2024年11月23日に開催された「CEDEC+KYUSHU 2024」より、「ゲームを作ろう〜ゲーム開発で得られるもの〜」のセッションをレポートする。

目次
  1. ゲーム開発で得られるモノ
  2. ゲーム開発を継続するための環境作りが重要
  3. 初めてのゲーム開発で大事な事

ゲーム開発を通じた実践的なスキルアップについて、九州産業大学の隅田康明氏が解説。プログラミングやデザインの上達には継続が重要で、最初は簡単なゲームから始めることを推奨。開発を楽しむことを重視しつつ、就職活動でも活かせる実績作りまでのステップを具体的にアドバイスした。

ゲーム開発で実践的なスキルを習得――九産大・隅田氏が教える初心者のための道しるべ【CEDEC+KYUSHU 2024】の画像

ゲーム開発は、プログラミングやデザインなどの技術を実践的に学べる優れた手段として注目されている。しかし、初学者がゲーム開発に挑戦する際、どのように始めればよいのか、何に気をつければよいのかわからず、途中で挫折してしまうケースも少なくない。

九州産業大学で「ゲームを作ろうラボ」の指導教員を務める隅田康明氏は、多くの学生の指導経験から、初心者がつまずきやすいポイントと、それを避けるためのアプローチについて解説。ゲーム開発を通じたスキルアップの方法から、就職活動での活用まで、具体的なアドバイスを語った。

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ゲーム開発で得られるモノ

プログラミングもグラフィックも、継続することが上達への近道であり、ゲーム開発は興味を持続させやすい題材であるため、自然とスキルアップにつながっていくと説明があった。

プログラミングとデザインスキルの向上において、最も重要なのは実践量だと語り、プログラミングが上達するための一番の近道は書くことであり、ある程度のレベルまでは書いたコードの行数がそのまま実力に直結するとのこと。

企画力についても、実際に作りたいものを具体的に書き起こし、それを発表する経験を重ねることが重要だと説明する。

また、特にチーム開発では、報告・連絡・相談の重要性について強調があった。指導経験から、定期的なチーム内でのコミュニケーションが取れているプロジェクトは、高い確率で成功に至ることが分かったと語る。これができるチームは大抵良い結果を出しているとのことだ。

就職活動においても、ゲーム開発経験が非常に強力なアピールポイントになると指摘する。

特に面接では、チーム開発の経験についての質問が必ず出てくるとのことで、学生時代からチームでの開発経験があり、適切な報告・連絡・相談ができることは、企業から高く評価されるそうだ。

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ゲーム業界以外を志望する場合、成果物だけでなく開発過程のアウトプットが重要になると語る。ブログでの開発記録や、制作過程の共有、GitHubでの要素技術の公開などが効果的だという。完成したゲームのクオリティはそれほど重視されないものの、もちろん、高ければ高いほど良いとのことだ。

一方、ゲーム業界志望の場合は異なるアプローチが必要だと説明があった。まず制作本数を重視する必要があり、数多くの作品を作り、一定のレベルを満たす作品を安定して制作できることを示すことが重要だという。また、志望する会社や業界によって求められる要素は異なるため、それらのニーズに合わせたポートフォリオ作りが必要になると締めくくった。

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ゲーム開発を継続するための環境作りが重要

ゲーム開発において最も重要なのは継続することだと語る。楽しく続けられれば自然と成長できるため、開発自体を楽しめる環境作りが大切だとのことだ。

初心者向けの開発ツールとして、いくつかの選択肢が紹介された。

「ティラノビルダー」はノベルゲーム開発に、「RPGメーカー」シリーズはRPG開発に適している。特に「ナビつき!つくってわかるはじめてのゲームプログラミング」を強く推奨しており、ノードベースのプログラミング的思考が学べる点を高く評価していた。近年ノーコードツールが増加傾向にあることから、このような考え方を学ぶことは重要だと指摘する。

それらが、物足りなくなってきた段階でのステップアップとして、主要なゲームエンジンについて解説があった。ゲームエンジンとは、ゲーム開発に必要な機能や素材、プログラムをまとめて提供してくれるソフトウェアだと説明する。大手ゲームメーカーも利用するUnityやUnreal Engineなどが代表的だという。

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プログラミングを学びたい場合は、UnityかUnreal Engineがおすすめとのこと。Unityは2Dゲームやスマホゲーム開発に強く、日本語の情報も豊富だという。

一方、Unreal Engineはよりリアルな表現が得意で、ブループリントによるノーコード開発が可能だと説明があった。だが、日本語の情報が少なめなのはネックとのことだ。

プログラミングに興味がない場合は、Unreal Engineが特に推奨されていた。ブループリントを使用することで、コードを書かずにある程度の開発が可能だという利点があるからだ。

Godot Engineについては、軽量でオープンソースという特徴があるものの、初心者向けとしては他のエンジンからの入門を推奨するとのことだ。

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初めてのゲーム開発で大事な事

ゲーム開発において最も重要な注意点は、最初から大作を作ろうとしないことだと強く警告する。

どうやって作ればいいのか悩む時点で、それは自分にとっての大作であり、ほぼ確実に挫折につながるとのことだ。最初の1~3本は、どう作ればいいかが明確にわかるものに留めるべきだと指摘する。

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開発の最初の一歩として、なるべく簡単なチュートリアルから始めることを推奨しており、チュートリアル後の具体的な最初のゲーム制作として、以下の2つが紹介された

まずは「マウス連打ゲーム」が最初の制作として最適だと説明する。マウス入力の取得とスコア管理という基本的な要素に絞ることで、開発の基礎が学べるとのことだ。

次のステップとして、シンプルな敵避けゲームが推奨される。左右移動やジャンプといった基本的な動きと、単純な敵の移動パターンを実装することで、さらなる理解が深まるという。

そこからのステップアップとしては、「フラッピーバード」のようなゲームが提案された。最初は、固定ステージから始め、余裕が出てきたら動的なステージ生成にチャレンジすることを提案された。その後は弾を発射したりするシューティングゲームがオススメだという。

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一方で、初心者が避けるべき要素として、以下の2点が強調された。

ジャンプのあるアクションゲームは、初心者には特に避けるべきだと警告する。スーパーマリオやロックマン系のゲームは開発に必要な要素が詰まっているものの、難易度が高すぎるため、シューティングゲームの後に挑戦することが望ましいとのことだ。

また、高機能なテンプレート(アセット)の利用については慎重な姿勢を示す。理解できないまま変更を加えても学習効果は低く、むしろ挫折の原因になりやすいのだという。特に、最初の1~3本は自分が理解できる範囲で取り組むべきだという。

ゲーム開発で実践的なスキルを習得――九産大・隅田氏が教える初心者のための道しるべ【CEDEC+KYUSHU 2024】の画像

上達を加速させたい場合の極端な例として、毎日1本のクソゲー開発が紹介された。ただし、これは個人的には辛い経験だったとのことで、楽しめる人のみに推奨するという。最後まで動くゲームを作ることに意味があるが、義務感での実施は逆効果になる可能性があると注意を促していた。

ゲーム開発で実践的なスキルを習得――九産大・隅田氏が教える初心者のための道しるべ【CEDEC+KYUSHU 2024】の画像

最後に、何より大切なのは「楽しむこと」だと隅田氏は強調する。

楽しくなくなって辞めてしまう人を見るのは非常に残念で、ゲーム開発は続けていくと必ず楽しくなってくるが、その楽しさに到達する前に諦めてしまうケースが多いと指摘する。

特に最初の段階では、楽しくないことから逃げても良いとアドバイスがあった。できることが分かってから本格的に取り組むという姿勢も、継続のためには有効だとのことだ。

隅田氏の個人的な見解として、「何も見ずに簡単なゲームを1から作れること」が初心者脱出の目安になると説明があった。

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このセッションを通じて、ゲーム開発が技術習得の優れた手段であることが明確になった。

特にゲーム業界への就職を目指す場合、実際に動くゲームを制作した経験は、何にも代え難い強みになると語られていた。ポートフォリオとして具体的な成果物を示せることは、採用面接での大きなアピールポイントとなるだろう。

今回紹介された段階的な学習アプローチを活用することで、楽しみながら実践的なスキルを身につけることができそうだ。

得意分野はビデオゲーム全般だが、メタバースやAI関連の記事も積極的に執筆中。ライター業以外にもVTuberとしての活動や、メタバース内ではラジオパーソナリティや、DJとしての顔もあり、肩書きが混雑してきたのが最近の悩み。

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