スパイク・チュンソフトより2024年9月19日に発売されるPS4/Nintendo Switch/PC(Steam)用ソフト「かまいたちの夜×3」のプレイレポートをお届け。
目次
本作は、サウンドノベル「かまいたちの夜」シリーズ30周年を記念して、 シリーズ3作品目となる「かまいたちの夜×3」を現行ハード向けに移植した作品だ。前作、前々作から続くストーリーの完結編となっており、復習用に「かまいたちの夜」&「かまいたちの夜2」のメインストーリーも収録されている。
本レポートでは、そんな「かまいたちの夜×3」の魅力をお届けしていこうと思うのだが、基本的に「かまいたちの夜×3」の内容は前作の流れを踏まえた会話が多く、ネタバレになりかねないので、演出面やシリーズ通しての魅力をメインにお伝えしていこうと思う。ネタバレなくプレイしたい人でも読める内容となっているので、最後まで目を通してもらえれば幸いだ。
魅力1:想像力を刺激する物語の“描き方”
本作、というより本シリーズ全体を通して、「かまいたちの夜」の魅力は物語の描き方にあると考えている。
“サウンドノベル”というジャンル名の通り、基本的には文字と背景のみしか表示される情報が無い本シリーズ。登場人物も、全員青いシルエットのみ表示されるのっぺらぼうだ。必要最低限の情報しか表示されない。
筆者は、小説の魅力は想像力を刺激される点にあると考えているのだが、全く同じことが「かまいたちの夜」には言える。主人公たちの表情や場面の描写は、文脈から推察することになるのだが、これがなかなか乙なものなのだ。
普通の小説では100%想像の世界だが、この「かまいたちの夜」はサウンドノベルということで、想像の世界をサウンドや背景が彩ってくれる。それが何よりの“良さ”だ。あくまで自分の想像力をベースにより解像度を高くしながら物語に没頭できるので、小説を読むのとはまた少し違う新鮮さを感じられることだろう。
さらに、「かまいたちの夜×3」の三日月島の真相編シナリオでは、複数人の主人公を切り替えながら物語を進めるシステムが採用されており、事件を多面的な視点で楽しめるようになっている。異なる人物の行動が線でつながる瞬間は非常に快感だ。
このシナリオを楽しむには、ある程度「かまいたちの夜」1・2のお話を理解していた方が良いので、収録されているペンション“シュプール”編と監獄島のわらべ唄編をプレイしておこう。
魅力2:随所にちりばめられたフォントや演出の工夫
プレイヤーが物語に没入してくると、今度は随所にちりばめられた演出が目に飛び込んでくる。限られたUIの中で練り込まれた工夫の数々は、意識してみると非常に趣深い。
例えば上の画像では、登場人物が激昂して叫ぶシーンにおいて、表示中のフォントがドンと急に大きくなることで読み手にわかりやすく声量を伝えるシーンが登場する。
そのほかには、文字の表示速度をあえて遅くすることで語りかけるようなセリフを表現するシーンもあった。
その他にも、ゲーム映像がついていることを利用して、沈黙の間を表現する手法などは見事だと感じる。例えば「この館の中に犯人がいるかもしれない!」と探索をしているときに、物陰から猫が飛び出すシーンがあるのだが、そのシーンでは一切のセリフが描写されず、猫がすたこらと走り去るアニメーションだけが描写される。
主人公たちがあっけに取られて何も言葉を発せない中、猫が走り抜けていく様子を、文字ではなくあえて映像で見せる演出だ。
そもそも、ミステリー作品ということで常に物語の中に隠された真実を読み取ろうとプレイヤーは注視することとなる。そんな中でバックの映像と文字、2通りのポイントから事件を紐解いていくわけで、これはミステリー小説とはまた少し違った体験ができるのではないだろうか?
さらに、一度真実までたどり着いたプレイヤーも飽きさせない工夫が本作にはあり、それが2周目以降に出現する“サブストーリー”だ。残念ながら1&2のサブストーリーは未収録だが、3にあたる三日月島の真相編のサブストーリーはきっちり収録されている。
通常シナリオとは違ったギャグ調、オカルト調のストーリーが楽しめるので、2周目以降も新鮮な気持ちでプレイしてみてほしいところだ。
魅力3:シチュエーションを効果的に説明するサウンドたち
本作は、事件を彩るBGMも非常に秀逸だ。シリアスな場面では緊張感のある曲が、コミカルな場面ではポップなBGMがそれぞれかかるのだが、いずれも物語に緩急をつけるものとなっており、どれも一度聴いたら割と耳に残る物ばかりだ。
プレイにおいては、音楽があることでギャグシーンへと切り替わる瞬間がBGMでわかるようになっているので、シチュエーションの把握をし易いのが良い。
ぜひ、ボリュームを上げて物語に浸りながら音楽も楽しんでみてほしい作品だ。
プレイを補助する便利機能の数々を紹介!
さて、ここからは物語から少し外れて、プレイの上で役立つ機能を紹介していこうと思う。
フォント切り替え機能
ゲーム内のテキストを、初代「かまいたちの夜」風に切り替えられる機能が搭載されている。ゲーム内のテキストのほか、メインメニューの文字なども全てドット風のフォントに切り替わるので、雰囲気がガラッと変わる。
巻き戻し機能
見出しにある通り、一定数進んだ物語を巻き戻す機能だ。ページ単位で巻き戻せるようになっており、選択を間違えてしまったときなどに便利。
また、ログ機能も兼ねており、過去の会話から証拠を探すのにも使える。気になる会話地点へとスムーズに戻って話が見られるようになっている機能だ。
サウンドプレイヤー機能
先述した通り、本作のサウンドは秀逸だ。そんな本作のサウンドを自由に聴ける機能が収録されている。その数、全74曲。
さらに、Switchパッケージ版の予約特典には、初代「かまいたちの夜」の楽曲を手掛けた加藤恒太氏によるシリーズ1作目のBGMアレンジ20曲を収録したサウンドトラックCDが付属するので、こちらも要チェックだ。
マルチセーブ機能
各シナリオで10個のマルチセーブが可能となっている。重要な分岐を選ぶ際にセーブを分けられるようになっているので、有効活用しながらトゥルーエンドを目指そう。
“シナリオごとに”10個なので、残りスロットを気にせずどんどんセーブを分けていこう。
ミステリーが好きなら一度は手に取ってみてほしい名作
さて、ここまで本作の魅力をお伝えしてきたが、いかがだったろうか? ミステリー作品という事で、物語のネタバレを避ける形で魅力をお伝えしてきたが、各シナリオのストーリーは、展開はもちろんトリックまで非常に作りこまれたものとなっているので、ぜひ一度読破してみてほしい。
サブストーリーまで含めると、三日月島の真相編では90個ものエンディングが見られる。コンプリートを目指してみるのもまた一興だろう。
公式サイトでは店舗別のオリジナル特典などの情報が公開されているほか、先述した通り、Switchパッケージ版を早期購入した人にはオリジナルサウンドトラックが付属するので、こちらも要チェックだ。
名作と名高い「かまいたちの夜」シリーズを一挙にプレイできるソフトとなっているので、興味が出た人はぜひ、手に取ってみよう。
(C)Spike Chunsoft/我孫子武丸/田中啓文/牧野修
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