2022年9月15日~18日にかけて開催中の東京ゲームショウ2022。ハピネットブースで試遊できる2022年内発売予定のNintendo Switch用アドベンチャーゲーム「鳥類弁護士の事件簿」のプレイレポートをお届けする。
「鳥類弁護士の事件簿」の舞台は1848年のフランス。弁護士で鳥のジェイジェイ・ファルコンとその助手・スパロウソンが、さまざまな難事件に挑む。鳥をはじめとした動物たちのグラフィックは19世紀の風刺画家であるJ・J・グランヴィルの絵をもとにしており、作中曲にはカミーユ・サン=サーンスが作曲したクラシック音楽が用いられている。
本作は2020年に海外でリリースされた「Aviary Attorney: Definitive Edition」の日本語ローカライズ版。さらにその元となった「Aviary Attorney」の発売は2015年なので、日本中の鳥好きゲーマーに7年間ものあいだ日本語で遊べる日を待望視されてきたタイトルと言えるだろう。
鳥好きゲーマーからの多大な期待を象徴するように、ハピネットブースの「鳥類弁護士の事件簿」の試遊機は、かなりの頻度で30分以上の待ち時間が生じる盛況ぶり。大作ゲームならともかく、本作のような小規模のインディーゲームではなかなか珍しいことだ。試遊時間が30分と長めに設定されており、ひとりひとりがたっぷりプレイできたのも待ち時間が生じた要因のひとつではあるが、これは同時に途中で飽きてプレイするのをやめた人が、ほとんどいなかったことも意味しているだろう。
筆者も30分ほどの待ち時間を経て本作をプレイしたのだが、順番待ちに並んだ甲斐があったと言えるおもしろさだった。先に結論じみたことを言ってしまうが、「このビジュアルとコンセプトに惹かれた人なら絶対にプレイすべき」と言い切ってよいと思う。
表情の読めない鳥や動物たちが人間臭いやりとりを繰り広げる様はシュールで、秀逸なローカライズがそのおもしろさを高めてくれている。一度プレイしてしまえば、多くの人がこのトリたちのトリコになってしまうはずだ。
弁護士と助手のやりとりが楽しく、細部の小ネタも秀逸
ゲームはカエルのギャエル氏が殺されたところから幕を開けた。殺獣の嫌疑が掛けられたのは、ギャエル氏と共に上流階級のパーティに出席していた猫のフェリシエンヌ・モフロワ嬢。ファルコンは3日後に迫る裁判で彼女を弁護するという依頼を受け、事件の調査に乗り出す。
まずはフェリシエンヌ嬢への聞き取りを行い、ここで得た情報を頼りに事件の参考人にも話を聞きに行くファルコン。マップ画面から参考人たちがいるであろう場所に移動できる。選択肢の右に時計のマークが付いている移動先に行くと、1日が経過する。参考人への聞き込みや、事件現場に事件の痕跡が残されていないか調べるなどの方法を使って、裁判の日までに、フェリシエンヌ嬢の無実を証明するための証拠を集めよう。
本作はとにかく会話劇がおもしろい。助手のスパロウソンは事件解決への熱意だけは伝わってくるが、ズレたことばかりを言い、ファルコンは頻繁にこれをたしなめる。
かと思えばファルコンのほうも根っからの常識人かといえばそうではなく、とくにゲーム中にときおり現れる選択肢次第では、人の家への不法侵入を提案する、証拠になりそうなものを平気で懐に入れる(「盗む」のではなく「拝借」するだけだと言い張る)など、かなりエキセントリックな行動を何食わぬ顔で実行する。自分が選んだ選択肢とはいえ、「おいおい」と突っ込みたくもなる。
調査中もときおり“鳥ジョーク”が差し挟まれたりと、終始トボけた調子でゲームが進む雰囲気も非常に楽しい。こうしたやりとりが違和感なく頭に入ってくるのも、ローカライズの秀逸さの賜物だろう。
テキストウィンドウの右上にある3つのアイコンはそれぞれ“どうぶつ顔図鑑”、“ファルコンの財布”、“証拠品箱”。この中の“どうぶつ顔図鑑”は「参考人の顔が覚えられない」とスパロウソンが書き記し始めるのだが、登場人物たちの説明書きを読んでいくと、スパロウソン自身のところには「いつも勇敢で紳士的」と書かれている。これまでのやりとりからはとてもそうは見えないのだが、スパロウソンがそう思うなら、スパロウソンの中でだけはそうなのだろう。
このように会話劇のみならず、細部に至るまでクスリと笑ってしまうような小ネタが忍ばせてあるあたりにも、嬉しくなってしまう。
今回の試遊では、手際よく進めていけば調査パート後の裁判パートに突入し、集めた証拠を使ってモフロワ嬢の無実を証明できたようだが、じっくりプレイしていた筆者は残念ながらそこまでたどり着けずに時間切れとなってしまった。裁判パートは製品版で楽しもうと思う。
ここまで読んでくれた方ならピンと来たかもしれないが、本作は「逆転裁判」シリーズにインスパイアされたゲームだ。弁護士自身が様々な場所を駆け回って事件の真相を暴くための証拠品を集め、裁判パートではこの証拠品が活きるというゲームの進行はほぼインスパイア元を踏襲。しっかりものに見えてどこか抜けている弁護士と、とぼけた発言が憎めない助手というコンビも、成歩堂龍一と綾里真宵の掛け合いを彷彿とさせる。
一方で、調査パートは本家「逆転裁判」よりも短めのボリュームでまとめられているなど、コンパクトさの中に魅力がギュッと凝縮されたインディーゲームらしいテンポ感は、本作ならではと言えるだろう。
今回初めて「鳥類弁護士の事件簿」を知ったという方も、本作のことが気になってきたのではないかと思う。発売日の発表などがこれから先あるはずなので、続報を見かけたときは、トリあえずチェックしてみてはいかがだろう?