【E3 2012】グリーは欧米のソーシャルゲーム市場をどう見るのか、そして今後は何を目指すのか?グリー米国法人CEOの青柳直樹氏へインタビュー

インタビュー
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アメリカ・ロサンゼルスのLAコンベンションセンターにて2012年6月5日~7日(現地時間)まで開催された「E3 2012」。グリーブースでは、同社の米国法人CEOを務める青柳直樹氏にインタビューを行うことができたので、その内容をお届けする。

――まず青柳さんの担当されている業務内容をお聞かせください。

青柳直樹氏
青柳直樹氏

青柳氏:アメリカのサンフランシスコにあるGREE Intarnationalという法人のCEOとして、主にアメリカをベースに活動させていただいています。アメリカには現在400人ほど社員がおり、そちらのチームのマネージメントをしています。

アメリカでは大きく2つ行っていることがあり、1つが今回も打ち出しているグローバルなプラットフォームを開発・運営させていただくことです。これは元々、昨年買収したOpenFeintがチームとしてあり、今回「GREE Platform」に統一したことで、日本のチームと一緒に日米共同でプラットフォームを作る作業をしています。

2つ目は自社のゲームを作ることです。こちらもFanzioを買収し、E3の会場でもいくつかタイトルを展示していますが、それとは別にアメリカのスタジオで作っている「Dino Life」や「Zombie Jombie」といったゲームもあります。

特に「Zombie Jombie」は日本でやってきたようなカードバトルゲームですが、これが順調な滑り出しです。私はこのプラットフォーム事業とゲーム事業を、アメリカで統括しています。

――欧米でのソーシャルゲーム事情はいかがでしょうか?

青柳氏:やはりモバイルという点では、日本が先行していたかなと思っています。日本の場合はiモードがあり、フィーチャーフォンの時代からモバイルでフリー・トゥ・プレイやフリーミアムと呼ばれる、基本無料でアイテムに課金していくソーシャルゲームがメジャーでしたが、アメリカを中心にほかの市場でそういったフリーミアム型が流行り始めたのは去年ぐらいからだと感じています。

一昨年までは、「Angry Birds」のように1ドルほどのお金を払ってプレイするタイプのものがほとんどでしたが、日本でもあるようなフリーミアム型が去年から出てきて、それが今年から本格化し始め、市場が立ち上がりつつあります。日本で言うと2009年から2010年頃に似た状況でしょうか。2010年だとすでに立ち上がっていたと思いますが、2009年頃がちょうど今のアメリカという印象です。

KONAMIのヒットタイトルである「ドラゴンコレクション」
KONAMIのヒットタイトルである「ドラゴンコレクション」

そして2010年に弊社をはじめ、各社のプラットフォームがオープン化して、多くのデベロッパー様が「ソーシャルゲームを作るぞ!」となり、KONAMIさんの「ドラゴンコレクション」をはじめ、大きなヒットが生まれたのが2010年ですが、そういった動きがこの年末に起きるのではないか、と見ています。

アメリカではちょうど11月や12月のクリスマスやホリデーシーズンにマーケットが盛り上がりますので、そこはモバイルであっても踏襲するかなと思っています。したがって、今年の年末までに一つ大きな伸びが期待でき、ここ2、3年かけてマーケットとしては日本以上に伸びていく、そんな市場予想をしています。

――ソーシャルゲームやスマートフォンの普及率など、日本と米国を比べると伸び率は米国の方が高いのでしょうか?

青柳氏:直近で言うと、日本がこの1年はすごく伸びていますので、単純に比較するだけだとまだ日本の方が伸びていると思います。ただ、日本の伸びは2011年が特に顕著で、2012年は少し穏やかになっていますので、2012年からは欧米のマーケットの方が伸び率という意味では高くなると思います。

GREE会員数の推移。会員数も日本より海外ユーザーの割合が増えてきている。

――今後の課題は何か、というのは考えていらっしゃいますか?

青柳氏:いくつかあると思っていますが、一つ目はグローバル化にあたって、個々のマーケットの違いを知るところです。アメリカのマーケットでヒットしたものがあっても、ドイツのマーケット、例えばApp Storeのランキングを見ても、そこにランクインするタイトルが全く違います。それぞれのマーケットに対してコンテンツを配信し、ユーザーの皆さんに使っていただけることを実現するには、かなり試行錯誤が必要だと思っています。

日本のコンテンツをそのまま輸出して上手くいく市場もあれば、上手くいかない市場も出てきます。そういう市場に対して、「ドラゴンというモチーフが駄目なら、ゾンビを使ってみよう」とか、テーマを考えていく必要があります。例えば同じギャングもののゲームでも、アメリカでは筋肉質の男性が好まれても、日本ではそういったキャラクターを自分のプレイヤーに選ばない傾向があると思います。

別にアメリカでも筋肉質のキャラクターが登場しなくてもヒットしているコンテンツはありますので、それらを一つ一つ理解し、どういうものがうまくいくのか、どう変えればいいのか、どこを変えなくていいのかを一通りやってみないといけません。もちろん、コンソールゲームだとこういうゲームが売れたというような、ある程度の仮説はありますが、実際に僕らがやろうとしているモバイルソーシャルゲームというのは、ユーザー層もコンソールのものとは違ってくると思います。その方たちがどういった反応をするのかといった学習を2012年の半ばから後半にかけて行い、年末のホリデーシーズンまでに戦える状態にしておく、というのがチャレンジとプランになります。

「Gang Connection」。マッチョではないが、アメリカナイズな姿のキャラクターが特徴的。

あともう1つは、クローバル展開でローカライズ化、カスタマイズ展開するところに加えて、受け入れられるタイプのゲームやコンテンツが異なる可能性があると思います。単純に見た目を変えればいいという話ではなく、受け入れられるジャンルとかが全く異なる可能性があり、日本では漫画の「ワンピース」や「NARUTO-ナルト-」が人気ですが、こちらでは一体何がヒットするのか、大手IPなのかそれともスポーツなのか、そういったものが国柄によって全然変わってくると思います。

また、ジャンルやモチーフ選びもそうですが、そもそもアメリカの場合、今は携帯電話というよりタブレットでゲームをやる人が結構増えていますので、画面がスマートフォンのサイズからタブレットのサイズに拡大されたときに受け入れられるゲームもちょっと変わってくると考えています。

E3でまだ制作中の「Wacky Motors」というカーレースゲームを出展しましたが、スマートフォンサイズでカーレースもいいですが、この場合タブレットの方が向いてると思います。

デバイスの多様化というのは日本より先に海外で起こるので、そういったデバイスに向けたコンテンツを作るため、「Wacky Motors」や「Doragon Ark」といった新しいジャンルを開拓しています。それこそハードコアゲームユーザーの方にも「GREEってカジュアルゲームばかりかと思っていたけれど、やるじゃないか!」と思っていただけるゲームが作れると、それがアメリカから始まり日本に入ってくるようなことも有り得ると思います。

「Doragon Ark」 「Wacky Motors」

基本的には全世界同時に配信していこうと思っていますが、ローカルマーケットを理解することと、同時にスマートフォンからタブレットのように大きな流れもあると思うので、それをちゃんと捉えられるかが重要になってきます。僕の意見ではありますが、任天堂さんは今回タブレットに似た端末を発表していると思います。彼らはテレビという大きい画面からタブレットに向かってきており、僕らはフィーチャーフォンという小さい画面から大きい画面に向かっています。

最終的にはこの2つの流れが統合され、ゲーム専用とそうではない端末の境目が低くなると思います。来年のE3では、端末のボーダーレス化がもっと進むのではないかという感じがします。それを見越して今年のうちから、特に海外マーケットからやっていくのが重要だと思うので、E3では自社のブースだけではなく、こういうコンテンツがあったらいいなと考えながら会場を見て回っています。

――E3では自社ブースの反響はいかがですか?

青柳氏:グリーブースに予想以上の人が来てくれて嬉しいです。初出展だったということもありますが、昨年初出展した東京ゲームショウ(TGS)では、GREEユーザーさんがいらっしゃる日本だったので「やれるだろう」という思惑はありました。

しかし、今回はアメリカで、しかもGREEブランドそのものがあまり浸透しておらず、あくまでアジアから来た、しかもモバイルソーシャルの会社がE3を陣取ってどうするのか、といった中でどう存在感を出すかというのがテーマとしてあったので、その中でこれだけ大きいブースが盛況なので、手応えを感じています。

――では、盛り上がりは予想以上に?

青柳氏:この状況を目指してはいたのですが、もちろん予想は最悪から最高のケースまであるじゃないですか。だから人が全く来ない不安はありましたが、来場してくださった方は、みなさんスマートフォンでゲームをするということが分かり、その不安は払拭されました。日本と違ってみんなが個別のテレビを部屋に持っている環境ではないから、というのも理由にあると思いますが、アメリカではタブレット中心に変わってきていますし、僕達のやろうとしていることと今のアメリカの状況が近づいてきているのかなと思える、ポジティブな驚きがありました。

――会場全体の雰囲気はいかがですか?

青柳氏:様々なイベントにも行っていますが、やはりアメリカでナンバーワンのゲームイベントというだけあって、群を抜いているなと思います。それに、各デベロッパー様がここ半年から来年にかけて何をやっていくのかがクリアになるので、ここに来るとゲーム業界全体が大きくわかる部分もあります。ソーシャル系を中心に出展しているのはグリーくらいなので、そこはサンフランシスコのGDCといったイベントとは違うと思いました。その両方を見ると、マーケット全体で起きていることが見えるかなという感じです。

みなさん当然ながらすごい力も入れていますので、その中の一部としてグリーが存在感を発揮できているというのも嬉しいことです。昨年、TGSでデビューしたときも会社として大きいマイルストンでしたが、やっぱり世界最大のゲームの祭典で最大級のブースを構えるというのは、グリー社員にとっても感慨深いものがあると思います。僕らがこれから、アメリカを含めて「やるぞ!」という意思表明をするには、絶好の場だったと思います。

――ちなみにご自身は普段からゲームはプレイされるのでしょうか?

青柳氏:僕は最近アメリカに来てから、「コール オブ デューティ」のような、まさにアメリカで人気のジャンルであるFPSをやっています。あとはアメリカ担当になって日米を往復することが増えてきたので、移動しているときにはDSで「マリオ」シリーズで遊ぶことも多いです。わりと幅広く、ハードコアゲームからマスゲームまでプレイしていますし、モバイルゲームでメジャーなものは仕事上、全部プレイしています。

モバイルゲームになると仕事という感じがあるのですが、コンソールゲームだと仕事を意識しつつも、趣味として楽しんでいます。昔はそれこそ家でRPGをやることが多かったですし、20代で大学生や社会人になってからはゲームをする時間があまりなくなってしまいましたが、最近またゲームに目覚め始めている感じです。

――先日「GREE Platform」がリニューアルオープンしましたが、これからグローバル化を進めるにあたって注目している国や市場はどこでしょうか?

青柳氏:当然アメリカが一番大きいので、まずはそこを必ず成功させたいという思いがあります。ただ、今回やっていて思うのは、同時にたくさんの国に配信できるというのが驚きで、それこそ中南米の国などでいきなりゲームのランキングが上がったりするので、まだあまりコンソールが普及していない地域が結構いけるんだなと思いました。

そういった地域は、中国や韓国のようにオンラインゲームがあまり発達していないので、僕達にもチャンスが大いにあり、スマートフォンでは新規マーケットに注目しています。中国よりも東南アジアではこれからAndroidが普及してくると思いますし、すでにiPhoneが普及しているヨーロッパでもいけると思っています。

リニューアルオープンしたGREE Platformの概要図

――GREEは当初はSNSでしたが、今回ゲーム寄りになってきました。今後は別の方向を考えていたりするんでしょうか?

青柳氏:GREEは元々ゲームよりソーシャル・ネットワーキング・サービス(以下SNS)を提供してきましたので、今もそこは会社において大事な部分だと思っています。ここ数年、プラットフォームのオープン化やソーシャルゲーム産業を作るという面でゲーム事業は引き続きやっていきますが、もう一度基礎のSNS部分をさらに強化していくのもいいのかなと思います。特にメインのコミュニケーション機能はまだまだやりようがあると思いますし、現在ゲームを通してGREEのSNSを使い始めてくださっている方が増えていますので、その方々にゲームと、それ以外の時間の使い方と言いますか、楽しみ方を提供することをやっていきたいと思っています。そうすると、またゲームネットワークにも波及効果があると思うので、コミュニケーション機能を強化していくのは、ゲームと合わせて会社として大事だと考えています。

もちろん会社としては、SNSとソーシャルネットワークとゲーミングネットワークの双方を高いレベルで進化させることがゴールですが、それを実現するためには単純にコンテンツだけでもダメなので、コンテンツとSNSを常に両方追求していくつもりです。また、個人的には会社としても色々な成長機会を模索してもいい時期だと思っています。

グリーが提供しているSNSはPCからモバイル中心にシフトし、さらにモバイルソーシャルゲームに参入するなど、振り返ると2年おきぐらいに会社の事業ドメインを変えています。2004年にグリーにいた人は、今のグリーを想像できないと思います。僕も2006年に入社したときにモバイルへ移っていくと思っていましたが、このスピードで会社のコア事業になり、この規模まで成長するとは考えていませんでした。

そういった新しいものは、ゲーム以外にもソーシャルコミュニケーションと結びついて伸びるコンテンツや、そのコンテンツから派生していくビジネスなど、色々存在すると思います。ソーシャルゲームは大きい存在ですが、シリコンバレーにいればいるほど新しい可能性があるなと感じることが多いので、会社としては今までやってきた組織の強さを新しい事業に振り分けていくことも考えていきたいと思っています。

ただ、ソーシャルゲームは大事な事業として育ててきましたし、僕らの中で重要なものという認識は変えず、グローバル化をやりきらないといけないと思います。やはり任天堂さんやソニーさんを尊敬します。任天堂さんは海外市場に目を向けるといったことがなかった時から「ファミリーコンピュータ」を作り市場を築かれ、その後、ソニーさんは「プレイステーション」を作り売り込みをかけ、アメリカでは3世帯に1世帯がプレイステーションを持っているような状態を作り上げました。

そういった歴史上の偉人、宮本茂さんや久夛良木健さんがいらっしゃるわけですが、僕達の新しい産業でもこのようなことを実現したいという気持ちがあります。それをやるとなった時、グリーは今最もいいポジションにいると思うので、それをやりきらないとダメだという、半分使命感のような気概を持って頑張っていきたいなと思っています。

――では最後に、その実現に向けての意気込みをお聞かせください。

青柳氏:2012年で日本のソーシャルゲームが海外においても通用することを証明し、その後、ソーシャルゲームが日本発のグローバル産業になっていくよう頑張っていきたいと思います。

※画面は開発中のものです。

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