アニメ評論家・藤津亮太氏が話題のアニメを紹介する「ゲームとアニメの≒(ニアリーイコール)」。第37回は2022年6月18日より配信中のNetflixシリーズ アニメ「スプリガン」を取り上げます。

目次
  1. こんなゲームファンにオススメ!
  2. 第37回「スプリガン」
  3. 藤津亮太(ふじつ・りょうた)

ゲームとアニメは本来異なる媒体ですが(≠)、その中での共通項(≒)となる部分にフォーカスしたいという思いから立ち上げた本連載。毎回話題のアニメをアニメ評論家の藤津亮太氏の切り口で紹介しつつ、Gamer編集部からはそのアニメがどういったゲームファンにオススメできるかをピックアップしていきます。

今回は2022年6月18日より配信中のNetflixシリーズ アニメ「スプリガン」を取り上げます。連載開始から30年の時を超え、david productionにより全6話、各話約45分構成で新たにアニメ制作されています。

こんなゲームファンにオススメ!

  • 「METAL GEAR SOLID」などに代表されるステルスアクションゲーム
  • 「アンチャーテッド」シリーズなどに代表される冒険活劇を繰り広げるアクションアドベンチャー

第37回「スプリガン」

2006年に「B級アニメのパラドックス」という原稿を書いて以来、いわゆる“肩のこらないB級アクション”がアニメでいかに成立しうるか、ということをずっと考えている。

この「B級アニメのパラドックス」というのは、実写映画であればだ「ジャンル映画の佳作」と評されるようなアクション作品をアニメで作ろうとすると、予算とそれに紐づいた制作上の諸々について、B級では済むことがなく、制作的には「A級のリソースが必要になる」という趣旨の原稿だ。そしてこの16年の間、いくつかの作品がこのパラドックスを越えて「B級アクション」を成立させたが、やはり数としてはまだまだ少数派。そこにこの6月からNetflixで始まった「スプリガン」が加わった。

「スプリガン」は間違いなく現時点におけるアニメ「B級アクション」の代表作品だ。そして、過去の“アニメによるB級アクション”と比べて、以外に明朗な作品であることもその魅力になっている。

「スプリガン」は、超古代文明の遺跡を封印するための組織「アーカム」で、高校生エージェントとして働く御神苗優の活躍を描く作品だ。原作のたかしげ宙と作画の皆川亮二が平成初期に連載していた漫画のアニメ化だ。

各エピソードごとにさまざまなオーパーツが登場し、主人公の御神苗優は、それを狙う各国の組織などと争いながら、世界を危機から救うのである。本作のマクガフィンがオーパーツということからもわかる通り、いわゆる“中2”的なはったりは本作の魅力の一つである。例えば作中にサイボーグ化したアメリカ軍の特殊部隊が登場するが、その名前が機械化小隊(マシンナーズ・プラトゥーン)。このネーミングがイケてると思えれば、本作を楽しめるのは間違いない。

こうした中2的ケレン味に対し、アクションはもう少しだけ地に足がついている。もちろん「生身の人間の格闘」と比べたら十分ケレン味があるが、そもそもアニメは、実銃を撃ちまくる、すきを狙って肉弾戦をする、といったアクションをあまり丁寧に追いかけて描写することは少ない。それだけに3DCGを駆使して、そこをしっかりと見せ場に持ってきた本作は、ほかにはなかなかない魅力をもった作品ととなっているのだ。

しかも本作は各話が40分強という、実質2話分の長さがある。だからアクションもたっぷり見ることができる。例えば、第2話「ノアの箱舟」は、ノアの箱舟の発見というネタの大きさ、機械化小隊とのアクション、獣人化するジャン(以前の劇場版ではオミットされていた設定)の登場など、見どころが多く、「スプリガン」のおもしろさを堪能できる。

そしてなにより本作が「肩のこらないB級アクション」として優れているのは、「死ぬかと思った」というような激闘を経て、御神苗優がごく普通の高校生活へと戻っているという部分を(いくら漫画っぽい設定であっても)忘れずにきっちり描いているところなのだ。

アニメ「スプリガン」公式サイト
https://spriggan-anime.jp/

藤津亮太(ふじつ・りょうた)

アニメ評論家。1968年、静岡県生まれ。雑誌・WEB・BDブックレットなど各種媒体で執筆するほか、朝日カルチャーセンター、SBS学苑で講座を担当する。著書に『「アニメ評論家」宣言』(扶桑社)、『チャンネルはいつもアニメ―セロ年代アニメ時評―』(NTT出版)、『声優語~アニメに命を吹き込むプロフェッショナル~』(一迅社)、『プロフェッショナル13人が語るわたしの声優道』(河出書房新社)などがある。毎月第一金曜日には「アニメの門チャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/animenomon)でアニメの話題を配信中。

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