スクウェア・エニックスとGoogle Cloudは、「ゲーム体験におけるGoogle Cloudの生成AI活用事例に関する記者説明会」を開催。そこで、「ドラゴンクエストX オンライン」内に登場する予定の対話型AIバディ「おしゃべりスラミィ」を発表した。

今回の発表会では、Google Cloud ゲーム インダストリー グローバル ディレクターのジャック・ビューザー氏に加えて、スクウェア・エニックス「ドラゴンクエストX オンライン」ショーランナーの安西崇氏、AI&エンジン開発ディビジョン ジェネラル・マネージャーの荒牧岳志氏の3名が登壇。両社の今回の取り組みについて紹介が行われた。

破綻したコスト構造を改革するAI技術とライブサービスを統合した「Living Games」
冒頭ジャック氏より、ゲーム業界における生成AI活用について紹介が行われた。2026年の幕が開けたばかりのゲーム業界だが、ふたつの相反する見方が存在している。プレイヤー側の支出は、過去最高の1960億ドルに達しており、再成長していることがわかる。
一方、業界としては2021年以降、営業利益は年平均で7パーセント減少しており、コロナ禍前の水準を下回っているという現状だ。そうした背景には、市場の寡占化や新規参入の困難さ、開発コストの増大などが挙げられる。6年前のゲームの開発費は2017年から90パーセントも上昇。去年だけでも、コンテンツ投資額は400億ドルに達している。

ゲームスタジオは、利用可能なプレイ時間の半分以下のシェアを取り合うために、ほぼ2倍のコストを支払っていることになるのだ。このままでは、機能不全の状態に陥ってしまう。この破綻したコスト構造の中で、ゲームスタジオがどうすれば生き残ることができるのか。どうすればユーザーに新しいものを試してもらえるのか。その答えとして、Google Cloudが考えたのがAI技術とライブサービスを統合した「Living Games」だ。

ゲームは、ライブサービスと生成AIを融合させることで、これまでにない体験を生み出している。プレイヤーごとに合わせて知的に適応することができるようになり、開発者にとっても、これまでにない体験をいち早く創出できるようになる。
「Living Games」というビジョンを実現するには、3つの領域でAIの力を活用する必要がある。破綻したコスト構造を短縮するために、AIを活用することで繰り返しの多い煩雑な作業を短縮し、早くゲーム開発が行えるようになる。
データとAIを活用することで、ライブ運用や事業戦略、マーケティングなど、開発以外の領域も含めたビジネスを変革。このライブサービスの基盤に、リアルタイムのAI推論を組み合わせることでプレイヤー体験も変革することができる。しかし、こうした効率化はあくまでも課題の半分にすぎない。あくまでもゲーム業界はプレイヤーこそが主役なのだ。

従来まで、ゲームにおけるAIは倒すべき相手だった。しかし、現在ゲームは「Living Games」(生きているゲーム)へと変貌しようとしている。AIは障壁ではなく架け橋となり、ツールではなくプレイヤーのデジタルアドベンチャーのAIバディとなってくれるのである。
AIバディを友人のように感じるためには、そのやりとりも瞬時に行われなければならない。そこで活躍するのがGoogle Cloudの「Gemini Live」だ。こちらを利用することで、低遅延でマルチモーダルな会話を実現。AIがプレイヤーの言語を理解するだけではなく、同時にそのゲームプレイも見ることができるようになるのである。
「Gemini Live」は、Google Cloudのハイパーコンピューター上に構築されている。高性能なだけではなく、コスト効率にも優れているところが特徴だ。ひとりでゲームを作るインディ開発者から大規模な開発スタジオまで、1対1の感覚を維持しながら数百万人のプレイヤーに対応することができるのだ。

「Gemini Live」でコンパニオンロジックを構築することで、イキイキとしたキャラクターやサポート役、完全にパーソナライズされたゲームプレイを実現することができる。開発者は、数千行にもわたる会話ツリーを作る代わりに、世界観作りや設定に多くの時間が割けるようになるのだ。
Google Cloudが目標としているのは、キャンバスを提供することであるとジャック氏はいう。これは、プレイヤーがひとりで冒険しなくてもすむという、未来を描くためのキャンバスだ。Googleは、10年以上にわたりゲーム向けAIの最前線を牽引してきた。ゲームのための強化学習から、最先端のインタラクティブな世界モデルにいたるまで、ゲームはAI研究の中心にあったのである。
AI搭載のライブサービスは、Google CloudのDNAそのものでもある。そして、これらは自社のライブサービスで大規模に検証されているだけではなく、すでに実証済みとなっている。

性格診断で自分だけのバディが生まれる!
ここから今回の本題ともいえる、「ドラゴンクエストX オンライン」のGoogle Cloudソリューション投入に関する紹介が行われた。「ドラゴンクエスト」シリーズは、1986年にファミコン向けに発売された初代から2017年に発売された「ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて」までのナンバリング11作品のほか、100を超えるタイトルを生み出したIPだ。全世界でのシリーズ累計は9700万本以上の出荷とダウンロード販売を達成している。
今回のメインとなる「ドラゴンクエストX オンライン」は、2026年8月2日で正式サービス開始14周年を迎えるMMORPGだ。現在でも、月間数十万規模のプレイヤーがゲームを遊んでいる作品となっている。

この14年間で様々な要素を追加してきた「ドラゴンクエストX オンライン」だが、開発当初のコンセプトは「ドラゴンクエスト好きが集まる遊園」だった。しかし、この10年以上の歳月で遊園地の規模もかなり大きくなってきた。
その結果、新規ユーザーがどこから遊べばいいのか分からない状況になってしまったのである。そうしたことがないように、オンラインゲームならではの新しい要素を付けたいと考えた。そこで生まれたのが、今回発表した対話型AIバディの「おしゃべりスラミィ」だ。

流れとしては、簡単な性格診断をした後に「ぶきみなたまご(だいじなもの)」をもらう。それが孵化してスラミィが生まれてくる。この性格診断によって、スラミィの性格がどんなものになるのかといったことも決まってくるのである。

スラミィは、プレイヤーのキャラクターがアストルティアの世界に生まれてからずっと見守っているという設定だ。そのため、プレイヤーがすでに忘れてしまったようなことも覚えている。AIチャットのように「何かオススメのコンテンツある?」と聞くと、それに即した答えも返してくれる。その手順も細かくアナウンスしてくれるため、冒険の目的を失ったときなどにも役に立ってくれそうだ。

ちなみに、意外とAIに話し掛けるというのはプレイヤーにとってハードルが高いという側面もある。そこで今回は、AIに対するハードルを下げるために専用のスタンプを用意している。こちらを選ぶだけでも、基本的な会話が楽しめるようになっている。

プレイヤー側からだけ話しかけるのではなく、スラミィからも話しかけてくることがある。たとえば、新しい衣装を身につけたときに、その感想を話してくれたり、自分の見た目を変更してそれが似合っているかどうか聞いてくることがあったりするといった感じである。

ざっくりまとめると、ゲーム内のチャットシステムを使ってAIバディのスラミィと話ができるのが「おしゃべりスラミィ」である。今回公開されたものは、まだ開発中のものとなっており、話し方がたどたどしい部分もあった。それらも含めて、これからブラッシュアップされていく予定だ。
ちなみに、このスラミィとの会話はプレイヤーのみが見られるものとなっている。そのため、他のプレイヤーとスラミィの会話などは見ることができない。まさに、自分だけのバディとして寄り添ってくれるのである。本企画は、当初より友達として交流できることを重要視してきた。Google Cloudとミーティングを行ったときも、「友達」という言葉と「バディ」という言葉で、同じ方向を向くことができたことからスタートしている。

カスタマイズ可能なGoogle Geminiでゲームの世界観にあった回答が可能に
続いて荒牧氏より、この「おしゃべりスラミィ」でGoogle Cloudの機能がどのように使われているのか紹介が行われた。「おしゃべりスラミィ」は、Google Geminiを活用することで生まれたAIバディだ。スクウェア・エニックスでは、10年以上に渡ってゲームに関するAIの実装や研究を行ってきている。

その中でも最先端の実績を持つのが、荒牧氏が所属しているAI&エンジン開発ディビジョンである。同ディビジョンと、「ドラゴンクエストX オンライン」の開発チームとが協力して、今回の「おしゃべりスラミィ」に取り組んでいる。「ドラゴンクエストX オンライン」は14年開発を続けてきたこともあり、開発チームも強固な地盤を持っている。そのため、今後はスピード感を持って開発に取り組んでいく予定とのこと。

そもそも、なぜスクウェア・エニックスがGoogle Cloudと組むことになったのかというと、「Gemini Live」はレスポンスの良いチャットサービスになっているためだ。今回の「おしゃべりスラミィ」でも、こちらの機能を利用している。
Google Cloudは、「Gemini Live」以外にも処理速度に優れたサービスを持っていることから、それらを組み合わせながらユーザーからの質問に対して、レスポンスの高いユーザー体験を提供できるようになったのだ。また、Google Geminiはカスタマイズができるサービスでもある。そのため、ゲームの世界観にあった回答ができるようになった。そちらと合わせて、世界観にあったボイス生成も行える。

さらに、Google Geminiはマルチモーダルにも対応している。画面の情報や文字の情報は、AIが完全に認識している。プレイヤーがどんな行動をしているのかとか、どんな服装をしているのかといったことを認識して、回答ができるようになっているのである。
今回は、Google Cloudとパートナー体制を築くことで、スクウェア・エニックス側としてもスピード感のあるサポートを得られている。これは技術的な問題やトラブルなども含まれているが、それに加えてモックアップを迅速に提供してもらったことも、今回のプロジェクトのきっかけになっているのだ。

この「おしゃべりスラミィ」だが、クローズドベータテストの参加者を募集している。応募期間は3月21日から3月30日11時59分までだ。こちらの結果によって、製品のクオリティアップに繋げていく予定である。「ドラゴンクエストX 」プレイヤー専用サイトの「目覚めし冒険者の広場」のトピックスに詳しい内容が掲載されるので、そちらをチェックしよう!

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