MMOシミュレーションゲーム「シヴィライゼーション:覇者の君臨」をレビュー。文明を発展させていく人気ストラテジーシリーズをベースにした本作はどんな内容に仕上がったのか。その内容を紹介する。
「シヴィライゼーション:覇者の君臨」は、NDREAMが開発しネクソンからリリースされたスマートフォン向けのMMOシミュレーションゲーム。そのタイトルが示す通り、ベースになっているのは文明を発展させるターン制ストラテジーシリーズ「シヴィライゼーション」。「あと1ターン、あと1ターン…」とやめ時を失ってしまう中毒性で有名な人気シリーズだ。それだけに、本作がどのような作品に仕上がっているのか気になる人も少なくないだろう。そこで、本記事で詳しく紹介したい。
文明を発展させ時代を進めていくMMOシミュレーションゲーム
MMOシミュレーションゲームとして作られた本作の目的も、自分の文明を発展させていくこと。プレイヤーはインド、エジプト、ロシア、フランス、ギリシャ、イギリス、日本、ローマ、中国、ドイツといった国の中から自分の担当国を選択し、プレイに挑む。担当国によってパラメーターの上昇効果が異なるほか、指導者も変化する。
ちなみに筆者は日本をチョイス。日本は「文化力上限の上昇10~35」、「地上軍のHP上昇0.5%~3%」という効果を持っている。指導者は戦国時代の勇、織田信長だ。
肝心のゲーム内容だが、本作はあくまでMMOシミュレーションゲームとして作られている。先に触れたとおり、「シヴィライゼーション」といえばターン制ストラテジー。しかし本作はMMOシミュレーションゲームなので、ターン制ではなくリアルタイム制となっている。
プレイヤーの行うことのメインは、自国への施設建設とレベルアップだ。資源を消費して農場や青銅精錬所などといった施設を自国内に建設、レベルアップすることで資源の獲得量を増やしていく。建設やレベルアップには施設とレベルに応じた時間がリアルタイムで発生。なお施設は自由に移動できるので、自分好みの国を箱庭的に作ることができる。
資源を獲得する以外に、軍備も重要だ。兵舎を作ってレベルアップ。兵士を訓練し、軍備を増強していく。本作はMMOシミュレーションゲームなので、ワールドマップが存在。もちろん、ワールドマップ上には他プレイヤーの国があり、場合によっては攻められることもある。滅ぼされないためには当然、軍備を整えなければならない。このあたりのプレイ感は、一般的なMMOシミュレーションゲームと同様といっていいだろう。
一方、本作ならではの要素といえるのが文明にちなんだ要素。まず、「シヴィライゼーション」でおなじみ周囲の探索要素が本作にも存在している。ちなみにここでいう「周囲」とはワールドマップではなく、国内マップのこと。国内マップは国の周囲を雲が覆うという構造になっており、「偵察」によって雲が晴れマップが拡大していく。
雲が晴れた場所にはNPCの敵が存在することもあれば、探索ポイントや発掘ポイントが存在することもある。敵がいたなら戦闘が発生。本作における戦闘はオート処理となっており、プレイヤーは見ているだけでOKだ。
探索ポイントには、偉人ユニットを派遣することでアイテムの獲得ができる。RPGにおけるダンジョン的な要素だ。プレイヤーは偉人ユニットにどのルートを進ませるか選択。選んだルートによって戦闘などのイベントが発生する。その結果としてアイテムが入手できるという仕組みだ。
この中で、本作ならではと感じたのがの発掘ポイント。発掘ポイントでは文化遺産が獲得できる。発掘は3マッチパズルタイプのミニゲームになっており、指定されたパネルをマッチングすることで獲得できる文化遺産のレベルがアップしていくという仕組み。文化遺産は獲得することで博物館にコレクション可能だ。
また博物館では、偉人ユニットによって文化遺産となる「傑作」を製作することも可能だ。本作で偉人ユニットとして登場するのは、一般的なMMOシミュレーションゲームでおなじみの軍事系キャラクターだけではない。モーツァルトのような芸術畑のキャラクターも登場する。こうしたキャラクターは、「傑作」を生みだすことで文明を発展させてくれるわけだ。
なお、施設の建設・レベルアップや敵NPCの打破、文化遺産の獲得といったものは「時代」を進めるための条件にもなっている。「時代」というのは文字通り、「古代」や「中世」といった時代のこと。「古代」から「古典時代」へ、「古典時代」から「中世」へ…と時代が進むことで新たな施設や機能がアンロックされていくという趣向だ。ちなみに、ワールドマップがアンロックされるのは「中世」となっているため、MMO要素が解放されるまでは結構時間がかかる。このため序盤は自分の文明を育成していくソロの楽しさをじっくり体験可能だ。
原作とは異なるものの独特な魅力を持った一作
筆者は本作をプレイし、率直に楽しいと感じた。ただその感想には、「MMOシミュレーションゲームとして」という前提がつく。最初に書いた通り本作は「あくまでMMOシミュレーションゲーム」なのだ。つまり、原作である「シヴィライゼーション」シリーズの延長線上にある作品ではない。

どうしても原作である「シヴィライゼーション」シリーズのプレイ経験があると、「あと1ターン、あと1ターン…」というあの中毒性をイメージしてしまう。しかし本作は「文明を発展させる」という要素こそ取り入れているものの、プレイ感はまったく別物。このため「シヴィライゼーション」の楽しさを求めれば求めるほど、期待外れに感じてしまうだろう。
一方で筆者は、本作をMMOシミュレーションゲームとして楽しい作品だと感じた。本作は、意欲的で独自の魅力を持っている。戦闘ではなく文明の発展に比重を置いているというコンセプトもさることながら、自由に国をカスタマイズできる箱庭要素、RPG的なダンジョン探索や3マッチパズルのミニゲーム…などなど、お楽しみ要素も盛りだくさん。しかも、ビジュアル面からミニゲームに至るまで、その完成度は高い。
このため、「シヴィライゼーション」シリーズのファンがプレイするのであれば、あくまでMMOシミュレーションゲームとして割り切ってプレイしたほうがいいだろう。シリーズ作というより、趣向を変えたスピンアウト作と捉えた方がいい。楽しくないのではなく、楽しさの方向性が違うという感覚だ。そういう意味では、「シヴィライゼーション」未経験のMMOシミュレーションゲームに対しては手放しでオススメできる。これまでのMMOシミュレーションゲームとは異なる要素を盛り込んでいるため、新鮮な楽しさを味わえるだろう。