アルケミストが2013年11月28日に発売した「子供に安心して与えられるゲームシリーズ 世界名作童話 親子で読めるゲーム絵本 プリンセス編/冒険編」。野沢雅子さん、田村ゆかりさんといった豪華声優陣を起用するなど、子供のみならず声優ファンも楽しめる本作の魅力を紹介しよう。
本作は、「絵本」をテーマとして、親子で昔話から世界中の文化に触れ、楽しむことを目的に発売された知育エンターテイメントタイトル。音声は登場人物だけではなく語り部もフルボイス化されるほか、英語への切り替えが可能な「ネイティブ英語モード」や目を離した時にも安心のチャイルドロック機能、言葉と一緒に手先の発育も兼ねた「お遊戯モード」などを搭載することで、子供の年齢に合わせたさまざまな触れ方を用意している。
この情報のみでは普段からゲームを遊んでいる読者諸君があまり興味を惹かれることはないかと思うが、本作の何よりも大きな特徴となるのが、語り部として起用している豪華声優陣だ。
本作で楽しめる物語は、大人にとっても感動したり、胸が沸き立つようなものばかり。ここでは、普段からさまざまなアニメ、ゲームで声優の声を楽しんでいる自称声優好きライターの筆者が、本作の持つ魅力について紹介する。まずは、プリンセス編、冒険編それぞれで楽しめる5つの物語と、その語り部となる声優をおさらい。
プリンセス編
いばら姫
ヨーロッパの古い民話。ペローやグリムなどの童話集にも収録されている、「眠れる森の美女」としても有名な、いばらの森で100年間眠り続けたお姫様のお話。森の奥深くのお城で、悪い魔女によって長い眠りについたお姫様。100年後、美しいお姫様の噂を聞いて、王子様がやってくるが…。
この物語の語り部となるのは、「ONE PIECE」のトニー・トニー・チョッパーや「ポケットモンスター」のピカチュウなどの声を担当している大谷育江さんだ。
人魚姫
1836年に発表された、デンマークの童話作家、ハンス・クリスチャン・アンデルセン原作の童話。溺れる王子様を救い、彼に恋をした人魚姫は、人間になる薬を魔女から貰うが、代わりに声を失い、更に王子様が他の娘と結婚してしまうと、人魚姫は泡となって消えてしまうと警告されて……。けなげに王子様を慕いながらも、それに気づかれることのない、悲しい恋のお話となっている。
この物語の語り部となるのは、「うっかりペネロペ」のナレーションや「君に届け」の黒沼爽子などの声を担当している能登麻美子さんだ。
美女と野獣
1740年にG・ド・ヴィルヌーヴ夫人によって書かれた、フランスの民話。美しい娘ベルと、醜い姿の野獣の、種族を超えた愛のお話。三人姉妹の末娘・ベルが、バラを盗んだ父の代わりに、野獣のお城へ行くと、意外にも野獣は優しく接してくれたのだった。醜い姿でありながら、優しい心を持つ野獣と、それに気が付ける心の美しさを持つベル。野獣は真摯な態度で求婚するが、病気の父が心配なベルはそれを断り続けて……。
この物語の語り部となるのは、「魔法少女リリカルなのは」の高町なのはや「NARUTO-ナルト- 疾風伝」のテンテンなどの声を担当している田村ゆかりさんだ。
雪娘
ロシアに伝わるお話で、雪で女の子を作ると、そこに命が宿った、という物語。お爺さんとお婆さんはとても仲良く、幸せに暮らしていたが、子供がいないため、ふと寂しくなる時があった。ある冬の日、雪で女の子を作ると、そこに命が宿った。サーシャと名付けられたその子は、とても良い子だったが、雪でできた体は、火にあたると溶けてしまい……。
この物語の語り部となるのは、「ハヤテのごとく!」の朝風理沙や「一騎当千」の孫策伯符などの声を担当している浅野真澄さんだ。
七夕物語
7月7日でお馴染みの、織姫と牛郎(彦星)のお話。「牛郎織女」とも呼ばれ、中国では神話とされている。飼っていた牛に連れられて、織姫の羽衣を拾った牛郎は、彼女と結婚することになる。子供にも恵まれ幸せに過ごすが、織姫の母である西王母は激しく怒り、天の川を作って二人を引き離してしまい……。
この物語の語り部となるのは、「名探偵コナン」の江戸川コナンや「魔女の宅急便」のキキ/ウルスラなどの声を担当している高山みなみさんだ。
冒険編
ジャックと豆の木
「イングランド民話集」に記述されているイギリスの童話。市場へ牛を売りに行こうとしたジャックが、途中で出会った男が魔法の豆と牛を交換してしまったことから始まる冒険譚。雲の上まで伸びた豆の木を登ったジャックは、辿り着いた巨人の城で不思議な宝物を手に入れるのだが……。
この物語の語り部となるのは、「アンパンマン」のドキンちゃんや「ドラゴンボール」のブルマなどの声を担当している鶴ひろみさんだ。
長靴をはいた猫
1697年、シャルル・ペローの作である民話集に収録された物語。三人兄弟の末っ子が、亡くなったお父さんから受け継いだのは、一匹の猫。しかしその猫は人間の言葉を話す、とても賢い猫だった。猫は主人にこう言う。「あなたがもらったものは、そんなに悪いものでもないですよ。まず、私に長靴と袋を下さい」果たして猫は何を始めるのか…。
この物語の語り部となるのは、「たまごっち」のまめっちや「ドキドキ!プリキュア」のキュアエースなどの声を担当している釘宮理恵さんだ。
リップヴァンウィンクル
19世紀アメリカの小説家ワシントン・アーヴィングによる短編小説で、西洋版「浦島太郎」とも呼ばれているお話。呑気者の木こりリップは、猟をしていて辿り着いた山奥の広場で見知らぬ男たちと一晩酒を飲んで眠り込んでしまう。目が覚めて帰ると、20年もの歳月が経過していたことを知り…。
この物語の語り部となるのは、「爆丸バトルブローラーズ」のダンや「イナズマイレブンGO」の霧野蘭丸などの声を担当している小林ゆうさんだ。
西遊記
中国で16世紀・明の時代に大成した有名な伝奇小説。花果山の石の卵から生まれた一匹の猿「孫悟空」。力が強く、賢く、仙人のもとで修業したその猿は、しかしこれが手のつけられない暴れ者。これを見かねた天界の長・天帝が、使いをだして「西王母の桃畑を悪い神様が狙っているので守ってほしい」と頼む。悟空はたくさん強さをほめられ、桃畑をまもることにするが…。
この物語の語り部となるのは、「ドラゴンボール」の孫悟空・悟飯・悟天や「ど根性ガエル」のひろしなどの声を担当している野沢雅子さんだ。
シンドバッド
かの「千夜一夜物語」で語られる中でも一際有名なエピソードで、船乗りの商人・シンドバッドの最初の冒険のお話。商売のために、初めての航海へ出発したシンドバッド。ある日シンドバッドたちの乗った船は地図に載っていない小さな島へたどりつき…。陸に海に、不思議な冒険の詰まった物語の始まりだ。
この物語の語り部となるのは、「ONE PIECE」のモンキー・D・ルフィや「忍たま乱太郎」のきり丸などの声を担当している田中真弓さんだ。
本作のメインモードは画面上に表示される文章を親が直接読み聞かせたり、ネイティブ英語や漢字などに切り替えて楽しむことができる「読み聞かせモード」だと思うのだが、声優好きな我々にとってのメインは、やはり豪華声優陣が読み聞かせてくれる「オート読み聞かせモード」だろう。
このモードでは、チャイルドロック機能により、機能の設定中はオートで読み聞かせてくれるのだが、下画面のチャイルドロックの文字を長押しして止めない限りは、抑揚のあるテンポ感で最後まで読み続けてくれる。普段アドベンチャーゲームを遊んでいる感覚からすると、読み聞かせを止めることに手間がある分、無意味に語りを飛ばすことがなく、純粋にその声を楽しめるのは大きい。
また、普段は聴くことのできない声優のさまざまな声を楽しめるのも本作ならでは。例えば、「美女と野獣」で語り部となる田村ゆかりさんは、普段であれば可愛らしい役どころが中心となっているが、本作ではベルのような可愛らしい声から野獣のような野太さを意識した声、そして語りの部分では、ナレーション風に抑揚を抑えるなど、担当している声優の持つさまざまな声をひとつの話の中で楽しめるのは嬉しいところだ。
そのほか、「孫悟空」を野沢雅子さん、「シンドバッド」を田中真弓さん、「雪娘」を浅野真澄さんが読み聞かせるなど、知る人であれば思わずクスリとしてしまうツボの押さえ方も面白い。わからない人は過去の出演作品をチェックしてもらえるとわかってもらえると思うので、ぜひ。
声のプロである声優による朗読が楽しめる機会はありそうで意外と少ない。新旧のバリエーション豊かな声優陣が有名な物語を読み聞かせてくれて、それを子供とともに身近に楽しめる本作は、そういった朗読に足を運ぶ機会のない声優ファンにもリーチするものになっていると思う。時に優しく、時に激しい声で物語を盛り上げる声優による読み聞かせを、子供と一緒に堪能してはいかがだろうか。