CEDEC 2014の2日目となる2014年9月3日、「消滅都市のつくりかた-半年で素敵なゲームをリリースするには-」と題して開発メンバー5名のリレー形式で「消滅都市」の制作秘話を語ってくれた。
「消滅都市」は、グリーが設立したスマートフォン向けアプリの開発や運営を手がけるスタジオ「Wright Flyer Studios」の第1弾のタイトルとしてリリースされた。
本作では、現代を舞台に消滅した都市を巡ってドラマチックにストーリーが進行していく。戦闘では、主人公とヒロインがバイクに乗り、強制横スクロールのステージを走行することになる。ステージにはスフィアと呼ばれる球体が配置されており、それを一定量集めることで攻撃可能だ。また、ステージには障害物などが出現する場合があり、ジャンプなどを駆使して避けていくことになる。
2014年5月に配信され、7月には100万ダウンロードを達成した本作だが、実はわずか半年という短い期間で制作したという。プロデューサーの澤 智明氏、リードアーティストの濱坂 真一郎氏、ディレクターの下田 翔大氏、リードエンジニアの渡部 晋司氏、エンジニアマネージャーの吉川 毅氏の5名が本作の制作秘話について語った、本講演の模様をレポートする。
プロデューサー編:今までの制約にとらわれないゲーム作りが重要
まずはプロデューサーの澤氏が本作を作ったときの開発体制を解説。プロデューサー1名、ディレクター1名、クライアントプログラマー4名、アート4名、PM1名、サーバープログラマー3名、テクニカルアート1名、ゲームデザイナー2名の計17名で制作された。
新ブランドを立ち上げるにあたり、ウェブゲームを作って得た経験などをすべて捨てて1から考え直し、ゲームの面白さや新しい体験を大事にするように制作した。本作の成功の理由は今までの制約にとらわれずに良いと思ったことを実行したことだと澤氏は語った。
また、開発メンバーたちとチームワークを高めるために、プログラマーやアートの人達も含めて全員で納得するまで話し合うそうだ。毎週の振り返り、朝会、QAなどを含めた週次のセレモニーなどでコミュニケーションを取り円滑な情報共有を心がけている。開発メンバーから出た意見は絶対に否定することなく一緒に考えるようした結果、プログラマーなどが独自に考えて機能改善や追加などをしたという。
アート編:おいしい仕事は全員に分配
リードデザイナーの濱坂氏は主にアートスタッフのタスク管理、素材のクオリティ管理、UIやキャラクターのデザインを担当している。リードデザイナーとして思ったことは、キャラクターデザインは楽しいということだった。その楽しい部分を独占せずにほかの人達にも分配することに意味があると濱坂氏は述べた。
濱坂氏は、UIやキャラクターのデザインのする際に自分の画力が足りないと判断し、ゲームで求められる機能からデザインを起こして制作をした。まずは、ステージで使用するチップキャラの要件から考えて、ヒロインの髪の毛の色は本来黒だったものを青にして、キャラクターが暗い色で見えづらくならないように服装を白などの明るめの配色に変更。さらにキャラクターコンペ時の提出作品では、はじめにバイクから描きそこからイメージを膨らませて主人公などを制作している。
キャラクターの表情は、ヒロインの性格がわかるようにそっけない表情にすることで、隣にいる主人公と会話がしているように見えるという。キャラクターが向いている方角によって、絵にドラマ性を描いていくのはジオラマとよく似ていると濱坂氏は語った。
シナリオ&ゲームデザイン編:絶対にコンセプトがぶれないように作る
続いて、ディレクターの下田氏が本作のシナリオの書きかたなどを解説。下田氏は、主にディレクション、ゲームデザイン、レベルデザイン(初期設定やステージデータなど)、シナリオを担当した。下田氏はゲームを半年で完成させるコツは絶対にコンセプトをぶらさないことだと語った。下田氏の業務はコンセプトを固めて、ゲームデザインをしたあとにディレクションをするという一連の流れがあるようで、コンセプトがぶれてしまうとはじめからやり直しになってしまい時間が掛かってしまうのだとか。
本作は、信頼をコンセプトにした作品となっており、下田氏は消滅という事象が実際に起こったときに、確かなものは信頼でないかと思ったそうだ。それを反映して、他人だった主人公とヒロインが信頼関係を築いていくストーリーにしたと語った。
コンセプトを決めたら続いてゲームデザイン。信頼をテーマに据えてたゲームデザインとということで真っ先に思い浮かんだのは戦闘をしているときの主人公とヒロインの姿。バイクに乗った主人公を操作しつつ、ヒロインのために走り続けるという関係が信頼という言葉に結びついたそうだ。
また、戦闘では“なんとかしなきゃ!”という感情を大切に制作している。切迫感を最大化するために、ピンチを認識させる仕組みや、HPをギリギリまで削って生かすようなバランスにしている。だが、それだけではつまらないので、逆に気持ち良さとしてスフィア取ってを10Chain以上したときにフィーバーでHPが全回復したり、プレイヤーの腕に応じた難易度のステージが提供されるように作られているという。
シナリオは序、破、急で物語を作りだすミッドポイント理論と呼ばれるものを使用し、感情の上がり具合とゲーム体験の盛り上がりを同じにすることで、シナリオが面白くなるように工夫されている。その一例が、登場人物たちに合成やガチャなどの機能を割り振ること。仲間を集めるというシナリオ体験と機能を開放するというゲーム体験をリンクさせることで、シナリオが理解しやすくなるそうだ。
最後に下田氏は本作のシナリオを書く上で必要な10個のポイントを公開した。
プログラム編:プログラム開発は修羅の国?
リードエンジニアの渡辺氏が、本作のプログラムについて語った。まずはクライアント開発は、クライアントプログラマー4名とサーバープログラマー1名の計5名で行われていた。本来なら少し手前に納期を設定するはずなのだが、半年がギリギリの納期だと言われて、ギャグではないかと思ったと渡辺氏は笑いながら語った。
本作のプロトタイプは、ラフな仕様で制作されており、それを使って企画を練り込んでいった。プロトタイプの初期は今のゲームの画面とはまったく違い、味方のステータスはすべて左に寄せるかたちになっていた。ビルドとの進行のずれなどもあったが、実機ベースで議論できたことで、想像によって議論が進むことがなかったのが良かったと渡辺氏は述べた。
続いて、本作の開発環境を公開。一般的にUI制作にはCocoS2d-x向けのUIツールを使うが、デザイナーの要望でPhotoshopで直接UIを制作できるプログラムを開発。アニメーションを付けるのは無理だったが、UIは快適に作れたそうだ。では、「アニメーションは?」と言われれば、プログラマーの人達は雰囲気で制作したようで、渡辺氏は「デザイナーの人達に駄目だしされなかったのが救いだった」と語った。Photoshopでの制作は基本的にはデザイナーの反応は良好だったようだが、実機と若干ではあるがフォント周りや色が異なる場所があるのだとか。
クライアントを開発するときは普段なら、ほかの人の作業もチェックをして進めるところなのだが、とにかく時間が足りなかったということもあり、お互いを信じて一切チェックを入れることがなく並行作業をしていたようだ。ほかの人が間違ったところに気がついたら、空気を読んで直すようにしており、ほかの部署から「修羅の国」と呼ばれていたとか。そのせいか、完成したときにプログラムを見ると一行ごとに書いた人が違うという状況が出来てしまった。
サーバー管理編:新しいチャレンジも半年でできる!
最後にエンジニアマネージャーの吉川氏が登壇。新たなチャレンジとして本作では、少ない人的リソースで運用ができるということと、プロモーションで突発的に人が増えるという状況にも対応できるという理由からAWSを採用した。だが、リリースを迎えてオープン数日で想定していたピークを突破し、負荷検証時と比較して性能がでないなどの想定外の問題が発生してしまい停止メンテナンスを繰り返すことになったそうだ。結局費用が激増し、自社インフラに全面移行をすることになった。運用コストが極限まで高まってしまったのが反省するべき点だと吉川氏は述べた。
(C) Wright Flyer Studios, Inc.
※画面は開発中のものです。
本コンテンツは、掲載するECサイトやメーカー等から収益を得ている場合があります。




































































