ニトロプラスが2012年7月26日に発売を予定しているPC用ソフト「ギルティクラウン ロストクリスマス」。発売を間近に控えた本作のシナリオを務めた鋼屋ジン氏へのインタビューをお届けする。
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本作は、TVアニメ「ギルティクラウン」のスピンオフ作品として、ニトロプラスが制作するアドベンチャーゲーム。原画は中央東口氏、シナリオは鋼屋ジン氏、主題歌はいとうかなこさんが歌唱するなど、ニトロプラスを代表するスタッフが集結していることでも注目の作品だ。
発売を間近に控えた今回、シナリオを担当した鋼屋氏に、本作の話のみどころやTVアニメの脚本として参加した際の感想などを伺った。
アニメの放送に合わせて裏話を展開するという案も!?
――「ギルティクラウン ロストクリスマス(以下、ロストクリスマス)」のシナリオを担当されることになった経緯をお聞かせください。
鋼屋氏:Production I.Gの「ギルティクラウン」制作チームの方から「ゲームを作りませんか」というお話を頂いたときに、ニトロプラス社内で話し合った結果、「鋼屋ならばこういった作品に合っているだろう」というかたちで、私に白羽の矢が立ったのがきっかけです。
――アニメーションというかたちで原作があるタイトルのシナリオを担当されるということで、意識した点はありましたか?
鋼屋氏:お話を頂いたときは、まだアニメの「ギルティクラウン」自体が企画段階で、設定もおおまかなところはできていたものの、まだ固まっていない状態だったので、その中で作品の雰囲気やテーマをどう拾っていって、どういった切り口ならゲームに向いているのかを探るのが、最初の仕事でした。
――その時から、10年前の「ロストクリスマス事件」を取り扱うことは決まっていたのですか?
鋼屋氏:いくつかある案の一つという感じでしたね。例えば、アニメの話と話の間のインターミッションという案もありましたし、アニメの放送中、公式サイトで放送話の裏話を毎週ダウンロードするかたちで展開するという案もありました。
その中から、10年前にロストクリスマスというとても大きな事件があったので、そちらを題材にしようと決めたのが2011年の春くらいでした。
――8月に発表された段階では、まだ具体的な内容は決まっていなかったのでしょうか?
鋼屋氏:そうですね。ただ、スクルージやキャロルといったキャラクターや、ストーリーの流れはほぼ決まっていましたね。あとはアニメ本編との整合性が確認でき次第、本格的に進めていくというかたちでした。
――アニメの脚本なども早い段階からいただいていたのでしょうか。
鋼屋氏:アニメ本編の最新のシナリオを確認するために、初期から本読み(アニメのプロットや脚本などの打ち合わせ)に参加していました。だからこそ、アニメ本編の脚本を一部担当することになったのですが。
ゲームとアニメそれぞれで描かれる「ロストクリスマス事件」
――すでに公式サイトなどでは出ていますが、改めて本作のストーリーの概要についてお聞かせいただけますでしょうか。
鋼屋氏:10年前のロストクリスマスという事件によって、アポカリプスウイルスに侵され、国としての機能を失った日本がGHQに保護されるというのがアニメ本編に繋がる流れですが、ではその10年前に裏側で何があったのかというところを描いたのが、「ロストクリスマス」になります。
ダァトの研究施設でヴォイドゲノムの実験体として肉体的な改造を受けた、集(アニメ主人公の桜満集)と同じ能力を有しているスクルージと、同じく実験体であるキャロルが、研究施設から逃げ出すという脱走劇と、彼らがロストクリスマスの現場に居合わせた時に何が起きたのか、ということが描かれていきます。
――アニメの終盤に出てきたダァトは最後まで謎の多い組織でしたが、キャラクターがダァトと関わりのあるゲーム本編で、組織の裏側が見えてきたりはするのでしょうか?
鋼屋氏:組織的には秘密結社です(笑)。10年前に何をやっていたのかというのはわかりますし、アニメに登場した謎の少年・ユウも登場する場面があります。
スクルージとキャロルは、ダァトの追っ手から逃げたり、逆に情報を求めて自ら接触したりします。そしてロストクリスマスの日、ふたりの運命は決することになります。
――ロストクリスマスというひとつの終わりが見えている中でのお話ということで、どういったかたちでそこに向かっていくのかは気になるところです。
鋼屋氏:ロストクリスマスという事件自体が確実に起きてしまった悲劇であるので、その中で彼らがどう生きたのかを描いています。
――アニメの視聴者にとって、話の中で注目してほしいポイントはありますか?
鋼屋氏:正直ネタバレになってしまうのであまり言えないのですが、当たり障りのないところで言うと、アニメ本編で描かれていた場面の裏側で、スクルージたちが集たちとニアミスしているという場面が度々描かれます。それを読むことでアニメ本編とどのように関わってくるのかがわかると思います。
ヴォイドを通じてのゲームならではのテーマの追求
――公開されたOPムービー上で、シナリオを海法紀光さんが担当されているという情報がありましたが、どういった経緯で参加されることになったのでしょうか。
鋼屋氏:前々からニトロプラスとは関わりの深いライターさんで、過去に「塵骸魔京」の外伝小説を書いていただいたりと、度々一緒にお仕事させていただいていました。
今回は、特典としてついてくるOVAの脚本をお願いしていまして、その流れを受けて、ゲーム本編のほうでもサブライターとして参加していただいています。
OVAの場面写真 |
――サブライターとして入られたのは、いつ頃になるのでしょうか?
鋼屋氏:ゲームについては今年の5月頃になりますが、アニメについてはもっと早い段階から参加されていました。海法さんにはその頃からゲームの内容をお話していたので、手伝っていただくのに最適な方であるということで、お願いしました。
実際に海法さんのアイデアが強く出ているシーンもありまして、ヴォイドについても、OVAに登場する分を含めると、半分近くが海法さんのアイデアですね。
――作品内に登場するヴォイドの数はかなり多そうですね。
鋼屋氏:スクルージは集と同じく、相手からヴォイドを取り出して戦うという能力者なのですが、失敗作なので、右手で触れようとすると、相手がキャンサー化して死んでしまうという欠点があります。
ただ、唯一キャロルの中からだけはヴォイドを取り出せるということで、それがなぜなのかということが、お話のひとつのキーになっています。
そして、もうひとつの謎として、ヴォイドは1人ひとつしか持っていないのに、なぜキャロルの中からはいろいろなヴォイドが出てくるのかという謎もあります。
――実際、作中に登場するヴォイドは使用用途などさまざまなものになっているのでしょうか?
鋼屋氏:いろいろな武器が出てくるので、どんなヴォイドが出てきてどんな風に敵を倒すのか、というかたちでいろいろな戦い方をするのが見どころのひとつだと思います。
「ギルティクラウン」自体がさまざまな人からヴォイドを取り出して、その能力を戦うというのが魅力のひとつだと思うので、ゲームなりに、そのテーマを追求しています。アニメ本編のおいしいところは、ゲームでもおいしい要素にしようと考えて、ただアニメ本編とは状況が違うので、シチュエーションの異なるものになっています。
刺激的だったアニメ脚本への参加
――先ほどお話しいただいた通り、アニメに脚本として参加されていましたが、その感想をお聞かせください。
鋼屋氏:「ギルティクラウン」で初めてアニメの脚本を書かせていただきましたが、ゲームや小説とは全然違うやり方で、個人的にはすごく刺激的でした。
例えば、監督の荒木哲郎さんやシリーズ構成の吉野弘幸さん、副シリーズ構成の大河内一楼さんをはじめ、いろいろなスタッフの方々が集まり、脚本を読んで、打ち合わせをしながら意見を拾っていくというかたちで毎回本読みをしていました。このように、すぐにレスポンスがあって、みんなで脚本を作っていくという感覚は新鮮でした。
もちろん、ゲームもスタッフみんなで作っていますが、脚本に関しては基本的に1人で書くものなので、その点は大きく違いましたね。とても楽しかったですし、勉強にもなったので非常にいい仕事をさせてもらえたと思っています。
TVアニメの場面写真 |
――アニメの「ギルティクラウン」では最後に物語の転換があるエピソードが多かったと思いますが、鋼屋さんが脚本として参加されているお話ではいかがだったでしょうか。
鋼屋氏:8話がある程度状況が落ち着いた場面での1話完結の話でしたが、13話は、12話までで前半の話が終わり、東京の状況が大きく変わった最初の話でした。それから18話は、学校に籠城して集が王様をやっていた話が17話までで終わり、クライマックスに向けての展開が始まるというところだったので、物語の転換になる話をやらせていただいたのかなと思います。
――初めてのアニメ作品への参加で、プレッシャーに感じたところはありましたか?
鋼屋氏:初めて担当した8話は、右も左もわからない状態でやっていたので一番プレッシャーを感じました。また、13話、18話についてもそれぞれで状況が変わるので、キャラクターがどういう気持ちでやっているのか、どういう動き方をするのかを考えるという点で、苦労はしました。
――アニメの脚本を書いたことで、ゲームのシナリオに反映された部分はありますでしょうか?
鋼屋氏:過去の話を担当したわけではないので直接的な関わりはないのですが、アニメのキーになっているところなどを拾って、印象的なワードをあえて被せている演出もあります。同じ言い回しをさせてみたりというのは、昔から私がよくやっていることではあるのですが(笑)。
アニメとは対になった「ロストクリスマス」の魅力
――「ギルティクラウン」作品全体の魅力は何だと思いますか?
鋼屋氏:ヴォイドを引き出して戦うというビジュアルが一番印象的だと思います。「ロストクリスマス」でもそれを意識しています。「ギルティクラウン」の外してはいけない要素だと思っています。
もうひとつは、やはり人間ドラマだと思います。「ギルティクラウン」の意味である“罪の王冠”の通り、アニメ版の主人公・集がいろいろな過ちを犯し、人を死なせたり、人間関係がボロボロになったりと罪を背負っていくように、ヴォイドを使うことが何らかのかたちで罪や過ちにつながっていくというテーマの部分も意識していました。
ゲームでも、ヴォイドを使ってスクルージがどう戦い、そして自分とどう向き合っていくのかというアニメと同じテーマを、別のシチュエーションで描いていくことになります。
また、ゲームはアニメ本編の対になっているところがあります。例えば、アニメ版の集は、人間関係を広げていきつつ、いろいろな友達からヴォイドを取り出すのですが、ゲームではそもそもスクルージはキャロルからしかヴォイドを取り出せないことから、逆に閉じた人間関係で語られていくという、鏡合わせの構図になるようには意識しました。
――発売をお待ちしているユーザーの方へメッセージをお願いします。
鋼屋氏:アニメ本編の対になるお話となっていますので、そういったところでアニメとの違いや関わりを楽しんでいただければと思います。また、いろんなヴォイドが登場し、敵を倒したり、ロボットが動きまわったりと、アクション映画的なスピード感が伝わっていればいいなと思っていますので、そちらも楽しんでいただければ幸いです。
――ありがとうございました。
(C)Nitroplus (C)ギルティクラウン製作委員会
※メーカー発表情報を基に掲載しています。掲載画像には、開発中のものが含まれている場合があります。
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