千葉・幕張メッセにて9月21日~24日にかけて開催の「東京ゲームショウ2023」。clusterブースにて行われた「爆創クラブ」制作発表会の模様をお届けする。
ステージには、クラスター 代表取締役CEOの加藤直人氏と、トヨタ自動車 ビジョンデザイン部 部長の中嶋孝之氏が登壇。プレゼンテーションの後、2人とMCを交えたトークセッションが行われた。
加藤氏は、クラスターとはどういったことをする会社なのか、どんなきっかけでプロジェクトが始まったのかを語った。
clusterはバーチャル空間の法人利用が世界1位のプラットフォームとのことで、「ソードアート・オンライン」や「Fate/Grand Order」などの作品にも関わっている。ほかにも、「バブ」を使った体験型プロモーションや、大阪・阿倍野をバーチャル空間上に再現したまちづくり、VTuberのライブ会場を作るなどの様々な取り組みを行っているそう。
メタバースの本質は「ものづくり」だと語る加藤氏。実際にユーザーが作った世界やクラスターについて紹介しながら、「こんな世界があったらいいのに」「こんな自分になれたらいいのに」という考えを実現できるのがメタバースの世界であることを話した。そして、「こんな乗り物があったらいいのに」という考えのもと、「爆創クラブ」が作られたのだという。
中嶋氏が登場し、熱い握手を交わすと加藤氏はステージを後にした。中嶋氏からは、「爆創クラブ」はどういうゲームなのかが説明された。
本作には国内自動車メーカー8社の車が実装されており、23車種の中から好きな車を1つ選べるという。プリウスやエブリィなどの有名な車も登場する。普段はライバルメーカーということで、車の3Dデータは絶対に渡さないのだが、ゲームのためにデータを提供してくれたとのこと。
ここで中嶋氏に呼ばれて、プロジェクトを担当しているトヨタ自動車 ビジョンデザイン部の飯島泰昭氏が登場。ゲーム概要について説明した。飯島氏は「モビリティをデジタルコンテンツに落とし込んだときにレースコンテンツになりがちだが、自分の好きなようにカスタムしたり、車好き同士で話したりと楽しみ方はそれだけではない」と語った。
加えて、アバターを作ってワールドに入るようなメタバースとの親和性が高く、VRとモビリティの相性が良いこともあり、「爆創クラブ」を考えたとのこと。
カスタムできるアイテムがモニターに表示されると、飯島氏は「車にはつかないようなものを用意し、既成概念を壊すようなカスタムができるコンテンツを目指している」と語った。
ゲーム画面を交えつつ、どんなゲームになっているのかの紹介も。好きな車を選んで、走りながらカスタマイズしていくようで、どんな風にカスタマイズされているかは左下にあるディスプレイに表示されているとのことだ。
5~6分ほどの体験が終わるとリザルトエリアに移行。カスタマイズしたアイテムが次々に組み合わさっていき、取ったアイテムによって自動で名前を付けてくれる。リザルトエリアに表示されたカスタムコードをカードに入力してかざすと実際にカスタムした車がARで表示されるという、最後まで楽しめるコンテンツになっているようだ。
ゲーム概要を説明したところで、飯島氏はステージを後にした。続けて中嶋氏が「カーボンニュートラル」が裏テーマとしてあると語り、普段プレイしない自分でも直観的な操作で没入感があって楽しめたと話した。さらに、自身のおすすめアイテムとして、トビウオの羽と金のシャチホコを挙げ、それらが欲しくてステージを走り回ったというエピソードも飛び出した。
ここでプレゼンテーションが終了し、トークセッションへ。中嶋氏はMCから「爆創クラブ」の開発秘話について聞かれると、検討会などで「こうしろ、ああしろ」といった指示はしておらず、カスタムできるアイテムのところで「エビフライが欲しいな」という話をしただけだと話した。
続けてMCから「こんな発想はなかった」みたいなアイデアを出した人はいたかと聞かれると、「ローポリゴンの世界で車を動かすということで、安っぽく見えないように色の表現を変えるなどの提案が良かった」と回答。
MCが加藤氏に対して、クラスターは制作にどう関わってきたのか質問すると、「車を作って乗るという機能はなかったので、どういうシステムにするのかという部分から、触り心地や乗ったときの爽快感などの細部までこだわっている」と話した。
さらに、メタバースの移動についてどう考えているか聞かれると、加藤氏は「散歩したり、ドライブに行ったり、楽しむための移動は贅沢でいいものだ」と話し、作る楽しさ、乗って走り回る楽しさはメタバースと相性が良いと語った。
たくさんの会社が関わっていることで大変だったことの話になると、中嶋氏は「ミニカーと同様に車をデフォルメする過程で、各社がこだわっている部分の発見があった」と話した。
続けて加藤氏は、「デフォルメ」という言葉からメタバースはデフォルメの世界であることを語り、ゲームやマンガ、アニメなどのデフォルメが根付いた文化と日本が誇る産業の車が出合って、こういう取り組みに参加できることへの喜びも口にした。
最後に、2人の視点からデジタル社会におけるモビリティカンパニーとしての未来について聞かれると、加藤氏は「未来の情報化社会においてメタバースがどうあるべきかを面白いトピックだと思いながら考えている」と回答。生成AIについても聞かれると、「今までにないような、現実世界でのモビリティデバイスが生まれたりするんじゃないかと考えながら研究している」と話した。
中嶋氏は、「メタバースの世界とリアルな世界で境界線を作ること自体がナンセンスだ」と回答。車のデザインもデータの中で作り、リアルで確認、またデータに戻るといったプロセスになってきていると話し、「出発地点の違いはあれど、行きつく先は同じなので完全シームレスでいきたい」と語った。
誰しも一度は経験したいであろう爆走する爽快感や、自由なカスタムなどの普段できないようなことをメタバースの世界に落とし込んだ「爆創クラブ」。国内自動車メーカーが集まった夢のあるタイトルに、今後も注目していきたい。