gumiの開発スタジオStudio FgGは、2022年11月5日に東京江東区のTFTホールで「ファントム オブ キル(ファンキル)」と「誰ガ為のアルケミスト(タガタメ)」、「シノビナイトメア(シノビナ)」の3タイトルを集結した初のイベント「FgG感謝祭2022~For Your Future~」を開催した。
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今回のイベントでは、この3タイトルのこれまでの軌跡をたどる展示コーナーが用意されていたほか、「FgG新作2タイトル合同発表会」の公開生放送も実施された。本稿ではその模様をレポートする。
長い歴史を持つタイトルが集まったということもあり、とにかく圧巻だったのが展示エリアだ。その数と内容の濃さもすごいのだが、パッと見た感じの印象は、もはやアートの展示会のようでもあった。久しぶりのオフラインイベント問うこともありかなりのファンが会場内にはいたのだが、そこから聞こえてくる会話は「久しぶりに会うことができてよかった」というようなものだった。
展示されている内容としては、ストーリーボードや衣装、キャラクターボードなどだ。ファンが書き込めるメッセージボードなども用意されており、そこに好きな思いやイラストなどもギッシリと書き込まれていた。
3つに分岐する壮大なボリュームをエンディングまで作り込んだ最新作「アスタータタリクス」を発表
朝10時から開場され、先ほどご紹介した展示や「FgG開発陣スペシャルオフレコ座談会」、「ファンキル・タガタメ Presents 今泉Pと王子的3分間」などのステージイベントも行われていたが、今回のメインともいえるのが17時から実施された「FgG新作2タイトル合同発表会」である。ひとつは、Studio FgGのオリジナル新作タイトルと、もうひとつは今泉潤氏がプロデュースするオリジナルIPを活用した新作タイトルだ。
初公開となるPVが流されたあと、発表されたのが「アスタータタリクス」というタイトルだ。
さらに、本作のアンパサダーに就任したVtuberの白神フブキさんや声優の下田健太郎さん、小宮左智さん、山田美鈴さん、堂島颯人さん、お笑い芸人のLLR福田さん、シンガリ西島さん、ものいい横山さんが登壇。一気に開場の雰囲気が賑やかなになった。学園風のノリで始まったこのコーナー。このメンツに加えて講師のアスタリ先生としてFgGアートディレクターの木村将人氏が登壇。本作の詳細について紹介が行われていった。
さらにスペシャルゲストの特別講師として登壇したのが、広井王子氏だ。急に呼ばれたので「アウェイ感がすごい」と戸惑っていた広井王子氏。開場内からは、大きな拍手が沸き起こっていた。
最初に紹介されたのが、3つあるという「アスタータタリクス」のコンセプトだ。ひとつ目のコンセプトは「分岐」である。人生にはいろいろな選択がある。それをゲームで体験させたかったと今泉氏はいう。ゲームは3つのルートが用意されており、恋人か友達かかけがえのない妹のいずれかを武器にしなければいないのだ。それの選択を、学園生活を通して仲良くなった後に主人公であるプレイヤーは迫られることになるのである。
ふたつ目に発表されたコンセプトは「シナリオ」だ。スマホゲーム史上最大級のボリュームになっており、ドラマティックなストーリーが展開される。物語は3つのいずれかに分岐するのだが、すべて異なる物語が楽しめるようになっている。
これまで「ファンキル」が8年、「タガタメ」が約7年という歴史を持っているが、この「アスタータタリクス」は最初からこれらと同等のボリュームを持っている。さらにそれをほぼフルボイスで実現しているのだ。物語が分岐するということで、エンディングも8パターンほど用意されている。
3つ目のコンセプトは「完結」だ。本作では、リリース時からすべてのルートのエンディングまで実装されている。シナリオをすべて体感した後で、ゲーム内に流れるエンドロールのカタルシスが思い出になると思っていることから、スマホゲームであるにも関わらずシナリオを分岐させて最後まで作り込んでいるのである。
声優陣が登壇しているということで、キャラクターの紹介も行われた。プレイヤーが演じることになる「ノワール」は真面目で正義感の強い少年だ。傭兵としてログレス王国軍と戦っていたのだが、とある事件をきっかけにキャメロット騎士学術院に入学することになる。
ノワールの声を演じた下田健太郎さんが一番好きだと感じた部分は、決断力があるところだという。過酷な運命を目の前にして、決断が早いだけではなくこれまで生きてきた中で培ってきた信念を信じて、選択していく芯の強さあるのだ。
「ランスロット」は、最強騎士の異名を持つ円卓の騎士だ。剣の腕前は他の追随を許さないレベルで、いかなる状況においても冷静沈着である。声を演じた堂島颯人さんは、シナリオが分岐する中で立場が変わっていくものの、どのシナリオでも芯がブレないキャラクターだという。
「ギネヴィア」は、現ログレス王国国王アーサーの許嫁だ。わがままで派手好きな性格で、場所や相手を問わずに傍若無人に振る舞う。声を演じた小宮左智さんは、明るくて元気でわがままなキャラクターだが、自身もわがままなので、そこに共感するところがあったという。
「ディナタン」は、主人公・ノワールの妹だ。家事全般が得意で世話焼きな性格である。声を演じた山田美鈴さんは、このキャラクターに対してふたついいところがあったという。ひとつは優等生で、まっすぐで素直なところだ。それをこのままでいいのかなと思っているような、年齢相応なところがかわいいという。もうひとつは、何よりも愛が深く兄のワールへの愛や自分のまわりのあたたかい人たちへの愛が深いとこだそうだ。
元々複雑な要素が絡み合ったストーリーだが、ゲームに登場する用語も独特だ。本作では「バルバロイ」という魔物が異世界より現れて、人々の記憶を喰らう。こちらはキラーズかマスターの攻撃でしか倒すことができない。キラーズは場ロバロイを討つ力を持った騎士のことを指す。「アロンダイト」や「エクスカリバー」といった、伝説上の武器の力を宿している。マスターとは、キラーズと命を共有して、彼らの戦闘録を増幅する能力を持った者たちのことを指している。その能力のことを「バイブス」と呼んでいる。
マスターとキラーズの関係において、もうひとつ欠かせないキーワードが「ゲシュタルト・シフト」だ。こちらは存在を移動させるようなイメージで、主人公のノワールがキラーズの誰かと契約することをこう呼んでいる。その契約を結んだ瞬間、キラーズは武器になってしまうのだ。本作の醍醐味でもあるが、たとえばゲシュタルト・シフトをしたあとはアロンダイトという武器しか史実には残らなくなってしまう。
元のキャラクターは消失して人々の記憶からも消えてしまうが、それを覚えているのはマスターである主人公ただひとりということになるのだ。本作で行われる選択は、このようにかなり重いものとなっているのである。
このゲシュタルト・シフトを果たしたキラーズが戦闘モードに姿を変えることを「因枢分解(ファクタライズ)」と呼ぶ。簡単にいうと、変身ヒーロー的なニュアンスが含まれているということだ。
続いて、ゲーム内容の紹介が行われた。ゲームは学校が舞台だが、よくあるスマホゲームとは異なりプレイヤー自身がキャラクターを操作して自由に学園内を移動することができる。キャラクター同士の会話シーンもかなり作り込まれており、まるでアニメを見ているかのようだ。
バトルはいつものシミュレーションRPGのシステムが踏襲されている。「ファンキル」では3Dにしたところ、重くて敵が20体ぐらいしか配置することができなかったが、ドット絵を採用することで軽くなっている。また、等身のキャラクターが敵を倒すようなシーンも出てくるなど、なかなか盛り上がりそうな感じだ。
気になる「アスタータタリクス」のリリース時期は2023年だ。ティザーサイドはすでにオープンしており、そちらや公式ツイッターなどで随時情報が更新されていく予定である。
「シノビナイトメア」の前日譚的な続編「サクライグノラムス」を発表!
休憩を挟んで再開したステージで発表されたのが、2本目の新作タイトルだ。最初に惜しくも2018年にサービス終了してしまった「シノビナ」のエンディングが流された。その最後に書かれていたメッセージが「この物語の終わりが何かの始まりになりますように」という、今泉氏の想いであった。そして、当時からいっていたのが「シノビナイトメアを諦めません!」という言葉だ。
そうしたことを踏まえて発表されたのが、新たなタイトルの「サクライグノラムス」である。このイグノラムスはラテン語で、「我々は知らない。知ることはないだろう」という意味だ。前作の主人公はサクラだったが、まだサクラは知ることはないという意味で「シノビナ」の前日譚的な物語となっている。
ここで4人のクノイチを演じる声優の高橋花林さんと加藤里保菜さん、石飛恵里花さん、鷲見友美ジェナさんが登壇した。前作でもキャラクターに花の名前が付けられているが、その要素は今回も引き継がれている。
キャラクターの紹介が終わった後、ふたたび登壇したのが広井王子氏だ。本作では世界観の設定とシナリオ協力で参加しているということで、むしろこちらがメインだった広井氏。世界観の設定はできていたものの、その整合性を取るために雇われたのだという。
本作のキャッチコピーは「桜(愛)を知らない私たちが革命を起こす」だ。この世界は1本だけ咲かない桜がある。壮絶な生い立ちでクノイチたちが出てくることになるのだが、桜をまだまだ知らないという物語にしようと思ったのだが、今泉氏は偶然にも広井氏が「サクラ大戦」を作っていたことに後から気付いたという。一方の広井氏は、それを知っていてオファーが来たのかと思っていたそうだ。
ちなみに今泉氏によると、「シノビナ」で失敗したことのひとつが、日本人のキャラクターしか出すことができなかったところだという。しかし、今回は世界のサムライが登場する。また、前作で登場したサムライたちも本作に登場する。
さらに、本作では前作の「シノビナ」をゲームの中で追体験できるコンテンツも準備中である。すでに遊べなくなってしまった作品だが、こうした形で復活してくれるのはファンとしてもありがたいところだ。
ゲームシステムは、SDのキャラクターが動き回るような、かわいらしいものにし上げられている。戦闘では、自分だけの編成を組んで戦っていくことになる。こちらはドット絵ではなく3Dで表現されており、「アスタータタリクス」とはまたひと味違った魅力がある。
今作のテーマソングも発表された。前作では久石譲氏が音楽を担当したが、今回はオープニングテーマを松隈ケンタ氏、エンディングテーマをjon-YAKITORY氏がそれぞれ作曲を担当している。ここで松隈ケンタ氏がスペシャルゲストとして登壇した。
「サクライグノラムス」のオープニングテーマは「♪終わらない夜に」だ。作曲は松隈氏だが、作曲は広井氏が担当している。今回はアイドルではなく声優が歌うということもあり、どれぐらいキャラクターに寄せるが楽曲に寄せるかというのがテーマだったという。
最初はキャラクターに寄せて歌っていたが、いったんそちらを置いておいて普通に歌ってもらったところ、そちらがかなり良かった。そこで、キャラクターとはずれてきているもののカッコイイということから、仕上げられている。
ちなみに、松隈氏は広井氏が作詞を担当することを、ミーティングのギリギリに聞かされて驚いたという。一方、広井氏は隈ケンタさんに決まったと今泉氏から聞かされて、「良かったじゃーん、BiSHじゃーん」と返したところ、作詞をお願いされて「俺!?」となったそうだ。それも、締め切りの3日程前の出来事であった。
ゲームの主題歌ということで、「愛のシノビが時を渡って」といった雰囲気の歌詞になることを思い浮かべたそうだが、実際に渡された曲は思いっきりロックだった。そこで、ゲームに寄らない歌詞にしたのだという。
気になる「サクライグノラムス」のリリース時期だが、こちらの2023年の予定である。
広井王子氏が今泉氏を天才と太鼓判!?
話が前後してしまうが、17時から行われた「FgG新作2タイトル合同発表会」の前に、今泉潤氏と広井王子氏へのメディア向け合同取材の場が設けられた。当然のことながらまだこの段階では新作タイトルについてはあまり情報がなかったこともあり話を聞いていないが、今回のオフラインイベントへの想いなどが語られた。最後にこちらの模様をご紹介しておこう。
――久しぶりのオフラインイベントの実施になりましたが、その想いや開催の経緯をお聞かせください。
今泉氏:いつもは周年でやっていますが、僕らは運営型のゲームをやっているのでものよりも思い出だと思っています。デジタルのゲームなので、ゲームが終わってしまうとそこでなくなってしまいます。リアルイベントは、好きなゲームを遊んでいる人がみんな集まっているので、特殊な空間です。それを大事にしてきました。
思い出に残るのはリアルなものなので、グッズなども上げていますが、それを楽しんでいた人たちがコロナ渦になったときに難しい状況になりました。まだコロナが落ち着いている状況ではありませんが、徐々に社会が復活してきているときに、せっかくなら派手に全ゲームと新作の発表を、最初に僕らのゲームを愛してくれていた人たちに直接伝えることが一番誠意のあることだと思い、こういう場を作りました。
――イベントに「For Your Future」と付けられていますが、こちらはどんな意味が込められているのでしょうか?
今泉氏:これは僕が付けたのではなく、すごくダサいと思っていて(笑)。「For Your Futureってなんやねん!」って。ビジネスっぽくいうと、過去に僕らが作ってきたものから未来。過去からしか未来は逆算出来ないと思うので、これまでどんなことやってきたっけと、僕ら自身も忘れていることがあります。皆さんも、途中で離れた時期もあるだろうし、我々FgGが作ってきたものをここに一挙に発表して、未来に繋がっているものにしたいと思いました。
それこそ、過去から引きずって作っている新作2タイトルがありますので、過去があっての今なんだということが、見えるといいなと思って名付けました。
――観客が入って楽しんでくれている様子や、同窓会のように楽しんでいる様子が会場内で見られましたが、その感想をお聞かせください。
広井氏:いや、やっと。僕はずっとお客さんとイベントをやってきたから、ずっとなくてさみしかったよね。お客さんの顔を見ながら発表するのは一番いいと思うので、今日は楽しいよね。
――本当なら、お客さんの輪の中に入って、一緒に話したいぐらいの感覚ですか?
広井氏:そうそうそう。もっと声出して欲しい。来年には声が出てくるだろうね。マスク越しだからいいよ、みたいなことに早くなればいいのにね。
今泉氏:僕は運用型のゲームをやっているので、SNSのフォロワーは1万4000人弱ぐらいいますが、あまりプライベートなことはいえません。「京都ナウ」とか(笑)。「京都行ってる場合じゃねーよ」といわれるし、うまいお肉の写真を撮ると、「俺たちの金で食っているのか」っていわれるんです。かといって、俳優のように「おはよう」というのも気持ち悪いとなると、ゲームの無機的な情報ぐらいしかつぶやけません。
ゲームを作っていた人の顔が見えていたのがすごく良かったと思っています。人間って直接合うと、悪いやつってあまりいないじゃないですか。でも、SNSでは何でもいえてしまいます。そういう意味でも、リアルイベントは僕的にもすごく楽しかったです。
今日も僕に「ファンなんですサインください」といわれて、「色紙持っているじゃん」となるじゃないですか。こうしたことは、久しぶりだなと思いました。そういう方もいらっしゃるんだなと思うと、頑張って作ろうという気持ちにもなります。ゲーム作りは孤独なので、生の良さや人間の温かさみたいなものに触れられるのは、こういう場があるといいですね。
――こうしたユーザーとのコミュニケーションが8年間続いた秘訣のひとつなのかなと思いました。
今泉氏:ネットの言葉って辛辣です。生の人間が話して返答がくるリアルタイム感があります。そのときの感情でいってくるので、以外と芯な情報が多くて。ユーザーからこの機能がみたいな話や面倒な話がいっぱいあります。それをリアルで聞くと、やっぱりそう思っているんだということを、僕ら自身は冷静に受け止めることができます。
それこそ感動した話などは、イラストレーターにはなして上げるとめちゃくちゃ喜ばれます。お土産を買ってきてくれたり、好きなキャラクターのイヤリングを作ってきましたといってもらったものを、イラストレーターにあげたりすると嬉しいじゃないですか。自分が生み出したキャラクターが、人に届いてそういう想いになっているのは、すごくいいなと。これも人と会わないと無理だと思います。そうやってモチベーションを僕ら自身も頂いて、8年間やってこれたのかなと思います。
――ちなみに、イベントの開催を11月5日にした意味はございますか?
今泉氏:10月23日が「ファンキル」の周年になっているので、10月末か11月初めの週に毎年イベントをでかくやっていました。今回は「ファンキル」だけじゃなくて、全部やっちゃおうよということで、今日にしました。
広井氏:すごいなと思うのは、パッケージゲームって2~3年ごとなんです。ということは、周年イベントができません。それが続いているゲームなので。たとえば、パッケージゲームって、ひとつおわるとスタッフが変わります。ひとつの作品が終わると、資料は全部箱に詰めてそこに行っちゃいますから、こういう風にイベントをやるのはすごく大変です。歴代の歴史をざーっと並べるのは、本当に大変。倉庫を漁らなければいけないし。ずっとやり続けているから、あるわけじゃないですか。歴史が続いていくという。それがスマートフォンゲームの特徴だと、僕は思っているんです。
パッケージゲームは終わりますから、スタッフも片付けられちゃうし資料も片付けられちゃうし(笑)。それが今日展示会を見て、いや~すごいなと思いましたね。これはパッケージゲームでは味わえない、感動です。
広井氏:「サクラ大戦」を10年間全部集めるのは大変ですからね。どこにあるんだろうってことになっちゃうと思いますよ。
今泉氏:デジタルになったっていうのもあるかもしれないですね。
広井氏:それもあるかもしれないね。
今泉氏:あ、またやってるんだと知らせるのも、生存確認じゃないですけど(笑)。安心すると思うんですよね、頑張ってますと。終わっちゃうゲームも多いので。
広井氏:そうだよね。8周年と6周年、そして新作の発表でしょ? すごいよね。スマートフォンが始まって14年しかたってないけど、その8年間を占めてるわけだからすごいよね。歴史の承認者になるよね。
――展示されているものを見ましたが、年表もギチギチに詰まっていましたね。
今泉氏:結構忘れるじゃないですか。ああいうのを見ると、すごってなりますよね(笑)。周年を迎えるたびに、今の感想はと聞かれますが、感想はなくて。いつも、わー大変だ。ダメかもしれんと思いながら毎月やっていって、ピンチになっても何回も盛り返して。振り返ったら、8年も経っているんだという感じです。
広井氏:でも、「ファンキル」、「タガタメ」、新作でしょ? それをあそこの年表見ても分かるように、ギチギチでやりきってという、エネルギーみたいなのがすごいよね。あと、若さだと思うよ。
今泉氏:でしょうね。俺でも若いと思いますもん。舞台とかもやっていたよなと。映画作って、大変ですよね。
広井氏:ものづくりの人間として生まれてきたんだと思うよ。それは向き不向きがあるので。向いているんだよ。じゃないと辛くて、ほとんど潰れる。たぶん、何回も心折れているんだと思うけど、折れ方が違うんだと思う。普通は折れると直らないんだよね。だから業界もやめちゃうし。それを全責任を負って全部やっている。そりゃすごいよ。自分も経験したから。僕は3本はできないね。2本が限界。3本やるのはさすが……天才だと思うよ。
今泉氏:(小さな声で)書いといてください。広井王子が天才だって言ってたって(笑)。
――先ほどパッケージゲームは終わりがあってスマホゲームは終わりがないというお話がありましたが、そういう意味ではワクワクが続いている感じでしょうか? それとも地獄が続いているのでしょうか?
今泉氏:地獄が続いている感じですね。新作にも関わりますが、エンドロールが流れて物語が終わってカタルシスになって、思い出になっていくと思うんです。スマホゲームってそれが難しくて。やっぱソシャゲでしょ? アプリみたいでしょ? みたいな扱いを受けていると、すごく感じています。それって、IPもののゲームが売れている中で、スマホから生まれたものはあまりありません。
デバイスは超えられませんが、世界観は時代を超えることができると思うんです。「Fate」などがそうで、あの話が好きでデバイスが乗っかったときに流行るじゃないですか。デバイスはどうなるかわからないけど、そういう物を作っていこうとしてオリジナルを作っていました。
なので、絶対に話は完結するようにしています。「シノビナ」も、1年ぐらいは赤字でしたが話はちゃんと終わらせるところまでやりきりました。だからこそ、今回の話に繋がったと思います。始めたからには終わらせるのが、人の心に残るにだ大事だと思っています。
それゆえに、今回の「アスタータタリクス」というゲームも、最初から全部エンディングを用意して、スマホゲームっぽくない感じにしています。もう、スマホゲームでしょ? って言わせたくなくて。そこを1段上げたいなと思っています。
広井氏:時代ごとに改革する人間が出てくるから。そうすると、文法が変わったり新しい考え方が出てきたりして、スマホでしょ? というのから、また変わっていきます。ファミコンから始まり、僕が「天外魔境」でゲームに声を入れてたしかに変わった。変えたときに、相当言われたんだよね。「こんなのアニメでやるべきじゃん」って。でも、今誰もそんなこといわないんだよ(笑)。
改革するときは、かなり風当たりも強いし、新しいものもできてきます。スマホになったときに、もう僕の時代じゃないと思ったのね。そういう、新しい時代を作るのは青春だから、若い世代じゃないとできないのよ。僕にとってスマホゲームは、自分がフィッティングできるものじゃないです。僕が変えられるものでもないし。
それは、変えようとしている人のそばにいれば、手伝いはできます。スマホじゃないパッケージゲームで培った、ゲームの作り方もあります。そういうところで、役に立つことがあるんじゃないかなと。それを今泉さんが見つけて、手伝ってよという話になり、今回一緒にやることになったんです。
――新作では、パッケージゲームの手法も採用されていますか?
広井氏:パッケージゲームは、エンディングまで作らなければいけないから、設定はしっかりと用意します。最近のスマホゲームは、キーワードしか置かれてなくて割と設定がふわっとしています。ひとりひとりのキャラクター設定も、この子どこで生まれたの? 両親はいるの? どんな生活をしてこの16歳のここの時点なの? ということを、ある程度書かないと進まないのが、パッケージゲームです。その手法を使おうよと言われたので、じゃやりますという感じですね。それを作っているのが楽しくて。それを便利だといってくれたので、すごく嬉しいです。
今泉氏:めっちゃ便利です(笑)。
広井氏:最高の褒め言葉だよね。
今泉氏:僕なんか「魔神英雄伝ワタル」の龍神丸が、幼稚園の時のプレゼントだったんですよ。そんな人ですから、考え深いですよね。
広井氏:歳を取ったら、若い人の便利な人になると思うよ。時代の流れって、やっぱり若い人が新しいものを作ります。そこに寄り添えるなら、そんな幸せなことはないと思います。68だから、まだ現役でやらせてもらえるのが嬉しいじゃない。便利だっていわれて(笑)。だから、すごく嬉しい。ものを作っているときは同じ目線で感じるから、そこは歳は感じないし。
今泉氏:プロデューサーもやられていたので、ここはこう思うんですよというと、ああなるほどと、プロデューサーがどこを見ていてどういうことをしたいのかわかっています。でも、プロデューサーよりは、書いてた方が見てますね(笑)。
――本日はありがとうございました!
「アスタータタリクス」公式サイト
https://at.fg-games.co.jp/
「サクライグノラムス」公式Twitter
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