千葉・幕張メッセにて9月25日~9月28日に開催されている「東京ゲームショウ2025」。初日である9月25日には、「ゲーム市場の変革者:プレイステーションストアがもたらしたもの」と題した基調講演が実施された。
ソニー・インタラクティブエンタテインメント社長CEOを務める西野秀明氏が登壇し、プレイステーションストアにおける約20年の歴史を振り返った。
魅力的なコンテンツなくしてゲーム機のビジネスは成り立たない

冒頭では、2024年12月に初代プレイステーションの日本発売から30周年を迎え、その間PS2、PS3、PS4、PS5と展開してきたことをはじめ、初代プレイステーションでは「全てのゲームはここに集まる」というキャッチコピーを掲げていたことに触れ、「魅力的なコンテンツなくしてゲーム機のビジネスは成り立たないこと。それは30年経った現在でも変わらないものであり、魅力的なコンテンツこそが、プレイステーションの原動力のひとつである」と語る。

ソニーグループにおけるプレイステーション事業も成長を続け、PS5はもっとも成功した世代であるという。プレイステーションというとゲーム機や特定のソフトをイメージされる方もいると西野氏は語るなか「体験を提供している」とし、最高のコンテンツやサービスを提供したうえ、プレイヤーのみなさんと繋がり合うことにより、全体として大きな価値をもたらすものと信じているという。加えて、プレイステーションを体験した時間はプレイヤーの人生の一部であるとし、「我々はこれからも、みなさんの人生の時間を豊かにしていきたいと考えている」と話す。

プレイステーションのエコシステムについても説明。プレイステーションの役割として、ゲームプレイヤーとゲームクリエイターをつなぐことを挙げる。そして、1億2300万アカウントのユーザーに対して、1万2000以上のゲームコンテンツにアクセスできる状態で提供。大手パブリッシャーから小規模なインディスタジオまで、4000を超えるクリエーター(ゲーム会社)が、コンテンツを提供している形になっている。

PS2の時代からネットワークにつなげる取り組みをしていた
ここから、今回の本題であるプレイステーションストアに関する話題に移る。さかのぼること19年前の2006年11月11日に、サービスを開始。ディスクビジネスが主流だった時代は小さなビジネスであったが、2024年には2兆円規模にまで成長したという。ただ、西野氏は「この規模のビジネスになるまで、イノベーションのジレンマがあった」と語る。

ここで西野氏は、PS2の本体にあった拡張ベイと、プレイステーションBBユニットを接続することにより、オンラインでゲームをプレイできる仕組みがあったことに触れ、「PS2の時代から明確な意志を持ってネットワークにつなげる取り組みを行ってきた」と語る。


PS2が発売された2000年ごろは、まだISDNが主流で、ADSLは普及し始めるぐらいの時期だったとしているなか、2003年に発売されたプレイステーションBBユニットは、40GBのハードディスクとネットワークアダプターを組み合わせた、当時としては先進的な技術を搭載。ディスクに比べてロードが早くなるといった、今では当たり前となっている機能が22年前から可能になっていたと説明する。また、オンラインでゲームプレイができるという機能を活用したタイトルとして、「ファイナルファンタジーXI」があったことにも触れられた。


今ではオンラインで離れた場所にいるプレイヤーと、コミュニケーションを取りながらゲームを進めることは当たり前だが、当時自宅の家庭用ゲーム機でできるというのは画期的なことだったという。一方で、ブロードバンドの普及も低かったことから、対応タイトルも広がらずに限定的だったが、西野氏は「ネットワークに未来を見ていた」と加えた。
「20年続くディスク販売」と「ネットワーク経由での配信」の議論と“煙たがられていた存在”

19年前の2006年にPS3が発売され、同日にプレイステーションストアがサービスを開始。PS3はハードウェアとして有線とWi-Fiの両方でネットワークにつながる機能を搭載。ただ、まだ高速のインターネットが普及しておらず、ダウンロードにとても時間がかかる状態。ネットワークに接続するメリットに対して、投資ができないという状態になっていたという。それゆえ、ディスク版とデジタル版のゲームを同じタイミングで発売できるような状況にもならず、サービス開始当初のタイトル数は十数タイトル。西野氏は「社内でもビジネスとして受け入れられていない状態」と振り返った。


加えて、PS3発売当初は、ゲームを遊んでいる間に他のゲームをダウンロードする“バックグラウンドダウンロード”に対応できておらず、後に対応するようになってからも、通信の不安定性から途中でダウンロードが止まったり、より時間がかかったりすることも多かったという。そういった状況下もあり、ディスクで発売しない小さなゲームやアドオンが主流だったとしている。

携帯型のゲーム機であるPSPやPSP goについても触れられ、Wi-Fiを使ってネットワークに接続する形であったが、当時のWi-Fiはまだ新しいネットワークの接続形態ということもあり「大ヒットには至らなかったものの、時代を先取りした挑戦だった」と振り返る。

2010年ごろには、ビジネスの方針として「20年続くディスク販売」と「ネットワーク経由での配信」が大きな議論になっていたことを明かす。ディスク販売のビジネスが安定している状況ではあるが、ネットワーク販売であれば、複数国でのコンテンツ販売が可能になることや在庫リスクがなくなること、プレイヤーのデータをバックエンドで理解できることから、関係性をより深めることが可能というメリットがあるとした。
ただ、このときは主流のビジネスとして力を入れるのが難しい状況だったとし、「ネットワークビジネスは本流のビジネスではなく、本流のビジネスを脅かしかねないもの」という厳しい意見も社内から出てきており、「煙たがられていた存在であったことは事実」と当時のことを明かした。
そうした状況ではあったが、当時ソニー・コンピュータエンタテインメントの社長であった平井一夫氏が、ネットワークビジネスを行う別会社の設立を決め、2010年に「ソニー・ネットワークエンタテインメント」を立ちあげる。ネットワークビジネス経験のあるエンジニアが在籍する米国に拠点を置き、デジタル時代の到来に向けた準備を行ったという。


ディスク版とデジタル版の同時発売が非常に大きなポイント
2013年にPS4を発売。この時期にはデジタル販売への理解が徐々に高まってきたころであり、このPS4の世代からはディスク版とデジタル版を同時に発売することが可能になった。当時ビジネスの中心にいたという西野氏は、「今でこそ当たり前だが、この同時発売は非常に大きなポイント」「“Day and Date”の言葉は忘れもしない。それが実現されたタイミング」と語る。


2013年ごろはコアユーザーに利用が限定されていたとしつつも、ネットワークビジネスは安定的に成長。本格的にビジネスの中心として推進していくこととなり、2016年には、ソニー・コンピュータエンタテインメントとソニー・ネットワークエンターテイメントが統合。現在のソニー・インタラクティブエンタテインメントになる。このころには家庭用向けのネット回線スピードも高速化が進み、より快適にゲームをダウンロードできるようになっていき、ビジネスチャンスも広がっていくと考えるようになったと振り返る。また、広いユーザーにデジタルビジネスが浸透したことについては、2018年に登場した「フォートナイト」の影響も大きかったと触れていた。


2020年にはPS5を発売。ネットワークに接続して、ゲームを楽しむことが当たり前になった時代の到来であり、プレイステーションストアもさらに進化。ストレスのないスムーズな購入体験を提供しており、使い勝手も大幅に向上。外出先などからコンパニオンアプリ「PlayStation App」からゲームを購入し、リモートでPS4やPS5本体にゲームをダウンロードすることも可能。家に帰ったらすぐ遊ぶということもできるようになったという。加えて、PS5においてPS4の互換機能搭載についても、プレイステーションストアのカタログを通じて、PS4のコンテンツの再発見や長期的な売り上げの向上にもつながっているとも加えた。


また、バックエンドでもパーソナライズ化を進め、プレイヤーひとりひとりの体験を提供することで、ライフタイムバリューを向上。これによって、地域ごとの多様なニーズに対応することが可能となり、地域ごとの成長機会の最大化につながっているという。ほかにも、各国におけるニーズの高い決済手段を取り入れ、例えばクレジットカード決済ができないユーザーなど、購入しやすい環境を整えることは、コンバージョン率の向上などで重要だとしている。


そしてさまざまな取り組みや進化によって、プレイステーションネットワークの月間アクティブユーザー数は、過去最高を実現したとしている。

素晴らしい日本のコンテンツを世界に届ける発信拠点であり続けたい
講演が終盤になり、西野氏はプレイステーションストアの未来について語る。コンテンツの収益化のあり方について、重要な変化を目の当たりにしたと切り出す。PS5の時代へ入る直前に、フリー・トゥ・プレイが急激に成長したが、現在はユーザーがプレミアムな体験に対して、対価を支払うという傾向も大きく残っていることを認識しているという。またモバイルのプラットフォームとは異なり、フルゲーム、有料のライブサービス、基本無料のライブサービスがバランスを取りながら共存していると分析する。そしてそれぞれの成長が最大化されるような戦略を展開していくことを考えているという。

また、日本のコンテンツの需要について、世界中で高まっていくとも考えているという。日本のパブリッシャーが、これまでもプレイステーションの成功にとって欠かせない存在であり、今後もそれは欠かせない存在であることを、強く確信しているという。そのうえで「これからも、素晴らしい日本のコンテンツを世界に届ける発信拠点であり続けたい」と強調。AIなど最先端テクノロジへの積極的な投資を通じて、世界水準のコマース体験の実現を目指していくという。そして「プレイヤーのみなさんにとって最高の遊び場、クリエーターにとって最高の出版の場、それを続けるために両者をつなぐのがプレイステーションストア」と話して締めくくった。


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