2015年8月26日から3日間にわたってパシフィコ横浜にて開催されている「CEDEC 2015」。8月26日に行われた講演「コラボレーションによるコンテンツの最大化~トロとモノクマとグル~ミ~の事情~」の模様をお届けする。
講演「コラボレーションによるコンテンツの最大化~トロとモノクマとグル~ミ~の事情~」では、ソニー・コンピュータエンタテインメントのプロデューサーである伴哲氏、スパイク・チュンソフトのラインプロデューサーである齊藤祐一郎氏、チャックスグラフィートの代表取締役である森チャック氏が登壇し、「どこでもいっしょ」シリーズのトロ、「ダンガンロンパ」シリーズのモノクマ、「いたずらぐまのグル~ミ~」を例に挙げて、コラボ活動の裏側や仕込み方が語られた。
俺流コラボの仕込み方
まずは、コラボの実施の仕方について。齊藤氏は「ダンガンロンパ」シリーズが認知されてきており、コラボの話を多くもらったが、コラボしたときに何が生み出せるかや、双方にどんなメリットがあるかを考えているという。自分からコラボの話を持って行く時には、最初にそのコンテンツ単体の象徴となっているプロデューサーと交流を持つようにしているそうだ。
森チャック氏はキャラクターデザイナーということもあり、自身からコラボしたいとお願いすることはあまりないという。基本的にはホームページのフォームから連絡をもらうことが多いそうだが、飲み席などで決めることもあるそうだ。
伴氏は、「週刊トロ・ステーション」でゲームだけでなく、さまざまな製品とコラボしたことがあり、周りの人から「自分の趣味でコラボしているんじゃないの?」と言われたこともあったそうだが、「自分なりのポリシーを持ってコラボを行っている」と述べた。
伴氏はポリシーについて、「ユーザーたちが考えるトロの純粋で無垢なイメージを崩さないようにするという“キャラのためになること”と、金銭的な利益ではなくコラボすることで多くの人達に知ってもらい今後の活動に繋げられるようにするという“会社のためになること”を大切している」とコメント。
トロには人を傷つけてはいけないという設定があったが、「ストリートファイター X 鉄拳」とのコラボでは、リュウやケンのような主人公ポジションで出演させてもらえると聞き、最初に決めたレギュレーションの殻を破ることでトロの芸風を広げることができたそうだ。
コラボ効果を最大化させるために意識していること
続いてコラボ効果を最大化させるために普段意識していることについて、齊藤氏は驚きを作ることを重要視していると語った。そのゲームのプレイヤーにコラボしたタイトルを見てもらえるかなどを判断基準にしているのだとか。
コラボ効果の最大化をさほど意識していないという森チャック氏は、とにかく作品を全力で描くようにしているという。その全力で描いたものは先方に見せると大抵1発でOKをもらえるそうなのだが、「良い作品を作るためにもっとリテイクを出して欲しい」と語った。
伴氏には、「トロをゲーム業界のガチャピンにする」という目標があるという。コラボをすることで、製作者側だけでなく、コラボの話を持ってきてくれる人たちがトロの芸風を広げてくれるとも考えているそうだ。
こういうコラボはNG
コラボ案件を断る場合の条件についても語られた。齊藤氏は「人気のあるキャラクターとコラボして、それに便乗するようなコンテンツ愛がない提案は断っている」とコメント。また、相手のコンテンツをどれだけ理解しているかや、キャラクターなどを提供している側にもメリットがあるのかを考えることが重要なのだという。
森チャック氏はキャラクターのイメージを壊してしまうような提案は断っているそうだ。「グルーミーが好きでコラボしたいという話を頂いたときは、それが失敗したとしても嬉しいですし次に繋げていきたいと思いますね」と述べた。
伴氏も、森チャック氏同様にキャラクターの性格が変わってしまうような提案は断るようにしているという。また、トロの場合には多くのコラボを実施しているということもあり、ネタが被ってしまうこともあるそうだ。
あのコラボの裏側
続いて「ダンガンロンパ」と「いたずらぐまのグル~ミ~」、「絶対絶望少女 ダンガンロンパ Another Episode」と「どこでもいっしょ」のコラボした経緯についての話題に。
「いたずらぐまのグル~ミ~」と「ダンガンロンパ」のコラボは、「ダンガンロンパ」が製作される前に齊藤氏と森チャック氏が友達で「何かできたらいいね」といつも話していたことがきっかけとなっているそうだ。それからしばらくはコラボできなかったのだが、「スーパーダンガンロンパ2」に登場するモノミと森チャック氏が作ったキャラクターの汎用うさぎに通じるものがあり、齊藤氏は「ここしかない!」と思い森チャック氏にコラボの話を持ちかけたのだという。
「絶対絶望少女 ダンガンロンパ Another Episode」と「どこでもいっしょ」のコラボは、「E3の会場近くで夕食を食べていたときに、たまたまスパイク・チュンソフトの人たちが隣にいて、負けたら1ついうことを聞くというルールでじゃんけんをしたのがきっかけです」と伴氏は語った。
伴氏が見事じゃんけんに勝利して「トロとクロを『ダンガンロンパ』に出してください!」とお願いしたところ、帰国後に正式な話が来てコラボの話がまとまったそうだ。
こんなコラボがしたい!
本来ならここでどんなコラボがしたいかという話が展開される予定だったのだが、「CEDEC 2015」の打ち合わせのときに作ってみたコラボを紹介することに。「どこでもいっしょ」シリーズのキャラクターデザインを手がける堀口直氏による描き下ろしイラストと、「ダンガンロンパ」シリーズと「風来のシレン」シリーズの各デザイナーによるイラストが公開された。
このコラボイラストを使用したグッズは、9月9日より渋谷マルイにて開催される「希望ヶ峰学園購買部 拡大版~スパイク・チュンソフト 秋の大文化祭~」を皮切りに、販売していく予定とのことなので楽しみにしていて欲しい。
最後に、伴氏は「今回の講演の共通ワードですが、愛を持って口説くことが重要です。コラボをするときに相手のコンテンツをわかっていないと断られるのはわかって頂けたと思います。それはどこの会社でも一緒だと思いますので、よくそのコンテンツを調べてから話を持ちかけるようにしてください」、齊藤氏は「愛があれば面白いだけでなく双方にとって、コラボの効果を最大限に活かしていけるのかも考えられると思います」、森チャック氏は「誠意が伝わるという意味では異性を口説くのにとよく似ていると思います。このキャラクターとコラボできるならタダでもいいと思うときが一番良い絵が描けますね。『鉄拳』に出していただけるならタダでもいいですよ!」とコメントして講演は終了した。