「恋しかるべき」レビュー:エンディング後に晴れ晴れしい気持ちになる片岡とも氏が紡ぐ優しい物語約7~10時間のプレイでしっかり感動できる、初めてのノベルゲームにもオススメの作品

プレイレビュー
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オーバーラップのビジュアルノベルブランド「OVERLAP GAMES」の第1弾タイトルとして、2026年7月10日にSteamで配信開始となった「恋しかるべき」。ここでは本作の魅力を深掘りしていく。

恋しかるべき ~迷い家からの手紙~公式サイト
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「恋しかるべき」レビュー:エンディング後に晴れ晴れしい気持ちになる片岡とも氏が紡ぐ優しい物語の画像

※以降の文章ではネタバレも一部含まれているため、まっさらな状態でプレイしたい人はプレイ後に読むことをおすすめします。

ねこねこソフトが制作するビジュアルノベル

ライトノベルやコミックの出版、アニメーションの展開などで知られるオーバーラップによるビジュアルノベルブランド「OVERLAP GAMES」。その第1弾タイトルとなる「恋しかるべき」は、ねこねこソフトが開発するフルボイスのビジュアルノベルで、シナリオは「ナルキッソス」などで知られる片岡とも氏が担当している。

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公表されている総プレイ時間は、7~10時間で筆者も同等の時間でクリアすることができた。普段からアドベンチャーゲームをプレイしていてテキストを読むのが早い人であればもっと短時間でエンディングまで到達できるだろう。

総プレイ時間10時間と書くと短めに感じるかもしれないが、可処分時間の奪い合いとなっている現代において、週末のまとまった時間などを使えば一気にクリアできるボリュームは大変ありがたいのではないだろうか。物語の起承転結もしっかり描かれており、描写不足のようなものを感じることは無く、素晴らしい物語体験をしたという実感を得られた。

読みにくいような難しい単語も使われていないので、「これはどういう意味なんだろう?」と調べたりすることなくスラスラと物語を読むことができる。一文が短めで句読点も多く、キャラクターの会話が中心の構成も「文章を読む」という行為のハードルを下げており、普段こういったノベル中心のゲームを遊んでいない人にも、オススメできるような内容になっている。

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また、本作はチャプターごとに物語が分かれているのが特徴で、それぞれのチャプターは15~30分ぐらいで読み終わるボリュームになっている。そのため、集中力を途切れさせることなく各チャプターを最後まで読むことができる。引きもあり、続きが気になる作りで、すぐに次のチャプターに進みたくなる仕掛けもうまい。

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ストーリーは、山に入ると呪われるという伝承が存在する田舎で過ごしていた主人公の松田尚冬が、古びた社でヒロインの煤(スス)と出会うというものになっている。

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ゲームクリア後に読める「Staff Room」の片岡とも氏のコメントでは、本作が過去に片岡氏が手がけた設定や世界観に共通点が多かったことが語られている。「忘れる」という設定が「サナララ」だったり、現代とは違う場所を舞台にしているという点で「雨のマージナル」や「ポラリス」だったり、隔離した空間が「終わる世界とバースデイ」だったりと共通していることが明かされている。「恋しかるべき」自体は独立した作品なので、これらの作品をプレイする必要はないものの、片岡氏の過去作を知っている人であれば、より楽しめるはずだ。

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前述のとおり、ストーリーは尚冬が古びた社でススと出会うところからはじまり、彼女から「5年ぶり」と言われることになる。社は山の奥にある大きな湖の先にあるが、その湖は数年に一度干上がり、道が開けるようになっている。尚冬は5年前にもここを訪れていたのだ。また、この社は「迷い家」と呼ばれており、いくつかの法則がある。そのなかには迷い家にいたときの記憶を、この迷い家から出ると失ってしまうというものがある。

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また、ススは不老不死で食事を摂る必要もないが、社を出てしまうとほかの人からは異形に見えてしまうという。これらのことから彼女は孤独な存在であることが分かる。

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物語を進めることで、ススが事故で瀕死になったことや先代からこの社の役目を受け継いだことなども語られていき、より感情移入することに。ススの境遇を考えてツラくなってしまうこともあるが、片岡氏の紡ぐ優しい物語は本作にも健在。心が温まるシーンが多く、ラストでは晴れ晴れしい気持ちになっていたので、プレイ後の満足感は高かった。

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少しネタバレになるかもしれないが、物語を進めていくなかでススと出会った人物が、記憶を失ってしまうのは社から離れることが理由ではなく、ススから離れることが原因であることが明らかになる。この「ススから離れなければ記憶は失わない」という事実が明らかになったあとは物語の舞台も広がっていく。

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時間や場所、ときにはキャラクターの視点がチャプターによって変わっていくため、飽きずにプレイできるようになっている。特に時間については、年齢を重ねていく主人公と不老不死で姿の変わらないススがエモーショナルで、ふたりの異なる時間を端的に表わしている。

本作には尚冬とススのほか、尚冬の妹である松田理沙も重要なキャラクターとして登場する。理沙は兄のことが大好きでそれは年齢を重ねても変わらない。普遍的な兄妹愛があり、ふたりの関係に癒やされること間違いなし。

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理沙は時代が変わってもいつまでもかわいらしい年下の妹であるが、年齢を重ねていく中で頼りになっていく部分もある。こういった人間的な成長も本作の物語のなかの時間経過を感じさせる作りになっている。また、理沙は暗くなってしまうかもしれないストーリーを明るく照らしてくれる役目も担っており、とても貴重だ。

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尚冬と理沙、ススの3人による交流は会話のテンポもよく、テキストを追っていて楽しかった。また、そんな3人のやり取りがおもしろいだけに距離が離れてしまうとススの記憶を失ってしまうという設定が切ない。彼女をどうにか自由にする方法はないのかと考えてしまうし、物語の結末が気になって先に進めたくなる。

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ゲームをプレイする際の楽しみを奪ってしまう可能性もあるので具体的な紹介はしないが、迷い家の主で社を管理する家系に生まれた烏丸和歌子もとてもいいキャラクターだった。理沙と同様に本作のコメディ部分を担当してくれるキャラクターで、プレイしているうちに好きになっているはずだ。

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ススや理沙がかわいいのはもちろん、物語の伏線回収もうまく、満足度のあるノベルゲームだった。値段もお手頃なのでぜひチェックしてみて欲しい。

1981年生まれ。東京都出身。2000年よりゲーム雑誌のアルバイトを経て、フリーライターとしての活動を開始する。アドベンチャーゲームやロールプレイングゲームなどのジャンルを好み、オールタイムベストは「東京魔人學園剣風帖」。ほかに思い入れのあるゲームは「かまいたちの夜」「月姫」「CROSS†CHANNEL」「ひぐらしのなく頃に」「ダンガンロンパ」「カオスチャイルド」「ライフ イズ ストレンジ」「レイジングループ」など。 X(旧Twitter):https://twitter.com/kawapi YouTube:https://www.youtube.com/channel/UCmN-juj7b73DGuIkRRh6U6A Twitch:https://www.twitch.tv/kawapi

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