2021年9月2日にPS4/Nintendo Switch用ダウンロードソフトとして発売される、2Dサバイバルホラー「Darkwood」の先行プレイレポートをお届けする。
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「Darkwood」はAcid Wizard Studioが開発し、2017年にPC向けにリリースされたタイトル。これまで日本語ローカライズは行われておらず、今回の日本一ソフトウェアが販売するPS4、Nintendo Switch版で初めて日本語で遊べることになる。今回は、PS4版の序盤をプレイして味わえた、その魅力やゲーム性について紹介しよう。
なお、本作のレーティングはCERO:Zだが、この記事では過度にグロテスクな画像や表現は使用していない。
基本システム:アイテム使用の不便さや、視界の心許なさが恐怖を倍増させる
ゲームをはじめると、まず難易度をイージー、ノーマル、ハードの3段階から選択できる本作。また、「Indiegogo コンテンツ」のON/OFFの切り替えもここで行える。ONにすると作品本来の不気味な雰囲気にはそぐわないコンテンツが登場するとのこと。いきなり導入するのは推奨されていないが、ONにすると開発者の裏話がどこかで見れるとか。今回は難易度ノーマル、「Indiegogo コンテンツ」はOFFでプレイをはじめた。
プロローグでは、森にある小屋のような場所で目覚めた目的不明のキャラクターを操作し、ゲームを勧めていく本作。ここでプレイヤーは、フィールドの調べ方やアイテムの入手方法をひと通り覚えることになる。たとえば、衣装ダンスの前で「探索する」を選ぶと、中に入っているアイテムが表示され、必要だと思ったものを自分のバックパックに移動する、といった具合。
バックパックに仕舞ったアイテムを手に持って使用するには、横にあるマスにアイテムを移動し、十字キーで選択するというさらなる手間を掛ける必要があるなど、操作性は煩雑だ。しかしこれは意図的なものだろう。実際に仕舞い込んだ道具を取り出し、手に持って使用するときのことを考えたら、一瞬というのはあり得ない。目前に危険が迫ったとき、この煩雑さはリアリティを伴った恐怖に繋がるのだ。
小屋を出ると、とある残酷な行為を実行に移すかどうかといった選択を迫られつつも、不気味な森をさまようことになるプレイヤーキャラクター。本作では“視界”の概念が重要であると同時に、とても心許ない。照明のない屋外では、操作しているキャラクターの正面方向わずか70度程度しか視認できず、それ以外の場所に存在するものは地形以外把握できない。進行方向のみに注視して行動していると、何かが側面や後ろから近づいてきても気づけない……という状況があり得るのだ。少し歩みを進めるたびに、周囲をキョロキョロと見渡して警戒するくらいの、慎重なプレイが求められる。
しばらくするとイベントが発生し、操作キャラクターは交代。新たに操作することになる男性らしき人物(便宜上、以下“男性”と表記)も素性は分からないが、どうやら何かに巻き込まれた被害者側であるらしい。男性は、この森からの脱出を図ることになる。
一度訪れた場所でも道に迷いやすいマップ、戦闘は避けるのが無難
操作キャラクターが変わってからしばらくすると、チャプター1が幕を開ける。男性はひとつの山小屋を拠点として徐々に探索範囲を広げ、森からの脱出を目指す。
探索ではマップを頼りに、自分がいまどの辺りにいるのかを把握することになる。ただし、このマップも利便性に優れたものではない。見つけたランドマークはマップに記され、自分がどの辺りにいるかは近くにあるランドマークが赤く染まることである程度把握できるのだが、詳細な位置関係まで分かるものではないからだ。薄暗い森の中では距離感を失いがちで、一度訪れたランドマークに向かっていたはずが、通り過ぎてしまうことも何度かあった。前述のアイテムの取り回しと同様、“リアルな不便さ”が感じられる部分だ。
森では野犬や鹿、ときには人間らしき者が襲いかかってくることも。斧や鉄パイプなどの武器があれば応戦は可能だが、持っていなければ彼らを刺激しないよう、距離を取りつつやり過ごすしかない。また、すべての武器には耐久度があるようで、何度も使用していると壊れてしまう。たとえ攻撃手段があっても、不要な戦いは避けるのが無難だ。
それでも倒すべきだと感じた敵には、応戦することになる。近接武器なら敵の攻撃タイミングを探りつつ、こちらも殴りかかってHPを削り合う。「火炎瓶」などがあれば、少し離れた場所から放り投げて大ダメージを与えることも可能だ。今回のプレイでは入手できなかったが、拳銃などを使える機会もある模様。しかしこちらも恐らく、使いどころを見極めなければすぐに弾切れになってしまうだろう。
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鎖に繋がれた犬が襲ってくることも。うまく避けて先へ進めるか? |
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火炎瓶で、行く手を阻む虫らしきものの大群を一掃! |
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拳銃の素材はとある場所で出会った獣の顔をした商人が販売していたが、高額だったので購入できず。 |
森の中や途中で見つかる空き家では、アイテムや素材が手に入る。素材は組み合わせれば、便利なアイテムを製作することができる。とくに最序盤からお世話になるのは「古着」が複数あれば生み出せる、HPの回復手段となる「包帯」だろう。暗い場所でも視界を広げられる「松明」も、木の板、古着、マッチ、ガソリンなどを組み合わせて作り出せる。手に入ったものをより便利なものに変える方法を把握すれば、過酷な状況下でも、生存率はグッと上がるはずだ。
夜は山小屋に籠城して襲撃にそなえる
拠点となる山小屋では、さまざまな探索の準備を行うことになる。バックパックから倉庫にアイテムや素材を預けたり、逆に必要となったものを取り出したり。併設された作業台では、さまざまな素材を組み合わせて、ここでしか製作できないアイテムを生み出せる。素材によっては作業台自体をアップグレードすることもでき、これによって製作できるアイテムの種類は増加する。前述した「火炎瓶」も、作業台のレベルを上げることで製作可能になるアイテムだ。
同じく拠点にある“のこぎり”では「薪」を「木の板」にすることができるし、“オーブン”では森で採取したキノコからエッセンスを抽出し、探索に役立つスキルを入手することも可能。
また、この山小屋には探索の拠点だけではない、男性が生き残る上で重要な、もうひとつの機能がある。昼夜の概念がある本作では、森全体が橙色に輝き出したら陽が沈み、夜になる合図。夜間はまったく周囲が見えず探索がままならないため、男性は拠点の山小屋に籠城することになるだ。この籠城パートでは、昼間とはまた異なる恐怖がプレイヤーを襲う。山小屋へと、敵が侵入してくる恐れがあるのだ。
プレイヤーは「木の板」で窓を補強したり、侵入される恐れのある場所にトラバサミを設置するなどして、敵の襲撃に備えることになる。また、発電機に十分なガソリンを補充して、室内照明の電力を維持しておかなければ、暗くてほとんど何も見えない状況で敵に応戦しなければならない。とにかく昼間のうちにどれだけの準備ができるかが重要なパートだ。なんとか敵を退けて朝を迎えられたとき、多くのプレイヤーが思わずホッと胸を撫で下ろすだろう。
なお、本作はHPがゼロになったとしてもそこまでの努力が水の泡になるわけではない。所持アイテムの喪失などのペナルティはあるものの、倒れたときは拠点からプレイを再開することになるのだ。アイテムの喪失も、大事なものを倉庫に預けておけば大きな痛手にはならないし、死んだ場所を訪れるとあとから回収ができる。思う存分、大胆な行動を取ってみるのもアリだろう。
“恐怖”を最大限に引き出すゲームプレイは、サバイバルホラーファン必見
今回プレイした範囲ではまだ全容は掴めず、ここから先もさまざまな恐怖が待っているであろう「Darkwood」。扉が閉ざされており進めなかった場所もあったので、その先には何が待っているのか、気になるところだ。
ここまでの時点では、この男性が何に巻き込まれて現在の状況に陥ったのかもハッキリとは分からない。ときおり挟まれるムービーも極めて断片的で、これがさまざまな想像を掻き立て、プレイヤーが感じる不気味さを倍増させている。彼はなぜここにいるのか? そして、この森はいったい何なのか? 本作に心を惹かれた方は、ぜひ自分の目で確かめてほしい。
序盤のプレイで分かったのは、「Darkwood」がリアリティのある“不便さ”をゲームプレイに取り入れることで、作品世界が持つ“恐怖”を最大限に引き出しているタイプのタイトルであることだ。この手の作品は強い緊張を強いられる瞬間があるからこそ、機転を利かせて乗り切ったときのカタルシスも大きい。そしてこれは過去の名作サバイバルホラーゲームの多くに通じる特徴でもある。
サバイバルホラーというジャンルを愛する人や、興味を持っている人は、ぜひ本作をプレイしてみてほしい。自由度が高く、最初は何をすればいいのかと戸惑うかもしれない。しかし、そうした戸惑いをひとつひとつ乗り越え、恐怖を克服していく過程は、ほかのゲームではあまり味わえない、達成感に満ちたものになるはずだ。