「御簾納直彦ミステリィ 篝火ノ屋敷」第10回は、2004年にPS2で発売され、ニンテンドーDSやPSPにも移植された日本一ソフトウェアの「流行り神 警視庁怪異事件ファイル」を紹介します。
Gamer読者の皆さん、お久しぶりです。ライターの御簾納です。前回から約一年が経過してしまいましたが、「篝火ノ屋敷」、今月からついに復活となります。友人知人から「御簾納くんの連載ってもう終わったの?」なんて言われまくってましたが、そんなことねーっすよ。ちょっぴり休んでただけっすよ。決してさぼってたわけじゃないんです! その証拠(?)に、休止中には色々なネタを仕入れていました。読者さんが「なんじゃこりゃ!? もう何がなんだか分からねーぜ!」って思うような未知のタイトルも紹介できればいいなと思っているので、マニアの皆様はぜひご期待くださいませ。
さてさて、復活第1弾にして10回目となる今回は、シミュレーションRPG系を得意とする日本一ソフトウェアの中では異端とも言えるホラーアドベンチャーゲーム「流行り神 警視庁怪異事件ファイル」を紹介したいと思います。本作は、2004年にPlayStation2で発売され、その後、PSPやニンテンドーDSにも移植。今でも根強いファンを多く持つ作品です。ナンバリングとしては3作まで発売され、2014年には、シリーズの新たな始まりとなった最新作「真 流行り神」がPlayStation 3とPS Vitaで登場しました。
内容はオーソドックスなテキストアドベンチャー様式をベースに、ワンポイントとして「都市伝説」を大きくフィーチャー。「恐怖」にもさまざまな種類があると思いますが、「流行り神」から発せられる恐怖は、常に背中にまとわり付かれているようなネットリとしたもの。なんていうか、とっても生々しいんすよ。舞台が現代の日本なので余計にそう思うのかもしれませんが、いつその身にいつ起こっても不思議じゃないような、身近な恐怖を感じるのです。なんてったって、シナリオの名前が「コックリさん」とか「さとるくん」ですからね。もうこれだけで、都市伝説好きにはたまらないものがあると思いませんか? 僕は、ホラーはジャンルを問わず好きなのですが、特に現代社会を舞台にしたホラー、都市伝説ものには目がありません。雑誌で初めて見て、「これは買わねば!」と直感しましたよ。
「カリッジポイント」、「セルフ・クエスチョン」、「推理ロジック」といった独自のシステムも、大きく目を引くところです。特にセルフ・クエスチョンはシナリオの方向性にまで影響を与えてしまうため、プレイヤーの思考が非常に問われます。「ホラー」や「都市伝説」といった恐怖に特化したイメージが強い作品ではありますが、実は、思考型のゲームとしても非常に見るべき点が多い作品なんですね。
また、「流行り神」のテキストは緩急の付け方が上手い。テキストものに見られがちな、読まされている感がなく、文章が頭にすっと入ってきます。
加えて、ストーリーを盛り上げる個性的過ぎるキャラクターも魅力です。個人的には、大学で民俗学の講師をしている霧崎水明先生がお気に入りです。変人呼ばわりされることもあるクセの強い人物ではありますが、民俗学や都市伝説に関する膨大な知識は、刑事である主人公・風海純也の大きな助けとなる。その頼れる兄貴っぷりがいいんすよ。他にも、どう見ても27歳に見えない小暮宗一郎や、美人だけどアクの強い監察医 式部人見など、インパクト大な登場人物が数多く登場。プレイすれば、1人は必ずお気に入りのキャラクターができると思います。
ホラー系の作品において「都市伝説」は比較的メジャーな題材だと思いますが、これをどのように料理するのか、ゲーム内にどう落としこむのかはクリエイターの腕次第ですよね。そういう意味でいうと「流行り神」のクリエイター陣は、非常に腕の良いシェフだと僕は思っています。「都市伝説」という題材をゲーム内に無理なく溶け込ませ、推理ものとして、キャラクターものとしても良質な作品に仕上げている。ホラーゲーム好きな人には絶対プレイしてほしい作品なので、本稿を読んで気になったという方は、ぜひ手にとってみてほしいですね。