラ情報がある「キャラクリエイトデータ」だ。

体型は、各骨のスケールのデフォルト値と最大・最小値を設定して制御。身長を変化させると頭の大きさや肩幅も変化するようになっている。

ボディは、顔タイプに紐づいてS、M、L体型の3種類の体型が存在しているが、S体型とM体型は同じモデルアセットが使用されており、骨の拡縮で大きさが変更されている。男性のM体型とL体型は筋肉のつき方が異なっており、肌が見える場合は別のモデルアセットを用意。女性はL体型で肉感を表現するために、M体型のモデルアセットにL体型のテクスチャが適用されている。

衣装は差分モデル作成のコストを抑えるため1つのアセットで済まされており、着合わせで干渉する部位へ頂点カラーを使い情報が入力されている。グローブやシューズの長さは4段階となっており、干渉する部位を非表示にして表示。接続部位にはしぼり骨を入れてモデル同士が干渉しないようになっている。

ソックスについてもこだわりのポイントが。ソックスを履いた状態でシューズを脱いだ時は、足先部分が指の無いソックス状態になるよう、シューズパーツに指が無いソックス状のパーツ「ソックス足」を用意。下半身パーツがソックスやタイツを履いているときにシューズを履いたら、シューズパーツがソックス足に切り替わるようになっている。

ソックスを部位としてパーツ分けするのは悩んだポイントだったそうで、最終的に下半身パーツに含めることでニーソックスの食い込みやガーターベルトに対応することもできるようになったそうだ。

新しく追加されることになったアンダーウェアは、男性が下半身用のパンツパーツのみ、女性は上半身用のブラパーツと下半身用のパンツパーツで構成されている。女性のパンツパーツはスカートの下に着用するため、お尻部分を少し縮めた差分データも用意されている。

続いてはキャラクターの命、髪の毛についてだ。髪の毛はシルエットを大事にしているので前後一体型が採用されており、帽子用とフード用の差分モデルが用意されている。特にキャラクターの個性における前髪が重要視されており、帽子一体型の髪の毛などは可能な限り避けているという。

髪の色は細かく設定ができ、上下で緩やかに色が変化するグラデーションは、色が変化する位置や幅が調整可能だ。また、ゲーム中のキャラメイクシステムでは髪の一部の色を変更するメッシュと混ぜて使用することもできる。さらにグラデーションは画像で指定されているため柄の変更も可能だ。髪の揺れはKawaiiPhysicsで表現されている。

顔パーツは、眉、目、口、輪郭、鼻の5パーツ構成となっており、パーツを差し替えることで好みの顔を作れるようになっている。顔にはトータル150本の骨が用意されており、これらで表情が作られている。表情は基本25種類存在し、それぞれ1つの表情につき、眉1パターン、目4パターン、口6パターンが用意されている。

本作のキャラクタークリエイトは顔パーツの差し替え方式なので、他のプレイヤーと被ってしまいやすいという声を受けて、CBT後には目と眉の角度調整機能が追加された。眉と目のポーズアセットに傾き変更用のアニメーションを混ぜることで自然な見た目を実現しているという。また、傾き調整が加わった場合でも表情が破綻しないように、ベースのフェイシャルアニメーションも調整されている。

目はカスタマイズ要素がCBTから増えており、これまでモデルのみで作成されていたまつげはテクスチャに変更され、目の印象を大きく変えることが可能になった。また目線の動きに追従して瞼が動くようになっている。その他の工夫としては、アイメイクが伸びないように瞼に隠し包丁的なエッジが追加されていたりもするそうだ。

メイクは4枚の白黒のマスクを使用し、メイクを盛ったときに破綻しないように表示優先は肌ベース、リップ、ペイント×2になっている。性別年代や表情で歪みが発生しないように投影するテクスチャのオフセット値が調整されている。

メイクではリップのハイライトのオンオフ機能もあり、胸や肩にもチラッとハイライトが描かれている。小さい要素だが、有るのと無いのでは立体感が異なるのだとか。

ホクロは表情が変化しても円形で表示されるようにポリゴンで作成。キャラクターが小さく表示されているときでもきちんと表示されるように、遠くにいるほど大きく見えるようなシェーダーが使用されている。表示・非表示は合計8つのホクロモデルに頂点カラーを仕込み、最大4つまで付けられるようになっている。

なお、ホクロの位置は古今東西のアニメキャラから割り出してこだわったポイントだという。目の近くに縦並び、横並び、どちらも可能になっている。

以上が「BLUE PROTOCOL」のキャラクタークリエーションの手法についてだ。本作のキャラクタークリエイトは、アニメやゲームの設定資料を自分で作り込んでいるかのような視覚的ビジュアルが特徴なのだが、それらを構成するのはクリエイターの細かいこだわりの積み重ねによるものだった。本作を触れる際は、このセッションで触れられていたことを思い出しながらプレイすると、新たな発見に出会えるかもしれない。

キャラクリは当初、体型調整がしやすいように裸でスタートしていたそうだが、
社内のテスト時にキャラクリを連打で終わらせる人が多数おり裸祭りになってしまい現在の形になった……。
という裏話なども飛び出した。

※メーカー発表情報を基に掲載しています。掲載画像には、開発中のものが含まれている場合があります。

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