パシフィコ横浜にて、2014年9月2日から3日間にわたって開催された「CEDEC 2014」。本稿では、9月4日に開催されたセッション「「祭り」のゲームデザイン~フリーダムウォーズのゲームデザイン・コンセプト~」の模様をお届けする。

「フリーダムウォーズ」は2014年6月26日に発売されたPS Vita向けのマルチアクションゲームだ。100万年の懲役を科せられた「咎人(とがびと)」となって、自由を勝ち取るために戦っていくという奇抜なストーリーや、ユーザーたちが全国47都市に分かれて対戦する「都市国家対戦」などの要素が話題を呼び、スマッシュヒットを記録した。

今回のセッションで講師を務めたのは、開発を手がけたシフトの保井俊之氏と征矢健太郎氏、本作のプロデューサーであるソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)の吉澤純一氏の3名。話題の人気作を制作したクリエイター陣の話を聞けるとあって、当日は多くの受講者がつめかけ、急きょ会場がメインホールに変更されるなど大盛況となった。

シフト 開発統括/ゲームデザイナーの保井俊之氏 シフト ゲームデザイナーの征矢健太郎氏
ソニー・コンピュータエンタテインメントの吉澤純一氏
パブリッシャーからの要請は「PS Vitaでブームを作れ」

「フリーダムウォーズ」の企画は、PS Vita本体がまだ開発中だった2010年に立ちあがったのだが、そのときの吉澤氏からの要請は「PS Vitaでブームを作れ」というものだった。この驚くべきオーダーに開発陣は「どうしよう……」と頭を抱えてしまったそうだ。

吉澤氏自身もこの要請がムチャ振りだという自覚はあったという。だが、かつて「みんなのGOLF」や「グランツーリスモ」といった革新的なソフトで、SCEがブームを巻き起こしてきたことを挙げ、「PS Vitaでブームを起こす! そんなソフトを作りたい!!」という思いをクリエイターたちに聞いて欲しかったのだと熱く語った。

この吉澤氏のオーダーを受けた保井氏ら開発陣は、まず「ブームとは祭りである」と分析。「祭り」とは「ゲームの得手不得手を問わず誰でも楽しめる」、「ユーザーも制作者も、みんなが一緒に遊んで盛り上がれる」ものと定義した。保井氏によると、この開発ビジョンの共有にはかなりの時間をかけたそうだ。

戦略を実現するためのキーワード「ゆるい連帯感」

では、この「祭り」というコンセプトをどのように実現させるか。保井氏は大局的な「戦略」と局所的な「戦術」という、ふたつの面から平行して進めていったと語る。

戦略面ではユーザーのモチベーションのど真ん中になるものとして、「非同期の大勢で成立するあそび」というテーマが定められた。そして、このテーマを実現するために生み出されたキーワードが「ゆるい連帯感」だ。この言葉は本作の開発過程において大きな指標となっている。

戦略のテーマの根拠となったのは、「ブーム化する遊びの要件」「3年半後のPS Vitaの市場想定」「させたい体験」の3つ。まず、「ブーム化する遊びの要件」だが、これを実現するには、参加してもよいかなと思える「ハードルの低さ」。忙しい人でもちょっとずつ関われるなど「スキマ時間を使える」。今日は戦闘をガッツリ楽しむ、素材集めに専念するというように「テンションで遊びが選べる」。みんながやっているから私もやろうといった、自分が能動的に関わろうと思える「チーム構造」という4つのポイントをクリアする必要があったという。その上で、これらの4つを束ね、「いつでも祭りに参加している実感が得られる」ようにするものが、先に挙げた「ゆるい連帯感」なのだと保井氏は述べた。

「3年半後のPS Vitaの市場想定」だが、開発がスタートした2010年頃はちょうどマルチプレイの市場が成熟してきた時期で、PS Vitaでブームを起こすためには、このマルチプレイにどのような要素をプラスするかが重要になると開発陣は考えた。これは「ゆるい連帯感」を生み出すためのポイントにもなる。

このプラスアルファの要素となるものが「させたい体験」で、スタッフ間でミーティングをくり返した結果、「愛するモノのために戦う」がメインのモチーフとして定められた。ただ、このままでは、ストレート過ぎて「ちょっと恥ずかしい」ので、あまり重すぎず、かつユーザーモチベーションを喚起する要素とするため、「国・地域を代表して戦う」という形で採り入れることになったという。

2010年はサッカーワールドカップの南アフリカ大会が開催された年で、征矢氏も自分が戦っているかのような経験をしたそうだ。そこから「国は地域を代表する」ことで生み出される「ゆるい連帯感」が、重すぎないちょうどいい「愛するモノ」として定義されたと保井氏は語った。

かくして、これらのコンセプトを具現化するものとして、共同体に属して戦う「都市国家対戦」が生み出された。「フリーダムウォーズ」は、「懲役100万年」「奪還マルチプレイアクション」「全国47都市国家対戦」の3つがセールスポイントとなっているが、吉澤氏によると体験イベントに参加したユーザーの反応がもっとも良かったのが「都市国家対戦」で、自分の生まれた都市や共同体への思い入れの強さというものを改めて実感したそうだ。

実際のゲーム中では「敷居の低さ」と「ゆるい連帯感」を「都市国家序列」というランキングシステムで実現。これはユーザーが獲得したポイントが各都市に蓄積されていくポイントランキング制となっているので、「地元」に「非同期」で貢献できる。「スキマ時間」に「好きなテンション」で遊ぶという要素も満たしており、これによってユーザーに遊びの選択肢を提供できるのだと保井氏は総括した。

戦術面でも「愛するモノのために戦う」がテーマに

次のテーマは戦術要素となる「マルチプレイのゲームデザイン」について。ここでは、まず開発初期に作られたコンセプトムービーが公開された。これはパブリッシャーにゲームのビジョンや基本コンセプトなどを紹介するためのもので、保井氏は「ここの精度が高いことが重要」と強調していた。

実際、キャラクターや敵のグラフィックなどは製品版と大きく異なっていたが、本作のウリとなっている「奪還」や「部位破壊」といったゲームの基本システムに大差はなかった。吉澤氏も「目指すべき部分を映像化して、共有できたことが大きな成果を上げた」と語った。

では、戦術面においてはどのようなことが目指すべきものとされたのか。ここでもテーマになったのが「愛するモノのために戦う」だ。これをマルチアクションの中で実現する場合、「愛するモノがさらわれ、それを奪い合えばいいのでは」と保井氏らは考え、FPSやTPSでおなじみの「キャプチャー・ザ・フラッグ」の構造を取り入れることにしたという。これをゲームの世界観に沿って発展させたのが、奪い返すべきシビリアン(市民)を輸送する敵モンスターの「アブダクター」。つまり、倒すべきモンスターを「フラッグの入った動く宝箱」と規定したわけだ。

「愛するモノ」というテーマから生みだされたもうひとつの要素が「2体のアバター」だ。保井氏はユーザーがゲーム部分において愛するモノは、「強さ」「武器」「自分」ではないかと語り、そこに日本の特性として「キャラクター」を加えた。アバターとは本来「自分の分身」を意味するのだが、日本では「ウチの子」というように別人格のキャラクターとして愛する傾向が強い。

そこで生み出されたのが、プレイヤーのパートナーとなる生体アンドロイド「アクセサリ」で、2体のアバターを自分のキャラクターとして愛着を持ってもらう。さらに、さらわれたアクセサリを助け出したり、逆に助けてもらったりすることで、ドラマを生み出そうと考えたのだという。征矢氏はこの「アクセサリ」の存在がユーザーの琴線にすごく触れるだろうと感覚的に思ったそうで、保井氏も自分の従属物が離れていくというのは共感を生むテーマと考えていたことから、「そこを気に入ってもらえたのはうれしかった」と語った。

「敷居の低さ」「チーム構造」も戦術の要素となっていて、これらを満たすために採り入れられたのが伸縮自在の特殊兵装「荊(イバラ)」だ。保井氏によると、荊はワイヤーアクションの導入が前提だったのではなく、「役割分担を明示化」するためのものだったという。

つまり、荊を敵に撃ち込んで「この敵と戦う」と意思表示することにより、「一緒に戦う」「別の場所に行く」「市民を助ける」など、ほかのプレイヤーの戦術選択を助けることを狙った仕様だったそうだ。互いに協力してアブダクターをバラバラにする「溶断アクション」も、「誰かが荊で注意を引き、その間に他の者はこの部位を溶断する」など、プレイヤー同士の役割分担を促すためのもので、同時に巨大なマンモスに原始人が群がっているような感覚の再現を目指したと保井・征矢両氏は説明した。

補足として、グラフィックデザインにおける戦術の説明も行われた。「フリーダムウォーズ」のような新規IP(完全新作)は人気シリーズに比べて認知されにくいので、開発における戦術立案のための合宿を行ったそうだ。

そもそも、本作はシフトとディンプスというふたつのデベロッパーのコラボタイトルなのだが、吉澤氏によると開発言語から違うなど「何かひとつを語るにしても言葉が違いすぎる」そうで、両社の意識を共有化するには寝食を共にして語り尽くすくらいしなければならなかったという。

この合宿の際に市場性もテーマとなり、「買い物カゴに入れるかは初見で決まる」という結論に達したそうだ。すなわち、パッケージのデザインやグラフィックの要素は非常に大きく、新規IPは特に強く影響する。そのため、市場分析や市場調査をもとにアートを変えていき、現在の形になったのだと征矢氏は述べた。実際、初期のコンセプトアートも公開されたのだが、かなりダークなテイストが強く、現在とは大きく異なるビジュアルとなっていた。また、定性調査用として和風やゴシックホラーなど、さまざまなパターンのアートも作ったとのことだ。

開発会社自らパブリッシュワークにチャレンジ

ブームを起こすにはゲームの外への広がりも必要とのことで、そのためのさまざまな草の根施策も講じられた。そのひとつがニコニコ動画での専門チャンネルの開設で、こうした活動はパブリッシャーが行うのが一般的だが、本作では「作り手も祭に参加する」というコンセプトのもと、シフトが独自のコンテンツを発表する形が採られた。

これは「パブリッシングを一番上手く行えるのはデベロッパーではないか」という考えがあってのことで、保井氏は「大きなチャレンジでした」と、その意義を強調する一方、そうした機会を与えてくれたSCEにもお礼を述べた。

パブリッシャーの側である吉澤氏も、「ブームを起こそう」とするなら、従来にはない新しさ、楽しさを提供することが必要で、今までと同じことをやっていてはダメと語る。ちなみに、今年「フリーダムウォーズ」の名前でコミックマーケットに出展したが、これはSCEでは初めての試みだったそうだ。デベロッパーがコンテンツを作ってプロモートするというのも前例がないことだったが、吉澤氏は「ソニー・コンピュータエンタテインメントは楽しいことする会社で、それができる会社です。ぜひ、保井さんや征矢さんのように自分たちのやりたいことをぶつけてもらいたいです!」と熱弁をふるった。

反省点は従来の共闘ゲームと異なる点など説明不足な部分がかなりあったこと、難易度やレベルデザインの面でのチーム内のコンセンサス不足など。保井氏は「戦略面では一定の成果を上げられたのかなと思いますが、戦術面では局所的にいろいろとまずいところもあったと認識しています」と悔やんだ。

最後に保井氏はゲームの外の部分である「メタゲーム」に対して、ゲームの中身の部分を「インゲーム」と定義。「このメタゲームとインゲームの2軸の設計をいろいろな方とやっていく。これをデベロッパー間で主導できれば、もっと新しいものが生まれるのではないかというのが「フリーダムウォーズ」のチャレンジの本質でした」と語った。その上で、「自分たちの実力不足や問題点が見えた今だからこそ、開発者の皆様と「祭り」についてぜひお話したいです」と呼びかけ、今回のセッションのまとめとした。

最後に吉澤氏の呼びかけで、本作の合言葉である「レッツ貢献!」を会場全体でコール

(C)2014 Sony Computer Entertainment Inc. All Rights Reserved.

※画面は開発中のものです。

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