千葉・幕張メッセにて9月21日~24日にかけて開催された「東京ゲームショウ2023」。2023年10月17日に発売予定の「ソニックスーパースターズ」について、飯塚隆氏(「ソニック」シリーズプロデューサー)、大島直人氏(開発担当・アーゼスト社代表取締役)へのインタビューをお届けする。
――「ソニック」シリーズの新たな挑戦となった「ソニックフロンティア」の発売が記憶に新しいですが、「ソニックスーパースターズ」は並行して開発が進められたのでしょうか?
飯塚:「ソニックフロンティア」は制作に5年くらいかかりましたが、本作も2年半ほどかかっているので、制作期間は重複しています。
――初代「ソニック・ザ・ヘッジホッグ」のデザイナーである大島氏が制作に参加されることになった経緯をお聞かせください。
飯塚:昨年「ソニックフロンティア」で3Dソニックを大きく進化させましたが、同時にクラシックソニックも今風に大きく進化させようという計画がありました。クラシックシリーズの新作を作るにあたり、縁のある人物に参加してほしいという思いがありまして、大島さんと雑談レベルで「やりませんか?」という話をさせて頂いたら、快諾いただいたという経緯です。
――クラシックソニックの進化系という表現がされていますが、開発においてどのようなコンセプトをもって取り組まれたのでしょうか?
飯塚:クラシックシリーズというのは、名前にクラシックと付いているくらい古くから受け継がれているシリーズです。なので、過去の操作性やゲームプレイの仕方は、本作でも再現しなくてはいけないというのが絶対条件でした。
なので、大島さんとアーゼストの方に開発していただくにあたって、2Dの昔のソニックと同じフィーリングを再現してほしいとお願いしました。
大島:キャラクターとの組み合わせによって挙動が変わるので、開発スタートからギリギリまで調整していました。
――「ソニック」シリーズでは2Dと3D、両面でのアプローチをこれまでもしてきたと思いますが、本作のように2D横スクロールのプレイ感と3Dグラフィックの表現を両立させるにあたって意識した点はありますか?
大島:実際に3Dでマップを作っているので、普通に遊ぶと2Dの遊びにはならないんですね。完全に遊びは2Dですが、キャラクターたちは立体の中にいます。すごい面倒なことが山ほどありましたが、色々な工夫をしています(笑)。
――実際にプレイした時にステージの縦の大きさにも驚かされました。どのくらいのボリュームがあるのでしょうか?
飯塚:名刺を1画面だとしたらこの机(会議用テーブル)より大きいですかね(笑)。
それがまさしくクラシックソニックの良さでもあり伝統です。普通は一本ルートがあればそれ以外は作らなくていいのですが、ソニックの場合は上手くいけば上ルートを進めるし、下に落ちても別のルートがあるという感じで上下にすごく膨らみます。
最後は全部ゴールに向かって収束していくレベルデザインなので、制作する側としてはすごい労力が必要ですが、遊ぶ側としては気軽に落ちても大丈夫というゲームプレイが実現でき、それが「ソニック」シリーズの良さだと思います。
大島:ソニックは通常のアクションゲームの5倍の速さなので、5倍の広さがないと10秒、20秒で終わってしまいます。マップは本当に広く、どこに行っても何かあるようにレベルデザインするのが大変でした。
――デモ版をプレイした際には、サイバーステーションというステージで、進むためのギミックかと思いきや、ステージ外に落ちてしまうというものも用意されており、難易度の高いものだと感じました。
飯塚:普通であれば試遊台(TGS2023)には入れないくらいの後半のステージですね。トレーラーでクラゲやロケットになるのを見て、プレイしたいという声が多かったので入れました。
――カオスエメラルド取得のためのステージも3Dと2Dの内容があり、プレイしていて楽しめました。
飯塚:3Dでロープアクションのように進んでいくのが“スペシャルステージ”といいカオスエメラルドを集めていくものとなります。回転するステージでメダルを集めていくのが“ボーナスステージ”というものになります。
スペシャルステージは、3Dっぽいゲームを体験させるという当時からの伝統に乗っ取り、方向キーとワンボタンで遊べるけど、3D空間を自由に移動しながらエメラルドを追うステージをデザインしました。
――4人協力マルチプレイができるというのは大きなポイントの一つだと思うのですが、導入の経緯をお聞かせください。
飯塚:「ソニックフロンティア」のようなゲームは一人でじっくり集中して遊ぶゲームだと思いますが、クラシックシリーズはもっとカジュアルでワイワイ楽しめるようなゲームデザインにして、モダンシリーズとクラシックシリーズの差を明確にしようと思いました。
ただソニックはゲームスピードが早いので、みんなでプレイするゲームにはあまり向かないんですね。そこを大島さんに相談したところ、ぜひチャレンジしようと言ってくれて、今回の4人協力プレイが実現しました。
――4人プレイ時に1人が先を行って、残りのメンバーが画面外に行ってしまった場合はどうなるのでしょうか?
飯塚:通常のアクションゲームだと、4人で一緒に画面を進めていくタイプになると思います。しかしソニックでそれをやってしまうと、誰かを待たなくてはいけない、カメラが先に進まないというソニックとしてふさわしくない、ストレスのたまるゲームプレイになってしまいます。
ソニックらしいマルチプレイはどういうものだろうというのをアーゼストさんと一緒に考えた結果、先にいったら他のプレイヤーはアイコン化して1Pについていく、いつでもワンボタンで復帰できるというゲームシステムになりました。
大島:復帰する際もトップで走っているキャラクターの挙動をそのままコピーして出られるので、逆に置いていかれてもそこから抜き返すこともできます。
――選択できるキャラクターについてはソニックは経験者向け、それ以外が初心者向けという印象を受けましたが…。
飯塚:ソニックには“ドロップダッシュ”という彼だけの技があり、着地と同時にダッシュできます。なので、タイムアタックなどはソニックが一番有利になると思います。
テイルスだと空を飛べたり、ナックルズだと壁を登れるので、ソニックよりも断然ゲームプレイが優しくなります。ソニックで攻略できないといった場合は、テイルスやナックルズでプレイすると楽々クリアできることもあります。
エミーは二段ジャンプができたり、ハンマーで敵を攻撃することができるので初心者には遊びやすいキャラクターです。
――ソニック以外のキャラクターでないと行けない場所もステージ上に存在するのでしょうか?
大島:そうですね。テイルスやナックルズでないといけない場所も存在し、そこには良いアイテムがあったり、メダルを入手できます。
――選択したキャラクターによってストーリーに変化はあるのでしょうか?
飯塚:全キャラクター分の導入のアニメーションとエンディングを用意しています。それ以外にも、各キャラの能力を存分に使って進む専用ステージもあります。
――ステージ内のギミックはもちろん、ボスに関しても歯ごたえがあるという印象を受けたのですが、コンセプト的にそのような設計になっているのでしょうか?
飯塚:基本的には従来のクラシックシリーズと同じくらいの難易度設定を目指していますが、若干難しくはなっています。今回“エメラルドパワー”というアディショナルなパワーがあるので、歯ごたえのあるボス戦に調整しています。
それ以外にも、マルチプレイでは4人で一体の敵に攻撃できるので、マルチプレイでやればやるほど、ボス戦はより難易度が下がる、遊びやすくなるという形になります。
大島:エメラルドパワーと4人の力が合わさったらボスも瞬殺ですよ(笑)。
――オフライン/オンラインに対応したバトルモードも導入されていますが、こちらの導入の経緯もお聞かせください。
飯塚:ストーリーモードは4人協力プレイでゴールを目指すゲームですが、それとは別に、せっかく人が集まったら対戦したいという気持ちに応えるためにバトルモードを用意しています。
“スターコレクト”、“サバイバル”、“ファイティング”、“レース”の4つの中からランダムで3つが選択され、3回戦で勝負をすることになります。一番多くポイントを獲得した人が勝ちとなります。オフラインでは画面分割で最大4人、オンラインでは最大8人まで楽しめます。
――現状4つのルールがあるということが明かされていますが、アップデートなどで追加される予定はあるのでしょうか?
飯塚:4つとはいっても4ステージというわけではなく、それぞれのルールに複数ステージ用意されているので、実際の数はもっと多くなります。その他には、デジタルデラックスエディションのDLCコンテンツとして、レゴステージが追加されるようになっています。
――バトルモードで使用するメタルファイターはどのくらいカスタマイズできるのでしょうか?
飯塚:最初のメタルファイターは何にもない素の状態になります。ストーリーモードで獲得したメダルを使って、頭、腕、胴体、脚などパーツごとに購入して、自分好みのロボットを作り上げることができます。
大島:カラーリングまで変更することができますね。
――「ソニック」シリーズはこれまでも幅広いゲーム性を提供してきましたが、今後も横スクロールから「ソニックフロンティア」のような新機軸まで、選択肢を広く持って開発を進められていくという考えなのでしょうか?
飯塚:我々の中では3Dのソニックと2D横スクロールのソニックというのは大きな二本柱だと思っているので、この2つは今後も継続的に育てていきたいと思っています。
――最後に発売へ向けて読者へのメッセージをお願いします。
大島:ソニックを初めて遊ぶ方には、ワールドマップ上に練習モードというチュートリアルを用意しました。そのミニマップを攻略すると基本的な操作がわかるので、ぜひ各キャラクター遊んでみてください。
また、ソニックのスピードもぜひ味わってもらいたいです。エネミーがいる、落ちたら死ぬからと思わずに思いっきり走ってみてほしいなと思います。
飯塚:昨年「ソニックフロンティア」でモダンソニックタイトルを皆さんから好評をいただいて、今年はクラシックソニックの新作として「ソニックスーパースターズ」を発表できました。
今回は1人だけではなく、友だちやご家族の方と一緒に遊べるソニックタイトルということで、広く皆さんに遊んでいただきたいと思っていますのでよろしくお願いいたします。