注目タイトル「アスタータタリクス」をレビュー。「ファントム オブ キル」や「誰ガ為のアルケミスト」の開発陣が手掛けたスマートフォン向けシミュレーションRPG。その魅力に迫る。
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「アスタータタリクス」は、gumiからリリースされたスマートフォン向けシミュレーションRPG。「ファントム オブ キル」や「誰ガ為のアルケミスト」などで知られるFgGが開発し、今泉潤氏がプロデューサーを務めているということでリリース前から注目のタイトルとなっていた。そんな本作がとうとうリリース。プレイした人は、その圧倒的クオリティに驚いたのではないだろうか。筆者は個人的に、2023年プレイすべきスマホゲームのナンバー1ではないかと思うほどだった。そこで、このレビューでは本作の魅力を紹介したい。
円卓の騎士×武器美少女×学園モノ!王道でありながら新鮮なシミュレーションRPG
既に紹介した通り、本作のゲームジャンルはシミュレーションRPG。バトルパートのスクリーンショットをご覧いただければ、マス目によって区切られたフィールドを舞台にユニットを動かす、王道のシミュレーションRPGに見えることだろう。しかし、本作はそんな「よくある形式」に収まる作品ではない。
ホーム画面からストーリーモードを選んでプレイする…という形式こそ、スマートフォンゲームの基本を踏襲しているものの、その先は大きく違う。まず表示されるのが、日付を表すカレンダー。さらに1日の中が、朝、午前、昼間、放課後、夕方…といったかたちで区切られており、各時間ごとにストーリーパートやバトルパートが発生する。
ストーリーパートでは、会話シーン以外に探索シーンも存在。探索シーンでNPCと会話することで、サブクエストを受けることが可能だ。また、会話シーンでは選択肢が出現。選択肢は本作のコンセプトである「分岐」に影響しており、ストーリー展開に影響を与えていく。
本作のビジュアルはアニメタッチの3DCGで作られており、これだけでも非常にクオリティが高い。だが3DCG以外に2DCGも効果的に使われている。
2DCGは会話パートにおけるキャラクターの表情や、一枚絵のイラストレーションによる演出、さらにカットイン演出といった部分で登場。この演出がカッコいい。そもそも、2DCG一枚一枚のクオリティが、「画集が欲しい!」というレベル。でもそれだけじゃなく、演出の挿入されるタイミングが秀逸。「このタイミングなら、3Dよりイラストで見せた方がカッコいい」という抜群のタイミングで挿入されるので、シビれるほどカッコいい上、ストーリーにぐいぐい引き込まれていく。ストーリーを表現するための演出はパーフェクトだ。
ではそのパーフェクトな演出によって描かれる、ストーリーはどんなものなのか。先ほど1日の時間の区切りの中で「放課後」と書いた通り、本作のストーリーは「学園モノ」の要素を含んでいる。ただ、舞台は現代ではなく、円卓の騎士の時代。
プレイヤー=主人公は、現代世界で謎の侵略者・ババロイの襲撃を受け、バルバロイへ対抗する「武器」を手に入れるため過去へと遡る。そして行き着いた先が、円卓の騎士の時代。この時代の主人公であるノワールは、傭兵としてカレドニア軍に雇われていた。しかし戦場でログレス王国の王女・ギネヴィアを救ったことから、ログレス王国のキャメロット騎士学術院へ編入。現代からやってきた主人公はこのノワールの物語に干渉しつつ、見守っていくことになる。
そう、本作は剣と魔法のファンタジー世界を舞台に学園モノを描く作品だ。そしてここに、「武器」が関わってくる。「武器」とも表現されているが、厳密には「キラーズ」。バルバロイを倒す力を持った存在で、戦闘時以外は人間。武器であり人であるという点は、「ファントム オブ キル」のキャラクターたちに近い。実際、ノワールが手にする「キラーズ」は、「ファントム オブ キル」で主人公だった「ティルフィング」だ。
つまり、本作は円卓の騎士×武器美少女×学園モノ!「円卓の騎士」や「武器美少女」といった1つ1つの要素は王道だが、3つが融合することで新鮮な味わいになっている。
とりわけ魅力に感じたのが、ファンタジーものの醍醐味といえる「熱い展開」と、学園モノの魅力であるコミカルな日常風景の巧みな使い分け。学園を舞台にした日常パートは比較的コミカルに描かれており、リラックスしたムードで各キャラクターの魅力を知ることができる。これによって十分キャラクターたちへどっぷり感情移入した上での、バトル!強烈に感情移入していることで、熱い展開がより熱く感じられるのだ。
ハイクオリティ3DCGでキャラクターのカッコよさを堪能できる!バトルパート
本作のバトルパートは、オーソドックスなターン制ストラテジーとして作られている。ターンは敵全体と味方全体とで区切られており、味方ターン中はユニットを好きな順番で動かすことが可能だ。
自分のターンに行える行動は、移動、通常攻撃、スキル攻撃。さらに、「デュアル」によって2体のユニットを同時に行動させることも可能。2体のユニットを同時に行動させることで、ユニット数が減ってしまうというデメリットはあるものの、キャラクター同士の連携効果である「キズナアクション」が100%発動するというメリットが生まれる。
敵ユニットの行動範囲を踏まえたユニット移動によって被ダメージを押さえつつ、スキルや「デュアル」でいかに与ダメージを最大化するか?こうした立ち回りを考える楽しさは、ターン制ストラテジーの王道。王道だけあってゲーム性そのものに目新しさはないものの、安定的な楽しさがある。
なお「目新しさはない」と書いたものの、快適さを追求するためのシステムまわりには、現代的な仕組みが盛り込まれている。スマートフォン向けのゲームでは必須と言えるオート機能はもちろん、オート機能を利用していないときでも使える倍速機能や、すべての敵の行動範囲を1タップで出せる機能、そしてターンを巻き戻せる機能など。こうしたさまざまな便利機能によって、ターン制ストラテジーの王道と呼べる楽しさを、極めて快適に味わえる。
その上で本作のバトルパート最大の魅力が、カッコいいこと。攻撃演出では、ハイクオリティな3Dビジュアルによって表現されたキャラクターが、カッコよく敵を攻撃。特にスキル攻撃は力が入っており、キャラクターの持つカッコよさを堪能できる。
ちなみに、個人的にはユニットを移動させるフィールドのビジュアルもカッコいいと思っている。フィールドでのキャラクターは3DCGではなく粗いドットで表現されており、3DCGとは異なるカッコよさを感じさせるのだ。
一風変わった育成も魅力!RPGファンなら絶対プレイすべき一本
ここまで書いてきた通り、本作の柱と言えるストーリーパートとバトルパートはいずれも完成度が高い。これだけで十分オススメできる一本なのだが、その上さらに育成システムも魅力的なものに仕上がっている。
本作の育成は、バトルパートで行動することと、経験値アイテム消費による「強化」で行う。こうしたシステムはスマートフォン向けゲームとしては標準的といえるものだが、育成用の素材アイテム収集はなかなか特徴的なものになっている。
素材アイテム収集は「遠征」という1コンテンツになっており、その内容は放置系RPGそのもの。パーティーを編成し、一定時間経過することでアイテムを獲得できる。ただ、それだけでなく、オートバトルによるボス戦まで存在。「遠征」自体が1本の放置系RPGといっていい。
また「継承の間」の「フリークエスト」では、ストーリーモードにおけるバトルパートをプレイする以外に、後からバトルパートだけプレイすることが可能。これは、周回プレイが効率的にできるという以外に、ターン制ストラテジーの楽しさだけを集中的に味わえるという点で魅力的だ。
王道でありながら新鮮。斬新でありながら、こなれていて完成度が高い。…本作はそんな一作だ。RPGファンなら、絶対プレイすべき一本だと思う。筆者もRPG好きの一人として、ぜひ本作のの魅力を、多くの人に知ってほしい。
(C) FgG, ANX
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