サイバーコネクトツーから2023年5月11日に発売されるドラマティックシミュレーションRPG「戦場のフーガ2」のレビューをお届けする。
目次
本作はタイトルのとおり、2021年に発売された「戦場のフーガ」の続編だ。前作から1年後、新たな戦いに身を投じることになった“イヌヒト”、“ネコヒト”の子どもたちの物語が描かれる。
前作のファンならば、彼らの過酷な運命も受け入れていることと思うので、ゲームとしてもパワーアップした本作は文句なしにおすすめだ。逆に前作未プレイならば、本作には“これまでのあらすじ”という物語をおさらいする機能が備わっているものの、出来れば1作目からプレイしたほうが、彼らを待ち受ける新たな試練に、より深く感情移入できることと思う。
PS5、PS4、Nintendo Switch、Xbox Series X|S、Xbox One、PC(Steam、Epic Games Store、Windows)という、あらゆるプラットフォームで同時リリースされる本作。Xbox及びWindows版はGame Passにも対応しており、加入していればゲーム自体を購入しなくとも、発売日からプレイが可能となっている。
前作「戦場のフーガ」もGame Pass対応タイトル(2023年5月現在)なので、まだプレイしていないGame Passユーザーは、ぜひこちらからプレイしてほしい。
1年を経て成長した子どもたちを、さらなる過酷な運命が待ち受ける……
前作「戦場のフーガ」では、突如目覚めた謎の巨大戦車“タラニス”に乗り込み、その力によって戦争を終結させたマルトたち。1年間にわたり平和な日々を過ごしていた彼らだが、タラニスが子どもたちの半数を乗せたまま突如暴走したことを切っ掛けに、再び戦火に巻き込まれる。
タラニスの中に囚われた子どもたちを助けるべく、かつての宿敵であり、タラニスと対になる巨大戦車“タラスクス”に乗り込んで、タラニスを追いかけるマルトたち。ゲームが進むとタラスクスに代わり、とある展開によって誕生する新機体“エキゾ・タラニス”が彼らの搭乗機となる。直接的なネタバレになる部分は伏せるが、子どもたちを待ち受けていたのは、前作以上に過酷な運命だった……。
「戦場のフーガ2」は、前作ですべての子どもたちが生存し、トゥルーエンドを迎えたあとの世界が舞台となっている。
前作「戦場のフーガ」はすべての子どもたちが等しく主人公と言える物語構成となっていたが、「戦場のフーガ2」では明確にリーダー格の少年・マルトがメイン主人公として、さまざまな葛藤、そして怒りや憎しみといった感情をさらけ出すことになる。
共に戦っていく子どもたちには、新キャラクターのバニラが加入。マルトたちが住むガスコの大統領の娘である彼女は、気が強そうな外見から受ける印象どおりの直情的な面もありつつ、ほかの子どもたちの境遇に同情し、寄り添おうとする優しさも見せる、魅力的なキャラクターとなっている。
前作から再登場となる子どもたちは、ビジュアル、キャラクター描写ともに1年を経ての成長が垣間見えるものになっている点にも注目だ。双子の弟・ハックよりも早く“立派なお姉さんになりたい”といった自覚が芽生えたチックの言動は微笑ましく、また、途中からの加入となるワッパやジンは、マルトたちの窮地を彼らならではの描かれ方で救おうとする。
前作とはお気に入りのキャラクターが変わってくる(または、“推しが増える”)プレイヤーも多いかもしれない。
前作の“アップデート1.5”までの改善点をすべて反映し、快適さを向上
ゲームの基本システムは前作を踏襲している「戦場のフーガ2」。タラスクス、またはエキゾ・タラニスは、進行ルートに沿ってゲーム画面の向かって右方向へ移動。止まったマス目に従って戦闘やアイテムの入手、回復などをくり返していく。
ルートにはときおり分岐点があり、どのルートを選ぶかによって戦闘の難易度が変わってくる。高難度のルートのほうが経験値・アイテムなどの報酬が多く手に入るので、機体の状況と相談しつつ、リスクを承知で危険なルートを通るか? それとも安全なルートで無理せず体勢を立て直すか? といった選択が迫られるのだ。
マス目はほかにも複数種あり、“インターミッション”では非戦闘時の戦車内での子どもたちの生活や交流が描かれ、“遺跡探索”ではパズル色の強いちょっとしたアクションゲームが楽しめる。これらも含め、あらゆるマス目の配置を考慮に入れた選択の連続による、悩ましくも楽しいゲームプレイは、シリーズ共通の魅力だ。詳しくは後述するが、本作から追加された“飛行船サービス”のマスも、戦略に奥行きを加えている。
ゲームは章仕立てとなっており、進行ルートの右端までたどり着き、ボス戦に勝利して物語が進展したらそのエピソードは終了。各章の冒頭で各地の人々との交流を挟みつつ、また新たな戦いが始まる。
すべてのシステムがガッチリと噛み合い、戦闘パートへとフィードバックされることで相互に奥深さを生んでいる点もまた、前作と変わらぬ「戦場のフーガ2」の美点と言えるだろう。加えて本作では、あらゆる部分に新たな要素が追加されており、ゲーム全体の快適性を向上しながらも、より奥深さを増している。
新要素についてはこのあと掘り下げていくとして、先にインターフェースの改善について触れておこう。前作「戦場のフーガ」は、新規タイトルゆえ発売当初はインターフェースに“かゆいところに手が届かない”箇所がいくつかあったのも事実だった。
しかしそれも過去の話。こうした箇所は2023年3月に適用されたばかりのアップデート1.5までに、ほとんど改善されている。そしてこれらの改善は、「戦場のフーガ2」にはすべて最初から適用されているのだ。
複数のエンディングを回収するための、ゲーム中盤からのリトライ機能。戦車の移動アニメーションの2段階のターボモードの搭載。戦術モードでの双眼鏡機能(敵のステータスが確認できる)や、座席配置を初期状態に戻すリセット機能。インターミッションでの作物の自動回収などなど……。
アップデート適用後の「戦場のフーガ」、そして「戦場のフーガ2」ともに、2021年発売当時の「戦場のフーガ」より数段上の快適性を有したゲームになっていると言えるだろう。
スキル性能の調整やマルトの“リーダースキル”、子どもの犠牲を阻止する最終手段“マーナガルム”で、戦闘時の駆け引きも進化
新システムについては、シリーズの心臓部と言える戦闘パートから順を追って書いていこう。敵兵器の弱点属性を突いて行動を遅らせる駆け引きのおもしろさはそのままに、ここでも「戦場のフーガ2」は前作と比べて、プレイフィールを大きく変えるものではないながら、無数の変更が加えられている。
前作から登場する子どもたちも覚えるスキルの種類や性能は調整されており、能力面でも個性が感じられながらも、より不平等感の少ないバランスになっている印象だ(その上で、主人公格であるマルトはほかの子どもより一段強く、スキルのバランスも良いので活躍させやすい)。こうした細かな調整は子どもたちが絶好調状態のときに発動する“ヒーローモード”に対しても行われている。
一部の主力スキルはキャラクターの成長とともにスキルレベルが上昇。“攻撃回数アップ”、“回復量アップ”のように性能が上がるので、より育成のし甲斐も感じられるようになった。
ストーリー上の選択肢“ジャッジメントチャンス”によって性能が変化する“リーダースキル”も、戦闘にちょっとした嬉しさを添えてくれる。人々に寄り添う“共感”と、苛烈な言動を伴う“覚悟”、マルトとしていずれの選択肢を多く選ぶかによって、“共感”なら防御・回復系のリーダースキルが、“覚悟”なら攻撃系のリーダースキルが戦闘中にランダムで発動するのだ。
確実性はないため戦術に組み込めるものではないが、発動はプレイヤーにとってプラスの効果しか生まないので、ゲーム中の“嬉しさ”の総量が増えている。また、マルトによる選択の性質がスキル性能と合致するので、ストーリーとゲームプレイがより結びついた感じになるのも好印象だ。なお、リーダースキルは演出的にマルトのものではあるが、彼が戦闘に参加しているかどうかとは無関係に発動する。
そして「戦場のフーガ」の象徴と言える、ボス戦でのみ使用可能な、ひとりの子どもの犠牲と引き換えに放つ究極兵器“ソウルキャノン”にまつわる葛藤にも、変化がもたらされている。まず、序盤から使用できるタラスクスに備わった兵器“マーナガルム”は、選んだ子どもが犠牲になることはないものの、一時的に戦闘不能状態になってしまう。
エキゾ・タラニスになってからは、再びソウルキャノンが使用可能に。前作ではプレイヤー自身が犠牲になる子どもを選択するというシステムだったが、本作では危険な状況になると新たなAIであるハクス(前作の宿敵の人格・記憶をもとにしたAI)が、犠牲になる子どもを勝手に選定し、倒される前に発射しようとする。そしてエキゾ・タラニスはマーナガルムも引き続き使用できるので、これを行使して選ばれた子どもの犠牲だけは食い止める――という選択が可能になっているのだ。
前作ではソウルキャノンの発動がプレイヤーに委ねられていたので「誰かを犠牲にしてしまうよりはセーブポイントからやり直すほうがマシ」と考え、1度も使用しなかった人は少なくないのではないかと思う。今回は強制的に発射を迫られ、これを阻止する手段としてマーナガルムがあるという2段構えの決断が用意されているので、前作以上にこのシステムにまつわる葛藤が身近なものになっていると言える。
一方で前作同様、ソウルキャノンを積極的に使うことでしか見られない演出・展開もあるので、ゲームを隅々まで味わうのなら、その罪悪感も引き受けてプレイするしんどさが味わえる点は、ある意味変わらないこのシリーズならではの味わいのひとつだろう。
貨幣の導入や、飛行船サービス、作品世界の変化を表現しつつ、ゲーム性にも変化をもたらす要素の数々
ここからは、戦闘以外の面での新要素について挙げていこう。
行動力を消費して子どもたちの生活や交流を行っていく“インターミッション”は前作同様、何を優先すべきか悩ましい楽しさがありつつ、開発などにおける“失敗”が廃止され、プレイヤーのストレスを軽減。子どもたちの要望を一定数叶えることでボーナスの経験値が得られるようになったのも、行動指針になり、達成感にもつながっている。
ゲーム序盤で1年前の戦争で相対した敵国の老人を捕虜にするイベントがあるのだが、彼らが各章ごとにクイズを出題してくれて、これによりゲームシステムに関する知識を復習できるのも、シリーズ経験者・初心者ともに嬉しい機能と言えるだろう(筆者もちゃんと身に付いていなかった知識を得ることができ、その後の戦闘で役立つことが何度かあった)。
ゲーム全体に横たわる新要素としては“貨幣の導入”が挙げられる。前作では戦時中という設定も反映し、人々との交流で手に入れたいアイテムがある場合、物々交換が行われていたが、今回は金銭を支払って手に入れるのだ。作品世界の情勢の変化をゲームシステム上でも感じられるという意味でも、かなり重要な変更点と言えるだろう。
不要なアイテムや、遺跡探索で手に入れた“お宝”を売却してお金を貯め、回復アイテムや食材、戦車を強化するための素材を購入したり、困っている人に分け与えるといった選択が生まれたのは、ゲームプレイをよりプレイヤー主導でコントロールできることも意味する。
ショップでその時点での食材や素材の所持数、そして料理の作成や戦車強化のためにあとどれくらい必要なのかを確認できるのは便利だが、ゲームの性質上、先々の展開でどんなアイテムがどれくらい手に入るかまったく不透明なので、「どのアイテムをどれくらい購入すべきか?」も、わりと当て推量になるのがちょっと歯がゆくはある。とはいえ、プレイヤーの判断に委ねてくれる要素が増えたのは、ゲームとしても良いことだと思う。
ルート進行時に時折止まることになる“飛行船”のマスでも、サービスを受けるには貨幣を支払うことになる。空いているマスに回復機能を付与する“補給”や、敵がいるマスを排除する“空襲”、すでに通ったルート分岐点の手前まで運んでもらい、選ばなかったルートでの戦闘やアイテム収集ができる“運輸”などなど――。ショップの機能も併せ持っており、プレイヤーのニーズに合わせて、さまざまなサービスを選べるのが、実にありがたい。非常に便利なので、このマスに到着するまでに所持金をうっかり使い切ってしまわぬように注意するべきだろう。
先ほども触れたように金銭を得るためにも、“お宝”が手に入る遺跡探索は非常に重要だ。基本的には前作と変わらず、ちょっとしたアクションと攻略順を考えるパズル要素が楽しめ、戦車の強化素材が手に入るのも同様だが、銃弾に火や電気といった属性をまとわせて解く仕掛けが追加されており、前作とまったく同じものになっていない辺りは気が利いている。
こうして挙げていくと、前作の魅力はそのままに、本当にあらゆる部分に改善と新鮮味の付加が施されており、前作と同じ仕様のまま見過ごされた要素はほとんどないことが分かるだろう。
やりこみ要素もパワーアップ!前作ファンはプレイ必至
やりこみ要素についても、共感・覚悟の選択によって変化するストーリー展開や、トゥルーエンドの探究、そして2週目以降で解禁される“禁断の高難度ルート”など、前作以上にふんだんに盛り込まれている。
「戦場のフーガ2」は、前作の正当進化と呼ぶに相応しい続編だ。作品世界とイヌヒト・ネコヒトの子どもたちは、1年の歳月が確かに感じられる変化を遂げており、もともと持ち合わせていたゲームシステムは、より快適に、奥深く進化している。
プレイフィールに大きな変化こそないものの、既存要素の丁寧な改善と、新規要素の導入でパワーアップしており、正統派の続編を期待するなら決して裏切られることはない。マルトをはじめとした子どもたちのまだ見ぬ未来を見届けたいのなら、そして前作のゲーム性が楽しめたのなら、プレイ必至のタイトルと言えるだろう。
(C) CyberConnect2 Co., Ltd.
※画面は開発中のものです。
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