カプコンから2016年8月30日より配信開始されたiOS/Android向け体感恋愛ADV「囚われのパルマ」。液晶越しに体感できる恋愛とサスペンス仕立てのストーリーが魅力の本作のプレイレポートをお届けする。
「囚われのパルマ」はカプコンがスマートフォン向けに配信する女性向け恋愛ゲーム。絶海の孤島を舞台に、収容所に監禁された記憶喪失の青年・ハルトとのミステリアスな恋愛ストーリーが展開される。
美しいビジュアルと音楽が創りだす世界観に、恋愛ドラマでありながらサスペンス要素も強く持ちあわせ謎に包まれたストーリー。そして、スマートフォンの画面を隔てた“向こう側”にいる彼を体感できる「面会」「監視」といったコミュニケーションシステムなど、女性向け恋愛ゲームの中でも異彩を放つ本作の魅力を紹介しよう。
本作で恋愛対象となる「ハルト」は、ある事件をきっかけに施設に監禁されている記憶喪失の青年。物静かであまり感情を表に出さない彼は、出会った当初は外界から心を閉ざすようにフードを着用している。初めは無口で無愛想だが、心を許すとプレイヤーへの気遣いや、少々浮世離れした言動などの天然な一面も見せてくれる。
ハルトの声を担当しているのは梅原裕一郎さん。ハルトは言葉数が多い方ではないが、ぽつりぽつりと呟く梅原さんの落ち着いた語り口や、時々用いる幼い言い回しにときめき、癒される。ゲーム内では彼の言葉だけがフルボイスで展開されるので、思う存分堪能してほしい。
プレイヤーはハルトの記憶を取り戻す手伝いをする「相談員」として、スマートフォンの液晶画面を面会室のガラスに見立てた「面会」や、彼の部屋を監視カメラで覗く「監視」、文章でやりとりする「メッセージ」の3つでコミュニケーションをとっていく。
とはいえ、実際は訳も分からず島に連れてこられ、ハルトの記憶を取り戻さなければ帰れないと一方的に言い渡されているので、プレイヤーも島に囚われているも同様。ハルトと話すネタもなければ自分の置かれた状況もわからないとなれば、することは島の散策・情報収集だ。
島には「喫茶店」「公園」「雑貨店」といった施設があり、いずれも個性豊かな住人たちが生活している。住人たちと交流する中で得られる話題やアイテムは、後述するハルトとの交流に使用するものなので積極的に散策することが大切だ。なお、物語が進むと新たな施設が開放されていく。
外出して話題を手に入れたら、彼にメッセージを送ってみよう。「趣味について」「恋愛について」などの世間話から、次の面会につながる大切な会話まで話題を振ることができる。中には期間限定のものや、何度も送れる「つぶやき」も用意されている。現実の生活に疲れたらハルトに弱音をつぶやいてみるのもいいだろう。
また、彼との面会やメッセージで交わされる会話では時折、選択肢が発生する。ここで選んだものはプレイヤー自身の情報としてハルトに記憶され、別の話題で展開されることがある。あまり胸を張って他人に言えないようなことも、彼は寄り添って受け止めてくれるので、好感度などという概念は捨てて自分の思うとおりに答えてみよう。
メッセージを送ったら、いつ返事がくるのか、そもそも彼は今何をしているのかが気になるもの。本作では彼の部屋の「洗面台」「机」「ベッド」に設置された監視カメラから、その様子をいつでも覗き見ることができる。
監禁された部屋の中での彼の行動は「Morning」「Noon」「Night」の時間帯によって変化。初めは何もない部屋の中で静かな時間を過ごしているが、プレイヤーがアイテムを「差し入れ」することで、殺風景だった彼の部屋が賑やかになり、彼が日常でできることも増えていく。
差し入れとメッセージで展開される「監視クエスト」を達成すれば、美麗なスチルも入手可能。クエストを進めるためには島を散策しアイテムを入手することはもちろん、「監視」の中で彼や物から発生する「吹き出しアイコン」から入手できる話題も必要になるので、じっくり彼の生活を見守ろう。
また、メッセージや差し入れで彼との絆を深めていくと、シナリオに関するイベントが発生する。このイベントで入手した重要な話題やアイテムを彼に送ると、シナリオが進むポイントとなる「面会」が行えるようになる。
「面会」では閉ざされた空間で彼と二人きり、ガラス越しの会話とスキンシップができる。会話中の選択肢やスキンシップの有無はプレイヤーに委ねられ、こちらの行動に彼が返すさまざまなリアクションを楽しめる。彼の表情や仕草、その息づかいまで3Dでリアルに表現されており、最も至近距離で彼を体感できるチャンスだ。
彼とのふれあいで忘れてはいけないのは、本編とは別の時間軸で楽しめる“ご褒美”的ミニゲーム「夢アプリ」。眠っている無防備な彼をタップして制限時間内に起こしてあげることが目的だ。彼をタップすると表示される3種類の異なるエフェクトや台詞をたよりに「当たり」の位置を見つけ出せば、悩ましいボイスとともにクリアゲージが上昇。制限時間内にクリアゲージを一定数溜めれば寝起きの会話が楽しめる。
「夢アプリ」は本編のシナリオには関係ないミニゲームだが、ステージ内すべての難易度をクリアすると「雑貨店」にアイテムが追加され彼に差し入れすることができる。
また追加課金となるが、「夢アプリ」内でのみ使用できるアクセサリーを着用させることで、ミニゲーム中の彼の姿とセリフが変化。いつもと違う彼の姿が見られるチャンスなので、どんどんプレイしたいところだが、画面が画面なだけに遊ぶ場所を選ぶこともお忘れなく。
「囚われのパルマ」は全6話構成で、プロローグとエピソード1が8月30日に配信。エピソード2以降は毎週火曜に配信が予定されている。1つのエピソードに2時間ほどのプレイボリュームがあるが、ここまで紹介した恋愛要素はもちろん、本作ならではのサスペンス要素もきっちり詰まっている。
物語を構成する環境や人物が巧みに繋がっており、彼との交流を深めるために島で得た何気ない話題が、実は記憶を取り戻すカギだったということも少なくない。序盤は彼のために「農場でじゃがいもをもらって食堂でフライドポテトでも作ってもらおう」などと乙女気分だった筆者も、物語が進むと「あの時のフライドポテトは、もしや何かの伏線だったのか」と思考を切り替えずにはいられなかった。
個人的には、恋愛ゲームにエッセンス的に謎が含まれているというよりは、サスペンス作品に恋愛要素が内包されている印象を受けた本作。ハルトの過去と物語の謎が徐々に明らかにされる過程を、甘くミステリアスな恋愛とともに、ぜひ最後まで堪能してほしい。