スクウェア・エニックスは、2022年4月10日に東京・渋谷ヒカリエで「キングダム ハーツ(以下、KH)」シリーズの20周年を記念したイベント「KINGDOM HEARTS 20th ANNIVERSARY EVENT」を開催した。ここでは特別展示とステージプログラムの模様をお届けする。

目次
  1. 20周年を振り返る貴重な資料や原画を展示
  2. 約22年前のプレゼン映像を公開!思い出が蘇るミニライブも堪能
  3. 野村氏がファンの質問に直接回答!
  4. ボイスキャスト&音響監督がシリーズ初期を振り返る
  5. ナンバリング最新作が発表!Unreal Engine 5でよりパワフルに

20周年を振り返る貴重な資料や原画を展示

KHシリーズ20周年特別展示「MEMORIES OPEN LOCKER」では、引き出しや扉の鍵を開けて記憶を呼び起こすようなギミックと共に思い出を振り返っていく。20周年の記念グッズをはじめゲームの収録台本やパッケージ、関連書籍などを幅広く網羅し、なかには発売当時の新聞広告といった貴重なものも。QRコードの読み込みで閲覧できたキャストコメントなどは、後日アーカイブページでも確認できるそうだ。

とくにファン必見となったコーナーは、KHシリーズのディレクターを務める野村哲也氏の原画を間近で見ることができた「ORIGIN of KINGDOM HEARTS」だ。各ワールドイメージや尻尾がはえたソラの初期設定、「ファイナルファンタジー」シリーズのKH版キャラクターデザイン、「KINGDOM HEARTS III」や「KINGDOM HEARTS Melody of Memory」のパッケージデザイン、オーケストラコンサートのイラスト、SuperGroupiesとのコラボレーションイラストなどのタッチをそのまま感じることができた。

入り口にはカフェスペースが設けられ、ドリンク「ライトプロミス」を楽しむこともできた。スペース内にはソラとロクサスの立像が展示され、横断幕には野村哲也氏のサインも。ホール外にはSuperGroupiesとのグッズ展開の告知や、有志からのものを含めたフラワースタンドも数多く飾られていた。

また、スペース内には20周年を祝うイラストのデジタルサイネージが展示されていて、イベント終了後には20周年のロゴ部分が発表されたばかりの「KH4」をイメージしたソラに変化するという仕掛けでファンをわかせていた。

約22年前のプレゼン映像を公開!思い出が蘇るミニライブも堪能

ステージプログラムは、野村氏がこれまでの歩みを思い返すインタビュー映像からスタート。その中で約22年前にディズニーへ向けて作ったというプレゼン映像が公開され、ワールドやディズニーキャラクターとのコラボレーションをイメージしたと思われる多彩なビジュアル、原画にもあった初期設定のソラがドナルドやグーフィーとデスティニーアイランドのような島を駆け回るアクションシーンが収録されていた。HPなどは数字で表現されていたが顔のアイコンはすでに登場していて、製品版ではもちろん大幅にブラッシュアップされているもののプレゼン当時の根幹のイメージをしっかり踏襲していたのが伺えた。

ピアノ五重奏によるミニライブでは、ゲーム内の象徴的なイベント映像と共に「Dearly Beloved」「Sora」「Vector to the Heavens」「Nachtflügel」「Link to All」の5曲を届ける。ここで、イベントMCであるカイリ/シオン役の内田莉紗さんと、シリーズの楽曲を手掛けた下村陽子さんがステージへ登場。下村さんはこの特別な日のためだけの室内楽アレンジになったと話し、選曲は大いに悩みつつもシリーズタイトルから満遍なく選んだそうだ。20年を振り返ると大変だったことも多いが、こうしてファンを前にするとそうした苦労も吹き飛ぶとコメント。音楽面で今はまだ具体的に話せることはないとしながらも、色々な構想は膨らんでいる様子だった。

続いて野村氏と、間 一朗氏がステージへ。朝10時までイラストを描いていたという野村氏はかなり疲労困憊の様子だったが、かなり自由なコメントも交えつつファンの笑いを誘う。

累計3500万本、なかでも「KH3」がシリーズ最高となる670万本(2021年9月時点)を突破したKHシリーズ。さまざまな展開を続けている中、オフライン版として提供中の「KINGDOM HEARTS Union χ Dark Road」のダークロードのエンディングまでを2022年8月に一挙配信すると発表された。かなり加筆も行われているそうで、野村氏いわく「謎を解きました」とのこと。展示されていた20周年記念グッズにも触れ、和モダン好きの野村氏は和物グッズや江戸切子のグラスがとくに気に入っている様子。さらに、全日予約で埋まってしまったARTNIAの20周年記念カフェを5月31日まで延長するという嬉しいお知らせも。予約受付は4月15日を予定しているので、残念ながら予約できなかったファンはこちらのチャンスに賭けてみよう。

ここで、野村氏が新作アプリ「KINGDOM HEARTS Missing-Link」を発表。「多層都市スカラ・アド・カエルム」「建国の祖エフェメラ」「秘密結社のキーブレード使い」などがキーワードとなり、ユニオンクロスからダークロードの間のストーリーになるそうだ。映像内ではブレインの姿をはっきりと確認できた。

画面は縦横どちらにも対応し、最大6人での迫力あるバトルも楽しめるという。一方で現実のプレイヤーの移動にリンクし、世界中に設置されている「ピース」と呼ばれるアイテムを集める遊びも。とはいえ実際の移動だけではなく、ポイント的なものを消費すれば自宅に居ながらあちらこちらへアクセスできるという。オープンワールド風の世界に拠点のような場所が存在し、クエストを受注してストーリーを進めつつ、ピースを集めてキーブレードにセットする……という2つの遊びが組み合わさったイメージのようだ。2022年クローズドβテストを実施する予定とのことなので、続報を楽しみに待っていよう。

野村氏がファンの質問に直接回答!

ここからは、ファンから寄せられた質問へ野村氏が回答していくコーナーへ。質問募集時はもちろん新作アプリなどが発表されていなかったため「そちらでご期待ください」となってしまったケースも多々あるが、今回選ばれなかった質問も新作アプリや「ダークロード」で明かされるか、野村氏の中にある答えがいずれ陽の目を見る可能性がある……ということなので、今後の展開に注目しておこう。

――ノーバディのシンボルマークは生まれながらについているものですか? XIII機関がつけているものなのですか? 人型のノーバディにもシンボルマークがついているのでしょうか?

生まれながらについていますが、人型はついていません。ノーバディの人型は、ハートレスでいうところのピュアブラッドみたいなものだと思っていただければ。

――デミックスは何者なのでしょうか?

これはすごく多い質問だったんですが、ここで答えたら多分もう描かないんですけど……大丈夫ですか? 今後にとっておいたほうがいいと思います。

――宇多田ヒカルさんの曲から新しいインスピレーションを受けることはありますか?

毎回、曲をいただいてからオープニングムービーを考えています。そういう意味では毎回インスピレーションをいただいています。なくてはならないパーツですね。

――「KHUχ」でプレイヤーがゼアノートの心に溶けたと思いますが、ずっとゼアノートの中にいたのでしょうか?

「ダークロード」を完結までプレイすると分かります。僕の術中にハマってますね(笑)。

――「KH2」でリクがカイリにキーブレードを手渡しますが、どこで入手したのですか?経緯を描く予定はありますか?

ありますかと言われれば……そこは何かしらやらないと投げっぱなしになってしまうので、フォローはするつもりでいます。

――ヨゾラ戦の勝敗でストーリーが分岐する演出はストーリー初だったと思います。何か意味があるのでしょうか?

ストーリー的な意味というよりも、ヨゾラがとても強く……なかなか勝てないので、負けた時にも何か見れたほうがいいかなという優しさで入れました。どれだけ挑んでも一向に勝てない方がいた場合、何もオチがないと可哀想かなと。

――「KHUχ」の最後に、エフェメラはプレイヤーの真意に気付いていたのでしょうか?

プレイされた方はエフェメラとどういう別れ方をしたのかご存じかと思いますが、切ない別れでしたね。エフェメラに関しては今後も色々あるので……!とくに過去の物語は「Missing-Link」で謎が解けるかなと思います。

――ナミネと賢者アンセムはいつ、どのタイミングで出会ったのでしょうか?

忘却の城からXIII機関もソラもリクも出ていって、ナミネだけになったところです。出会いのタイミングはそこで察せるかと思って、あえて描いていませんでした。

――「KH3D」でリクの髪を切ったのは誰ですか?

これは「KH2」で、皆さんから「リクの髪を切れ」と言われたからです。皆さんの想いが切りました。何があったかと言われたら、皆さんの想いが届いたということですね。

揺るがない部分もありますが、どうしようかなと悩んでいる部分は皆さんの想いによるところもありますね。ロクサスとシオンの復活はギリギリまで悩んだので、復活させないルートも考えていましたが、あまりにも皆さんの想いが強いので復活ルートになりました。

――マスター・オブ・マスターが姿を消そうとした「※」の世界の「※」は伏字ですか?

伏字です。台本にはちゃんと書いてあります。いずれ分かりますが、今は伏せています。察しのいい方は分かると思います。

――「KHUχ」でエフェメラとスクルドが2人きりになった際、データ世界から脱出したにも関わらず空にノイズが走っていたのは何故ですか?

データ世界から戻ってきたからで、ストーリー上の大きな意図はありません。データ世界側と現実側の世界が崩壊に向かっているというのを表現したので……エフェクトだと思ってください。

――アイザの顔の傷はいつ、誰につけられたものなのですか? それが異端の印の形なのは何故ですか?

リアとアイザに関しては、2人が助けようとしていた女の子の話もありますし……過去のストーリーがあるので描こうと思っています。今後に注目してください。

――マスター・ゼアノートはキーブレード戦争の先にあるものを見るためにテラの体を乗っ取ったとのことですが、ヤング・ゼアノートの頃からそれなりに力があったように見えます。何故、若いうちにことを起こさなかったのでしょうか?

力がなかったからです。そこまででもないんですよ。ゼアノートに関しては、やはり「ダークロード」を見ていただくのが一番いいと思います。髪型の秘密も明かされるので……。

――リクやアクアのように闇に落ちるのと、ハートレスになる(ノーバディが生まれる)のはどう違うのでしょうか?

闇に落ちるのと、心が抜けてしまうのは違う現象です。心が闇に落ちても心は持ったままで、ハートレスになってしまうのは心が体から抜けてしまうので。

――マレフィセントが黒い箱の中身を予知書だと思っている理由について「KHUχ」で明かされる予定だと語られていましたが、今後明かされる予定はありますか?

闇とマレフィセントのシーンとか、明確には明かしてはいませんが「そうではないか?」と思える描写はあったと思います。分かりにくかったとするなら、今後マレフィセント側のほうで何故そう思ったのかとどこかで言わせたほうがいいのかなと思います。

――「KH3」でゼムナスがリアのキーブレードを砕き、キーブレードを失ったと言っていましたが、その後もキーブレードを使っていたように見えます。

このツッコミは多かったです。失ったというのは、完全に失ってしまったという意味ではなく、その場で破壊されて消滅したということです。仮にあの場ですぐアクセルが出してもまた壊すぞ、というメッセージ的な。持っていても使えないという意味合いですね。ゼムナスにそんな能力はありませんから。

ボイスキャスト&音響監督がシリーズ初期を振り返る

ここからは内田さんに加えてソラ役・入野自由さんと、シリーズで20年以上セリフ収録時の演出を手掛けてきた音響監督の清水洋史さんが思い出を振り返っていく。KHシリーズといえばさまざまなディズニー作品を巡るため、1作目は120人以上が参加したと清水さん。入野さんはオーディションについて何も覚えてないがそれもソラっぽいと笑い、内田さんはデスティニーアイランドのシーンについて当時住んでいた近くの海の情景を思い浮かべながらセリフを話し、海が大好きなのでテンションが上がったのが思い出深いそうだ。清水さんは声だけでなく、人生のどの段階にいるのかも含めて第一印象からソラとカイリそのままに感じたと話す。

リクという役にとても強い気持ちを持って挑んだという宮野真守さんも、ビデオコメントで会場のファンへ挨拶。自分の人生を作ってくれた作品だと話し、入野さんや内田さんへの特別な想いも真摯に語ってくれた。ファンから寄せられたセリフ「もう終わりか?だらしないな」や「ソラの友達でいられる」にまつわる心の内についても触れて、今後またリクを操作できるようなタイトルが出てきたら楽しいとシリーズの今後へ期待を膨らませてくれた。映像の中ではアルティマニア(攻略本)に収録された初々しい写真も映し出され、入野さんたちが格好へツッコミしつつ「季節感がバラバラ」と笑い合う場面も。

ソラ、カイリ、王様、ドナルド、グーフィー、ロクサス、アクセル、シオンらの印象深いセリフも紹介。清水さんは当初ソラたちKHのキャラクターとディズニーのキャラクターという、異なるカルチャー同士の掛け合いをどうしたらいいのか衝撃を受けたようだ。ロクサス/ヴェントゥスを演じた内山昂輝さんと入野さんから感じた共通点を挙げつつ、とくにアクセルの「おまえらが何度逃げようが 俺が何度だって連れて帰ってやる!」は鳥肌が立つほど感動したと記憶に残っていると清水さん。藤原啓治さんはこのほかのセリフで実に70テイク重ねたこともあるそうだが、嫌な顔をひとつせず収録に臨んでくれたと明かしてくれた。

ナンバリング最新作が発表!Unreal Engine 5でよりパワフルに

最後はファン待望のコンソールゲーム機向けナンバリング最新作「KINGDOM HEARTS IV(KH4)」が発表に。ロゴも変化し、新たな物語「ロストマスター篇」が始まるという。現代の東京に似た世界「クァッドラトゥム」にはイベント会場となったヒカリエのような建物もあり、冒頭のインタビュー映像で流れた現実のヒカリエとそっくりなカットを含める演出も。このほかフードの人物や見覚えのある少女、ソラを探すドナルドとグーフィー、姿はないもののハデスと思われる声も確認できた。

ステージには改めて、会場内のメッセージに「4」を思わせる仕込みをしていた野村氏、間氏、Co.ディレクターの安江泰氏が登場。「KH4」について多くは語れないとしながらも、映像はすべてリアルタイムでムービーではないと野村氏が話す。届いた映像にあった森の部分は野村氏たちも実写と思ってしまったほどで、安江氏も大阪チームが「KH3」からさらにクオリティが上がっていると自信を覗かせる。今回の映像はUnreal Engine(UE)4を使用しているがUE5の検証も並行して進め、最終的にはUE5で出すという。UE5では、ここからさらにライティングやディティールがクオリティアップするとのこと。ちなみに「KH4」と「Missing-Link」のナレーションは声色を変えた同じ人が担当し、これまでに出ているキャラクターではあるがブレインではないという。

ソラがリアルになっていて驚いたかもしれないが、これは「あの世界だからこその表現」と野村氏。いつもの感じのソラの表現もあるということで、最後にドナルドとグーフィーが登場したそうだ。「KH4」に登場するワールドに関しても試行錯誤している最中で、次は「VERUM REX」という話もあったそうだがやはりソラが軸の「KH4」になったという。なお「E3(※2022年は中止)」などを含め、しばらく続報はないが公式の正式発表を信じて待ってほしいとのこと。

これまでKHシリーズに深く関わってきた橋本真司氏も駆けつけ、テーマソングを手掛けてきた宇多田ヒカルさんのビデオコメントやピアノアレンジされた「光」、歴代タイトルのCM映像で「KINGDOM HEARTS 20th ANNIVERSARY EVENT」は終了。「サマンサタバサプチチョイス」の発売など、20周年の展開はこれからも順次発表となっていくので楽しみに待っていよう。

※画面は開発中のものです。

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