千葉県・幕張メッセにて9月15日より開催された「東京ゲームショウ2016」。ソニー・インタラクティブエンターテインメントブースにて9月18日に行われた、コジマプロダクションのPS4タイトル「Death Stranding」のステージをレポートする。

代表作の「メタルギア」シリーズで世界にその名を知られるクリエイター小島秀夫氏。同氏が東京ゲームショウ(TGS)と並ぶ世界最大のゲームショウ「E3」にて今年6月、独立後に初めてとなる完全新作「Death Stranding(デス・ストランディング)」を電撃発表した。

それから約3ヵ月後の9月18日、同氏がTGSに姿を現し、「Death Stranding」についての新情報を発表した。会場となったステージ前は立ち見客であふれ帰り、注目度の高さをうかがわせた。

ステージの大画面モニターには、「Death Stranding」のトレーラー映像が流される。蟹が動き回る浜辺に、倒れている1人の男。首飾りだけを身につけたこの男は、いったい何者なのか?

トレーラーが終わると、ここで小島監督とアートディレクターを務める新川洋司氏が登場。もともと高かった会場のボルテージが一気に上がり、盛大な拍手が送られる。

続いてE3での発表会の様子が映し出され、その後に司会から小島監督へインタビューが行われた。コジマプロダクション、そして、その処女作となる「Death Stranding」の現状について語られた。

――コジマプロダクションを、なぜ起ち上げられたのでしょうか?

小島氏:一言で言うと、世界中のみなさんが遊びたいゲームを作るためです。食べるためとか、お金儲けをしようとか、そういうのはないです。本来ならもう歳なんで引退してもいいんですが、みなさんが僕をを必要としてくれているので、そのためにゲームを作る会社を起ち上げました。

――ファンが小島監督に望んでいるゲームというのは、どんなものでしょうか?

小島氏:ゲームっていろいろありますけど、(僕が)これまで作ってきたようなゲームでしょうか。具体的にはAAA級の、(技術的に)ハイエンドで、お話もあって、テーマもあって、ゲーム性もあって、ボリュームもあって、クオリティも高い。そういうゲームを望まれているので、それを作ろうとしています。

――それがこの「Death Stranding」ですよね。映像を見ただけではSFなのかホラーなのか分からないのですが、どんなジャンルになるんでしょうか?

小島氏:僕のゲームを遊ばれた方は分かると思うんですけど、SFとかホラーとか冒険小説とか、いろんな要素を入れて1つのゲームを作っています。だから「僕が作る、いろんな要素が入ったゲーム」というニュアンスで伝わればいいと思います。

――それを実現するために起業されたと思うんですけど、不安はなかったですか?

小島氏:食べていくだけなら、もっと楽な方法はほかにあるんですよね。僕は経営とかビジネスがしたかったわけじゃなくて、それなりのスタッフを集めて、目が届くゲーム作りをするために会社を作りました。これまで30年間、テクノロジーが進んで開発環境も変わる中でゲームを作り続けてきました。(起業しても)同じことをするだけなので、とくに不安はないです。

さらに、その後は公式サイトやツイッターで事前に募集した質問に、小島監督と新川氏が答える形で、いまファンがもっとも知りたいことが披露された。

――コジマプロダクション、発足当時のことを教えてください。

小島氏:(モニターに当時の写真が映し出されて)これ、僕が撮った写真です。昨年にできたばかりの、レンタルオフィスを一部屋だけ借りまして。四畳半くらいの広さしかないので、スタッフ4人が近くにいると暑い(笑) 写真が僕の席ですが、ノートパソコンとPS4とマグカップと、なぜか最初にJ.J.(エイブラムス)が手紙をくれたので、彼からの手紙が机の上に置かれています。このころは、コピー機もなかったので、コピーをとるときはいちいちコンビニに行かなきゃならないから、新ちゃん(新川氏)はなかなか仕事が進まなかったという……。ミーティングもスペースがないので喫茶店に行くんですけど、(朝の)8時半に行っても誰もいない。

――失礼を承知で申し上げますが、とても設備が整っているとは思えない事務所で、ハイエンドなゲーム作りが進められていたんですね。

小島氏:まあ、これは去年までの環境で、いまは事務所もありますし、機材も入れてスタッフも随時、募集してますけどね。事務所探しが大変でしたね、新ちゃんがうるさいんですよ。おしゃれなところばっかり希望するんですけど、家賃が高いので(笑) 

――事務所も移転され、(開発)エンジンもどれにするか、もう決められたとおうかがいしています。

小島氏:今年の1月から世界中のスタジオを回って、いろいろなエンジンとかツールを見て実験をしていたのですが、ようやく決めました。詳細はまだ言えませんが、市販のものではなくて、某有名スタジオのエンジンになります。それを使わせていただきつつ、お互いに技術提携をしながら、ブラッシュアップしていくことを狙ってます。

――「PS4 Pro」が発売されますが、「Death Stranding」はそれを視野に入れているのでしょうか?

小島氏:HDRと4K(編注)に対応します。

※編注:どちらも映像表現に関する機能で、HDRは映像の「明暗」、4Kは「解像度」を表す。従来に比べより鮮明でリアル、高画質な映像が楽しめるようになる。PS4 Proには、この両者が搭載されている。

――「Death Stranding」はオンラインで遊ぶゲームと聞きましたが、1人でもプレイすることはできるんでしょうか?

小島氏:1人でも当然、遊べます。スタンドアローンで、お話を楽しんだりとか。ただ、いままでの協力とか対戦とは違う、オンラインの新しい使い方を考えています。

――新川氏へ「メカは出ますか?」というご質問が来ています。

新川氏:やっぱり欲しいですよね。二足歩行やりたいですね。

小島氏:まあ、新ちゃんがやるってことは、メカがないとね。これで、裸のおっさんと子どもと蟹とメカがそろったので。

新川氏:すごい絵面ですね。

――キャスティングはもう完了しているんでしょうか? また、女性は出てきますか?

小島氏:決まっている方もおられますけど、いま探しているところです。女性も出てきますよ。いま、候補を探してるんですが、みなさんどんなヒロインがいいですか? 逆に聞いてみたいですね。僕的には裸のおっさんばかりでもいいんですけど、やはり「みなさんが望むゲーム」なのでヒロインは必要かなと。

――主役にノーマン(リーダス)さんを起用した理由を教えてください。

小島氏:昔からノーマンさんのファンでして、一緒に仕事をしたいと思ってました。そこで、デル・トロ監督経由で知り合いになったんですね。だから、このプロジェクトは、最初からノーマンさんありきで考えていたんですよ。まあ、まず裸にしちゃいましたけど(笑)

――あの映像って、ホントに裸で撮影されたんですか?

小島氏:パンツははいてましたけど。

――ノーマンさんは、実際はどんな方なんですか?

小島氏:ナイスガイですよ。やんちゃな、イタズラっこみたいな。ああいう感じなんですけど、すごく気を使っている人です。

――新川氏へご質問です。実在の俳優がキャスティングされている場合、キャラクターのデザインは、どのように進めるんですか?

新川氏:僕もこの前のコミコン(※編注)初めてノーマンさんにお会いしまして。その前までは、イメージだけでキャラクターの服装とかを考えて描いていたんですが、お会いしたことでかなりイメージがわいてきました。服装がその人を表すと思っているので、そこは重要かと思っています。

※編注:アメリカで開かれているコンピューターエンタテインメントの祭典。正式名称は「San Diego Comic-Con International 」。

小島氏:ノーマンさんはいま「ウォーキング・デッド」で有名ですけど、ああいう感じではなく、ノーマンさんの新しい服を出すのが僕のミッションです。ゲームのキャラクターって、だいたい甲冑を着てる、バトルスーツを着てる、アーマーを着てる、革ジャンを着てる、パーカーを着てる、スーツ着てる、だいたいそんなものなんですよ。それとはまったく違う、新しいヒーロー像を(ノーマンさんで)作ります。

――ツイッター上に、今年のコミコンにて小島監督とマッツ・ミケルセンさんがいっしょに映っている写真が上がっていましたが、どういうご関係なんでしょうか?

小島氏:マッツさんの大ファンなんです。彼を有名にした「プッシャー」とか「ヴァルハラ・ライジング」って作品があるんですけど、その監督のレフンさんが友達なんですね。で、レフンさんにマッツさんの連絡先を教えてもらって、直接お会いしたのは今年のコミコンが初めてで、これから友達になろうと思っています。

ここで司会から、コジマプロダクショングッズについてのお知らせが入る。壇上の小島監督、新川氏が着ているTシャツは、現在、ファミリーマート品川シーズンテラス店と、秋葉原UDX店の2店舗で限定販売しているとのこと。

また、コジマプロダクションとギルドデザインのコラボレーションによるiPhoneケースも販売中だ。なお、準備が整い次第、ネット販売もする予定だ。

ここからは、さらにユーザーからの質問が鋭くなる。

――ずばり、発売日はいつでしょうか?

小島氏:発売日は決まってます。企画を始める段階で決めてまして、そこに向かって進行しています。少し具体的に言いますと、オリンピック(2020年)よりは早いですし、もっと言えば大友克洋さんの「AKIRA」の舞台(2019年)よりも早いですね。

――すでにノーマンさんの出演は決まってますが、日本の声優さんはいかがでしょうか?

小島氏:もとのキャスティングを進めている最中なので、声優さんはまだ決めてません。

――シリーズ化の予定はありますか?

小島氏:まだ出てないですけどね。

新川氏:5作目くらいまでは、続けたいですね。

小島氏:人気があれば続編ということになるんでしょうけど、いまのところなんとも言えません。先ほどのレフン監督からは「ヒデオは新しいものを作らなきゃいけないから、続編は作るべきではない」と言われてますが……。「まだ出てもいないのに」って言ったら「簡単だよ。主人公を殺せばいいんだ」って返されました(笑)

――「METAL GEAR SURVIVE」に小島監督のアイデアだというウワサをネットで見ましたが、そうなんですか?

小島氏:全然関係ないですよ。まったく知りません(笑) あくまで僕の中ではですが、「メタルギア」はポリティカルフィクションでありエスピオナージもの(編注)なので、ゾンビなんか出るわけじゃないじゃないですか。僕が関わってるんだったら、二足歩行のメカを出しますよ。二足歩行が出ていない作品には、僕も新ちゃんも関わってないですから。

※編注:ポリティカルフィクションは政治を題材にしたフィクション、エスピオナージはスパイものの意味

――「Death Stranding」のテーマを、もう少し詳しく教えていただけますか?

小島氏:これまでのアクションゲームって、棒を使ってCPUと戦うんですよ。そのあと戦いながらドラマが展開するようになって、さらにネットワークでつながったら、棒で戦いながら対戦ができるようになったんですね。それで、いまは戦うこともできるし、オンライン上の仲間と共通の敵と棒で戦えるようになりましたけど、やっぱり「棒」なんですよね。それから、いまはSNSもメジャーになってますけど、言葉の暴力とか、やっぱり棒でたたき合うことがいっぱいあるので、そこからもう一歩先に行きましょうと。本当の「縄」のつながりをしましょうというのを、アクションゲームで体感する。物語も世界観も、全部そこに集約してます。みなさんも含めて、いろいろな会社、スタッフとつながりながらゲームを作ってますので、その感覚がゲームをやることで伝わるんじゃないかなと思います。

ここで、残念ながらステージは終了の時間を迎える。小島監督と新川氏からのメッセージで、本稿の締めくくりとしよう。

「今日はどれくらい人が来てくれるのか心配でしたけど、たくさんの人が来てくれて本当にありがとうございました。これからも、新しい、いままで見たことのない、おもしろいゲームを作っていきたいと思います。よろしくお願いします」(新川)

「みなさんとのつながりを、いまひしひしと感じております。我々はインディーズなんで、バックもなにもないですし、僕らが棒で戦っても世界には勝てませんけど、みなさんとつながれるような、そういうゲーム作りをしたいと思っています。必ずみなさんに喜んでもらえるものを作りますので、よろしくお願いします」(小島)

※メーカー発表情報を基に掲載しています。掲載画像には、開発中のものが含まれている場合があります。

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