ゲームショップという名のテーマパーク――スクエニの販促ツールの歴史と、心躍る物理的体験の価値【CEDEC2026】

CEDEC 2026
0コメント アサミリナ

7月22日~24日にかけて、パシフィコ横浜ノースにて開催のゲーム開発者向けカンファレンス「CEDEC2026」。ここでは、24日に行われたセッション「販促ツールの活用実例の歴史とこれから ―パッケージ販売の現場から見たゲームを売ること―」のレポートをお届けする。

ゲームショップという名のテーマパーク――スクエニの販促ツールの歴史と、心躍る物理的体験の価値【CEDEC2026】の画像

SAVEプロジェクトが発掘した、開発と販売をつなぐ熱意の結晶

登壇した井上敏行氏は、1989年にスクウェア(現スクウェア・エニックス)に入社し、開発から宣伝、そして営業部門へと渡り歩いてきた百戦錬磨の人物である。現在は、社内や倉庫に眠る開発資料をアーカイブ化し、自社の文化や歴史を明文化する資料保存活動「SAVEプロジェクト」に参加しているという。

井上敏行氏
井上敏行氏

本セッションは、井上氏が営業部門から倉庫に保存された販促ツールを引き継いだことがきっかけで誕生した。実際に倉庫の現場へ足を運ぶと、展示会が開催できるほどの膨大な量のツールが保管されており、これらがゲーム史を紐解く上で非常に貴重な資料であると実感したそうだ。

販促ツール(拡販ツールやPRツールとも呼ばれる)は、ゲームソフトの発売前後に店舗で予約促進を行い、発売日以降も継続して展示展開されるポスターやPOPなどを指す。開発陣が魂を込めて作ったゲームを、いかにしてユーザーの手に届けるか。販促ツールは、単なる紙や段ボールではなく、開発と販売をつなぐ極めて重要な中間生成物なのである。

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売り場の進化と、空間を掌握する多様なツールたち

セッションでは、販促ツールの歴史と多彩な種類が紹介された。

1980年代前半はパソコン雑誌などの広告が主流だったが、1983年のファミリーコンピューター登場を機に、店舗にゲーム専用の販売コーナーが設置され始めた。当時はポスターやチラシが中心だったが、1980年代後半にPR用のテレビモニターが導入されると、モニター周辺を華やかに彩る多彩なツールが登場するようになったという。

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また、2002年にCEROの年齢区分が導入された際は、Z区分(18才以上のみ対象)のゲーム売り場を明確に分けるため、センシティブな表現に配慮した専用ツールが作られた。

筆者も当時、鍵付きのショーケースや専用POPを見て、少し背伸びをするようなドキドキ感を味わったものだが、あの特別な空間演出の裏には営業担当者たちの細やかな配慮があったのだ。

現場で活躍するツールは実に多岐にわたる。映画館でおなじみのB2サイズのポスターは最も主流であり、メインビジュアルを大きく表示して認知度を高めるのに最適である。

また、発売前の期待感を煽る予約用ダミージャケットや、立体的に組み立ててタワー状にもできるボックスPOP、商品棚の価格レールの隙間を活用するレールPOPなど、限られた空間を最大限に活かす工夫が凝らされている。

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筆者が個人的に最もテンションが上がるのが、高さ150~180センチにも達する等身大のスタンディPOPだ。特殊な裁断が必要で費用は高めになるそうだが、売り場に圧倒的な没入感を生み出し、ユーザーの撮影スポットとしても機能したという。

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なお、質疑応答によれば、数あるツールの中で最も費用対効果が良いのは、既存の型がありキャラクターやゲームの説明がしやすいポスター、カットアウト、ボックスPOPの3点になるそうだ。

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デジタル時代における「物理的体験」の圧倒的価値

近年、一部ハードのディスクドライブ非搭載化など、ゲームのデジタル販売への移行が急速に進んでいる。

しかし、井上氏は「ゲームソフトを販売する実店舗が存在する限り、ポスターやダミージャケットといった販促ツールは主流かつ定番として活用され続ける」と力強く語った。

その理由は、物理的なツールが生み出す圧倒的空間演出と実在感にある。実物のサイズ感と質感は、デジタル空間では決して味わえない深い没入感とブランドへの信頼を創出するのだ。

質疑応答においても、電子書籍が普及した現在でもコミックスの売り場でPOP展開が残り続けている現状が挙げられ、ゲームソフトの売り場としても物理的な役割とツールの重要性はそのまま残っていくのではないかという見解が示された。

電子サイネージの映像はモニターの前に行かなければ見られないが、リアルな販促ツールは店内のあちこちに配置され、私たちが歩く導線そのものをゲームの世界へと変えてくれる。この「物理的体験」こそが、消費者の意思決定を左右する決定打になるのである。

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ボタン一つでゲームがダウンロードできる現代は、確かに便利だ。

しかし、クリエイターの情熱が詰まったゲームの世界観を、現実の店舗という物理的な空間で表現し、ゲーマーの心を直接震わせてきた販促ツールたちの功績は計り知れない。

圧倒的な物量とアイデアで我々ゲームプレイヤーたちのテーマパークを作り上げてくれた営業・販促担当者たちの熱意の歴史に、ひとりのゲーマーとして、心からの拍手と感謝を送りたい。

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なお、各講演は8月4日(月)10時までタイムシフト配信での受講も可能だ。詳細は公式サイトで確認してほしい。

CEDEC2026公式サイト
https://cedec.cesa.or.jp/2026/

人生のうちの40年以上をゲームと共に生きる、人生の大半をゲームに捧げた、北の大地に住むライター。JRPGが主食。スクウェア・エニックス、トライエース、フロム・ソフトウェア、カプコン、アトラス、任天堂、ファルコム、タイプムーンあたりに目がない、ソシャゲも山のように嗜む雑食ゲーマー。ゲーム音楽やコラボカフェ、2.5次元なども大好物。北の大地に移り住む前は数多くのイベントに通い詰めた、イベント大好き人間です。 note:https://note.com/rinaasami/n/nb31a2e54c31f

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