フリューが6月23日に発売するPS Vita用ソフト「Caligula -カリギュラ-」。他のRPGとは一線を画す世界観、そしてキャラクターデザインについて、ディレクターの山中拓也氏、キャラクターデザインのおぐち氏にインタビューを実施した。

目次
  1. ゲームの「お約束」を覆すデザイン
  2. 楽曲の数々もイラストから生み出された
  3. 複雑で、人間味のあるキャラクターを見てほしい

フリューが放つ新作RPGとして注目を集めている「Caligula -カリギュラ-」は、偶像殺しと現代病理をテーマにした、学園ジュブナイルRPG。舞台となるのは、現実世界から逃れてきた人々が暮らす虚飾の楽園「メビウス」。そこで主人公たちは、現実に戻ろうとする“帰宅部”のメンバーとして、メビウスを創りあげた楽士との戦いを繰り広げる。

独創的な世界観が魅力の本作だが、その根幹にはキャラクターデザインを担当したおぐち氏のイラストがあるのは間違いない。そこで今回、おぐち氏に加え、ディレクターの山中拓也氏にインタビューを敢行。「Caligula -カリギュラ-」の世界をどのようにして作っていったのか、さまざまな質問をぶつけてきた。

(左から)山中拓也氏、おぐち氏

ゲームの「お約束」を覆すデザイン

――本日はよろしくお願いします。今回は山中さんに加えて、おぐちさんも出席していただいたということで、デザイン面についていろいろお伺いできればと思います。

山中氏、おぐち氏:よろしくお願いします。

――とはいえ、せっかくなので作品の基本的なところ、「Caligula -カリギュラ-」の企画が始まった経緯について教えてもらえますか。

山中氏:そもそもフリューという会社は、昨年には「レジェンド オブ レガシー」を発売したりと、1年に1本はオリジナルのRPGをリリースすることを目標に掲げています。そこで、2016年のタイトルを僕が担当することになったとき、「レジェンド オブ レガシー」が王道ファンタジー寄りの作品だったので、今回は現代を舞台にした変わった作品にしたいと考えました。僕自身、真っ直ぐなものを作るのが苦手というのもありますが(笑)。

――そういった経緯で、山中さんを中心にスタッフを集めていったと。しかしスタッフ一覧を見ていると、やはり里見直さんの名前がすぐ目に飛び込んできます。里見さんとはどのようにして知り合ったのですか?

山中氏:僕の人生の中で、少年時代に感性を捻じ曲げられたのが里見さんの作品で、いつかは自分の作品でご一緒したいとは、常々思っていたことなんです。そんな思いが以前からあった中で、新作のテーマと里見さんの書くシナリオに親和性があると感じて、思い切って声をかけてみたら、快く承諾してくれたのです。

――里見さんが世界観を作ったのではなく、元々の世界観があったうえでのオファーだったと。

山中氏:もちろんその時は今の形そのままというわけではなかったですが。最初のコンセプトというと、「偶像殺し」を描こうというものがありまして、そこは一緒に面白い作品を創っていけるかなと。

――「偶像殺し」というコンセプト、改めて聞くとすごいワードですよね。

山中氏:人間は神を信仰していたものの、現代ではそれも薄れ、もっと身近なもの、それこそアイドルなどに信仰の対象を移していったと考えました。そしてアイドル側も、本来は人間の味方である存在です。そんなアイドルに刃を向ける背徳感が、タイトルの「Caligula -カリギュラ-」にも繋がってくるのです。

――言われてみると、里見さんがそのコンセプトでシナリオを作れば自然と濃い世界観が出来上がりそうですね…。それともうひとつ、忘れてはいけないのがキャラクターデザインのおぐちさんですよね。

山中氏:職業柄いろいろなイラストは目にしますし、その中でもおぐちさんの絵はとても気に入っていたんです。加えて本作は完全オリジナルの作品ですから、デザイン面においても「『Caligula -カリギュラ-』といえばこの人だよね」というシンボルもほしかった。その意味でも、おぐちさんはコンシューマのイメージがあまり付いていないですし、理想的でした。

――おぐちさんの絵には、具体的にどんな魅力を感じたのですか?

山中氏:シンボルになってもらうからには、絵に説得力がなければいけません。これに関しては見てもらえれば分かる通り、非常に前衛的なイラストばかりを提供してくれました。反面、3D化することは一旦忘れて描いてもらったので、モデルを作るスタッフは大変そうでしたけどね(笑)。

しかし、モデル制作の難しさを差し引いても、おぐちさんに依頼した価値はあったと思います。僕たちは決して大手のメーカーではなく、注目してもらうためには人一倍の努力が必要です。もちろん、他のゲームとの差別化も考えていかなければいけません。おぐちさんのイラストは違いを生み出してくれるので、僕たちとしてもすごく良い関係性で進行できましたね。

――実際に作品を発表したときの反響などを見て、手応えはあったのですか?

山中氏:もちろん手応えはありましたよ。ここに並んでいるイラストからも分かる通り、本作には奇抜な髪の色や、キャラクター性がすぐに分かる服装は勇気を出して排除したのです。発表当初は、「見分けがつかない」などの厳しい意見も中にはありましたが、「リアリティの範囲の中で個性が付けられている」と、好意的な意見も多くいただきました。そう感じていただけるお客さんを大事にしていくことが「Caligula -カリギュラ-」が生きる道だと思うんです。

――おぐちさんとしては、オファーをいただいたときゲームにどんな印象を持ちましたか?

おぐち氏:最近のソーシャルゲームなどでは、大勢のイラストレーターさんを起用するケースが一般的です。今回も同様に、他のイラストレーターさんがいるものだとばかり思っていたんです。しかし話を進めていくと、山中さんから「世界観を表すビジュアルから作ってほしい」と言われて、単純な嬉しさと同時に、「これはすごい仕事になるぞ」と感じましたね(笑)。

山中氏:僕自身、キャラクターデザインだけをお願いするつもりではなかったんですよ。

おぐち氏:そうでしたよね。キャラクターというよりは、作品全体を取り巻く空気感を作っていくイメージでした。

山中氏:「Caligula -カリギュラ-」がどんな作品かを説明できるようなイラストがほしかったんです。先におぐちさんとイメージを共有しておいてから、色んな所にゲームの説明をしにいって協力をお願いした形です。

――では、おぐちさんが描いたイラストを元に、スタッフがイメージを膨らませていったのですか?

山中氏:最初はみんな、大層不安がっていました(笑)。「Caligula -カリギュラ-」の目指すデザインは、キャラクターデザインのお約束は全て無視していますので……僕がまず真っ先に戦ったのは社内の不安の声だったりします。

おぐち氏:イラストの制作とゲームの制作では畑がまったく違うじゃないですか。例え良いイラストであってもゲームでは再現できなかったり、その逆もあったり。なので、スタッフの皆さんと理解を深めあうことが最初の作業でした。僕がイラストを描いては、どこがゲームで再現できないのか指摘していただいて、再度提出するといった、三歩進んで二歩下がる、地道な作業でしたね。

――一方的に依頼するのではなく、共同でゲームを作っていったのですね。

山中氏:例えばバーチャルアイドルのμ(ミュウ)は、肌も衣装も本当に白くて、開発を担当するアクリアさんも最初はかなり困惑していました。ただそこは、おぐちさんの感性と自分を信じてくれと説明していきましたね。

――いざデザインを制作するとなっても、最初はどうしても漠然としたところがあると思います。なにもないところからイメージを膨らませるうえで、意識した点はありましたか?

おぐち氏:既存のコンテンツでは、ある種の既視感が重要視されることも多いと思うんです。その既視感が、親しみやすさにも繋がりますからね。しかしその習慣に倣うようでは面白いビジュアルには行き着きません。そこで僕は、良い意味での反骨精神というか、築き上げてきた常識を一旦否定することから始めました。次に、常識を否定してもなお成立するビジュアルにはなにが必要で、なにが不要かを考えるのですが、ここは難しいところでもありましたね。

――常識を否定する、というのは、先ほどお話にあった髪の色や服装にも繋がってくるところですね。

おぐち氏:確かに髪で色分けしたほうが分かりやすくなるのは事実です。しかし、それではオリジナルのものにはなりません。そこで話し合った結果、ワンポイントとして花を入れることにしたのです。

――ああ…、確かに言われてみると、すべてのキャラクターに花が描かれていますね。

おぐち氏:このキャラクターは情熱的だから「赤」と決めて、髪の毛を赤い色にしても構わないのですが、わかりやすくさせるための都合の良いデザインであって、誇張的な面があります。仮に情熱的な性格を表現したかったとしても、他のやり方だってたくさんあります。しかし花であれば、元々の色が存在しますし、それをモチーフにした衣装にも、違和感なく色を付けられる…。ちょっと理屈っぽいですけど、こういった角度から色使いを掘り下げていきました。

山中氏:ビジュアルだけでなくシナリオも含め、昨今のお約束に対するカウンターと言える部分があるんです。安易にキャラクターごとのイメージカラーを作るだけでは、病的な性格までは表現できません。もう一歩踏み込んだ設定まで表現するために、ロジックを立てることが大きな目標でした。

――花というイメージは、ロジックを立てる中で生まれてきたと。

山中氏:普通は、この子は優しいからこういうファッションにしましょう、情熱だからこんな衣装を着せましょう、という神目線でデザインしていきます。しかし本作では、「この子は、優しく見せたいと思っているんです」という人目線でスタートしました。僕たちが、ではなく、キャラクター自身が自分をどう見せたいか、という考えですね。ここまで来ると、現実世界のファッションデザインに近いと思います。

おぐち氏:人間は誰しも、今の性格を持って生まれてきたわけではありません。プレーンな状態から、なりたい自分に変化していくものです。「Caligula -カリギュラ-」では、プレーンな状態と、なにかになりたい状態、その2つを内包するデザインを意識しました。

山中氏:…という、かなり面倒な行程を経て、現在のデザインに行き着いたのです(笑)。そういう面倒な感性がおぐちさんと僕で奇跡的に一致していたので、こういったデザインのまま走り切れたんだと思います。

――ははは(笑)。一見シンプルに見えるデザインにも、いろいろな努力が隠されているんですね。

山中氏:他のメーカーだとひょっとしたら、止められているかもしれませんね(笑)。「外見からどんな性格かわかるようにしろ!」と。でも、メビウスではそんなこと意味がありませんので。キャッチーさは薄く、人間味が濃いせいで、彼らをどう見たらいいか分からない人もいるかと思います。キャラクターデザインとしてはかなり危ない橋を渡っていると思います。ただ、プレイしていただければ、彼らなりの考えが分かってくるはずです。

――ゲームにするうえでは当然CG化をするわけですが、そのときもどう個性を出すか、苦労したのではないでしょうか。

山中氏:アクリアさんにはおぐちさんのビジュアルをどれだけ再現するか、という点に注力していただいたのですが、難しいお題をこなしてくれたと思います。CG化をするときは、シルエットだけで見分けがつくようにとか、線をなくして色だけでも違いが分かるようにとか、一般的なセオリーがあります。しかし本作ではそういったセオリーが通用しません。そのため、さまざまな試行錯誤を繰り返した結果、制服やコートのひらめきであったり、些細な仕草で個性を出す方向で努力していただきました。

――おぐちさんとしては、自分の生んだキャラクターがCGとして動いているのを見てどう思いましたか。

おぐち氏:まだCGになった彼らが物語をどう描いていくかまでは見ておらず、バトルのアクションが中心ですが、それだけでも楽しいですよね。彼らの仕草からも、僕が表現したかった性格が見え隠れしていて、プレイする人にもぜひ注目してもらいたいです。

――なるほど、ちなみに、お二人はメインキャラクターの中で、特に気に入っているデザインはありますか?

おぐち氏:そうですね…僕は笙悟(佐竹笙悟)なんかは、デザインとして割りと好きです。ただ、動かすうえではかなり使い勝手の悪いキャラクターでしたね(笑)。正面から見ると格好良く決まってるんですけど、角度が変わると印象が変わってしまうので。

山中氏:僕も実は笙悟なんです。彼が世に出て愛されるかどうかが、作品の命運を握っていると思っているくらいです。笙悟は序盤の段階で仲間になるのですが、序盤の仲間にしてはクセの強いビジュアルしていますしね。

――あとは本作だと、NPCも約500人と非常に豊富ですよね。このあたりもおぐちさんは絡んでいるのですか?

山中氏:NPCに関しては、おぐちさんが描いたイラストを元に、マッチするモデルをアクリアさんに制作してもらいました。とてもかわいく出来ていますよね。帰宅部よりもよっぽど素直なデザインしていますし。

――さすがにこれだけの数となると難しいですよね(笑)。しかし山中さんとしては、NPCの個性付けも大きな課題としてあったのではないでしょうか。

山中氏:モブに奇抜な髪のキャラがいても、それはそれで違和感が出ますし、統一感は出さなければいけませんからね。そういう意味ではアクリアさんには苦労していただいたと感じています。

楽曲の数々もイラストから生み出された

――本作ではデザイン面だけでなく、音楽もゲームを構成する大切な要素になっていますよね。サウンドコンポーザーには動画サイトを賑わせている人が揃っていますが、どのように選定していったのでしょう。

山中氏:まずシナリオとおぐちさんのイラストがある状態で、「楽士」と呼ばれる、作中で人々を惑わす楽曲を作る、言わば悪者の“ボカロP”が登場することは、早い段階で決まっていました。イメージ自体は固まっていたので、あとはそれに合う楽曲を作ってくれる方々を探して行った流れです。

具体的には、初音ミクなどのボーカロイドが文化として定着しはじめた時代、とにかく凄い熱量で、インターネットに触れていた人間が初音ミクを避けて通ることができなかった時代の方々が、僕の中ではゲームに必要な力だと思っていました。それが40mPさんだとか、cosMo@暴走Pさん、蝶々Pさんへのオファーに繋がりました。

――楽士のデザインを見ると、メインのキャラクターとはちょっと方向性が違いますよね。

山中氏:メインキャラクターがバランス重視でデザインされているとしたら、楽士は割りと漫画的というか、誇張されたデザインになっています。

おぐち氏:言ってみればスター性がある人達。普通の人間である主人公たちの前に彼らが現れることで、違和感を生んでくれるのです。複雑な人間関係を持っていると、なかなか楽士のような奇抜な衣装は着れません。しかし、彼らはそれ以上に、「スター性のある人間になりたい」と願っているんです。だから、「Caligula -カリギュラ-」の中では不自然なくらい、派手なデザインを意識しました。

山中氏:そもそもこの作品は「理想の自分になれる」世界を描いていて、楽士は臆面もなく理想を突き進んだ人物たちです。一方の主人公たちは、現実の世界に帰りたい人たちです。極端なデザインの違いは、思想の違いも表しているのです。

――おぐちさんは、サウンドからイメージを膨らませたケースもあったのですか?

おぐち氏:デザインを作る過程で楽曲を聞かせてもらって、修正に活かすケースはありました。しかし、完全に楽曲を元にしたデザインとなるとひとつもないです。

山中氏:サウンド面も、おぐちさんのデザインありきだったんですというのも、コンポーザーの方々には、楽士のキャラクターになりきって楽曲を作ってもらいたかったので。楽曲が産まれるのは、楽士という人間がしっかりできてからですね。

――そこまでデザイン中心でゲームを作るというのも、珍しいことですよね…。せっかくなので楽士のデザインについてもお伺いしたいのですが、まずは衣装のバリエーションに目が行きます。

おぐち氏:まずは楽士がどんなジャンルを好むかを考え、それに合わせた衣装を考えていきました。例えばスイートPは“ゆめかわ”というジャンルの服装で、渋谷あたりで結構流行っているものです。

山中氏:スイートPに関しては初期の段階では、甘ロリとか、ゴスロリといったジャンルで統一する予定だったのですが、おぐちさんから「それは多分古い」と言われてしまって(笑)。最新のゲームとして発売するには、少なくとも2016年の最先端をとらえなければいけない、ということで“ゆめかわ”が採用されることになったのです。

おぐち氏:フリルの付いた、いわゆるゴシック的な衣装よりも、パステル調の衣装を好む人は徐々にですが増えてきているんです。そして、スイートPが持つ病的なかわいさも“ゆめかわ”であれば表現できると。

山中氏:放っておいたら、5年後でも甘ロリ、ゴスロリのファッションはゲームに登場してくると思います。そんな中で本作では新しいイメージを展開できたので、スイートPに関しては特に作ってよかったといえるキャラクターですね。

――仰るとおり、スイートPは楽士の中でも異彩を放ってますね。そのほかの楽士でも、同様のこだわりはあるのですか?

おぐち氏:イケPは、言葉で表現するのが難しいんですけど、絶妙なダサさを表現しているキャラクターです。パーツのひとつひとつは格好いいんですけど、組み合わせるとはじめてダサくなるという。楽士はなりたい自分に、苦労せず自然となれてしまった人物たちです。だからこそ、せっかく良いものを持っていても、組み合わせを考えるセンスが足りない。もっと言えば、センスを育てる過程を飛ばしてきてしまったのです。楽士が持つ歪な部分がよく表現できたキャラクターですね。

山中氏:バランスをどこで取るかが難しかったですね。誰が見てもダサくなってしまうとダメで、やはり格好いいと思える部分も残さなければいけない。ギリギリ許せるけど、ちょっと違う、という線で詰めていったのです。一番リテイクが多かったのは彼かもしれません。

――かなり細かい設定まで反映されているんですね。そうなると、プレイヤーが想像力を働かせる場面も多そうです。

山中氏:正にその通りで、僕は発売前の段階から、期待している皆さんにキャラクターのイラストを見て、いろいろと考察してもらいたいと考えていました。そのための謎をデザインや、楽曲の中に散りばめてきました。自分の中でいろいろな想像をしたうえで、ゲームをプレイして答え合わせする。そんな流れが生まれたら、正解でも間違いでも印象に残ると思うんです。

――ちなみに、主人公たちと楽士たち、それとイメージイラストと全部合わせるとどのくらいの数になるのですか?

おぐち氏:ゲーム内で使われているイラスト以外にも、特典用のイラストもありますからね…。とにかくすべてのデザインを僕1人で手掛けたので、40…いや50でも済まないと思います。

複雑で、人間味のあるキャラクターを見てほしい

――システム面についても少し聞かせてほしいのですが、戦闘中に未来が見える「イマジナリーチェイン」は他にはないオリジナルの部分だと思います。これはどういった発送で生まれたのでしょう。

山中氏:これは僕たちフリュー側の企画ではなく、開発を担当するアクリアさんのプランナーの方のアイディアだったんです。僕としては、いろいろな人に引っかかる作品にしたかったので、プレイヤースキルが求められる内容にはしたくなかったのです。そのため、誰でも触れるコマンド選択式のRPGにすることは決まっていたのですが、新規IPとしての斬新ななにかも加えたかった。そんなときに、アクリアさん側から「イマジナリーチェイン」の案を提供していただいたのです。それに可能性を感じました。特に冒険しなければ、安定した評価は得られるとおもうのですが、この触り心地は洗練していけばすごく楽しい体験になるぞと。

――特に味方同士でコンボを繋ぐ際には、とても効果的ですよね。反面、完璧なコンボを極めようとすると、「イマジナリーチェイン」があっても難しい印象があります。

山中氏:最初は各キャラクターのスキルがどんな効果を持つかを把握することが大事ですね。どのスキルがどのように役立つかは、本当に気付きの連続だと思います。キャラクターごとに覚えるスキルは違い、役割もまったく異なります。まずはいろいろなスキルを試し、理想とする繋がりを見つけることが大切ですね。また、最初は無理して全員を繋げなくてもいいです。2人でのコンボを2回繰り返したり、細かな繋がりを意識したほうがいいですね。正直、僕もアクリアさんも、気づいていないスキル同士の相性が発売後にもいっぱい見つかるんだと思っています。

――逆にプレイヤー側が効果的な使い方を発見するかもしれないですね。

山中氏:多分そうなると思います。しかしキャラクターごとに得意分野もはっきりしていて、明確な強いキャラが存在しないのも本作の特徴です。他のプレイヤーさんが使っているからといって、それに影響されるのではなく、自分なりのパーティを組んだほうがいいと思います。

――キャラクターの内面が武器として表れる「カタルシスエフェクト」も面白い発想だと思いました。

山中氏:「カタルシスエフェクト」は実のところ、里見さんがシナリオを書いた段階では構想になかったものなんです。

おぐち氏:本作の主人公は、架空の世界でのアバターといえる存在で、本来の自分との二面性を持っています。これをシステム面でも表現しよう実装したのが「カタルシスエフェクト」でした。

山中氏:おぐちさんのスケッチを見て「これいけるんじゃない?」と。内側の隠したい自分のコンプレックスが、外側の理想を突き破って出てくる……彼らを表すには最適でした。そこから里見さんに設定を持って行ってシナリオ側とも整合をとりました。でも結果的には、理想の自分の中から現実の自分が出てくるという、作品の世界観ともマッチしたシステムになっていると思います。

通常時 カタルシスエフェクト

――戦闘上の個性というのは、どのように割り振っていったのでしょうか。

山中氏:それもキャラクターデザインや設定が前提としてあって、このキャラクターはこんなスキルが使えたら面白いよね、といった具合に、想像力を働かせていきました。例えば巴鼓太郎は、強くありたいという理想を持っていて、それにスタッフが応えてあげた能力になっています。戦闘中の動きに関しても、こういう見た目ならこういう動きをするだろう、みたいな、遊んでいてダイレクトに伝わるように努めました。

おぐち氏:美笛(篠原美笛)は僕の方からモーションをお願いすることもありました。優しい性格でかわいい女の子なんですけど、実はサディストな一面もある、それが物語の中だけでなく、戦闘においてもしっかり反映されています。

――物語だけでなく、戦闘中の個性にも注目ですね。それでは最後に、プレイヤーに向けてのメッセージがあればお願いします。

おぐち氏:分かりやすいキャラ設定ではなく、僕なりに複雑で、人間味のある性格を作り出せたと思っています。人によって彼らがどう見えるかは違うと思いますし、僕自身もキャラクターの性格を決めつけるようなデザインはしていません。プレイヤーの皆さんには、それぞれのとらえ方で愛してもらえると嬉しいです。

山中氏:本作のファッションは、最新のトレンドを取り入れていたり、ゲームのお約束を排除していたりと、これまでの作り方とは別のベクトルへ向いた作品です。他のゲームでは味わえない魅力になっているので、ぜひ楽しんでもらえたらと思います。加えて、妄想・考察のためにいろんなギミックを用意しています。自分の内面からはどんな「カタルシスエフェクト」が出るかを想像してみるのも創り手視点を持つプレイヤーの皆さんには楽しいかと思います。

――ありがとうございました。

Caligula -カリギュラ-

フリュー

PSVitaパッケージ

  • 発売日:2016年6月23日
  • 15歳以上対象
Caligula -カリギュラ-

Caligula -カリギュラ-

フリュー

PSVitaダウンロード

  • 発売日:2016年6月23日
  • 15歳以上対象

※メーカー発表情報を基に掲載しています。掲載画像には、開発中のものが含まれている場合があります。

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