ユービーアイソフトより2012年4月19日に発売されるPS Vita用ソフト「ルミネス エレクトロニック・シンフォニー」。今回、「ルミネス」シリーズの生みの親であるキューエンタテインメント共同創設者兼取締役 水口哲也氏と、本作のディレクターを務めるデインドン氏にお話を伺うことができた。
「ルミネス」は、2004年にPSPで第一作が発売されて以降、ユーザーから高い評価を受け、世界中で根強い人気を誇っているパズルゲーム。
今回発売される「ルミネス エレクトロニック・シンフォニー」は、タッチスクリーンなどPS Vitaならではの機能を活かし、より直感的な操作が可能になったほか、美麗なグラフィックと有名アーティストによるサウンド、ワールドワイドなコミュニティや対戦機能などが搭載された正統進化の「ルミネス」だ。
今回、本作の魅力について水口氏、デイン氏にたっぷりとお話を伺ってきたので紹介しよう。
若いスタッフが創りだした新しい「ルミネス」
――PS Vitaで発売することになった経緯をお聞かせください。
水口氏:「ルミネス」は8年前の2004年、PSP発売のタイミングで全世界に向けて発売されたのが最初でした。その後、いろいろなプラットフォームでサービスされて、ダウンロードも入れると全世界で200万人、モバイルも76カ国でサービスされていて、フランチャイズとしては大きく育ってきたと思いますが、フレッシュな感じがずっと残っていました。
PSPが登場した時、僕らは「これはインタラクティブウォークマン」だと思いました。それまでのゲーム機はヘッドフォンジャックもついていませんでしたし、テレビの前で音楽ゲームを遊ぶとしても音楽を楽しみながらプレイする環境ではなかったので、最初にPSPが出た時はとても嬉しかったです。
いつでもどこでも、寝転がりながらなどどんなスタイルでも音楽に没頭できる環境がPSPで用意されたことで、インタラクティブウォークマンという発想からのインスピレーションで最初の「ルミネス」は作られました。
今回、SCEさんからPS Vitaが出ると聞いた時、何があっても「ルミネス」をやらなくてはダメだ、そして「ルミネス」を進化させなければいけないというシンプルな気持ちで、PS Vitaに合わせた新しい「ルミネス」を作ろうと考えました。
実は今回のプロジェクトがスタートした時は、まだ「チャイルド オブ エデン」の佳境で、僕が今回やった仕事は新しい「ルミネス」を作るためにどういったスタッフを集めてチームを作ればいいか考えることでした。
今回開発に携わったディンドンは、元々上海出身のゲームクリエイターで、UBISOFTのパリ本社でコンテンツマネージャーも務めていました。「チャイルド オブ エデン」で一緒にやって、終わった後、キューエンタテインメントに来てくれました。
数々のゲームを見てチューニングしてきて、何が面白くて何がグローバルかわかっていますので、彼がディレクターとして加入したのはすごく大きかったです。
また、プロデューサーを務めたジェームス・ミルキーは、本作で使われる34曲を選曲して流れを作ってくれまして、それが彼の功績として大きいと思います。彼がアメリカ人でプロダクトマネージャーはオーストラリア人、アーティストは日本人ですが、みんな若くて「チャイルド オブ エデン」でプレイクしたアーティストたちです。
僕達が“シナスタジア”という言葉で表現している共感覚的な気持ちよさを、「チャイルド オブ エデン」を経て掴んでくれたフレッシュな才能がここにも集まっていますし、プログラムは札幌のスタジオと一緒にやったりと、ハイブリッドでグローバルなチームが組めました。
そして、結果としてチームはいい仕事をしてくれて、本当にいいものができたと思います。海外でも評価が高いですし、僕自身も安心して、楽しみながら遊べています。
――参加したアーティストの方は過去に組んだことのある人たちなのでしょうか。
水口氏:デザイン系のアーティストで言うと、「チャイルド オブ エデン」を経験した若いアーティストがキューエンタテインメントの社内に4人いまして、シナスタジアの演出を含めて担当しました。
その内のひとりは、今から10年前、まだ高校生だった時に「Rez」をプレイして「一緒に仕事がしたい!」と追いかけてきてくれたのですが、本当にいい仕事をしてくれました。
――タッチパネルの操作は、以前出されていたiPhone版のシステムを踏襲しているのでしょうか?
デイン氏:デザインはほぼ同じですが、今回はPS Vitaの画面の面積に合わせたパラメーターの最適化が行われています。
水口氏:iPhone版はひとつの試金石にはなっています。ただ、今回大きなチャレンジとして背面を使った操作にも力を入れていますし、ソーシャルマシンでもありますので、繋がっていることの面白さも意識しています。
デイン氏:今回の一番大きなポイントは、PS Vitaのネットワーク機能を使って、PS Vita上のフレンドでルミネスをやっている人のスコアが常に表示されるようにしました。
また、全世界のプレイヤーが協力してゲーム内でブロックを消去して、毎日出される大きなブロックを消して報酬をもらう「Worlid Block」と呼ばれるモードも用意されています。実は欧米では発売以来、今までずっと毎日、「Worlid Block」は消滅していて、ファンのパワーを感じられています。
水口氏:みんなでひとつの目的を持ってプレイするというのは楽しいですよね。それを世界中で共有できるというのはなかなかないと思います。
――スコアはフレンドの一覧、もしくはランキング形式のどちらで表示されるのでしょうか。
デイン氏:両方あります。
――実際にPS Vitaで開発されての感想はいかがでしたか。
デイン氏:面白かったです。もっと時間があればもっと面白いビジョンが考えられると思います。
――背面でのタッチ操作というのは、どういった操作方法になっているのでしょうか。
デイン氏:今回、アバターはただ表示されるだけではなく、アビリティが使用可能です。アビリティの発動にはゲージを100%まで溜める必要があるのですが、背面をタッチすることでゲージを溜めることができます。
――アビリティにはどういったものがあるのでしょうか?
デイン氏:例えば、今までは繋がっているブロックを全て消すことのできるスペシャルブロックはランダムでしたが、アビリティの中にはそのブロックを出現可能なものがあります。このように、アバターごとにいろいろなアビリティが用意されています。
水口氏:苦しくなった時に背面をタッチしてスペシャルブロックを出現させて使うという、今までと違う能動的な戦術が使えます。
ほかにも、落ちた瞬間に全ての絵柄がフリップして何に変わるかわからないというスペシャルブロックも登場します。最初聞いた時は理不尽に聞こえたんですが、実際にプレイしてみると楽しくて、ルミネスの根本は変えずに面白さの幅を広げて、気持ちよさも深めていると思います。
――アバター・スキンはそれぞれ何種類用意されているのでしょうか。
デイン氏:アバターは51種類、スキンは43種類用意されています。レベルごとにコンテンツを1つ開放できるので、レベル50まで全てのレベルで何かしらのコンテンツが開放されます。
――発売後にDLCとしてアバター・スキンの配信は予定しているのでしょうか。
水口氏:それは検討中です。
――音楽と映像のシンクロというのは技術的に難しいことなのでしょうか?
水口氏:技術自体が大変というよりも、発想をロジックにして設計することのほうが大変ですね。
「ルミネス」の企画を最初に話した時には、「おまえ何いってんの?」って感じでした。ゲームを作っている人間は、連続したイメージを持つことが得意だと思うのですが、そのイメージをひとつひとつアクションに変えていかないとコードが作れないので、そのイメージを伝える必要がありました。
どういう風に伝えるか、最初はぼんやりでも何回もやっていくと自分の中でも霧が晴れていってわかってきます。相当苦しい作業なので、一回経験するともう二度と嫌だなと思ったりもするんですが、快感に変わっていったりもするんですよね。
ゲームは昔に比べるとやれることも増えてきましたが、作る上ではアーティスティックなアプローチが必要になってきたと思います。
骨の部分であるゲームデザインと僕らが大事にする気持ちよさはどこまでいってもクリエイティブな発想が必要で、このゲームをレベル的に気持ちのよい感情曲線や映画的な流れにはめていくことはできても、結局どういう音楽やビジュアルが乗るかはクリエイターの発想次第で、そこはアートの領域だと思います。
ソーシャルゲームは増えていってもゲームのインタラクティブなところはまだまだ進化するだろうし、させなきゃいけないなと思います。
――シリーズとして正統進化を続ける「ルミネス」へのこだわりはあるのでしょうか?
水口氏:やっぱり面白いものはちゃんと届ける必要がありますし、200万本売れたとしてもまだまだやってない人が世の中にいるので、自信のあるものはいろんな形で調理するのは僕らの使命だと思います。
実際、「ルミネス エレクトロニック・シンフォニー」も「ルミネス」を遊び倒した人でも楽しめると思いますし、ルミネスはどこまでも進化できると思っています。夢の中を旅したかのような感覚を味わえるパズルゲームってなかなかないと思います。
――今回のチームで開発するにあたり意識されたことはありますか?
デイン氏:僕の中にあるフィロソフィー(哲学)として、新しいものを作るために新しいアイデアを考えるより、必ず面白くなるいいアイデアを生み出したいと考えています。「ルミネス」の最新作を作ってほしいと言われた時も、面白さはそのままに、最高の「ルミネス」を作りたいと思いました。
――スタッフとの世界観の共有はどのようにされていたのでしょうか?
デイン氏:ゲーム作る上ではパーソナリティがないといけないと思っていて、ひとつのチームの中でも意見はひとつにならないほうがいいと考えています。
水口氏:それについては共感するところがありますね。単一になるよりは、あえて綺麗にまとめすぎないほうがいいと僕もゲームを作るときには意識しています。ゆらぎを起こすために、あえて別の波長を入れるというイメージです。
デイン氏:開発に柔軟性があれば、結果としてゲームにバリエーションを出せますし、パーソナリティを出せるので、「ルミネス」というゲームによく合っていると思います。
水口氏:外側から見ていると今回のチームは一体感がありましたね。パーソナリティが違っていても、それを楽しみながら作っているという印象でした。「チャイルド オブ エデン」で実現できたこと、実現できなかったことを理解して開発に取り組んでいたので、勢いがあったと思います。
――PS Vitaでの開発ということで、音楽の面で意識されたことはありますか?
水口氏:クオリティの高い原曲をそのまま使える上に、サウンドデザインが揃って、あたかも自分が音楽を作っているかのような感覚が味わえるという点では、初代「ルミネス」より格段に上がっていると思います。
発想の面でも、技術の面でも8年の間で関わっているスタッフのレベルが上がっていることを感じさせますよね。初代「ルミネス」では、背景や展開が変わるまでに少し時間を要したんですが、「ルミネス エレクトロニック・シンフォニー」では、1つの曲の中でもすごく変わっていくので、それがゲームを楽しくプレイし続けられる要因になっていると思います。
また、有名な楽曲はクオリティが高いので、聴いていると感情に訴えかけますよね。そういう力のある曲を使って作るとやっぱり力のあるものができるんだなと思いました。
本作では、電子的な音楽が集まっているんですが、オーガニックなものを含めていい曲が集まったと思います。楽曲リストを見てニヤニヤする人もいると思いますし、全然知らない人でもプレイしたら好きになってくれる人がたくさんいると思います。そういうことができるのも「ルミネス」の魅力ですね。
楽曲リスト
- Benny Benassi
- Mylo
- The Chemical Brothers
- LCD Soundsystem
- Aphex Twin
- The Art Of Noise
- Goldfrapp
ほか
――今回の収録楽曲はどなかたが決めたのでしょうか?
デイン氏:今回は僕とミルキーが選びました。
水口氏:多分相当議論し合ったと思います。というのも、曲を選定するのは楽しい作業ですが、ゲームのレベルデザインとシンクロさせるのはすごく大変なことなんです。
デイン氏:でも楽しかったです。
水口氏:音楽だけの話ではなく、音楽とストーリー、そしてレベルデザインが全部一体化して化学反応を起こすところがゲームの面白さですよね。
――選曲についてはやはりいろいろな文化圏で展開することを意識されたのでしょうか?
水口氏:もちろんです。どの国の人でも絶対に面白いと言ってもらえるものを作らなければ「ルミネス」じゃないと思います。
――最後にユーザーの方へメッセージをお願いします。
水口氏:自分が関わってきた中で今回が一番オススメです。理由ははっきりしていて、自分が深くコミットしちゃうと客観的に楽しめないんですよね。
今回は、チームを信頼して預けて、本当に面白いものに仕上げてさすがだなと思いましたし、自分の周りの人にも勧めています(笑)。買って損はさせないゲームになっているので、誰にでもオススメできる自信作です!
デイン氏:これからも「ルミネス」はどんどん進化していくと思います。本作のメインモードには、「Voyage」という言葉を使っていて、ある意味「ルミネス」というゲームは、感覚的に“旅”に近いものだと思っていますので、僕も次の旅を楽しみます(笑)。
――ありがとうございました。
試遊レポートもお届け!
今回のインタビューに合わせ、本作を実際にプレイする時間も頂いたので、そこでの感触についても軽く触れておこう。
筆者は「ルミネス」シリーズを今までプレイしたことはなかったので、今回が初めてのプレイとなったが、音と光で表現されるゲームのイメージだけではなく、パズルゲームとしてのやり応えも感じられた。
基本的に4つ以上のブロックで四角形を作ればブロックを消すことができるが、積み上がっていけばいくほどそのスペースを確保するのが難しい。インタビューでも触れられていたスペシャルブロックを使ったりしてある程度は続けることができたが、今回のわずかな時間でのプレイではなかなか上手くはできず、ついつい仕事を忘れて熱中してしまった。
また、タッチスクリーンでの操作も体験したが、わずかなプレイ時間ではタッチでのブロックの移動、回転に慣れることはできなかった。しかし、こちらも慣れてくるとスムーズに、まさに自分で音をコントロールするような感覚が味わえるのではないだろうか。
何より、イヤホンジャックを通しての音楽とプレイとの融合、友達から世界中のプレイヤーまで幅広いコミュニティ要素など、実際にプレイした時に楽しめる要素がたくさん用意されているので、発売後に改めて触ってみたいと感じさせる内容だった。
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