2022年2月25日の発売が迫る、スクウェア・エニックスのPS5/PS4/Xbox Series X|S/Xbox One/Nintendo Switch/PC(Windows 10/Steam)用ソフト「ライフ イズ ストレンジ トゥルー カラーズ」のプレビューをお届けする。

目次
  1. 主人公・アレックスは、人の感情のオーラが見える女性
  2. 選択次第で未来が変わるお馴染みのゲームシステムに、“オーラの可視化”が融合
  3. 町の色、人の色、感情の色――たくさんの色に溢れた世界
  4. 字幕のサイズ変更やアクセシビリティ機能も充実

今回のプレビューで記載する範囲は、エピソード1のラストまで。ストーリー展開について仔細に紹介することはないが、少なからず状況が察せられる部分はある。ネタバレに敏感な方は注意してほしい。なお、プレイに使用したのはPS4版だ。

主人公・アレックスは、人の感情のオーラが見える女性

本作は「ライフ イズ ストレンジ」シリーズの4作目。「ライフ イズ ストレンジ」及び「ライフ イズ ストレンジ 2」といったナンバリングタイトルを開発しているのはシリーズを生み出したフランスの開発会社、DONTNOD Entertainment。一方で「ライフ イズ ストレンジ ビフォア ザ ストーム」と本作「ライフ イズ ストレンジ トゥルー カラーズ」は、Deck Nine Gamesというアメリカの開発会社が手掛けている。

このように本作は外伝的な位置づけのタイトルではあるものの、このたび序盤をプレイした限りでは、ストーリーの繊細さや奥深さ、そしてアドベンチャーゲームとしての魅力は、ナンバリング作品と決して遜色ない。加えて本作独自の魅力もしっかりと備わっており、シリーズ最新作に相応しいと言える幕開けだった。

ちなみにシリーズ4作品では異なる主人公たちの、それぞれに異なった“奇妙な人生”を描いているが、細部の描写から、すべて同じ世界の出来事であることが察せられるようになっている。

「ライフ イズ ストレンジ トゥルー カラーズ」の主人公はアレックス・チェン。本シリーズの主要キャラクターは、「時間を巻き戻す力」、「念動力(テレキネシス)」などの特殊な能力を持っている場合が多いが、アレックスもまた、彼女だけの不思議な力を持っている。それは他人の“強い感情”がオーラとして可視化され、自分もその感情の影響を強く受けてしまうという能力。この能力のため、アレックスはこれまでも喧嘩などのトラブルの絶えない日々を送ってきていた。

そんなアレックスがコロラド州の山奥にある町「ヘイブン・スプリングス」で、生き別れになっていた兄・ゲイブと再会するところから本作の物語は始まる。ヘイブン・スプリングスで新たな生活を始めようとしているアレックスは、町で暮らすさまざまな人々と出会い、その中で改めて、自分の不思議な力と向き合っていくことになる。

選択次第で未来が変わるお馴染みのゲームシステムに、“オーラの可視化”が融合

シリーズ過去作と同様、人々やいろいろなオブジェクトに干渉することで、物語が進んでいく本作。その中で迫られるいくつかの選択は、その後の物語展開を大きく変えてしまう可能性を持っている。こうした選択肢には、一見些細な判断の形を取っているものから、目に見えて重大な決断を迫られるものまで、パターンはさまざま。そのときは「良い判断ができた」と思えた選択が、のちに思わぬ結果を招くこともあり、まさに“人生の奇妙さ”を感じさせる要素と言える。

加えて、本作ではアレックスの能力に紐づいた“人の感情を読み取る”という行為が、物語を進める上で大きな意味を持っている。アレックスは“強い感情”を、色のついたオーラとして読み取れる。そこまで激しい感情でなければ“青いオーラ”が見えるが、激しい怒りならば“赤いオーラ”、恐怖ならば“紫色のオーラ”として可視化されるのだ。このとき、大抵の場合はその感情の持ち主が胸に秘めた“心の声”も一緒に聞こえるので、これを頼りに相手が欲している言葉を掛けるなどして、トラブルを未然に防いだりといった活用をしていくことになる。

“人の感情が読める”と聞くと、とても便利なことのように感じる。しかしこの能力のせいでトラブルを起こしてしまうことが少なくないアレックスは、これを“呪い”のように感じているという。序盤でも、他人の怒りの感情から影響を受けたアレックスが、過剰に暴力を振るってしまったり、子どもの恐怖の感情を受けて、彼の恐ろしい妄想の風景を自分も垣間見てしまったりと、確かにコントロールが難しい力のようだ。

たとえば現実でも、他人に共感しすぎてしまう人は、日々耳にする悲劇的なニュースなどから受ける心へのダメージは大きくなるだろう。アレックスの力は、そうした性質の戯画化とも言えるかもしれない。この特異な能力を、アレックスがポジティブに捉えていけるようになるのか? という部分も、これから先の展開の注目ポイントのひとつとなっている。

町の色、人の色、感情の色――たくさんの色に溢れた世界

「ライフ イズ ストレンジ」シリーズに共通する魅力のひとつに、登場人物たちのバックボーンや、物語の舞台が持っている歴史が読み取れるような、作品世界の情報量の豊富さがあると筆者は考えている。

登場人物の部屋を見渡し、干渉できる場所を調べていけば、そのキャラクターがどんな幼少期を過ごし、どのような成長を経ていまに至るかが察せるし、町の風景からは、ここがどういった発展を経ていまの姿になったのか、なんとなく感じ取れるようになっているのだ。

アレックスは兄であるゲイブがこれまで使っていた部屋(ゲイブが働いているバーの2階にある)を譲り受けるのだが、この部屋はそうした魅力の凝縮された場所と言えるだろう。ゲイブがこれまで愛着を持って使っていたであろうおもちゃや小物がある部屋で、アレックスが荷解きをしていく場面は、兄妹の空白期間の隙間を少しずつ埋めていく、非常にエモーショナルなシーンに思えた。

余談だが、この部屋には80年代を思わせるレトロなアーケード筐体が置かれており、この筐体に収録された「MINE HAUNT ~呪われた鉱山~」というゲームを実際にプレイすることができた。「パックマン」と「ドンキーコング」を組み合わせたようなゲームで、なかなかに熱中できるおもしろさだった。この「MINE HAUNT ~呪われた鉱山~」は本作オリジナルのゲームだが、階段を降りた先にあるバーでは、なんとタイトーの「アルカノイド」もプレイできた。現在タイトーがスクウェア・エニックスの子会社になっているからこそ実現できた、ちょっとしたサプライズということだろう。

おもしろいのが、これらのゲームでゲームオーバーになったとき、スコアランキングにアルファベット3文字を入力する画面になるのだが、ここでは自動的に「ALX」の3文字が打ち込まれることだ。アーケードゲームを遊んでいたのが自分(プレイヤー)自身ではなく、アレックスだったことを思い出し、ハッとすると同時に、スムーズに作品世界へと戻っていけるニクい演出だと感じた。

話を戻そう。本作の舞台となるヘイブン・スプリングスはこれまでの「ライフ イズ ストレンジ」シリーズと比べても、色彩豊かな風景が目につく。冒頭でアレックスとゲイブはこの町にある橋の上で再会するのだが、色とりどりの花々が植えられたこの橋は、まさにこの町の象徴的な場所だと言える。

アレックスとゲイブがアジア系アメリカ人で、ほかの登場人物の肌の色も、そして彼らの文化的背景もさまざま。そうした、多種多様な人々を受け入れてくれるヘイブン・スプリングスという町の気風が、この色彩豊かな風景に表れているように思えてならない。

そしてアレックスの不思議な力によって、彼らの十人十色な感情は、文字通りその“色”を、プレイヤーのもとに晒されることになる。この点については“ゲーム的演出”と呼ぶこともできるだろうが、本作はキャラクターたちのフェイショナル・モーション(表情の動き)も過去作以上にきめ細やかなものとなっており、そのちょっとした変化だけでも感情の揺らぎが伝わってくる。

色とりどりの出自を持つ登場人物たちと、彼らを象徴するような色彩豊かな町の景観。そして彼らひとりひとりの異なる想いから発せられる“感情の色”。サブタイトルが示すように、「ライフ イズ ストレンジ トゥルー カラーズ」は、たくさんの“色”に溢れたゲームなのだ。

字幕のサイズ変更やアクセシビリティ機能も充実

とある事情で山奥にある採掘現場へと忍び込むことになるアレックスたち。ここでエピソード1は、急転直下と言える展開を迎えて幕を閉じる。本作もやはり、次のエピソードをはやく遊びたいと思わせてくれるクリフハンガーな展開は、さすがの切れ味だ。

日本語ローカライズの品質もさすがのひとこと。過去の「ライフ イズ ストレンジ」シリーズと変わらぬクオリティを保ってくれている。ちなみに、初期設定では字幕がシリーズ過去作と比べて小さめだが、字幕サイズは「デフォルト/大/特大」から選択可能だ。この記事のほとんどの画像は字幕サイズを「大」にしてキャプチャーしたものであり、Nintendo Switch版の携帯モードで遊ぶ場合は「特大」くらいでちょうどいいかもしれない。

アクセシビリティ機能についても言及しておこう。もともとアクション性の少ないアドベンチャーゲームである本作だが、一部の時間制限のある選択肢の時間の増加や、ミニゲーム系のイベントのスキップ、各種操作の「長押し/切り替え(ボタンひと押しで動作が切り替わる)」の変更など、より多くの人がゆったりとプレイできるような設定項目がいくつも設けられている。感情のオーラも、色覚異常に合わせたフィルターを編集することが可能だ。

まとめると、「ライフ イズ ストレンジ トゥルー カラーズ」はシリーズ過去作の魅力はそのままに、“感情の色”にフォーカスしたストーリー・ゲームシステムで、主人公のアレックスのみならず、登場する多くのキャラクターたちの心情に寄り添ったドラマが展開されていきそうだ。

ここまでに言及していない部分だと、スマートフォンでチェックできるSNSや、アレックスが書き記していく手帳などを通して、登場人物たちの現在の状況を知れるほか、過去にあった出来事を掘り下げることも可能になっている。このあたりの「ライフ イズ ストレンジ」シリーズらしい情報開示の仕方も、やはりファンとしてはたまらないところだ。

シリーズ過去作と同様、「ライフ イズ ストレンジ トゥルー カラーズ」もまた、我々にとって大切な1本になってくれる可能性は高い。ここまで読んでくれた方には、ぜひプレイを検討してみてほしい。

※画面は開発中のものです。

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