コロプラがiOS/Android/PC向けに配信中のアクションゲーム「アリス・ギア・アイギス」と、「STEINS;GATE」とのコラボイベント「共鳴時空のエンタングルメント」が開催中だ。そのストーリーを先行して最後までプレイできたので、極力ネタバレを避けつつ、魅力を紹介する。
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「アリス・ギア・アイギス」(以下「アリスギア」)の舞台は数百年後の未来、謎の機械生命体「ヴァイス」に襲われた人類が地球を手放し、脱出船団「東京シャード」に移り住んでいる世界。ヴァイスに対抗できる兵装・アリスギアを纏う少女「アクトレス」たちの戦いを描いた物語だ。
一方の「STEINS;GATE(シュタインズ・ゲート)」(以下「シュタゲ」)は2010年の秋葉原を舞台に、厨二病大学生・岡部倫太郎(おかべ りんたろう)を主人公とした物語。彼が主催するサークル「未来ガジェット研究所」の活動で偶然、過去へと電子メールを送れる装置を生み出してしまい、これを切っ掛けに巻き起こる、サスペンスフルなストーリーが好評を博した。
この異なるテイストの作品同士のコラボがどういったものになるのか? 筆者はまったく想像がつかないまま、プレイを始めた。そこで体験できたのは、異様に作り込まれた、「シュタゲ」への熱いリスペクトに満ちた長編ストーリーだったのだ。
序盤から「シュタゲ」リスペクト演出と、謎が謎を呼ぶストーリー展開に引き込まれる
コラボストーリーの第1話冒頭では、「アリスギア」のメインキャラクターである比良坂夜露(ひらさか よつゆ)と兼志谷シタラ(かねしや したら)が、秋葉原の街を歩いている場面が描かれる。この時点で「シュタゲ」ファンならば「おっ!」と反応するはずだ。
背景として描かれているのは、まさに「シュタゲ」で見慣れた秋葉原そのもの。さらに夜露たちの会話も、通常時の吹き出しにメッセージが表示される形式ではなく、画面下にテキストウィンドウが表示される「シュタゲ」風味のものになっている。
そもそもこの第1話のタイトルは「出会いと別れのプロローグ」。明らかに本家「シュタゲ」Chapter1(もしくはアニメ第1話)のタイトルである「始まりと終わりのプロローグ」をオマージュしたものだろう。この時点で筆者は「これはどうやら、なかなか見ないレベルで力の入ったコラボだぞ」と身構えはじめた。
その後、世界線が変動する演出(!)ののち、とある出来事を経て、秋葉原の街に「シュタゲ」のキャラクターである牧瀬紅莉栖(まきせ くりす)、阿万音鈴羽(あまね すずは)、椎名まゆりの3人が現れる。遠い未来の、しかも地球外が舞台であるはずの「アリスギア」の世界に、なぜ「シュタゲ」とまったく同じ風景の秋葉原があるのか? というのがまず謎なわけだが、そこに紅莉栖たちが現れたことで、ますます謎は深まっていく。この辺りで、筆者は早くもこのストーリーを、夢中で読み進めることになったのだった。
紅莉栖、鈴羽、まゆりの3人は、夜露やシタラと同様、「アリスギア」のキャラクターデザインに合わせた3DCGモデルでの登場となる。原作とは異なる姿でありながら、その仕草や、原作のキャラクター性を100%再現した台詞まわし、当時と変わらぬ声優陣の演技もあって、夜露たちとのやり取りでも、違和感はまったく覚えなかった。久々に彼女たちのやり取りを見て感じたのは、苦楽を共にした旧友と再会できたときのような気持ちだ。
女性陣たちによる掛け合いだけでもかなりおもしろいのだが、「シュタゲ」といえば、やはりあの男がいなければ始まらない。物語も中盤に差し掛かるあたりで、ついにあの――「狂気のマッドサイエンティスト」が、姿を表した。
狂気のマッドサイエンティスト、喋る、喋る、喋る!
コラボストーリーに登場するほとんどのキャラクターには、通常の「アリスギア」の仕様と同様、パートボイスが採用されている。しかし、ひとりだけ例外がいた。それが狂気のマッドサイエンティスト・鳳凰院凶真(自称)こと、岡部倫太郎(通称オカリン)だ。
このシナリオ、オカリンだけがフルボイスで、ガンガン喋りまくる。美少女たちが活躍するゲームであるにも関わらず、紅莉栖でも、鈴羽でも、まゆりでもなく、ましてや夜露やシタラでもなく、オカリンだけがフルボイスなのだ。
担当者に話をうかがったところ、「シュタゲといえばオカリン」ということで、こうした仕様になったのだとか。筆者としても「シュタゲ」でいちばん好きで、愛着のあるキャラクターはオカリンなので、気持ちはすごくよく分かる。分かるのだが、それにしてもすごい判断だ。
並み居る美少女たちを差し置いて、オカリンだけが全編喋りまくっている様を眺めていると、その妙な光景を意識するたび、思わず吹き出してしまった。
ちなみに過去のすべてのコラボイベントを振り返っても、「アリスギア」で全編にわたってフルボイスが採用されたキャラクターは、岡部倫太郎が初めてとのこと。メガネへのこだわりが話題になったときも思ったが、本当に妙なところに力を入れているゲームである(褒め言葉)。
「シュタゲ」は主人公であるオカリンがもがき苦しみ、葛藤するような過酷な展開もまたプレイヤーの感情移入を強く促していた。今回、そんなオカリンは基本的に、夜露たちが物語の謎を解くためのバックアップを行うような役回りとなっている。
こうして客観視すると、オカリンがいかに頼りがいのある人間であるかに、改めて気づかされる。ノリノリの厨二病全開台詞は相変わらずだが、「シュタゲ」の結末を見届けた人ならば、そうした態度すらも心強く感じられるはずだ。
「みんなのトラウマ」再び。鮮明に蘇る絶望の記憶
コラボストーリーでは途中でバトルパートもプレイすることになり、中盤以降はこのシナリオにのみ登場するオリジナルヴァイスである、「Dヴァイス」とも戦うことになる(Dヴァイスのデザインには、「シュタゲ」のタイトルやキービジュアルでもお馴染みの“歯車”があしらわれている)。
先行プレイではギアをまとった紅莉栖と鈴羽で、Dヴァイスを迎え撃たせてもらった。紅莉栖は近接攻撃の性能が高く、敵に接近しての戦いに向いており、鈴羽は射撃能力にも長けたオールラウンダーとのこと。とくに鈴羽はもともと“戦士”ということもあり、ナイフと体術を駆使したアクロバティックなモーションが格好よく、操作していて楽しいキャラクターとなっていた。
なお、コラボストーリーのバトルパートは、シナリオを最後まで読み進めるためにクリア必須なバトルに関しては、そこまで難易度は高くない。このコラボストーリーを読むために「アリスギア」のプレイを始めたばかりの人でも、少し頑張ればすべてクリアできるようだ。一方、シナリオクリア後にプレイできる高難度バトルは、歯ごたえアリ。初心者もベテランプレイヤーも、目的に合った楽しみ方ができるということだ。
「アリスギア」らしい要素も登場し、このまま割とほのぼのした雰囲気のままストーリーは完結するのでは? そう思い始めた筆者。しかし、まゆりが「とある台詞」を発したことを切っ掛けに、思わず表情を強張らせた。
これ以降、このストーリーは「シュタゲ」プレイヤーの多くが抱える「トラウマ」を激しく刺激するような台詞や描写が、至るところで顔を覗かせることになる。あの作品への思い入れが深ければ深いほど、その「絶望の記憶」は鮮明に蘇ることだろう。そしてそれは、「シュタゲがなぜ人々の心に深く残る名作だったのか?」を、完璧に理解していなければ押さえることのできない、ツボを押さえたシナリオでもあったのだ。
紅莉栖たちが夜露たちの世界に来てしまった理由。Dヴァイスという存在。そしてオカリンたちの登場が意味すること――。あらゆる「違和感」が伏線として論理的に回収される気持ちよさも、「シュタゲ」の魅力を踏襲。
シナリオパートを読破するだけでも1時間強という大ボリュームによって「共鳴時空のエンタングルメント」は、「アリスギア」と「シュタゲ」のコラボにしか描けない物語を、非常に高いレベルで結実して見せてくれた。
「共鳴時空のエンタングルメント」をプレイすることは、運命石の扉の選択である
もちろん、今回のコラボイベントの見どころはストーリーだけではない。スカウトでは星4の紅莉栖と鈴羽が登場(星3の紅莉栖と鈴羽はコラボ期間中に配布あり)。彼女たちの個別エピソードを読むことで、紅莉栖にはメガネを、鈴羽には「戦士」の証である腕に巻くバンダナをアクセサリーとして装備可能だ。「うーぱガチャ」でも、「メイクイーン+ニャン2」のメイド服や「うーぱ」といったコラボアイテムが手に入る。
以前β版として実装されていた「撮影ルーム」の機能も、コラボ期間に合わせて復活。背景やフレームは、「シュタゲ」コラボならではのものが増えており、紅莉栖や鈴羽の可愛らしい一面の撮影を楽しむことができる。
予想を超えるリスペクトぶりと、トラウマが鮮明に蘇るほどにシリアスかつ完成度の高いシナリオ。ファンなら嬉しい、キャラクターを愛でるための各種機能。「シュタゲ」ファンにとって至れり尽くせりなコラボイベントだった「共鳴時空のエンタングルメント」。すべての「シュタゲ」ファンにおすすめであり、オカリンへの思い入れが強い人には、とくに強くおすすめしたい。
かつてラボメンの一員だった者ならば、このイベントをプレイすることこそが「運命石の扉(シュタインズ・ゲート)の選択」なのかもしれない。