声優の三宅麻理恵さんが気になるゲームを実際にプレイして紹介する「マリエッティのゲーム探訪」。第5回は日本ファルコムより2016年7月21日にPS Vita用ソフトとして発売され、2017年にPS4版の発売も控える「イースVIII -Lacrimosa of DANA-」を紹介します。

みなさまはこの夏、思い出に残るような出来事はありましたでしょうか? なんとなく、夏というのはイベント行事が多いことや学生時代の長い夏休みの印象を引きずって、何かを成す、もしくは普段できないことをせねばならない気持ちになりますよね。とはいえ、なかなかできることではありません。

しかし、当コラムは「マリエッティのゲーム探訪」。なかなか時間が取れない方や、出不精な方々にもひと夏の思い出…いや、大冒険をご提供させていただきます。そう、「イースVIII -Lacrimosa of DANA-」です。

イースシリーズに私が初めて触れたのは1998年にPCで発売された「イースエターナル」でした。父親が使用しているPCでもゲームができるらしいと電気屋さんに行って購入したのをよく覚えています。「優しいRPG」とうたわれていたイースはあたたかさがありつつも刺激的で、主人公のアドルと共に初めて訪れるフィールドを駆けまわっては攻撃が上手く当てられず、よく目を回していたものです。

それからずいぶん経ちましたが、こうして新しい作品をプレイできることにとてつもない喜びを感じます。コラムの後半には大胆にも日本ファルコム代表取締役社長の近藤季洋様にインタビューをさせていただきました。私にとってのこの夏一番の大冒険は間違いなく日本ファルコム様の本社でこのインタビューをさせていただいたことです。舞い上がって「イースエターナル」時代からのユーザー目線のインタビューに偏り気味ですが、今作からイースに興味を持たれたユーザーさんにも楽しんでいただける内容になっておりますのでぜひ最後までお付き合いくださいませ。

「イースVIII -Lacrimosa of DANA-」とは?

前作「イース セルセタの樹海」から4年、「イース」シリーズの完全新作としてリリースされた「イースVIII -Lacrimosa of DANA-」。グリーク南方、ゲーテ海に浮かぶ《セイレン島》。伝説の波間に埋もれ、歴史から忘れ去られた地で冒険家アドルの新たなる冒険が描かれる。

本作では、フリーダッシュ&ジャンプアクションに多彩なスキル攻撃、一瞬のスキを突いてピンチをチャンスに変えるフラッシュムーブ&フラッシュガードなど、ハイスピードでスリリングなイースアクションを採用。また、前作「イース セルセタの樹海」より踏襲された探索型オートマッピングによる「地図作成」に加え、漂流者たちを集めて拠点を拡大・発展させる「漂流村」、アドル以外の漂流者たちとともに居住エリアの防衛に挑む「迎撃戦」など、冒険をさらに奥深く楽しめる新要素が多数搭載されている。

永遠に呪われた島、セイレン島。孤立した島で漂流した人々を救助して拠点を構え、冒険して行くこととなります。

アドル

冒険家の主人公。台詞らしい台詞は選択肢になるのでしょうか。紳士らしく振舞うもよし、傍若無人にふるまうもよし、プレイヤー次第で千差万別の性格に印象が変わります。余談ですが今までのイースシリーズでのアドルは、プレイ開始時に若干記憶がぼんやりしていることが多かったので、序盤から記憶がはっきりしている今作のアドルは個人的に新鮮でした。

ダーナ

イースシリーズといえば主人公はアドル=クリスティンでしたが、今作は謎の少女ダーナとW主人公になっています。アドルの夢の中でしか現れない彼女が物語にどう関わってくるのかも見どころの一つです。

ラクシャ

序盤から共に戦ってくれる貴族の令嬢。頑固なところもありますが、冒険をしていくうちに少しずつ彼女の心の成長が感じられるかもしれません。序盤のツンケンした態度に、思わず意地悪な選択肢を選んでみたら悲しんでくれたり、お礼を言うと頬を染めて照れたりと、表情が豊かで可愛らしいです。

サハド

錨を振り回して戦う漁師のお父さん。豪快ですが、周りの空気を和らげてくれて頼れる仲間です。

ヒュンメル

謎の運び屋の男性。銃を持って戦います。仲間になったり外れたりと、敵か味方か油断ができない人物です。

リコッタ

アドルたちが漂着前から島に住んでいた少女。彼女の明るさが冒険中や漂流村を照らしてくれることもしばしば。フィールドでの会話が、彼女が加わることでより賑やかになって楽しくなることでしょう。

今作は、操作が可能なキャラクター以外にも、たくさんの個性的なキャラクターが登場します。漂流者たちのクエストをこなしたり、キャラクターにプレゼントをあげることもできます。更に好感度が上がると特別なイベントが起こり、より深い信頼関係を築いていくことも。

好感度が高いとサポートスキルが高確率で発生したり、迎撃戦にも影響が。漂流村の皆と一丸となって迎撃しているという体感もあり、毎回熱い展開が繰り広げられます。

絶景が見える場所に到達すると、《ロケーションポイント》が地図に登録されます。漂流した島で絶景を眺めるなんて、なんだか暢気だなあと思うのですが、冒険家ですから、しょうがないですよね。名称もその場で付けているようなものばかりで、場所の名称とは、こんな風に付けられていくのかもしれないなあと妙に納得させられました。

こんなにまわりが海に囲まれているのだから、釣りをしないわけにはいかないでしょう。おいしそうな魚からアイテム、モンスターが釣れることもあったりするので油断ならないです。

バトルシステムはキャラクター攻撃属性があるので、敵に合わせて切り替えてスピーディーに展開します。敵の攻撃に合わせて回避してダメージを叩き込んだり、EXTRAスキルで大ダメージを与えたりと爽快感があります。

爽快感の溢れたゲームシステムと、仲間との関係性にも魅力を感じる「イースVIII -Lacrimosa of DANA-」。まだまだ暑さの厳しい時期ですが、このゲームでこの夏の忘れられない冒険をしてみるのはいかがでしょうか。

日本ファルコムの近藤社長にインタビュー!

※一部ゲーム内容に関するネタバレを含みます。未プレイの方はご注意ください。

近藤季洋氏

三宅さん:本日はよろしくお願いします。一番はじめに買ったのが「イースエターナル」で、そこから日本ファルコムさんにずっとお世話になっています。

近藤氏:その時点ではまだアルバイトでした。

三宅さん:ええーっ! その頃からずっと携わられているのですか?

近藤氏:今年で19年目になりますね。長いといえば長いですが、上はまだいくらでもいますね(笑)。

三宅さん:パソコンを父親が使っていて、元々ゲームが好きだったこともあってパソコンのゲームを遊びたいと思っていたものの当時はあまり買うものがなく、その中でどこにでも売っていて面白かったのが、「イース」をはじめ日本ファルコムさんのゲームばかりでずっと遊んでいました。

近藤氏:女性の方ってお父さんのパソコンが元だったり、お兄さんがやっていたりというきっかけがすごく多いんですよ(笑)。

三宅さん:「西風の狂詩曲」、「月影のデスティニー」、「アークトゥルス」、「ツヴァイ!!」とかも好きで。「英雄伝説」は「朱紅い雫」からプレイしていて、その後は「海の檻歌」に行って、「白き魔女」に戻るというかたちでした。

近藤氏:歴史としては間違っていないですね(笑)。

当日三宅さんが持参したアイテムの数々。その場に居合わせた一同で唸りました。

三宅さん:という感じなのですが(笑)、ここから「イースVIII」についてお話を伺えればと思います。「イース」シリーズの新作としては「イース セルセタの樹海(以下、セルセタの樹海)」から4年、完全新作だと「イースSEVEN」から数えて7年ぶりになりますが、PS VitaとPS4でのリリースとなる中で、まずPS Vitaで出そうとしたのはなぜでしょうか?

近藤氏:基本的に弊社のお客様は今PS Vitaに多くいらっしゃるので、PS Vitaを優先的に制作したということになります。PS4はPS4でやるべきことがたくさんあって、同時に発売することは難しいと途中で判断し、PS Vitaを先に出させていただきました。

三宅さん:PS4ということですと、ちょうど9月に「東亰ザナドゥ eX+」がリリースされますよね。そちらを出される経緯はあったのでしょうか?

近藤氏:「東亰ザナドゥ」はPS4を出すというのは最初に決まっていたわけではなく、PS Vitaで出させていただき、日本ファルコムとして初の現代劇にするなど、いろいろなチャレンジをしていく中で評判が良かった反面、アクション要素のあるゲームなのでPS4で遊びたいという意見をたくさんいただきました。元々「東亰ザナドゥ」のゲームエンジンがPS4に移植しやすいものだったということもあり、そうであればPS4版も出してみようという流れで発売することになりました。

「イースVIII」の場合は元々がアクションなので、手軽に携帯ゲーム機で遊びたいという人もいれば、しっかりとコントローラで、大画面で遊びたいというご意見もあるだろうと思い、最初からPS VitaとPS4でやろうということは決めていました。

三宅さん:今回、タイトルにもある通りダーナというもう一人の主人公が登場しますが、2人の主人公にしたのはどういう試みだったのでしょうか?

近藤氏:「イース」は来年で30周年を迎えるファルコムの中でもかなり歴史のあるタイトルで、軌跡シリーズとは違い、主人公が30年間、一貫してアドル・クリスティンとなっています。アドル自身はあまりお喋りではなく、プレイヤーの視点からアドルを通して冒険していくというのがこれまでのスタイルでした。

今回思いついたのが、もう一人の主人公を用意するものの、切り替えるのではなくアドルの夢の中に現れるようにすることです。夢の中では彼女なりのストーリーが進んでいくのですが、それをアドルが見ていることでお互いのストーリーがどこかで接点をもって大きく展開していくというかたちが作れると、今までとは違う「イース」の新しい試みができるのではないかと思いました。そういうところからダーナという少女を主人公に据え、アドルと二人三脚で物語を進めていくシステムになりました。

三宅さん:ちょうど仲間になった時に、武器の攻撃属性がダーナとアドルで一緒だった時に、よくわからないけど感動しました。アドルだけの属性なのかなと思いきや、ダーナと一緒なんだと。

近藤氏:同じ主人公という立ち位置なので同じ斬撃のタイプにしたのですが、ダーナが好きだというお客さんがたくさんいらっしゃって、アドルとダーナを一緒に入れたかったから属性を一緒にしないで欲しかったという意見もあって悩ましいところです(笑)。

三宅さん:イベントパートや探索中に、右上に会話が発生したり、キャラクターの掘り下げが今まで以上に多いように感じたのですが、音声関連でのこだわりなどはあるのでしょうか? 寝言とかも言ってたりしていましたし。

近藤氏:今までの「イース」の物語は今まで描かれなかった土地にアドルが訪れて、いろんな町や村を転々としながら、目的地に向かって進んでいくという形式でした。ただ今回は町も村もない場所で、NPCを含めた登場人物の総数が今までのシリーズで一番少ないんじゃないかなと思います。

無人島にたどり着いた漂流者たちの物語なので、今回しかできないやり方というのがきっとあるだろうと。そう考えていくと、転々としていた時よりは同じ人間と長い時間付き合っていくので、一人一人のキャラクターをいつもよりきちんと掘り下げて、アドルとの触れ合いややり取りを細かく描いていくことができると思い、音声もいつもより頑張っていこうという話になりました。

三宅さん:迎撃戦でアドルが「みんなありがとう!」みたいなことを言った時にびっくりしたのと、この年代のアドルのキャラクター性が見れて楽しかったです。表情もラクシャとかがすぐに頬を染めたりと豊かで、序盤はあえて服とかを持ってきてくれても「別に今のままでよかったのに」と言って嫌な表情をさせるのが楽しかったです。ただ、高森さん(ラクシャ役の高森奈津美さん)に優しくするとイベントが発生すると聞いてからは優しくし始めました(笑)。プレゼントもあげたりして仲が深まったりするのも、「イース」シリーズとしては新鮮でした。

近藤氏:「イースVIII」では一方的にアドルが町に来て話しかけるのではなく、漂流者である人々をアドルが船長からの依頼を受けて助けていくところから始まるんですよね。そこでプレゼントをしたり、会話をしたりと一人ひとりへの愛着が違うというお話は、ユーザーさんからいただいています。「イース」らしくないというご意見ももしかしたらあるかもしれませんが、細やかにできたことで新しい「イース」になったのではないかと思います。

三宅さん:シスター・ニアと一緒に丘の上に行く時に、彼女がビリっと服を破るのに彼女の成長がありましたし、能力にも反映されているのがイベントで印象に残っています。

近藤氏:迎撃戦でも少し有利になりますからね。

三宅さん:冒険で無人島に行くこともあるでしょうし、そこは盲点だったなと思いました。

近藤氏:アドルって毎回漂着して、気絶しているところからゲームがスタートしますが、今回ほどちゃんと漂流生活をしているシチュエーションはなかったように思います。かえってシリーズのユーザーさんにとっても新鮮だったみたいですね。

三宅さん:ただ、なぜドギはプレイヤーキャラクターじゃなかったんですか…? そこに何か狙いはあったのでしょうか。

近藤氏:そこはすごく悩んだところですね。お客さんからもドギをプレイヤーキャラクターとして使いたいという意見が出るかなと思っていたら、やはりいくつか目にしています。

「イース」の場合はまずはゲームとしての面白さを設定して、キャラクターの設定や物語を後から考えていくという作り方をしているんですね。プレイヤーキャラクターは各属性につき2人ずつで合計6人、それ以上増やすとバリエーションにしかならないので、その6人をきちんとアクションゲームの主人公として使えるキャラクターとして突き詰めていくことを決めました。

今作では偶然アドルと客船に一緒に乗り合わせていただけなので、当然いろいろな立場の人間がいて、出身や職業、思想も違うんですよ。それでも、全く何もないところに投げ出されるという環境で力を合わせて、多少折り合いが悪くてもどこかで団結して、脱出という目的に向かって進んでいくというところを描きたかったんです。

それを一番身近に語ることはできるのはパーティーキャラクターのメンバーで、その6人の内にドギがいると、ほぼアドルと同じ立場の人間になってしまうんですよね。いろんな人間がいてまとまっていく、というところをパーティー内で描くのにドギがいると枠を使ってしまうだろうと。

ただ、やはりドギはアドルのパートナーですし、前作「セルセタの樹海」ではほとんど登場しなかったので、今回は何らかのかたちで登場はさせたいと思い、違う立ち位置からアドルを援護するという立場になってもらい、パーティーメンバーは先ほど話したような目的でゲームを進めていくかたちになりました。

三宅さん:今回は新しく「迎撃戦」というモードが入っていますが、こちらは信頼関係を反映することを目的に導入されたのでしょうか?

近藤氏:「イース」は基本的にフィールドやダンジョンを進んで、中ボス、そして大きなエリアボスを倒すと一区切りというのを繰り返していくゲームになっています。

今回は無人島で身を守りながらみんなで生活していくというシチュエーションから、最初に漂流村が生まれました。それと同時に物語の大きなキーワードとして古代種という存在がいるので、そういう環境だと(古代種が)襲ってきそうという話になって。そこから、ゲームの今までのサイクルの中で、毛色の違うアクションステージが入ると新しいものになるのではと思ったところからスタートしています。

実は最初は「防衛戦」と言っていたんですが、防衛するとか守るとかという話をチーム内でした時に、「冒険は前に進んでいくのに、なぜ戻りたくない時に呼び出されて戻らないと行けないのか」と、結構後ろ向きに捉える人が多かったんです。そうではなく、ボス戦前に入り、クリアすることで武器の材料などが手に入るならプレイしたくなるよねと話し、前向きなボーナスステージだという意味で途中から迎撃戦に名前を変えました。

また、当初はもっとシミュレーションのようなルールにしていたのですが、アクションをしながらシミュレーション画面を見ることができなくて、最終的にはアドルたちのアクションを中心に進めるかたちになりました。もう片方でドギたちが戦っていて、向こうは人数が多いから定期的に助けに来てくれると。

三宅さん:ただ最初は「なんでドギがいるのにこんなに弱いんだよ!」と(笑)。それと最後に出てくるスコアを見て、勝手にキャラクターの人格などの裏設定を考えて楽しんでいます。

近藤氏:すごく緻密なルールがあるというわけではないのですが、やはりああいう風にかたちに出ることで想像もできますし、プレゼントなどをして親愛度を上げておくと迎撃戦で活躍しますので、迎撃戦を通じて漂流村という集落のまた違う一面を上手く描けているんじゃないかなと思います。

「イース」は「軌跡」シリーズと比べると、シナリオやキャラクターの面白さはもちろんですが、どちらかと言うとゲームの面白さみたいなところを追求しているんですよ。

三宅さん:Rボタンを押しながらLボタンで出すEXTRAスキルのゲージがすぐに溜まったりして、スピード感と爽快感がすごく気持ちいいという印象があります。それこそ「イース」の2Dの時とかに半ずらしでずっと攻撃したりする部分が、もしかしたらEXTRAスキルの時の爽快感とリンクしているのかもしれません。

近藤氏:フィールドや探索先では体力に気をつけながら慎重に行動しなければいけないのですが、迎撃戦では仲良くなってくると仲間たちがいろいろと援護してくれて、体力やスキルポイントを回復してくれたりするんです。ものすごく強い敵が出てきたとしても、ガンガンこちらもスキルを使うことができ、探索する時の戦闘とはまた全然違う、爽快感があってスピーディーな、次々と強敵を倒していく戦闘ができるんです。

同じアクションでもその性質が変わることで、面白さが変わるということを夢中になって楽しんでいただくということをひとつの目標としていたので、迎撃戦を導入してよかったと思いました。

三宅さん:限られたマップで、どのタイミングでドラを叩くのかというのをすごく考えながらプレイしていました。敵がいっぺんに襲ってきた時に今叩くべきかどうかの戦略がありますよね。

近藤氏:ドラを叩くとドギチームも少し盛り返したりするので、ドギチームが劣勢の時に叩いてあげるのもありなんですよ。

三宅さん:今回迎撃戦が加わったように、「セルセタの樹海」から地図の踏破率でご褒美がもらえるという仕組みが入ったりしていますが、PS Vitaになってから追加されたこれらの要素は、今後も盛り込まれるのでしょうか?

近藤氏:マッピングはアドルの冒険家というプロフィールと相性が良いですよね。「セルセタの樹海」の時も、「イースVIII」の時も、ストーリーが一切無くても遊べるものにしたいとチームには言いました。それにストーリーが加わればゲームとしてはきっと面白いものになるだろうと。

シナリオがなくても進めるには定期的な目標が常に提示されているとゲームに入りやすいと思うのですが、地図を完成させるというのは非常にわかりやすい目的なので、今回は地図作りをやめたほうがいいという面白い舞台設定があったらやめるかもしれませんが、そうでない限りはマッピングがあってもいいのではないかとは思っていますね。

三宅さん:冒険でいきり立ったり、がつがつした印象もあるんですけど、今作ではロケーションポイントもあって、優しいRPGという感覚がより一層強くなりました。雲が動いたりするのを眺めたりすることが私の中ではすごくありがたいポイントで、しかもちゃんと観光地のような地名がついているので、アドルがつけているのかなと想像していました。

近藤氏:固有名詞が地名にはあまりついてないのですが、そのほうが漂流者たちがつけたのかなと思えるのではないかと考えまして。シナリオの中でラクシャが山に名前を名付けるシーンがあるのですが、多分そんなノリでいろんなところで地名をつけたのではないかなと気を使いました。

三宅さん:「イース」では読み物が昔からついているという印象があって、久しぶりに用意されていて嬉しいなと思ったのですが(※限定版に付属している「古代書:アドル=クリスティン手稿(日本語訳版)」)、ここにも反映されるものなので自分がつけたみたいな気持ちになって、すごく嬉しいシステムだなと思いました。

近藤氏:元々「イースVIII」を考えた最初の企画の段階では、「セルセタの樹海」のマッピングが楽しかったというお客さんの声を受けて、マッピングをより楽しめる舞台を考えようというところから始まり、舞台が無人島になったんですよ。漂着した場所であればアドルは右も左もわからないし、そこから地図を作っていくという流れです。

前作は記憶喪失という設定で、その場所に行って以前訪れた時の記憶を思い出しながら冒険を進めていくというシステムだったんですけど、次にもう1回同じことはできないなと。じゃあ何を集めようと考えた時に、一緒に漂着したお客さんを集めようということになったので、今回はマッピングのゲーム内に占めるウエイトは大きいと思いますし、最近の「イース」の基本的なシステムの一つだなと思います。

三宅さん:それと「イース」といえば音楽がいつも印象に残っているのですが、今作での音楽のポイントはありますか?

近藤氏:音楽はスタッフ個々でいろいろと自分のテーマを持っているとは思うのですが、私からは、ダーナというもう一人の主人公がとても大きな役目を果たすので、彼女のメインテーマはメロディーがしっかりしているものを作って欲しいと話したのと、アレンジを使って全体を演出したいと言いました。元々「イース」には不動の正妻と呼ばれるフィーナという「イースI」のヒロインがいますが、フィーナのテーマを超えるものを作って欲しい、そしてダーナというタイトルで作って欲しいということは言いました。それがいろんなところに使われていたりします。

それから、最近メロディーが強い曲があまり無かったような気がしたので、メロディーのクサさを強調した、自分自身ではクサすぎる、熱すぎるといったぐらいのほうが「イース」らしさにつながるのではないかと話しましところ、フィールド曲やボス曲で熱い曲が上がってきました。

三宅さん:ドンドンドンドン、ドラムが心を奮い立たせるような。

近藤氏:ズンダラ節って言われるんですけど(笑)。でも今回は曲もお客さんに良い評判をいただいているようで良かったです。イベントはしっとり系、でも戦闘は熱くというのが「イース」の伝統だと思いますので。

三宅さん:日本ファルコムさんのゲームは限定版でCDが付いたり本が付いたりといったことが多く、また通販ではさらにプラスでお金かかりすぎじゃないかなという内容のCDが付いたりしますが、そうしたグッズを選ぶ際はやはり相談とかされるんですか?

近藤氏:これは創業者(※現会長の加藤正幸氏)の頃からゲームに入るための気持ちを盛り上げていくツールとして、妥協せずに商品の一部として取り組んでいくスタイルですね。そして自分たちが単にデジタルなことをやっているだけでなく、モノを作っているということを実感しながらみんなで進めていくことが好きな人たちが集まっていると思います。

例えば今回の本一つにしても、紙質を見ていただければそれだけでわかるぐらいのこだわりようなんですよ。ゲームの中身もきちんと作りますが、パッケージを開けてドキドキしたり、本を読んでワクワクして、みたいなところを含めた全てがファルコムの商品なので、胸を張れるかたちにして出したいというのが、受け継がれてきたファルコム流なんです。

だからコンシューマ市場に参入した時に、パッケージやマニュアルの仕様が全て一緒になっているので、みんなが少しがっかりしていたのを覚えていますね。その分、限定版で腕をふるうというのはもしかしたらあるかもしれません。PC用ソフトを発売していた頃は全て自分たちで大きさを決めて、デザインをして、紙の質を決めて最終的にひとつのパッケージとして仕上げるというところを社員全員でやってました。

一本一本を大事に作っていますし、人の心を動かすのはやはり一生懸命やろうという姿勢だと思います。そこが社風にもつながっているところかなと思いますし、今後も大事にしていきたいと思います。

三宅さん:ガガーブトリロジー三部作のパッケージが青、白、赤でデザインされていて表紙にキャラクターの絵もなくてすごく印象に残っています。また「イースI・II完全版」が金ピカのパッケージだったのが衝撃的でした。

近藤氏:みんなで太陽の光を反射して遊んでいました(笑)。あれは当時すごくこだわってデザインしましたね。あそこまでやるゲームメーカーさんもあまりいないんじゃないかなと思います。

三宅さん:PS Vitaのゲームですと、最近は2ページぐらいの説明書が多かったんですけど、「イースVIII」のパッケージを開いて、説明書にたくさんページがあった時にすごく嬉しかったです。

近藤氏:「ちゃんとマニュアルが付いてる」とTwitterでつぶやいているお客さんが結構いました。

広報担当:去年の「東亰ザナドゥ」の時もお客さんが結構驚かれていました。

三宅さん:キャラクターの紹介もあるし、ゲームの説明もあるし、資料も載っていますからね。

近藤氏:特に「イース」は初代からしっかりとした本が特典としてパッケージの中に入っていて。当時のゲームは、物語の全てをゲームの中で表現できていなくて、その導入としての物語や世界観の説明をマニュアルでやっていたんですよね。そういうことにしっかりと取り組んだのは恐らく「イース」が初めてなんじゃないかなと思います。そのあたりが受け継がれていて、マニュアル2ページじゃよくないよねっていう感覚なんだと思います。

ロゴもタイトルごとにこだわって作っています。「イースVIII」についてはどういうイメージかと聞かれて、「海です」と答えたら今回のロゴになりました。

三宅さん:発売もちょうど夏でしたし、今遊ぶには最高のゲームだなと思いました。

近藤氏:夏に合わせることができたのは偶然なのですが、結果的によかったなと思います。

広報担当:“Ys”の枠は大理石をイメージしていまして、これがちょうどギリシャあたりの遺跡の柱をモチーフにしています。

近藤氏:ギリシャの南側に当たるところが今作の舞台になっていることからのデザインなのですが、そのあたりも妥協がないですよね。やはりそういうところで悪い方向にイメージが決まってしまって、ゲームの中身に辿り着くまでにがっかりはさせたくないですし。

三宅さん:私みたいに子供の頃から遊んでいた世代から、今回から「イース」に触れた方までさまざまなファンがいらっしゃると思うのですが、宣伝などのアプローチの仕方は変わってきますか?

近藤氏:ゲームを作る段階から気を使っていますね。「軌跡」シリーズももう11年経ちましたし、「イース」に至っては30年を迎えます。前の続きからしっかりやって、引き続きお客さんに興味を持ってもらうというやり方もあるのですが、「イース」シリーズは歴史が長いので極力それをやっていません。必ず1本の作品できちんとエンディングを迎えてケリをつけて、1話完結というかたちにしています。ドギのようにシリーズを重ねても登場し続けているキャラクターもいるのですが、アドルの友だちなんだなという認識であればすぐに入っていける世界観を最初に設定することにしています。

宣伝の際も、続きものというよりは「イースVIII」という単独の作品なんだということをなるべく強調しながらやっています。ただ“VIII”とついていると、そうは言ってもねというところもあるのですが(笑)。ただ中身がそうした作りになっていると、お客さんの中で「全然関係なく楽しめるからやってごらんよ」とWEB上で言ってくださる方も多いので、続けていくことが大事なのかなと思っています。

「イースVIII」は、シリーズの中でも内容について非常に好評をいただいておりまして、いろいろな方が薦めてくださっているのもTwitterなどでよく見かけます。そういったことに繋がるような広報をしていくというのが今後のやり方だと思います。

「軌跡」シリーズに関してはまさに続きものなので、毎回どうしようかと悩むんですけれど(笑)。ただ、やはりある程度のシーズンが終わったところで一区切りとして、主人公と舞台が変わるということをやっています。

「空の軌跡」三作品が終わり、「零の軌跡」「碧の軌跡」と展開していった時は、最初からPSP用のタイトルとして決まっていたこともあり、現代っぽい場所を設定し、キャラクターたちの服装も現代風にしてシリーズを仕切り直すということをやってみました。その結果、若いお客さんが一斉に入ってきましたし、うちの定番を期待してくれるお客さんもついてきてくださったので、そこで「軌跡」シリーズならではの続け方が見えたような気がしました。

クロスベル編、帝国編とシーズンを変えながら、途中から入っていってもついていけるという作りにしていますが、実際にお客さんの層はシーズンごとに違いますね。「閃の軌跡」は零・碧からさらに若い人たちが手に取るようになっています。やはり学園モノだったというのがあるのかもしれません。

「イース」シリーズは「軌跡」シリーズと比べると若干年齢層の高いシリーズにはなりますが、ゲームの面白さという部分で今までのシリーズで全く経験がないという方も遊ばれているので、そういうところで勝負していかなければいけないかなと思います。

三宅さん:ちなみに、今後パソコン向けにゲームを発売することは考えてらっしゃいますか?

近藤氏:私がPSPに主軸を移したのは7、8年前だったと思うのですが、その頃にパソコンのパッケージって店頭に置いてもらえなくなっちゃったんですよ。いくら私たちがゲームを作っても売り場スペースがないと流通さんにも言われるようになり、なかなか厳しいなと。ネットで通信販売のみでやることとか当時はいろいろと考えたのですが、それだと絶対に数は減ってしまいますし、どんどん先細っていく可能性が高いだろうということで、思い切ってコンシューマに全て移してみようというところから今に至っています。

今では状況も変わってきていて、Steamのようにダウンロードで購入するお客さんも増えていますので、また環境が変わったら私たちももしかしたらパソコンにタイトルを戻すこともあるかもしれません。「完全に(パソコン向けに作るのを)止められたんですか?」ということを聞かれるのですが、そもそも私たちはパソコンゲームを作っていたファルコムを選んで入社しているので、好きで作っていないわけではないんですよ(笑)。やはり環境があって、ゲームを作り続けるための選択のひとつだったと考えているので、機会があればやっぱりまたパソコンゲームにチャレンジしてみたいと思っています。

また自社ではありませんが他社さんと組んで、「軌跡」シリーズの中で自分たちでは手が回らない地域を舞台とした、PCブラウザゲーム「暁の軌跡」というゲームをサービスしてみたりと、いろいろなチャレンジをしながら広げたいと思います。

三宅さん:パソコンゲームを出されていた頃に、日本ファルコムさんのCD-ROMをよくゲーム屋さんでいただいたりしていましたが、今でもゲーム屋さんに行くと定期的に冊子が置いてあるのが、パソコン当時の息吹を感じて私は嬉しく思います。

近藤氏:今もその頃の伝統が残っていて、ファルコムマガジンという冊子を自分たちで作って置かせてもらっていますが、あれも全て社内でつくっています。面白いことは全部自分たちでやりたいんですね、でも大変でもあるんですが(笑)。

三宅さん:日本ファルコムさんとして、今後はどういった作品を作っていきたいですか?

近藤氏:いろいろとシリーズが強くなってきてしまっているのですが、その中でも去年の「東亰ザナドゥ」のような、伝統を感じさせつつも違うものを提示していくという作り方がやりやすいのかなという気はしています。そういうチャレンジを「東亰ザナドゥ」のようなタイトルとしてやっていくというのが、自分たちのモチベーションを保つために必要だと思っています。

その一方で期待いただいているシリーズもありますので、そちらの新作も引き続き作っていきます。ただ同じことをやっていてもシリーズは続かないですし、お客様も離れてしまいますので、シリーズの伝統を保ちながら一新していくというのがひとつの醍醐味だと思います。私たちも新しい「イース」や次の「軌跡」を考えるのは楽しいですしね。

そういったバランスをとったところで作り続けていくというのがひとつの目標なんですよ。私たちのような30、40代のユーザーにとっては子供の頃にゲームが表れてきていろいろな感動をもらったし、いろいろと楽しい時間を過ごさせてもらったので、それをバトンタッチして受け取って続けていくということを大事にしていきたいです。

それには作り続けないとダメですし、作り続けるためにはいろいろと変わっていかなければいけません。シリーズだってそうですし、新しいものを提示するにしてもその時代のものを勉強していかなければいけませんが、その中にもファルコムらしさみたいなものが必ずあって、そのひとつがお客さんに喜んでもらいつつ、自分たちのやりがいがあるものにしていくということです。良いものを作ろうと一生懸命にやっている気持ちがパッケージを通して伝わる、ゲームとして伝わるものを作り続けていきたいと思います。そしてそれを感じ取ってもらえればと思います。

イースVIII -Lacrimosa of DANA-

日本ファルコム

PSVitaダウンロード

  • 発売日:2016年7月21日
  • 12歳以上対象

三宅麻理恵さんプロフィール

生年月日:1985年6月7日
出身:大阪府
趣味:読書・落語・ゲーム
主な出演作品:「輪るピングドラム」萩野目苹果 役、「銀の匙」御影アキ 役、「緋色の欠片」春日珠紀 役、「アイドルマスターシンデレラガールズ」安部菜々 役

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