千葉・幕張メッセにて2017年9月21日より開催中の東京ゲームショウ2017に合わせて実施した、ソニー・インタラクティブエンタテインメント(以下、SIE) ワールドワイド・スタジオ プレジデントの吉田修平氏へのインタビューを掲載する。

――先日行われた「2017 PlayStation Press Conference in Japan」について、ご自身の感想などお聞かせいただけますでしょうか?

吉田修平氏

吉田氏:ハードウェア的にはいろいろなタイトルとのコラボモデルが出てきていましたし、「モンスターハンター:ワールド」の発売日発表などポイントを押さえながら、私も知らなかったような、「LEFT ALIVE」や「ANUBIS ZONE OF THE ENDERS:M∀RS」といったワクワクするタイトルが入っていて、見ていて楽しかったです。

――ワールドワイド・スタジオ(以下、WWS)としての発表内容についてはいかがだったでしょうか?

吉田氏:昨年の「アンチャーテッド 海賊王と最後の秘宝」から、「Horizon Zero Dawn」、「人喰いの大鷲トリコ」、「GRAVITY DAZE2」、「New みんなのGOLF」、そして今度の「グランツーリスモSPORT」と良いかたちでタイトルを提供してきました。E3では来年に用意している「ゴッド・オブ・ウォー」や、「DAYS GONE」「スパイダーマン」といったPlayStation 4(以下、PS4)の大作を紹介したのですが、今回は日本市場に向けてのカンファレンスということで、今年の年末か来年の初頭までに出てくるタイトルを紹介しました。

その中でも、PlayStation VR(以下、PS VR)向けのタイトルとして今年発売する「The Inpatient -闇の病棟-」、「Bravo Team」、「V!勇者のくせになまいきだR」をPS VRのセクションでは紹介できたので、良かったと思っています。

この後はファーストパーティとして、「KNACK ふたりの英雄と古代兵団」「グランツーリスモSPORT」「Horizon Zero Dawn:凍てついた大地」がPS4で発売され、PS VRでは先ほどのラインナップがリリースされていきますので、忙しい時期にはなっていきます。

――確かに今回のカンファレンスは「モンスターハンター:ワールド」が1月の発売になったりと、来年初頭までのラインナップが揃った印象でした。こうして年明けまでのタイトルを見ると、密度が濃いですよね。

吉田氏:今年の頭からタイトルラッシュが続いていて、私はまだ「ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて」が終わってないのに、「New みんなのGOLF」を毎日やりながら「Destiny 2」が出て、私の欧米のフレンドはみんなそちらを遊んでいて、完全に置いてかれていますね(笑)。

――いまお話された「New みんなのGOLF」もそうですが、最近リリースされているタイトルは、全体的に長く遊べるタイトルが揃っていますよね。

吉田氏:毎日少しずつでもプレイすることでお得なボーナスがあったりと、サービス型のタイトルが増えています。

――フリーミアムモデルじゃなくても、サービス型の提供をすることでユーザーが長く遊んでいるのが印象的ですね。

吉田氏:まさに10月に発売される「グランツーリスモSPORT」は、毎週のようにいろいろなかたちでのオンラインのトーナメントが用意されていて、イベントに参加することで新鮮に触ってもらえると思います。

――そこはネットワークでワールドワイドに遊べるのも大きいですよね。話は戻るのですが、SIEとして今年は規模の大きなタイトルが多彩なラインナップでリリースされていた印象です。タイトルの充実度についてはいかがでしょうか?

吉田氏:PlayStation 3(以下、PS3)からPS4へと移行する際に、我々のゲームスタジオ自身もかなりシステムの開発に参加したこともあり、PS4はゲームを作りやすいというのがひとつのウリでした。実際、ハードという意味ではその通りなのですが、できることがあまりにも増えたため、タイトルを作る方ではコンテンツの作り込みにものすごく時間をかけてきました。

今年発売した「Horizon Zero Dawn」を作っているGuerrilla Gamesは、「KILLZONE SHADOW FALL」というPS4のローンチタイトルを作っていますが、「Horizon Zero Dawn」のチームはPS3でリリースされた「KILLZONE 3」を作ってからすぐに着手しているので、6年かけて制作したことになります。

「New みんなのGOLF」も2012年にPS3の「みんなのGOLF 6」が出てから5年、「グランツーリスモSPORT」も2013年に「グランツーリスモ6」が出てから4年なので、時間をかけてPS4のタイトルとして作り込んできたものが今になって揃ってきています。なので、他社さんのタイトルも時間をかけて作り込まれてきたものを、このタイミングで出されているのではないのかなという印象です。

――その中で、JAPANスタジオからリリースされる「KNACK ふたりの英雄と古代兵団」は、PS4のラインナップの中でもファミリーに向けたタイトルになっていると思います。

吉田氏:そこは非常に狙っていますね。「コール オブ デューティ」や「Destiny」、WWSとしては「Horizon Zero Dawn」や「アンチャーテッド」も含まれるかもしれませんが、コアユーザーが喜ぶタイトルが多い中で、でもゲームを遊ぶのはコアユーザーだけではないということで、PS4をもっと幅広いユーザーに広げていきたいと思っています。

「KNACK ふたりの英雄と古代兵団」は、2人で一緒に遊ぶとすごく楽しいゲームになっています。コアユーザーのお父さんが小さなお子さんと一緒に遊ぶのもアリだと思いますし、中学生ぐらいの子が家族を巻き込んで一緒に遊んでもいいですし、カップルで遊んでもいいだろうしと、コアユーザーだけでなくその周辺を巻き込んでほしいという狙いで作ったゲームです。

――ギミックひとつ見るだけでも、子どものようにワクワクするような感覚でした。

吉田氏:前作の「KNACK」は、PS4の発売時期に合わせてコアゲーマー向けではない、誰でも遊べるゲームを用意しようと思って作ったのですが、ローンチ時期に発売するためにかなりやりたいことを削りました。

そういう経緯もあって、今度の「KNACK ふたりの英雄と古代兵団」では、ちゃんと時間をかけて、やりたかったことをもう一回全部やろうということで基本的なアクションの数もものすごく増やしましたし、最初から最後まで2人で遊ぶことを想定したギミックや仕掛けを用意しました。

「KNACK ふたりの英雄と古代兵団」も前作が2013年発売なので4年近く作っていることになりますが、ちょうどPS4が普及期からユーザーを拡大していく時期を狙って作ってきたタイトルになります。みんなでコントローラーを回して遊ぶような「New みんなのGOLF」も同じ時期にリリースされましたし、ユーザーさんには周りの友達やご家族の方と一緒に遊んでほしいゲームです。

――サードパーティのタイトルですと、今回は「モンスターハンター:ワールド」が特に注目を集めていると思います。

吉田氏:映像を見るだけで本当にワクワクしますよね。「モンスターハンター」シリーズのタイトルは、以前はPlayStation Portableでリリースされていたので、今回で世代をいくつか飛び越えた感がありますね(笑)。

――サードパーティのタイトルの中で吉田さんが気になるものはありますか?

吉田氏:私はスクウェア・エニックスさんの「LEFT ALIVE」が気になりました。フロントミッション的なのか、アーマード・コア的なのか、メタルギア的なのかは分かりませんけれど、ギア感が全部詰まったような感じでびっくりしました。

あとヴァニラウェアさんの「十三機兵防衛圏」(発売はアトラス)もどんなゲームかはまだわからないですけど、遊んでみたくなる魅力がありましたね。グラフィックスが少し「TOKYO JUNGLE」を思い出させるようで、これまでヴァニラウェアさんが手がけてきたアクションRPGではない感じがしましたね。

――映像で見ると伝わってくるようなものが多いですよね。

吉田氏:日本のデベロッパーさんならではの良さがあります。海外で見ていた方も喜ばれたんじゃないかと思います。また、「Rez Infinite」を遊ぶと、この世界観はVRだなという感じがします。

それと「ねこあつめVR」も気になります。あれはうちの娘たちに遊ばせたいです。

――あれはカンファレンスで発表された流れも含めてびっくりしましたね。

吉田氏:まったりできるような感じで、猫好きにとっての「サマーレッスン」みたいになれば良いなと思います。私の海外の友人とかも猫カフェに行ってます。

――カンファレンスでは、PS VRのPlayStation Camera同梱版の新価格も発表されました。この機会に触られる方も増えていきそうですね。

吉田氏:新価格に関しては、供給体制が整ったので満を持してという感じです。まだまだ体験されていない方のほうが圧倒的に多いと思いますので、体験できる機会についても今後も継続的に取り組んでいく予定です。

――実際に供給が増えていく中で、PS VRにおける日本市場ならではの特徴をどのように感じられていますか?

吉田氏:アニメコンテンツが豊富なので、それをベースにしたようなVRコンテンツが多いです。アニメでなくとも、「サマーレッスン」や「初音ミク」といった、VRの良さを活かしてコンサートに行ったような気分にしたり、人と直接対面しているような気持ちになったりといったところは、日本から発信される特別なコンテンツになっているのかなと思います。

最近では、無料で配信された「傷物語VR」のようなアニメの表現をそのまま活かしたかたちで、VR空間の中でキャラクターと一緒に楽しむような新しい表現がされています。このように、VRのメディアとしての可能性は映像のクリエイターからも注目されているので、新しい映像作品を作る際に、プロモーションの意味でその世界を堪能できるVRコンテンツを作るようなアプローチが進んでいます。それは日本のクリエイターが、アニメでリッチな世界を作っている部分もありますので、世界に発信していくひとつのチャンスになるのではないかと思います。

――今お話に出た「傷物語VR」のように、ソニーグループとして協力した上での取り組みも増えていますね。

吉田氏:ソニー・ミュージックさん、ソニー・ピクチャーズさんもものすごく注目されていて、実際にコンテンツを作るとなると3Dをリアルタイムで描画する技術が必要になるため、ゲームのデベロッパーと一緒にやりましょうという話もいただいています。

――そうした中で、今回はJAPANスタジオならではの取り組みとして「JAPAN Studio VR音楽祭」も発表されました。

吉田氏:5月にJAPANスタジオのゲームミュージックを使ったオーケストラコンサート「GAME SYMPHONY JAPAN 23rd CONCERT~PlayStationを彩るJAPAN Studio音楽祭2017~」をやっていただきました。ライブで昔なつかしの曲を再現するというのがすごく感動的でした。

そこにVRのメディアを活かすと、より臨場感の高いかたちでコンサートを楽しんでいただけると思い、コンサート前からカメラを持ち込み、指揮者の方の目の前にカメラを置いて210°のパノラマ動画を撮影しました。

このように、すごく近くで演奏を楽しめるようにしたモードと、バーチャルスクリーンを作って横にトロとクロがいるといったモードの2つを用意しています。両方ともに楽しんでいただけると思います。

――PlayLink(仮称)に関して、今回「Hidden Agenda ―死刑執行まで48時間―」の日本での提供が発表されましたが、PlayLink(仮称)の日本での展開は海外とは違ったアプローチになるのでしょうか?

吉田氏:PlayLink(仮称)は、これから全世界で1億台を目指す時により幅広いユーザーさんにアプローチしていく必要があり、そのために、今PS4を持っているユーザーさんの友達や家族を巻き込んでいくのが狙いです。

DUALSHOCK 4をユーザーさんに複数買ってもらうのは大変ですが、スマートフォンであればみなさん持っているので、それをコントローラとして繋いでもらおうという発想から生まれています。もちろん、スマートフォンをつなぐかたちですとアクション系のゲームは難しいですが、写真を取ってそれをゲームに反映させたり、スクリーンが一人ずつありますのでユーザーごとに違うゲームの情報を流して、自分だけが分かる情報でゲームを進めたりといったギミックができます。

欧米では今年中に4タイトルをリリースするのですが、その中では「Hidden Agenda」が一番日本市場向けにということで選んで、導入してみようという流れです。今回が好評でしたら、来年以降も選んでタイトルをリリースしていく可能性はあります。

――ちなみに「Hidden Agenda」を選ばれたポイントはどのあたりになるのでしょうか?

吉田氏:過去に「Until Dawn」も日本での反響が大きかったので、一番ウケるんじゃないかなと。ミステリーアドベンチャーでストーリーも分岐していくのですが、それを一人で選ぶのではなく、みんなでワイワイ話しながら進めていくゲームになっています。海外のテレビドラマを見ているような感覚で楽しめると思います。

――最後に、一般公開日に向けてPlayStationブースの注目ポイントなどありましたらお聞かせください。

吉田氏:海外スタジオのタイトルで「Detroit: Become Human」をPlayStationブースで推していますので、ぜひそちらをご注目ください。

――ありがとうございました。

※メーカー発表情報を基に掲載しています。掲載画像には、開発中のものが含まれている場合があります。

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