コーエーテクモゲームスより発売中のPS4/PS Vita用ソフト「BLUE REFLECTION 幻に舞う少女の剣」。同作のキャラクターデザイン・監修を手がける岸田メル氏、プロデューサーの細井順三氏へのインタビューを掲載する。

コーエーテクモゲームス ガストブランドとイラストレーターの岸田メル氏のタッグによって生まれた、これまでのゲーム作品にはなかった表現を実現した「BLUE REFLECTION 幻に舞う少女の剣(以下、BLUE REFLECTION)」。その立ち上げから発売を迎えるまでにはどのような過程を経ていったのだろうか。

今回、本作のプロデューサーである細井順三氏と、キャラクターデザイン・監修という立場で開発に参加した岸田メル氏にインタビューを実施。2人を始め、本作の開発チーム全体としてのこだわりの数々を聞いた。

(左から)岸田メル氏、細井順三氏
岸田氏のセンスを活かした企画に

――本作の企画が立ち上がった経緯についてお聞かせください。

細井氏:「新・ロロナのアトリエ はじまりの物語 ~アーランドの錬金術士~」(PS3/PS Vita版が2013年11月に発売)が出た頃、ガストブランドで岸田さんと一緒に新しいプロジェクトを立ち上げたいという話をしていたのですが、当時は岸田さんのスケジュールが詰まっていたこともあって、そのプロジェクトとは別のタイトルでお願いしようということになって。

その後、社内で岸田さんと一緒に仕事したい人を募った時に私が手を挙げたのが、「BLUE REFLECTION」の始まりですね。そこからディレクターの高橋梓を加えた3人で、もう一度ガストとして一緒に組むのだから新しいことをしなきゃいけないというところからずっと話をしながら進んでいきました。

立ち上げの一番大きなポイントになるのですが、元々は岸田さんにイラストレーターとしては入ってほしくなかったんです。岸田さんのセンスを活かして、監修のような立ち位置で入ってもらうという考えは、企画が始まる以前から言っていました。

岸田氏:「メルルのアトリエ ~アーランドの錬金術士3~」が発売された直後ぐらいからよく口にしていましたね。

――岸田さんのセンスに関しては、イラストを描いてもらったり、お話をしている中で気づいた点だったのでしょうか?

細井氏:私自身、その当時は宣伝としてお付き合いしていたのですが、他業種でやられていることが先鋭的で「今っぽいな」と思ったことがきっかけです。そういう感覚はイラストレーターとしてだけだともったいないと思っていたので、今作における骨子は岸田さんにイラストレーターとしてもう1回お願いするのではなく、監修・監督という立場で入ってもらいたいというところからスタートしています。

監修というクレジットは数多くあると思いますが、今作については売り文句でなく、そこから始まっているプロジェクトなんです。本当の意味で近いのは、プロデュースもディレクションも監修も全てやっているということです。

岸田氏:チェックバックなど本当に監修として関わっているところもあるんですけど、セクションによっては絵以外でも僕が作ったりやっている部分があります。それは我を出したいということではなく、やる人がいなかったり、間に合わなかったりということでもあるんですけど(笑)。

細井氏:岸田さんが自分でプロット書いたりしていましたね(笑)。

岸田氏:上がってきたものに対して、「違う」言って戻したりとか、そのやり取りが無駄じゃないですか。なのでその原型みたいなものを書いて見せるのが、時間がない中での一番合理的なやり方でした。

――本当に岸田さんの頭の中でイメージされているものをアウトプットしていく流れだったんですね。

細井氏:それが基本ではあったのですが、開発チームとしての意向としては、岸田さんが全てではなくてもいいよという話はしていました。各セクションの責任者、そして個人も一緒に開発を行っているので、チームメイトだと思ってミックスアップしていければいいということで、岸田さんにも長野に来てもらって、チームメンバーの一人として、デスクを突き合わせて打ち合わせも往々にして行っていました。

――いつ頃からその体制になっていったのですか?

細井氏:大体1年前ぐらいですかね。

岸田氏:去年の3月ぐらいから具体的な開発がスタートしていき、そこからは週1ぐらいでビデオで会議をしつつ、夏ぐらいから頻繁に長野に行くようになり、秋以降はほぼ毎日いました。

――ゲームが完成するまでと考えるとすごく長い期間参加されていたんですね。

細井氏:毎日テストプレイしていましたからね。

岸田氏:家に帰ったのは週に1回ぐらいで、あとは長野でガストさんにしか行っていないです。朝起きて、ほかの社員の方よりは少し遅めに出て、ド深夜までいるという。

細井氏:社内で普通にプレイしていて、気になるところがあったら高橋に「本当にこれでいいんですか?」「こうやったほうがいいんじゃないですか?」と普通にディレクションしていましたね。

岸田氏:細井さんが長野にいない日も多かったので、各セクションとは直接やり取りしていました。

細井氏:プロデューサーチェックはないのに、岸田さんのチェックはあったりしましたからね(笑)。もちろんこちらでも確認はするものの、開発の途中からはクリエイティブについては岸田さんと高橋の2人に任せていました。

――その分、細井さんが担ったのは販促などの面だったのでしょうか?

細井氏:そうですね。開発も途中まで来ると、私が見たいパッケージのかたちも見えていて、そこからは0から1にする作業ではなくて、1をより大きな数字にしていく質を高める行動だったので、それに関してはクリエイティブに直結しているところとダイレクトに話したほうがいいかなと決断しました。

――各々の役割分担が明確になると、動きやすいところもありますよね。

細井氏:トラブルが全くなかったわけではないですが、新しい試みとしてはすごく成功したのではないかなと思います。

岸田氏:今回は関わってくれている会社さんもすごく多いのですが、細井さんがプロデューサーとして尽力してくれたこともあって、問題解決も早くて、ストレートに進んでいったような感じです。僕もこういう立場で関わるのは初めてなので、どんなことが起きても不思議じゃないですし、最悪の可能性も考えてやっていたのですが、そういった意味ではすごくスムーズにいったと思いますね。

「現代モノの岸田メルを見たかった」(細井氏)

――話は戻りますが、タイトルのテーマや舞台設定はどのように決めていったのでしょうか?

岸田氏:細井さんたちと一緒にやらせてもらうことになった当初から、現代モノがいいという話はしていました。現代モノといったら制服姿の女の子が一番キャッチーだから、そういうものを作ろうと。ただ、それだけだと世の中にあふれているので、僕らの好みややりたい雰囲気を考えた時に、落ち着いた感じで、邦画っぽい空気感を出そうというテーマが決まっていきました。

――その時点ではキャラクターデザインまで担当することも決めていたのですか?

岸田氏:そのあたりは最初曖昧だったのですが、気がついたら決まっていました(笑)。

細井氏:何だかんだ言って、岸田さんが描くのが一番いいだろうなと。それと単純に、私が“現代モノの岸田メル”を見たかったんですよ。岸田さんのファンタジー世界のキャラクターも好きなんですけど、現代モノが一番岸田さんの持っているイラストの色が出せるだろうと思いました。

――それは個人的にも思っていました。過去にも現代を題材とした「神様のメモ帳」の挿絵などを拝見していたので、ゲームでそのテイストを見られるというのはいちファンとして嬉しかったですし、そういった印象を持ったファンの方もいらっしゃるんじゃないでしょうか。

岸田氏:「アーランド」シリーズのようなファンタジーを見たいという声もありましたし、ある程度予想はしていたのですが、すごく可愛いといった意見も多かったので、受け入れられたという感触はありましたね。

自分が好きなものに対して、あまり世の中に受け入れられるものという自覚がないので、絵を描く時も受け入れてもらえるように何かしらのフィルタリングをするんですよ。その中でも「BLUE REFLECTION」は大分自分の好きなものに寄せて作っているので、恐る恐る発表した部分もありましたが、受け入れられてよかったなと思っています。

――そうした岸田さんの感性を、細井さんも信じて進めていったんですね。

細井氏:そうですね。

岸田氏:信じてもらっている部分もある一方、売り物にするためにどうしたらいいのかという激論も交わしました。「岸田さんのおっぱいの描き方は、“I”じゃなくて“Y”だからダメなんだよ」とか(笑)。

――(笑)。そういったことって普段なかなかしづらい話だと思うので、そこを言ってくれる方って貴重ですよね。

岸田氏:実際にキャラクターデザインの話をするまで、企画会議をやってきた期間がとにかく長かったので、その時点ではすでに信頼関係ができていました。なんでも言い合える感じになっていたことが、キャラクターデザインに影響を与えていると思います。

本当に全然知らない方と「BLUE REFLECTION」のキャラクターデザインを作り始めたら、こういうかたちにはならなかったと思いますし、もう少し独りよがりになっていたか、味の薄いものになっていたのではないでしょうか。

――本作で描かれているイラストのテイストについて、どういった意識を持たれているのかお聞かせください。

岸田氏:現実味のある洋服や髪の色、背景からは乖離しないようなキャラクターデザインにしたいという思いと、逆にそこに寄せてしまうと地味でパッと見でお客さんの目を留めるキャラクターにならない可能性があると思っていました。その時点で変身するということは決まっていたので、変身した後は華やかな衣装にして、その分ベーシックな部分は地味にするというギャップを設けることにしました。

僕が他の作品でやっているものよりははるかに地味な感じでメインキャラクターはデザインしていますが、見分けがつかないと問題なので、ギリギリあり得る髪の毛の色で幅を持たせたり、同じ学校の同じ学年なので普通であれば同じ制服になりますが、着こなし方に多少差を設けたりしました。

カーディガンを着せたり、なぜか冬服だったりと着こなしのバリエーションも多彩。

――制服のデザインにしても、ゲームなどでは現実的にはなかなかないようなものになるようなことも多いかと思うのですが、このデザインは普通にあり得そうな感じですよね。

岸田氏:そこも本当にあり得るものにしたいのですが、あまりにありふれたものにしてしまうと印象に残らなかったりするので、細かいところで「BLUE REFLECTION」の制服だと思うような要素はギリギリ乗せていきました。このあたりも激論を交わしましたね。

――細井さんとしてはどういったところがポイントだったのでしょうか?

細井氏:スカートのチェックですね。

岸田氏:下品にチェックを入れちゃうとアイドルっぽくなってしまいますし、チェックのスカートの美少女イラストってたくさんあるので、チェックの使い方はすごく難しくて。最終的にはトーンとしては普通の紺セーラーで、スカートだけチェックにしました。

細井氏:そのあたりの話はすごくしましたね。このゲームの基礎となる部分なので、どういう制服がいいんだろうという話はしました。

岸田氏:絵柄としては「アーランド」シリーズと比べても等身も上げていますし、キャラクターの体形もある程度描き分けています。僕自身は細い女の子が好きだから細めに描きがちなのですが、今回の目標が、今まで描いてきたキャラクターよりももう少し肉感を出して、キャラクターを性的な目でも見て欲しいというところだったので。

――私を含めて、ファンの中でその印象は結構強いのではないかと思います。

岸田氏:等身を上げつつ、細いキャラクターもいるのですが、体のむっちりしたほうがいい箇所はそのように描いていますし、腰とかも今までよりは大きく描いています。肌の色の塗り方も今までよりはコントラストを強くして立体感を出すことを意識しています。

真田凛は肉感をより感じさせるキャラクターの一人だ。
「BLUE REFLECTION」にしかないキャラクター表現

――そうして出来上がったイラストを3Dモデルに起こす上でどういった点をオーダーしていったのでしょうか?

岸田氏:「アーランド」シリーズの時は、僕がキャラクターイラストを何枚か描いて、それを基に絵柄が再現されるようなものをフライトユニットさんに作ってもらったのですが、今回は絵そのものをモデルにしたいという思いはなくて、僕のイラストのテイストはほどほどに残っていればいいと。逆に絵に近づけすぎると、彩度を高めないと映えないので、邦画の空気感を出す上でゲームの空間になじめるような3Dモデルであればいいと思っていました。

僕が最初にキャラクターイラストを描いてこれをモデルにしてくださいと言ったわけではなく、コーエーテクモゲームスのCGチームの方々と相談しながら作っていきました。今までの僕の絵のタッチも分かってくれていたので、3Dモデルのサンプルを作ってもらって、そこから意見を出し合いながら一緒に作っていったような感じです。

最初にコンセプトイラストやキャラクターイラストは用意していたのですが、3Dモデルを完成形に近づけるにあたって、僕の描く絵も3Dモデルからフィードバックして少し変えていたりします。

細井氏:岸田さんのイラストのテイストそのままで行くとしたら、陰影をつけないほうが映えるんですよ。ゲームを見てもらえるとわかると思いますが、今回はフィールドを含めて陰影をしっかりつけているんですよ。今回は、邦画を見た時に感じる、日本人が絶対経験しているような描写をしたかったんです。例えば、学校であればめちゃくちゃ明るいところと暗いところがありますよね。

岸田氏:それがやはり僕らの思い出の中に強く残っていたので絶対に表現したかったんですが、実現するにはイラストそのままにしちゃうとダメで。

細井氏:普通にやればライトを下から照らしているほうがキャラクターは可愛いんですよ。ただ、フィールドによってはキャラクターにライトが全然当たっていないところもあったりします。それはキャラクター単体だけでなく、キャラクターと背景が合わさった上で最高のものを目指したというのがテーマとしてあります。

岸田氏:ゲームの本編のグラフィックを完成形だと思っていて、ライトや空間の表現については本当にやりたいことができていると感じています。

3DCG作っている人たちにもこだわりがあって、制作途中のものを販促で出そうとした時には細井さんが怒られたりして(笑)。それだけみんなが本気で作っていたからこそ、最後まで完成度を高められたと思いますし、最初の頃のスクリーンショットや映像を見ていた方にとっては、完成形はぜんぜん違うものになっているので、ぜひ見て欲しいと思います。

――実際にプレイをさせてもらうと、影の使い方もそうなんですが、個人的にはカメラの使い方が印象的でした。通常のゲームですと、カメラがキャラクターに対して正面に入ることが多いのですが、今作では明確に違う見せ方をしていますよね。

細井氏:そうですね。岸田さんも私も、キャラクターが喋っているからといって、別にカメラをキャラクターに合わせなくていいんだよということは、イベント制作チームに言っていました。

岸田氏:これまでは紋切り型のルールでイベントを作られていたんですが、今回はシナリオで表現したいものに合わせてカメラを動かしてほしいと話しました。これは普通の映像作品で監督がコンテを切るようなことで無理な要求ではあったのですが、イベント制作チームと相談して映画らしい感じのカメラワークにしてもらいました。

そして今回はフェチ感みたいなものを大事にしているので、それだけでなく、尻を大きく映したりするなど、おっさんが女子高生の見たいところをちゃんとカメラで映そうと。

――発売前に公開していったキャラクター別のムービーはまさしくその感じが表れていましたね。

岸田氏:(そのムービーよりも)もっとひどいのありますよ。最低です(笑)。このゲーム、本当に真面目ですし、話はすごく僕らがやりたかったジュブナイルなのですが、悪ふざけしているところもあります。

今までガストさんが作ってきた文化の中で、こういう風にしなきゃ、こういうことをやっちゃいけないんじゃないか、という点はあったと思うのですが、今回に関してはそういうものはないですし、決めるのは僕らなので、極端な感じでやってほしいという話はしました。それはゲーム中のカメラワークに出ていると思います。

細井氏:それと音の使い方も特殊だと思います。キャラクターゲームっぽくない音付けをしてほしいという私たちのオーダーに対して、浅野(サウンドディレクターの浅野隼人氏)が全部設計してくれたのですが、ハッピーな時にあえて無音にしたりしています。今回のタイトルは音と映像表現、全てを含めてワンパッケージみたいなところはありますね。

岸田氏:キャラクターが出てくると、そのキャラクターに合わせたテーマが流れるのはゲームのお決まりのパターンだと思います。それはプレイしやすいし、ユーザーにも伝わりやすいからそちらのほうが良いという話はわかります。

ただ、それをやってしまうと、僕らが作りたいものよりも賑やかな雰囲気になってしまいますし、僕らがやりたいことに対しては正解ではないので、(キャラクターのテーマを流すことは)無しにしましょうと決めていきました。このゲームは本当に落ち着いた空気の中で進んでいきますが、たまに信じられないシーンもあるので、そこを楽しんでもらいたいです。

――異世界もあの色合いがまた独特ですよね。

岸田氏:元々異世界は感情に紐付いた世界観になっているのですが、コンセプトアートを作る段階でディレクションをしています。いわゆる精神世界ではあるものの、ファンタジーであるようなよくわからない異世界ではなく、ファンタジーの中にもシュール感があるものが良いという話をして、出来上がったものを基に作っています。

ライトの加減や雰囲気に関しても、喜びのゾーンはお花畑で構築されているので、あえてメチャクチャ明るくして、過剰に綺麗にすることで不気味さを出したいと思っています。一方、恐怖のゾーンは薄暗い森みたいになっていて、ホラーっぽい感じが出るようにしています。

細井氏:基本的に意識したのは対比なんですよね。日常があって非日常があるなら、きちんとした対比を生まないとユーザーとしても面白くないということは意識しました。

――目の虹彩も繊細で印象的でした。

岸田氏:何回も違うテクスチャを重ねているので、目自体がテカっているような質感の上に光のハイライトの位置を変えてみたりしています。当初は「変えられない」という話になっていたはずなのですが、気がついたら変わっているんですよね(笑)。最初に僕が要望を出して、CGチームからできないと言われていたことが、知らないうちにできるようになっていたりして。すごくこだわりのある人たちなので、黙って良くしてくれるんですよ。

細井氏:そういうことは多かったですね。「行動中は制服の腹チラができない」と岸田さんに話していたことが、いつの間にかできるようになっていたりして(笑)。

――結果的にそういうこだわりが他にない表現を生んでいるということですね。

岸田氏:今回のゲームは僕の絵が基にはなっているのですが、立体感のあるところは立体感を持たせたいし、顔のディテールについても、僕の場合はほかの2次元の絵を描いている人に比べたら、耳や眉毛、目尻の形に生々しさを残すのですが、CGチームもそこを理解してくれていると思います。目の表現に関しても、僕の絵ですと三次元的に表現しづらい部分があるのですが、出来る限り立体として残してくれています。

ゲーム業界でも「BLUE REFLECTION」のようなキャラクター表現をされたことはないんじゃないですかね。僕の絵は2次元のキャラクターでありながら髪の毛はリアリティのある感じにしているのですが、表現としてはそれをそのままモデルにしています。髪の毛のディテールは普通であればもう少しディフォルメするのですが、今回はハイライトや構造を毛の一本一本にしっかりとこだわっていて、そこは本当にすごいなと思います。

――映像としての表現がゲームを通じて見えたのですが、それは実際にゲームを触ってみないと感じ取れないものでした。

細井氏:自分たちでも、クセのあるゲームだとは思うんですよ。ただ、ゲームにない表現や雰囲気は確実に持ってこられたなと思います。今までのゲーム業界の中でも、私としては感じたことのない空気感でした。

岸田氏:僕らは頑張って万人向けに作ってはいるのですが、それでも刺さる人にはすごく刺さる、どっちつかずのものではないタイトルになっています。

――学校生活の描写もすごく細かいなと思っていました。個人的には黒板を見た時にチョークの跡が残っているのを見て、しっかりと学園風景が表現されているなと思いました。

岸田氏:フィクションの中の学校って、基本的には汚さなどのノイズが絵にするにあたって無くなってしまうじゃないですか。アニメの背景として描かれる学校とかでも、基本的にはすごく綺麗に描かれていて発色もいいのですが、僕の持っている学校の印象はそうではなく、汚いところはすごく汚くてホコリも溜まっているけど、だからこそいいという考え方でした。

「BLUE REFLECTION」の学校もそういうところを意識して作りたいという話は最初からしていましたし、想像では作れないので、僕の母校に交渉し、CGチームの背景担当とCGディレクターの方、そしてディレクターの高橋さんやシナリオの担当さんも加えて取材に行ってきました。そこでたくさん写真を撮って、それを基に作ってもらったので、作中で描かれているものは本当に学校にあったものになっています。そうしたこだわりを見てもらえるのはすごく嬉しいです。

こういうゲームでユーザーの方の心に残るために一番大事なことは、キャラクターが存在している感じをいかに出せるか、だと思うんです。その中で過ごした時間を感じてもらうために、生々しさをできる限り残したかったんです。

細井氏:それって思い出なんですよ。絶対に日本人が触れてきたであろう思い出にもう1回触れてもらいたいと思っていたので、そういうところはストレートに表現しています。女子高生活はしていないですけどね(笑)。

岸田氏:そういった意味では現実感はないかもしれないですが、空気感や雰囲気として表現するようにこだわっています。

3人のチームで取り組んでいたシリーズ構成

――グラフィックの話を長々と伺ってしまったのですが、ストーリーについてもお聞きしたいと思います。シリーズ構成に時雨沢恵一さん、五十嵐雄策さん、夏海公司さんという、現役で活躍されている作家さんを3名も起用された経緯はあるのでしょうか?

細井氏:一番の取っ掛かりとしては、岸田さんとガストの新作というだけでは普通で面白くないと思ったことです。ユーザーに期待されているところはどこかと考えた時に、ストーリーに行き着いたので、完全新作としてやるのであれば新しい作家さんをシリーズ構成としてアサインして、ストーリーの面白さや深みに関しても担保していることを伝えたかったというのが始まりです。

その後、本作についていろいろな方とお話させていただく中で、縁があって時雨沢さん、五十嵐さん、夏海さんに決まりました。時雨沢さんは、「キノの旅」もそうですが、作品のテイストが本作にすごく合うと思っていましたし、五十嵐さんと夏海さんはコメディタッチを得意とされているので、良いバランスになるのかなと思ってお願いしました。

――それはシーンに応じて役割分担されているような感じなのでしょうか?

細井氏:私たちが個別にお願いするのではなく、基本的には3人のチームで動いていただきました。まず時雨沢さんが始まりから3章までを担当して、そこから五十嵐さんや夏海さんとバトンタッチして、エンディング付近からは3人で共作しています。何度かミーティングする時も必ず3人でいらっしゃっていました。

岸田氏:実際にプレイしてみると、シームレスにストーリーが展開するので、どこを誰が担当しているかは意外とわからないかもしれません。

――プロの作家さんってバランス感覚に優れていらっしゃるので、お互いの作風を認識した上で適応されていらっしゃるのかもしれないですね。

岸田氏:特にお願いしたわけではないのですが、お忙しい中、僕らの知らないところで集まって会議を重ねてくださったみたいです。

細井氏:最初のミーティングの時は本当にドキドキしましたが、結果的にここまでやる気を持って臨んでくださるとは思っていなかったので、嬉しかったです。

――作家さんにとってもゲームのシナリオに携われる機会はなかなかないですよね。

細井氏:時雨沢さんはすごくキャリアの長い方ですが、シリーズ構成としてゲームに携わるのは初めてと仰っていて、本当に楽しそうにされていました。

岸田氏:すごく作品のことを好きでいてくれているので、メチャクチャ嬉しかったですね。今回は販促のために、水着などいろいろな格好の日菜子のイラストを描いているのですが、収録でお会いした時に「ああいう絵って、まとまって出るんですか? 欲しいですね」というお話をしていただいて。その上で「シナリオを書いている身としては、あんなにはしたない格好ばかりさせているのを見ると、『俺の日菜子に何してくれとんじゃい!』という気持ちになりますね」と言ってくださったことが、笑ったのと同時にすごく嬉しくなりました。でもエッチな格好はさせますけど(笑)。

――この作品では主人公である日菜子がストーリーの中心にいるのかなと思うのですが、どういう子として描きたかったのでしょうか?

岸田氏:新規コンテンツであるということもあって、ぼんやりとみんなをフィーチャーしても全然心に残らないと思ったので、主役としてガンガン押し出していこうと表に出していきました。

その上で僕らがやりたかったことは、主人公があまり喋らないのではなくて、明確に自我を持っていてほしいということでした。最初の頃はずっと悩んでいて、どうしようかという話も何回もしたのですが、僕らがやりたいことを表現するためには主人公にはきちんと性格があって、自我があって、思い悩んでいて成長するという話をしたいという結論に至って、キャラクター造形を考えていきました。

ただ、僕も細井さんもヒロインに対してこだわりが強いので、相談を重ねる中で、この子だったらプレイヤーとして応援したくなるし、共感できる部分もあるという、主役なんだけれどもヒロインでもあるというキャラクターになっていきました。

細井氏:自分をトレースできるようには作っていないですね。少し違うけどわかる、といった感覚です。

岸田氏:僕らとしては絶妙な感じになったのではないかと思っています。芯は強いのですが、あまり人に自分の意見を押し通したりはしないですし、努力家で、かつ抜けたところもあるという。共感はできないとしても、プレイヤーが操作していてイライラしたり、腹が立つような感じではないと思います。

――クラスで文化祭実行委員に選ばれた時の流される感じとかは、芯の強い部分とは別の感覚でした。

岸田氏:性格は一貫しているものの、行動理念には大分幅がある子です。最初と最後では状況も変わっているので、その違いも感じてもらえると思いますが、根の部分では優しい子ですね。序盤ではマジギレするようなシーンもありますが、結果的に怒っちゃって、その後に後悔するような感じです。

細井氏:あと、日菜子に関しては心の声がめっちゃ面白いです。

岸田氏:割とツッコミタイプですね(笑)。素直で優しいし、人の気持ちも考えられますが、極端ではなくて、普通の子らしさを無くさないようにはしています。バレエダンサーとして挫折しているのでこだわりは強いですし、心の傷も持っているという感じのキャラクターですね。

――今作では日菜子を含めてキャラクターが15人登場していますが、この人数にした明確な理由はあるのでしょうか?

岸田氏:いろんな考え方があると思うのですが、メインキャラクターが15人以上出ると、シナリオ的にとっ散らかってしまうという側面もありますし、キャラクターのモデルを作る上での都合もありますね。そうした制約の中で、男性を出すか出さないかという議論になった時には、僕らがかけられるリソースは判断材料のひとつであり、それなら「男いらないね!」という結論になりました。

中途半端に出してノイズになるぐらいであれば、いないほうがシンプルでいいと思いました。それと、男を出して恋愛がないというのはおかしいと思うんですよ。今回はわかりやすい恋愛みたいなものは描かないと決めていたので、いないほうがブレないと判断しました。

エンディングを見てもらうことを意識したゲームデザインに

――バトルシステムについては発売前の情報だとオーソドックスなイメージを持っていたのですが、実際にプレイするにあたって核となるポイントがあればお聞かせください。

岸田氏:見た目はオーソドックスなイメージを持たれるかと思うのですが、戦闘のプレイ感覚はすごく独特なものになっています。今作ではどんな行動をしてもキャラクターは基本的にMPを消費してしまうので、限られたMPをどのように使って敵と戦っていくかというところで、その使い方にすごく幅が用意されています。

スキルの種類がすごくたくさんあって、例えば敵の行動をノックバックで遅らせたり、画面の左下にあるエーテルゲージの上昇量が上がったりといった効果が用意されています。エーテルゲージ自体も防御を高める“ガード”、MPなどを回復させる“リカバリー”、連続攻撃を繰り出す“オーバードライブ”といったたくさんの使い方があるのですが、行動するための制限も用意されています。

プレイヤーによって戦い方を変えられますし、なおかつゲーム内に用意されたフラグメントをスキルに装着することで性質が変わったり、アイテムを使って強化できたりするので、戦闘システムとしては非常に奥が深いと思います。これは高橋さんがこだわりを持って、何回も試行錯誤しながら作り込んでくれました。

やはりこのバトルシステムの核になるのは、何をするにもMPを消費するということ、その中で上手く立ち回るためにエーテルゲージを使うということになります。

細井氏:あと、コマンド選択によるバトルって一度コマンドを入力したらそこで終わりということがありますよね。今回の場合は、行動を入力し、敵と味方のタイムラインが動いている待ち時間に方向キーで選ぶアクティブコマンドというものを用意しています。その時間も常に能動的にユーザーが戦闘に介入できるというのも本作ならではのポイントです。コマンド選択後も想像しながら進めるとプレイの幅は広がりますが、逆に意識せずともプレイできると思います。

――原種との戦いでは特にそのあたりの意識が大事になりそうですね。

細井氏:ダメージカットの“ガード”や回復などの“リカバリー”は意識して使っていくことになりますね。アクティブコマンドは徐々に開放されていくのですが、中にはタイムラインをメチャクチャ早くしたりすることもできます。

岸田氏:例えば、敵のすごく強い攻撃があと少しで来るといった場面で、エーテルゲージを使ってタイムラインを早めることで、ギリギリ相手よりも行動順を早くしてノックバックしたりといった戦術も可能になります。

――ベースはシンプルながら、全体的にバランス良く組み込まれているような感覚ですね。複雑になればなるほどプレイしながら混乱していくので、とても分かりやすいと思います。

細井氏:昨今の日本のRPGは複雑になる傾向があったので、オーソドックスではあるもののプラスアルファを加えることで、戦略性を増すというのが今回のテーマではありました。

岸田氏:使うゲージはとにかく減らしたいという話はよくしていましたね。途中までいろんなゲージが増えそうな感じだったのですが、最終的にはMPとエーテルゲージの2つのみに絞って、それを使ってやれることがたくさんあるという感じです。ただ、異世界でのバトルに関しては、全然頭を使わなくてもテンポ良く遊べるようになっています。

細井氏:基本的にこのゲームは、最後までプレイしてもらいたいという気持ちがあるので、そういうバランス設計にしていますし、歯ごたえがあるゲームをしたければ難易度をハードモードにしてもらってという感じです。それこそ、異世界でのバトルはある程度やらなくてもイベントは進行できるようになっているので、イージーモードであればそういうプレイもアリだと思っています。

とにかく今回はエンディングまで見てもらいたくて、高橋もそこに集中してゲームのラインを作っています。

――ちなみに、原種のデザインは作品の雰囲気からするとかなり異質な存在ですよね。そのコンセプトについてもお聞かせください。

llustration:Yocky

岸田氏:原種については本当に異質にしたかったんです。僕が描いたような可愛い女の子が出てくるゲームって、敵もそんなにハードなものが出るイメージはないのですが、今回に関しては敵が強大であればあるほど良かったので、人知の及ばないようなすごく気持ち悪いものにしたいなと。

例えばドラゴンや巨人であれば分かりやすいと思うのですが、僕らとしては意味の分からないものが欲しかったんです。そこは、今回の原種のデザインを担当されたYockyさんというイラストレーターの方とお話して、やり取りを重ねながら作ってもらいました。その結果、CGチームがすごくいい感じのモデルを作ってくれて、この組み合わせもほかにもないものになりましたね。

――細かなところまでデザインが行き届いてますよね。

岸田氏:Yockyさんはすごく繊細なデザインをされる方なので、その個性的なところを僕らも押し出したかったという意図はあります。

細井氏:あとはキャラクター性を持たせるために、フィギュア化できるぐらいの敵にしたいという意識もありましたので、単独で見てもカッコいいキャラクターではあると思いますし、主人公の日菜子との対比にもなっています。

――発表時期からの情報発信が段階的に行われていて、途切れることなくやられているなという印象を受けたのですが、そこも含めてプロモーションのプランは練られていったのでしょうか?

細井氏:今回は新規タイトルということもあって、面を増やしたいという絶対的な狙いがありましたので、他社さんの力をお借りしつつコラボレーションをやっていこうというのは企画立ち上げの段階から構想としてありました。それがどんどん実を結んでいっています。あとは岸田さんに積極的にプロモーションに参加していただけたので、生きた情報に見えるというのも大きいかなと思います。

――発売後のDLC展開についてもお聞かせいただけますでしょうか?

細井氏:基本的には衣装を追加していきます。配信自体はもう少し先の5月ごろからになると思いますが、随時衣装がアップデートされていくイメージです。シーズンパスの形式も用意していますが、こちらはソフトの発売日から配信を開始しています。

セーラー服をモチーフにしたセーラー水着などをはじめ、基本的には露出の高い衣装になする予定です。それと南の島というか、バカンス的なものも追加します。

――南の島が一体どういうものになるのか、楽しみにしたいと思います(笑)。最後にユーザーに向けて、この作品を通じてどういうものを感じてもらいたいかをお伝えいただけますでしょうか。

岸田氏:ゲームをプレイすることで、とにかくタイトルの雰囲気に浸ってもらいたいです。そこに僕らが描きたいものがきちんと表現されていると思います。

細井氏:私の場合、おこがましいので何かを伝えたいということはないのですが、単純に良いゲームになったので触っていただきたいなと思います。日本人にしか描けないものが絶対に存在していて、今回はそれに該当するのではないかと思うので、ぜひ見てもらいたいです。

――ありがとうございました。

BLUE REFLECTION 幻に舞う少女の剣

コーエーテクモゲームス

PS4パッケージ

  • 発売日:2017年3月30日
  • 価格:7,800円(税抜)
  • 15歳以上対象
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(C)2017 コーエーテクモゲームス All rights reserved.

※掲載画面写真はPS4版のもので、開発中のものが含まれている場合があります。

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