ゲームロフトが配信しているiOS/Android用アプリ「マグナメモリア」の開発者インタビューを掲載。ここでは、ゲームロフトの日本市場向けタイトルを開発した理由や開発裏話などを訪ねてみた。
ゲームロフトはフランス・パリに本社を置く、モバイル端末向けゲームメーカーであり、現在のスマートフォンゲームシーンでは欠かすことのできない、世界を代表する企業の一つといえる。
「モダンコンバット」「アスファルト」などの骨太なシリーズをはじめ、「怪盗グルー」「スパイダーマン」といったIPものの展開、直近では「ドラゴンマニア・レジェンド」「パズルペット」「Immortal Odyssey」「エイジ・オブ・スパルタ」「ダーククエスト5」をリリースし、特に「ダーククエスト5」については好調なローンチ売上を記録したとのことだ。
そんな世界をまたにかけてのサービスに邁進している同社が、今回新たな試みとして“日本市場にフォーカスしたスマートフォンゲームの展開”を始めることに。その先鋒を務めたのは、現在配信中の近未来ファンタジーRPG「マグナメモリア」。バトルシステムや演出の斬新さ、そして確かに“日本人好みのスマートフォンゲーム”という雰囲気がしっかりと押し出されている本作の魅力について、今回はゲームロフト・東京スタジオの開発陣にインタビューを行ってきた。
――日本市場に焦点を合わせたきっかけを教えて下さい。
松下氏:ゲームロフトはフランス・パリの本社と、世界27箇所の拠点でゲーム開発、パブリッシング、約11言語に向けたローカライズなどを行ってきました。
そして2年ほど前ですが、日本のスマートフォンアプリの市場規模が、アメリカを抜いて1位になったというニュースが流れたことから、日本をメインに据えたスマートフォンゲームの開発が、本社から東京スタジオに向かって発せられたんです。
ただ、東京スタジオはそれまで海外ゲームアプリのローカライズとパブリッシングを主としており、ゲームの開発環境は揃えられていなかったので、今回与えられた裁量権を活かし、開発チームの発足からはじめていきました。
――海外のゲーム会社から見た、日本市場はどうでしたか?
松下氏:ゲームロフトのゲームは世界中で同時配信することが前提となっています。しかし、アメリカ、ヨーロッパ、南米などの市場はランキングやセールスの傾向が似通っているのですが、日本や中国といったアジア圏のセールスは独特で、特に日本はRPGに特化しています。
そのため、“グローバル基準のタイトルでアジア圏市場もカバーするのは難しい”ことから、日本の市場に合ったRPGをコンセプトに、当時のスマートフォンゲームの成功事例も参考にしつつ、ゲームロフトならではの機能を盛り込んだ新作タイトルの開発を目指すことになりました。
――ビジュアルはとても日本らしさが出ていると思います。
松下氏:ゲームロフトでは以前、ビジュアルを日本のアニメ調に似せて作ったタイトルをリリースしたこともあります。しかし、どうも「海外で作ったものだな」という印象が抜けなかったことから、本格的な参入を目指すため、日本のゲーム/アニメファンに受け入れられているような絵柄で攻めていこうと、見た目にはこだわりました。
そのため、イラストは日本で絵を描いていたクリエイターを採用しており、ゲームのイントロムービーもアニメーションスタジオ・サテライトさんにお願いしています。
――では、ゲームシステムのコンセプトについてもお聞かせ下さい。
小山氏:ゲームシステムに関しては、まず「だれでも楽しめる」というテーマが根本にありました。バトルもタイルをマッチさせていくという、見れば誰でもピンときやすいシステムを採用しています。
さらに、ゲームが幅広いユーザーに受け入れられるよう、PvPやランキングといった比較的ニッチになりやすい要素を排除しつつ、日本で人気の共闘プレイにフォーカスしています。これにはメッセージのタイムラインを使い、ほかのプレイヤーの動向を確認できたり、リアルタイムで一緒に遊んでもらえるよう工夫しました。
――新感覚コンボバトルに辿り着くまではどうでしたか?
小山氏:ベースについては当時流行っていたパズルゲームなどに着目しつつ、ほかの会社さんがやっていないような“市場にはないシステム”、つまりこのゲームにしかない機能を追求しました。
そして「ほかのゲームにないものってなんだろう?」と、日々色々なアイディアを出し合っては話し合い、試作ゲームを作り、実際にプレイし、ああでもないこうでもないと議論を重ねていたんです。
ただ、本作のシステムができたのはそれとは全く別の流れで、新しいものを探そうとするクリエイターからポッとでた発想を形にしてみたら、プレイングも楽しく、ゲームとしても確立していたため、これで行こうと決めました。
――ゲーム中に盤面がバラバラになってくると頭が悩まされるようになります。
小山氏:序盤のステージは比較的ブロックで固まっているのですが、後半ステージになると少しずつパーツがバラバラになっていきます。しかし、ブロック1個1個がバラバラになるような作りは避けていて、頭を悩ませつつも楽しめるような線引きを狙っています。
それに、ゲームに慣れていくと頭が最適化されていくのか、もしくは勘が働くようになるのか、気がついたらできるようになっているんです。
――じゃあスタジオ内にもスゴイ人がいたり?
小山氏:(一同に指を指されつつ)エンジニアは強いですね。彼らはどう動くのかアルゴリズムを読んでますから(笑)。ただ、そんなことができなくても気軽に遊べるので大丈夫です。
――チーム連携技について聞かせてください。
小山氏:当時のスマートフォンゲーム市場では、通常スキルだったり、パッシブスキルだったりはありましたが、連携を採用しているタイトルは比較的少なかったので、そこに着目しました。
連携技の詳細を発信しない意図については、実際にユーザーさんに試してもらい、ユーザーさんの主導で攻略していってもらいたいからです。ユーザー主体のWikiで情報を集めたり、プレイしている人とコミュニケーションをとってもらったり、何々が強いというのを探してもらうことも、楽しみの提供の一つと考えています。
――タイムラインでつながる共闘プレイを導入した狙いはなんでしょう?
小山氏:マルチプレイは絶対に入れたいと考えていました。開発当時は3Dリアルタイムマルチバトルなど、リッチテイストなマルチプレイに対する機運が高まっていた時期でしたが、私たちは開発チームで話し合い、日本のユーザーさんにより気軽に遊んでもらえるよう「協力プレイ」を採用しています。
ちなみにギルドやクランと呼ばれる機能を実装していないのは、コミュニティの発展から生まれる束縛などをなるべく排除したかったからです。本作はゆるいつながりで楽しんでもらいたいので、タイムラインを押すだけで遊べる、気楽な共闘システムとして設計しています。
もちろん、これにはメリットもデメリットも有るとは思いますが、一般の初心者ユーザーが取り残されてしまう事態を避けたかったので、今の形にしました。
――「ストーリー」の練り上げについてはいかがでしょう?
小山氏:まず、RPGにしようと決めたところから、ストーリーや世界観については力を入れようと考えていました。王道であるファンタジーをベースに、かつ、そこに新たなものを加えるために近未来的なSF要素を練り込みました。シナリオはクリエイターや外部の人に協力してもらい、時には皆で発表し合って内容を確認することもあります。
――ナビゲーター「ティケ」には声優・花澤香菜さんが起用されてますね。
松下氏:まずティケについては「ちっちゃい女の子キャラクターって人気だよね」というイメージからきていて、花澤さんの起用には「有名な声優さんを使おう」というプロモーション面での考えがあります。
なぜ有名声優さんを起用するかについてですが、まずゲームロフトが出している「スパイダーマン」「アイスエイジ」といった版権物のタイトルは、元の作品の固定ファンを取り入れることができるメリットを備えています。
しかし、今回は完全オリジナルな新作ということで、制約のかからない自由な環境が生まれると同時に、オリジナルゆえに下地のない状態でリリースすることになります。そういうプロモーションが弱いままの状態を避けつつ、日本ならではともいえる「アニメファン」にフォーカスして提供できるよう、花澤さんやムービー制作のサテライトさんのネームバリューを借りる意図はあります。
――TVCMも結構展開されているようですが?
松下氏:現在、アニマックスさん、TOKYO MXさんで流しています。実は数ヶ月前から海外スタジオで開発されたタイトルでTVCMを放映しつつ、制作のノウハウの蓄積や効果測定を進めているんです。
今後はリアルな俳優・女優さんを使ったTVCMも考えてはいるのですが、まずはゲーム/アニメファンに届くような広告展開を進めていこうと考えています。
――サービス開始後のユーザーの反応はいかがでしょうか?
小山氏:主だった反響として、世界観の部分について「キャラクターが可愛い」「動きがいい」という声を頂いており、バトルシステムの部分については「新鮮」「全部揃えた時にドヤ顔できる」などの声をもらっています。ゲーム部分については、狙いがぴったりハマったなと思っているところです。
松下氏:今後も引き続き週間でイベントを立てていくので、是非プレイしていただけたら嬉しいです。