「空の軌跡 the 2nd」レビュー:リベールの旅路に新たな意味を与え、前作の遊びをさらに広げた続編

プレイレビュー
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日本ファルコムが9月17日に発売予定のPS5/Nintendo Switch 2/Nintendo Switch/PC(Steam)用ソフト「空の軌跡 the 2nd」のレビューをお届けする。

日本ファルコムを代表する「軌跡」シリーズの原点にあたる「英雄伝説 空の軌跡」。2004年に発売された「英雄伝説 空の軌跡 FC」をフルリメイクした「空の軌跡 the 1st(以下、the 1st)」に続き、続編「英雄伝説 空の軌跡 SC」が「空の軌跡 the 2nd(以下、the 2nd)」として蘇った。

前作「the 1st」では、グラフィックをはじめとしたビジュアルを現代向けに一新するだけでなく、従来のコマンドバトルに加えてフィールド上でリアルタイムに敵と戦える「クイックバトル」を導入するなど、オリジナル版のゲーム体験を現代向けに再構築。リメイクならではの遊びやすさを備えながら、「空の軌跡」ならではの世界観やキャラクターの魅力を改めて楽しめる作品だった。

「the 2nd」でもリメイク版の方向性は受け継がれており、前作で刷新されたバトルシステムをベースに新たな要素を加え、プレイアブルキャラクターや寄り道要素なども拡張。リベール王国を舞台とした冒険をより大きなスケールで楽しめる作品へと仕上げられている。「the 1st」で生まれ変わった「空の軌跡」は、「the 2nd」でさらにどのような進化を遂げたのか。本記事ではストーリー、バトル、寄り道などを通して、本作の魅力や前作との違いに触れていきたい。

※「空の軌跡 the 2nd」のストーリーの構成上、本記事には「空の軌跡 the 1st」のネタバレが含まれるため注意してほしい。

牧歌的な冒険譚から「失ったものを取り戻す物語」へ

「the 1st」では、故郷ロレントを旅立ったエステルとヨシュアが、父・カシウスの行方を追いながら各地の依頼をこなし、さまざまな人々と出会い、少しずつ成長していく姿が描かれた。地方都市から始まった小さな旅は、やがて王国全体を巻き込む陰謀へと発展していったが、根底にあったのは、ふたりの少年少女がリベール各地を巡る「ジュブナイル」としての楽しさだった。

リベール王国を揺るがした事件を解決し、晴れて正遊撃士となったエステルとヨシュア。だが女王生誕祭で賑わう王都グランセルで、ヨシュアはエステルに自身の過去と正体を打ち明け、彼女の前から姿を消してしまったことでふたりの関係は大きく変わってしまう。

「the 2nd」は前作エンディングの直後から地続きに始まる物語で、エステルはヨシュアを連れ戻すため、再び旅に出ることになる。本作では前作の裏で暗躍していた結社「身喰らう蛇」も本格的に動き始め、リベール王国全土を再び大きな事件へと巻き込んでいく。ヨシュアを探すというエステル個人の目的と、王国を揺るがす陰謀が交差することで、物語は前作以上にシリアスかつ大きなスケールへと展開していくのが特徴だ。

「空の軌跡 the 2nd」レビュー:リベールの旅路に新たな意味を与え、前作の遊びをさらに広げた続編の画像
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前作との最大の違いは、エステルの立場が変わっていることだ。前作ではヨシュアが常に彼女の隣におり、正遊撃士を目指して互いに支え合いながらリベール各地を巡っていた。しかし、「the 2nd」では行方不明のヨシュアを追う立場になり、明るく快活な少女というエステルの土台は変わらないが、別れを経験したことで言動にはどこか影が落ちている。変化が強く感じられるのは、プレイヤー自身が前作の旅を共有しているからだろう。何十時間もかけてふたりと一緒に各地を巡り、何気ない会話を聞いて並んで歩く姿を見てきたからこそ、ヨシュアがいなくなった後のエステルの寂しさが実感として伝わってきた。

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旅の手触り自体にも変化があり、「the 1st」では、エステルたちが徒歩でリベール各地を巡り、地方ごとに異なる街の文化や景色に触れること自体が物語の魅力で、ロレント、ボース、ルーアン、ツァイス、グランセルと旅を重ねる中で、人々との交流や事件を通して成長していく構成はロードムービー的な味わいを持っていた。

対して「the 2nd」では、同じリベールを舞台にしながらも、前作で強く感じられた旅情やジュブナイル的な冒険感は後退し、代わりにヨシュアの行方や「身喰らう蛇(ウロボロス)」の目的を追う緊張感が前面に出ている。また飛行船を利用して各地を移動する場面が増え、「the 1st」で強調された「自分たちの足で旅をしている」という徒歩旅の味わいが相対的に薄まった印象だ。

「空の軌跡 the 2nd」レビュー:リベールの旅路に新たな意味を与え、前作の遊びをさらに広げた続編の画像
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前作では各地方で起こる事件をひとつずつ追いながら、少しずつ大きな陰謀へと近づいていったが、「the 2nd」では序盤からヨシュアの失踪という明確な目的が提示されるため、「ヨシュアはどこにいるのか」「なぜ彼はエステルの前から姿を消したのか」「結社は何を企んでいるのか」といったフックがプレイヤーを先へと引っ張っていく。

一方で、同じリベール王国を舞台にしている以上、前作と共通するマップも多い。細かなダンジョンなどを除けば、ロレント、ルーアン、ツァイスなどの主要な街は「the 1st」で訪れた場所を再び歩くことになる。そのため前作をクリアした直後に「the 2nd」をプレイした場合、街並みやマップに既視感を覚える場面は少なくない。

「空の軌跡 the 2nd」レビュー:リベールの旅路に新たな意味を与え、前作の遊びをさらに広げた続編の画像
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前作のように未知の土地を次々と訪れる旅を期待すると、同じマップが多いことに新鮮味の薄さを感じる場面はあったが、エステルの心境の変化と結びつけているのが巧みな点だ。前作で訪れた街や出会った人々を再び目にすることで、ヨシュアを探すという現在の目的と過去の旅が重なり合う構成になっている。新しい場所を増やすことで世界を広げるのではなく、すでに知っている場所に新たな意味を与えることで物語を広げているのが「the 2nd」だ。

だからこそ「空の軌跡」が気になっているのであれば、「the 2nd」からではなく、まず「the 1st」から遊んでほしい。前作でふたりの旅を見届けているからこそ、ヨシュアを失ったエステルの物語をより深く味わえる作品だろう。

完成度の高かったバトルシステムを拡張

「the 1st」は原作をブラッシュアップしたコマンドバトルに加え、フィールド上で敵と直接戦える「クイックバトル」を導入し、クラシカルなRPGの戦術性と現代的なアクションの手軽さを両立させていた。敵の強さや状況に応じて戦い方を切り替えられる仕組みも含め、前作の時点で完成度の高いバトルだったからこそ、「the 2nd」ではシステムを変えるのではなく新たな要素を積み重ねる方向へと舵を切っている。

特に変化を感じやすいのがクイックバトルで、前作ではエステルとヨシュアを中心にしたアクションだったが、本作では他のパーティメンバーも固有のクラフトを使用できるように。さらに新要素の「ブレイブラッシュ」はクイックバトル中にブレイブゲージを消費することで、操作キャラクターと仲間が連携して強力な攻撃を繰り出せる。複数の敵をまとめて攻撃できるため、敵が密集している場面では特に気持ちよく、クイックバトルの爽快感を一段階引き上げていると感じた。

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ただし、前作のクイックバトルを別のゲームに変えてしまうシステムではなく、あくまで前作の戦い方をベースに「もう一手」を加えたような感触である。通常攻撃や回避、クラフトを使って敵を処理するという流れは変わらないため、前作を遊んでいれば操作に迷うことなく、新しい仲間を操作するときには新鮮さも感じられる仕様だ。前作の操作感を維持したまま遊びの幅を広げているため、「the 1st」プレイヤーにとって馴染みやすかった。

コマンドバトルについても、行動順や敵との位置関係を見ながらアーツやクラフトを駆使する基本は変わらない。ただ戦術オーブメントが最新型となり、クオーツをセットするためのスロットが6つから7つに増加。さらに各スロットを強化することで上位クオーツのセットや高威力のアーツが可能になり、新鮮な気持ちで編成やバトルの楽しさを掘り下げられる。なおクラフトはレベルが上がり「改」や「II」などに強化されるとモーションが変化するため、威力や効果が上昇するだけでなくキャラクターの成長を視覚的にも楽しめた。

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バトルに関する追加要素を通して、「the 2nd」のバトルは「前作を作り直した」というより、「前作で完成していたシステムを補強した」という印象だ。クイックバトルに新しい仲間や「ブレイブラッシュ」を加え、コマンドバトルではオーブメントの拡張によって編成の幅を広げるなど、既存の仕組みを活かしながら遊びの厚みを増している。前作から劇的に変化したわけではないが、続編として操作感を引き継ぐ安心感と、新しいキャラクターや要素を試す楽しさを両立したバトルになっていた。

旅の合間に楽しめる豊富なやりこみ要素

「the 1st」ではリベール各地を巡る旅自体が目的で、メインストーリー以外に遊撃士として依頼を引き受けたり、街を歩き回って話を聞いたりする寄り道にも意味があったが、「the 2nd」では釣りやカジノなどのコンテンツが増えた。

また、前作にも存在した料理は、料理によってHPやステータスを回復・強化できるだけでなく、今回から失敗した料理を敵に使用して攻撃することが可能に。料理を攻撃手段として活用できるのがユニークで、レシピ通りの料理を作るだけでなく、あえて失敗させてみたくなる遊び心もあった。

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釣りもリベールを巡る体験との相性がよく、各地の水辺で魚を釣り、さまざまな種類を集めていくことでストーリーとは別の目的が生まれており、カジノではミニゲームに興じたり、報酬を目当てに遊んだりと、シリアス物語から離れて一息ついて楽しめる場所が用意されていた。

前作も本作も基本的には、決められた物語を追っていくリニアなRPGであり、物語自体の自由度が高まったわけではない。だが釣り手帳を埋めたり、失敗した料理を戦闘で使ってみたり、カジノで景品を狙ったりと旅の合間に自分から足を止めて遊ぶコンテンツが増えたことで、収集や報酬獲得のためだけではない小さな目的として機能していた。

「空の軌跡」を次へつなぐ一作として

「the 2nd」をプレイして感じたのは、本作が現代に蘇った「空の軌跡」を次の物語へつなげていくための一作として作られていることだ。前作で現代的なグラフィックやクイックバトルを導入し、2004年の作品を現在のプレイヤーにも遊びやすい形へと生まれ変わらせたが、本作では土台を崩すことなく、物語のスケールやキャラクター、寄り道要素を広げていた。だからこそ「the 2nd」は、前作から何もかもが新しくなった続編というより、完成していた「the 1st」のゲーム体験を受け継ぎながら、「空の軌跡」という物語をもう一段先へ進めた作品だと感じた。

シリーズ全体で見ても「空の軌跡」は、その後の「軌跡」シリーズにつながる多くの要素を生み出したタイトルだ。オリジナル版から長い時間が経った現在、「the 1st」「the 2nd」と現代向けに再構築されることで、シリーズの原点を改めて遊び直せるだけでなく、これから「軌跡」シリーズに触れる人にとっても、始まりから入っていける環境が整いつつある。今回のリメイクをきっかけに、シリーズ全体へ興味を持つプレイヤーが増えていくことにも期待したい。

RPGとADVが好きなフリーのゲームライター。同人ノベルゲームは昔から追っているのでそこそこ詳しい。面白ければジャンル問わずなんでもプレイするのが信条。 X:https://x.com/sigh_xyz Bluesky:https://bsky.app/profile/sigh-xyz.bsky.social note:https://note.com/sigh_xyz

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