カプコンより、2013年8月29日に発売となったシリーズ最新作、PS3/Xbox 360「ロスト プラネット 3」。今回は、イベントや動画にも登場している本作のプロデューサー「アンドリュー・サマンスキー」氏に聞くインタビュー前編をお届け。開発の経緯やキャラクター、シナリオの魅力について、あますところなくお伝えする。

カプコン情報サイト「まるカプ!」で展開してきた「ロスト プラネット 3」総力特集。2013年8月29日についに発売を迎え、すでにEDN-3rdの厳しい入植作業に突入しているプレイヤーも多いと思う。そんな諸兄に本作のプロデューサー「アンドリュー・サマンスキー」氏に開発についてお話を聞いてきたので紹介しよう。
テーマは極寒惑星「EDN-3rd」を舞台にした「原点回帰」
――Q:まずは「ロスト プラネット 3」が開発決定となった経緯を教えて下さい。
アンドリュー氏:ちょうど自分がカプコンに入社したのが2009年で、年が明けて2010年1月に、当時の「ロスト プラネット」開発責任者だった上司に「続編作るからよろしく!気になっている開発会社があるから」と頼まれました。「ロスト プラネット2」(以下、「LP2」) の開発が終わった時からすでに、続編の話は進んでいたと聞いています。
――Q:本作の大きなコンセプトを教えて下さい。
アンドリュー氏:まずは「原点回帰」がテーマです。本作は第1作「ロスト プラネット エクストリーム コンディション」(以下、「LP1」)の前の時代の物語です。「EDN-3rd」が最も厳しい環境の状態を舞台として、1作目のように「極寒の惑星」をとことん押し出していこうと考えました。
また以前より、探索要素や惑星の入植にあたっての開拓者達の苦労を描きたいとディレクターが考えていたらしく、その部分も原点に戻るといった意味で本作に入れ込みました。
――Q:開発にアメリカ「Spark Unlimited社」を迎えたのはなぜですか?
アンドリュー氏:「LP2」の開発が終了し、発売を控えていた時期に、次の作品ではストーリーを重視して、もっとキャラクターを立たせてシネマティックな表現をしたいと考えていました。もともと「LP1」は開発当初から「映画のようなアクションゲームを作る」というコンセプトを持っており、それをもっと追求したんですね。Spark Unlimited社はテレビや映画業界の出身者も多く、そこにカプコンのゲーム作りのノウハウ、「ロストプラネット」チームの経験と、Spark Unlimited社の技術・演出力を組み合わせることによって、面白い化学反応が起こるのではないかと思って、このような座組にしました。
――Q:カプコンとSpark Unlimited社ではどのようなやり取りでゲームを開発しましたか?
アンドリュー氏:最初の1年くらいは、「ロスト プラネット」チームのアートデザイナーやディレクターを何度も大阪からロサンゼルスに連れていき、Spark Unlimited社とコンセプトについて会議を重ねました。「単純に丸投げする」「仕様書を渡してただ作ってもらうだけ」ということはしたくなかったので、とにかくお互いのアイデアを出し合って、一番面白いものを落としこんでいこうと、かなり議論は白熱したときもありましたよ(笑)。
――Q:開発の期間はどのくらいですか?
アンドリュー氏:かなり長いです(笑)。2010年2月くらいにプロジェクトが始まったときからだと約3年半、実作業を開始してからの制作期間は約2年ちょっとだと思います。PS3/Xbox 360/PCの3つのプラットフォームで発売することは当初から決定していました。
――Q:開発に携わった人数はどのくらいですか?
アンドリュー氏:ゲーム制作というのは、開発の人数が変動することが多いのですが、最大だと120~130名くらいですね。そのうちカプコン側は約10名でディレクションや監修を担当しています。
――Q:アンドリュー氏の役割はどのようなものでしたか?
アンドリュー氏:自分はプロデューサーということで、プロジェクト開始時はお互いのチームが仕事をしやすい環境を作ったり、カプコン内では予算やスケジュールの管理をしました。企画やゲームの内容に関しては、クリエイターが目の前の課題に集中し過ぎて視野が狭くなったり、あまり重要でない要素にこだわってしまうような状況を、ユーザー目線に立って軌道修正することもありました。
また、発売日が近くなればスポークスパーソンとして、本作のゲームの魅力を動画や取材などで、日本だけでなく世界に発信しています。いわゆる便利屋ですね(笑)。
――Q:ジャンルを「シネマティックシューティング」としていますがその意図とは?
アンドリュー氏:本作はゲーム性だけでなく、キャラクターの演出や演技も凝ったものになっており、映画を見ているような楽しんで頂けます。その魅力をひと言で伝えるジャンル名として「シネマティックシューティング」としました。
ヒーローでも軍人でもない、より人間臭く没入できる人物像を
――Q:本作の舞台は前作「LP1」「LP2」より以前ということですが、なぜこの時代に設定したのですか?
アンドリュー氏:やはり「ロストプラネット」世界の原点を描こうと。1と2でもNEVECや雪賊などのキーワードも出てきたんですが「対立している」という情報だけで、ほとんど説明がなかったんですね。そこで「ロストプラネット」の世界のオリジンストーリーを作ろうと考えました。
――Q:シナリオを作る際に特に苦労した点は?
アンドリュー氏:過去のシリーズ作品との整合性を取るのが難しかったですね。シリーズの整合性を保ちつつ、独立したゲーム、ドラマとしての面白さを追求するのには、相当苦労しました。でもその甲斐あって、本作にはプレイをしていて「そういうことだったのか!」と「LP1」&「LP2」につながっていく要素もしっかり盛り込まれています。特にわかりやすいのが「LP1」の冒頭にも出てくる、主人公「ウェイン」の父親「ゲイル」で、本作では彼が若かった頃を描いており、ジムと物語でも絡んでいきます。
――Q:シリーズを通して極寒の惑星「EDN-3rd」を舞台としたのは?
アンドリュー氏:これは外せなかったですね。「EDN-3rd」「NEVECと雪賊の2つの勢力」「エイクリッド」「ロボット」がすべて揃っていないと「ロストプラネット」とは呼べないんです。
――Q:本作の主人公・ジムはNEVECに所属していますが、敵対する雪賊との交流が頻繁に描かれていますね。これはなぜですか?
アンドリュー氏:実は本作では「雪賊」という呼び名すら一般化はしていません。NEVECはEDN-3rdのサーマルエナジーを搾取して儲けようという分かりやすい企業ですが、本作ではそんなにNEVECが「悪い企業」のイメージはあまりなく、その先でなぜNEVECが変わっていったのか、という展開も描いています。また雪賊は環境を大事にし、EDN-3rdの生命の源「サーマルエナジー」をある種、原始宗教のように惑星自体を崇拝しているような人々なんです。未来で複数に枝分かれしていく雪賊の根源のような人たちを描いているのでドラマ性も広がっています。主人公のジムはNEVECの作業員ですが、コロニスにいる仲間も大事だし、雪賊の言い分も理解できる…と少しずつ葛藤を続けていきます。
――Q:雪賊の間で流行している「ワトリング病」とは?
アンドリュー氏:単なるデタラメな病気です(笑)。なんらかの設定が必要だったのであまり深くは設定を作っていないんです…。雪賊は長年物資の補給を受けておらず、惑星にあるもので生活しており、ジムへの特効薬を持ってきて欲しいとミッションとして頼まれるもので、どのような症状か、などは劇中ではあまり触れていないです。おそらくNEVECの社員には伝染らないと思いますが(笑)。ただ、この設定が重要なのは、NEVECの社員であるジムが、雪賊と初めて遭遇する際に侵略者のように扱われてしまうというところです。その疑惑を晴らすために薬を提供する、という「きっかけ」のための設定です。
――Q:「LP2」で登場した「傭賊」「林者」などは登場しますか?
アンドリュー氏:「1」以後、部分的な温暖化によってEDN-3rdの所々に人間が住めるような環境が生まれました。彼らはそれに適応していった種族なので、本作の時間軸では登場しませんね。
――Q:当初からジムはいわゆる「オッサン」のデザインだったのですか?
アンドリュー氏:本作では、よくあるヒーローとしての美少年の成長物語は作りたくなかったんです。そもそも、発見されたばかりの厳しい環境の極寒惑星に18歳くらいの少年が送り込まれるわけないですよね(笑)。1つのリアリズムの追求でもあります。ファミコン世代でいまだにゲームが大好きなクリエイターたちが作ったので、同じような年代のユーザーさん、30代~40代のSF好きな諸兄に発信したいと思っています。若くもなく、妻子持ちで、ヒーローでもすごい軍人でもないジムのような人間に親近感を持って物語に没入してもらいたいですね。
――Q:ジムのモデルとなった人物(俳優など)などはいますか?
アンドリュー氏:本作の主要キャラクターはすべて実在の俳優さんの顔を、スキャニングしてパフォーマンスキャプチャーで撮りこんでいます。リアリズムと映画らしさ、演技の説得力を考えて採用しました。パフォーマンスキャプチャーでスキャンすると顔の骨や筋肉の位置が一致するので、微妙な表情もそのままキャラクターに再現できます。また既存のゲーム制作では1人のキャラクターに対して、体の演技がうまいアクション俳優が体の動き、顔の演技がうまい役者が表情を担当、声も別の人が担当することが多いんですが、本作ではすべて1人の人間が演じています。
しかも複数の人数が登場するシーンでは、キャスト全員が集まり、ゲーム内のシーンと同じ位置で、まるで「演劇」をしているような状況で撮影しているので、ものすごくリアルな演技が可能です。映画「アバター」などと同じ手法ですね。会話(通信のボイスなど以外)なども1人ずつブースで録音していないので、かなり説得力があるはずです。台本や演技指導ももちろんしますが、アドリブや俳優のしぐさなども含まれています。
――Q:ちなみにムービーシーンの撮影だけでどのくらいの期間がかかっているんですか?
アンドリュー氏:すべてのシーンを撮るだけで2~3ヶ月かかっています。
――Q:ゲーム内で直接関係ないNPCなども人間臭いしぐさをしますが?
アンドリュー氏:非常に人間臭いですよね。冒頭でエレベーターを修理している人に近づくと「今忙しいから」と言われたり、ジムがダッシュすると「お前、何でジョギングしてるんだ?」と話しかけられたり、とにかく細かく入れ込んでいます。
――Q:前作と関係のあるキャラクターはゲイルのみですか?
アンドリュー氏:直接的に登場するのはゲイルだけですが、さまざまなところに過去作につながるポイントを仕込んでいるので、いろいろ探索してください。
またゲームを買ってゲームをプレイすると、いきなり年老いたジムが出てきますが、本作は実はジムの回想なんです。過去にどのような過ちを犯したのか、ということを未来のジムが語るシーンが随所にはさまれており、ジムの孫の存在も明らかになります。
――Q:キャラクターデザインで苦労した点はどこですか?
アンドリュー氏:気をつけた点は「多国籍」にしようということでした。地球規模で惑星に入植するということは特定の国だけが参加するわけではなく、アメリカ出身のジム、フランス出身のラロッシュ、雪賊のソウイチは日本人と、世界各国の人間が登場し、人類すべての物語ということが分かります。また、登場人物は実在の世界にいても不思議ではない人を目指しました。ただ単に美男美女ではなく、個性的でいろいろな体型や人種を織り込んで、人間臭さも表現しています。ブラドックは演じた役者さんが本当にソックリなんですよ。
キャスティングに関しては、開発で作ったキャラクターに極力似た俳優さんを探すのが大変でした。ジムを演じたビル・ウォーターソンさんは実はそこまで名の売れている役者さんではないんです。あまりに有名な俳優だと主人公のジムではなくなってしまうことが理由ですね。第1作の映画「スター・ウォーズ」のキャスティングと同じ理由です。
――Q:NEVEC作業員や雪賊などの服のデザインで苦労した点は?
アンドリュー氏:基本的に寒い地域でも活動できるようなデザインにしています。「LP1」や「LP2」のキャラクターの服装は機能がハイテクでしたが、本作ではファーや動物の革を利用しており、少しアナログな質感を出しています。ジムが来ている装備の肩の部分は日本の甲冑をモチーフにしており、和洋折衷なデザインも魅力です。
「LP2」では全員、「LP1」ではムービーシーン以外はウェインは極寒地域ということでマスクを付けていますが、本作でのジムはムービー以外のゲームプレイ中で状況によってさまざまな表情をするので、なるべくマスクを被らせたくなかったんです。最初は開発の都合でマスクを外していたんですが、PVを見て「ジムはマスクなしで寒くないんですか?」という意見をたくさん頂いて、ジムの首の襟下から熱風の出るオレンジ色のヒーターを設置したんです。
さらに、ゲーム中でジムが奥さんとビデオレターでの会話の中でもこのヒーターについての話題にもなるんです。ちなみにコロニスの中でもマスクをつけている人はこのヒーターは支給されていないということです(笑)。でもフィールドで戦っている際に緊急回避した際にはジムの体に雪が付く表現を見ることもできます。
――Q:アンドリュー氏のお気に入りのキャラクターは誰ですか?
アンドリュー氏:やはりミラですかね。可愛くて純粋なところに惹かれます。彼女はEDN-3rdで生まれ、地球に強い憧れを抱いています。ずっとジムを観察しており、ふとした時に親密になることも…。また、彼女の部屋にはさまざまな場所で見つけた地球のグッズを部屋に飾っており、そんなピュアな性格はいいですね。
――ありがとうございました。
インタビュー後編では、ゲームのグラフィックやユーティリティ・リグのデザイン、熱い戦いが繰り広げられるマルチプレイモードについて紹介!
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※画面は開発中のものです。
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