スパイク・チュンソフトから国内向けPS5ダウンロード版が発売中の「ARK: Survival Ascended」のプレイレビューをお届けする。
全世界で2,000万本以上を販売した「ARK: Survival Evolved」のリマスター版にあたる「ARK: Survival Ascended」。基本的なゲームシステムやマップは「Survival Evolved」のものを引き継いでいるが、グラフィック以外の部分にも改修が加えられており、限りなくリメイクに近いリマスターという位置づけとなる作品だ。

技術を発展させてより強い恐竜をテイムしていく中毒性の高いサイクル
「Survival Evolved」をプレイした方はすでにご存知かと思うが、基本的なゲームシステムから紹介していくと、本作は様々な恐竜たちが闊歩するオープンワールドを舞台としたサバイバルアクションゲームだ。
まずプレイヤーは自分の分身となるキャラクターを作成し、広大なオープンワールド世界を冒険できる。ゲーム内は常に時間が経過し、空腹や水分が不足するとダメージを受ける。この空腹と水分不足は序盤の壁で、群生している木の実を収穫したり、水場で水分をとったり、恐竜たちを狩って肉を得たりして生き延びるのが当面の目標となる。

クラフトゲームとしての側面もあり、フィールド内で入手した素材を使って様々な道具を作り、生き延びるための拠点や技術を発展させていく。弓や銃といった狩猟武器、木の実や野菜を得られる菜園といったより効率的に食料や水を得るための施設を作ったり、電気によって稼働する施設、果てはSF的な未来のガジェットまで、技術の進歩によってどんどんプレイが楽になっていく。

建物の見た目についても、屋根や柱などに豊富なパターンが用意されており、外見にこだわった大規模な建築物を作ることも可能。水源から水が出る蛇口を作成したり、後述する恐竜用の宿舎を作ったりと、本作ならではの自由度の高い拠点を構築することができる。

そして忘れてはいけないのが、本作のサバイバルアクションとしての最大の特徴でもある恐竜たちの存在だ。
恐竜はプレイヤーにとって生きる上での障害でもあるが、心強いパートナーでもある。恐竜たちには「気絶値」というパラメーターが設定されており、麻酔矢や打撃攻撃でこの気絶値を最大にすると気絶状態となる。この状態で恐竜が好む餌を与えておくとテイムのパラメーターが上がっていき、恐竜が目覚める前にテイム値を上げきればテイムが成功し、恐竜が仲間になる。
テイムにはいくつかの種類があり、気絶以外にも餌を直接与えたり撫でたりすることでテイムが完了する恐竜も存在する。

テイムが完了した恐竜は一緒に戦ってくれるだけでなく、専用のサドルを装備させておけばプレイヤーが直接操作することもできる。飛行して海を渡って別の島に移動したり、一度に大量の素材を回収できたりと、恐竜によってはサバイバーではできない特殊なアクションを使用することもできる。様々な恐竜を仲間にし、少しずつ行動範囲を広げながら、より貴重な素材を入手して、さらに拠点や技術を発展させていくというのが主なゲームの流れとなっている。

この技術を発展させて恐竜をテイム→テイムした恐竜の力を借りて、さらに技術を発展させる→作成した武器でより強力な恐竜をテイムする……というサイクルにはやはり中毒性がある。恐竜と一緒に自分の拠点を築いていける楽しさはやはり「ARK」ならではで、いわゆるサンドボックス的なジャンルが好きならまず楽しめる作品だ。
シビアな難易度ながらワールドの設定やMODでの調節も可能
本作で注意するべきはデスペナルティで、途中で恐竜に倒されたり餓死したりして体力が0になると、その場に所持しているアイテムをすべてドロップしてしまう。レベルやステータスについてはそのままで、アイテムは拾い直せばリカバリーが可能だが、問題は恐竜。戦闘などで体力が0になった恐竜はそのまま死んでしまい、復活させることができない。
ゲーム開始時には、スタート地点を選ぶことができるのだが、様々な素材を獲得でき水場も近い「イージー」表記の場所付近でも、デフォルトの状態では歯が立たないユタラプトルが徘徊していたり、油断するとあっという間に命を落とす。とくに初心者がデフォルトの設定でプレイすると、いわゆる“死にゲー”並に死にまくることになるだろう。

ただ、そこから技術を発展させ、装備やパラメーター、仲間の恐竜を増やしていくと、今まで歯が立たなかった恐竜を倒したり、テイムで仲間にしたりすることができるようになっていく。常に死のスリルがある分、お目当ての恐竜がテイムできた時や、貴重な素材を拠点まで持ち帰れた時の喜びも大きい。
一方、そういった歯ごたえのある体験とは別に、自分なりの遊び方ができるのも「ARK」の特徴。公式サーバー以外でゲームをプレイする際は、自分が遊ぶワールドを作成することになるが、ワールド内でのレベルアップの速度や素材の採取量など膨大な数のパラメーターを設定できる。パラメーターはワールドを作成した後でも変更できるので、巨大な建築物を作るために素材集めの時間を短縮したい場合など、一時的に数値を変更して後で戻すこともできる。

また本作では、通常のワールドとは別にMOD用のワールドが作成可能で、PS5版でもMODを使って遊ぶことができる。MODには外見の変更からゲーム性、アイテムや恐竜の追加といったコンテンツ自体を拡張するものなど様々な種類が存在し、前述した死亡のペナルティを軽減できるようなMODも存在している。
MODはPC版ではリマスター前の「ARK: Survival Evolved」から存在していた要素で、現在実装されているMODがすべてPS5版で利用できるわけではないのだが、プレイヤーが遊び方を選択できるようになる自由度という面でMODの存在は非常に大きい。サバイバルアクション初心者でも安心してプレイできる。
グラフィック以外にも、様々な部分がオリジナル版より遊びやすく
リマスター版としてリリースされている本作だが、オリジナル版である「Survival Evolved」からの変更点も多い。
もっとも分かりやすい違いがグラフィックの強化で、これは過去作をやっているプレイヤーならすぐその進化が分かるだろう。
とくにマップの情報量が劇的に増えており、若干のっぺりした印象があった地面に草や石が転がっているようにもなり、リアリティが上がってより世界観に没入しやすくなった。ただ、その分採取できる草や石とそうでないものの見分けがつきにくくなっており、PS5版では表示のオプションがないので、分かりやすさという面では好みが分かれるかもしれない。

個人的にありがたかったのが、地図周りの機能改善によってテイム済みの恐竜やトライブメンバーの位置確認が容易にできるようになったこと。
地図の拡大縮小に、地図に直接ピンを刺す機能や地図の座標も判別でき、さらに以前に自分が死亡した場所やトライブメンバーの位置も地図に表示される。自分が死亡してしまった時は位置を知らせて仲間に助けを求めたりと、オンラインプレイでのコミュニケーションが大幅にとりやすくなっている。

一部の恐竜は、野生の赤ちゃんを発見できることも。多くの場合は親子連れで歩いており、親の恐竜を倒した後に赤ちゃんをテイムするチャンスが訪れる。序盤のうちは麻酔の弾も限られるので、低リスクでテイムができる赤ちゃんの存在はなかなかありがたかった。

拠点の建築周りは、とくに大きく改善されているポイントだ。
一度設置してから一定時間が経過した建材も所持品としてそのまま回収できたり、土台を破壊したら自動でその上に乗っているオブジェクトを解体した上で、使用した素材を回収してくれるようになった。
他にも、斜面に土台を設置する際には、高さを自動で斜面に合わせてくれたり、作業台や収納箱などを設置する際、壁の端に沿って自動で位置を調整してくれるモードも追加され、室内に配置するインテリアなどを見栄え良く並べやすくなった。細かいが、かゆいところに手が届く修正が加えられている。

またオリジナル版では、水道を引く場合ポンプからパイプを蛇口までつなぐ必要があり、手間もかかる上に拠点の外観にも影響を及ぼしていた。本作では水場の近くにポンプを設置すれば、範囲内に蛇口を配置するだけで水が使えるようになっている。さらに水場と同様、発電機からの配線も不要になっている。

木の壁などを設置する際にはオブジェクトの形状が選択できるようにもなっており、従来あった壁の細かいバリエーションが一つに統合され、まとめて建材を作成しやすくなった。
建築に関しては全体的にかなり煩雑さが軽減されている印象だ。筆者はオリジナル版では非常に拠点を作るのが面倒に感じていたタイプだったのだが、本作はなかなか楽しく建物を作ることができ、この手の作業が面倒臭いと感じるプレイヤーでもとっつきやすくなっている。

その他にも、松明をベルトに刺して武器と同時に使うことができるようになったり、自分が作りたいアイテムの必要素材リストを常に画面に表示してくれるトラック機能も追加された。
とくにトラック機能はかなり便利で、さっきまで自分が何を作ろうとしていたか、何を集めようとしていたのかを唐突にド忘れしてしまった場合も、画面の表示を見れば瞬時に思い出せる。自分が現在所持している数を常に表示してくれるのもありがたく、拠点に戻ってから数が足りなかったことに気づき、再度素材集めに向かう羽目に……といった事態も防ぐことができる。

オリジナル版のゲームとしての魅力はそのままに、グラフィック面だけではなく、明確に遊びやすくするための様々な改修が施された本作。
今までプレイする機会を逃していた人には言うまでもなく、オリジナルをCS版で遊んでいたプレイヤーは、MODを追加してプレイすることでまた新鮮な気持ちで楽しむこともできるので、改めてプレイする価値は十分にある。サバイバルアクション好きなら、プレイしておいて損はないタイトルだ。
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