7月22日~24日にかけて、パシフィコ横浜 ノースにて開催のゲーム開発者向けカンファレンス「CEDEC2025」。ここでは、7月23日に行われたセッション「背景レイアウトから読み解く、『ELDEN RING』の世界」の内容をお届けする。

登壇者はフロム・ソフトウェア 佐藤秀憲氏と片平怜士氏。本セッションでは、「ELDEN RING SHADOW OF THE ERDTREE」「ELDEN RING NIGHTREIGN」の背景グラフィックに関する手法と、多数の活用事例が挙げられたので、これらのゲームをプレイしている人はぜひ注目してほしい。

「ELDEN RING SHADOW OF THE ERDTREE」と「ELDEN RING NIGHTREIGN」における「良い背景」とは
セッションに内容に入る前に、まず「ELDEN RING SHADOW OF THE ERDTREE」と「ELDEN RING NIGHTREIGN」について紹介しよう。
「ELDEN RING SHADOW OF THE ERDTREE」は、アクションRPG「エルデンリング」の追加コンテンツとなる。新たな舞台「影の地」で、本編とは異なるダンジョンや立体的なオープンフィールドの探索を楽しむことが可能だ。
広大なフィールドとダンジョンがシームレスにつながっていて、自由度の高い冒険ができ、DLCとは思えないほどのボリュームで話題になった。

「ELDEN RING NIGHTREIGN」は「エルデンリング」のスピンオフ作品で、「エルデンリング」の要素の一部を引き継ぎながら全く異なるゲームデザインで再構築した、協力型サバイバルアクションである。他のプレイヤーと共に広いフィールドを駆け巡り、強大な敵とのバトルを楽しむことができる作品だ。

この2本の作品を事例に、背景レイアウトの品質を上げる手法、印象を強める手法、そして背景レイアウトを作る際の制限についてが語られた。
まず、背景レイアウトとは画面内に複数の要素を配置し、それらを組み合わせて絵を構築することを指す。そして要素とは、樹木やテントのような物体はもちろんのこと、色や光といったものを含むのだという。


「ELDEN RING SHADOW OF THE ERDTREE」で最初に訪れるエリアや、赤い花畑が特徴的なエリア、雲の上に巨大な遺跡と森林が広がっているエリア、「ELDEN RING NIGHTREIGN」のボスエリアの画像が紹介され、これらの印象的なエリアを作るにあたって、佐藤氏は「単調な部分をなくすこと、視線誘導のバランスを取ることが重要」と語った。




例えば、同じシチュエーションでも、少々レイアウトを変更するだけで、ぐっと画面映えするレイアウトになるという。実際に、品質が悪いレイアウトと、「ELDEN RING SHADOW OF THE ERDTREE」で採用された良いレイアウトの画像を比較していった。
何がよく、何が悪いのかを分析をする際は、カメラをあまり動かさずに静止画として捉えることで、問題を発見しやすくなるという。例えば、品質が悪いレイアウトでは、同じ形の繰り返しや、曲線のみで構成されている点、導線が単純であること、左右対称の配置、明度色相の変化が少ない、などの点から視線の動きが単調になってしまうそうだ。

実際に採用されたレイアウトでは、同じ形の繰り返しや同じものを完全になくせていないものの、違う形だと認識してもらうために、パーツの向きを少し変えたり、スケールや高さを不規則にするという工夫をしているという。
また、色相の変化が少ない点は変わらないものの、明度の幅は広くし、コントラストを高くしているといった工夫や、目的地までをS字にして単調さをなくしたりといった工夫がされている。

ただし、品質の高いレイアウトでも同じような内容が連続すると、ユーザーが飽きてしまうため、それぞれのエリアを異なる印象にして、ユーザーが飽きにくくする必要があるのだそう。

とはいえ、ゲーム開発において品質や印象のみを優先して好き勝手にレイアウトができるわけではない。作業コストの制限や、ゲーム要件による制限を守る必要があり、限られた予算の中で製作をしなければならないため、全ての場所に高品質なレイアウトを作ることは現実的ではないとのこと。
よって、クオリティを上げる場所を限定し、集中的にクオリティを上げる場所をシチュエーションが切り替わる位置に設定していることが多いそうだ。新しいシチュエーションに切り替わった直後は、風景に注目するユーザーが多いと考え、品質にこだわったレイアウトが効果的になるという。

「ELDEN RING SHADOW OF THE ERDTREE」の実際の事例
次に、実際に「ELDEN RING SHADOW OF THE ERDTREE」の事例を挙げながらの解説が続いた。
エリア「青海岸」は、レイアウト上で大きな制限がなく、アーティストが自由にレイアウトすることができたエリアで、ビジュアルの品質のみに集中して作業できるため、アーティストの業務の中では難易度が低かったそうだ。


エリア「墓地平原」は、「ELDEN RING SHADOW OF THE ERDTREE」でユーザーが最初に訪れるエリアなため、他のエリアよりも強い印象にする必要があり、また、広大なフィールドを表現することがゲームデザインの要件だった。
ランドマーク以外の大きなパーツを配置することが禁止されており、画面の下半分を大きく変更することもできなかったという。そのため、崖の表面にグラデーションを追加して縦の方向と奥行きで色を変化させたり、ライトシャフトによる斜めの直線を重ねることで複雑な見た目にする工夫を行ったそうだ。
空はランドマークに向かって明るくすることで単調さを減らし、ランドマークである樹木はコンセプトアーティストが独特なデザインを作ってくれたため、印象を強化することができたと佐藤氏は話した。


エリア「影のアルター」は、墓地平原の隣にあるエリアで、ゲームの中でも特に陰鬱な場所になっているのだが、ここには2つの要件が存在していたという。1つ目は墓地平原と同じリソースを使うことで、2つ目はランドマークが画面に対して大きいこと。墓地平原と同じリソースを使う理由は、メモリや個数の都合でユニークなものをあまり作れなかったからだという。
その結果、墓地平原と変わり映えしない見た目になってしまい、印象を変える対応を行ったと、佐藤氏は述べた。


「ELDEN RING NIGHTREIGN」の実際の事例
次は、「ELDEN RING NIGHTREIGN」から、この作品の終点であるボスエリアを例に、背景作成について紹介された。
まず本作のボス戦は、戦闘後半で見た目がシームレスに変わるので、岩石や樹木をはやすという物理的な配置は行えない。
そして戦闘に適した地形であること、配置物で敵の行動を妨げないことも制限としてあった。つまり、どのボスにおいても、基本は空と地面を主体としなければならないという、アーティストにとってはかなり強い制限が生じたという。

複数のボスが存在する「ELDEN RING NIGHTREIGN」のボスエリアにおいて、この強い制限の中で印象の強い絵をそれぞれ作っていく必要があり、ここでは「三つ首の獣」と、「喰らいつく顎」、「闇駆ける狩人」の3つの画像が紹介された。ボスごとに、制限を遮ることなく作られているのがわかるだろう。



「ELDEN RING NIGHTREIGN」のボスエリアでは、どのボス戦でも空と地面を主体としなければならないという強い制限があった上に、各ボスの攻撃にあわせた固有の要件も加わり、通常の背景レイアウトに比べて考えることが多くあったと、片平氏は述べた。
だが、そんな強い制限の中でも品質を上げ、印象を強めるといった基本の考え方で組み上げることで、レイアウトの豊かな絵作りを行うことができたと、本セッションを締めくくった。
なお、CEDEC 2025は8月4日10時までタイムシフト配信が行われている。興味のある人は、ぜひ配信を見てほしい。
CEDEC2025公式サイト
https://cedec.cesa.or.jp/2025/
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※画面は開発中のものです。
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