2018年4月19日から5月28日まで、東京・西荻窪にあるササユリカフェにて、ファイナルファンタジーX、XII、XIII、XV等、シリーズの数々のタイトルにおいてコンセプトアーティスト、アートディレクターを歴任した上国料勇氏の初の個展が開催される。上国料氏自ら「きっと最初で最後」と語るその展示の内容の一部をお届けしよう。
目次
“上国料節”とまで呼ばれる魅惑のアートが、一堂に会した!
展示は、上国料氏個人の制作物の原画、資料等の展示に加えて、「ファイナルファンタジー」(以下、「FF」)シリーズのコンセプトアート、キービジュアル等の原画、線画、ラフデザイン等があるが、その大半がなんとこの個展で初公開のものになる。これまで攻略本などにも載っていなかったさまざまな絵を数百点単位で見ることができる、大変貴重な機会となっている。
展示されているものは、一部カラー作品もあるが、ほぼ全てが線画になる。そのどれもが上国料氏の繊細な筆遣いを感じられるものばかりで、ファンはもちろんのこと、絵を描く人ならば必見だ。特にゲーム業界で絵の仕事をしたい、という人は絶対にこのチャンスを逃さないでほしい。
ゲーム業界の最前線で常に多くのファンを魅了してきたアートとはどのようなものなのか、その一端に触れることができる。
「FFX」、「FFXII」、「FFXIII」、「FFXV」の上国料氏が関わった作品の街や、CGとなって世に出る予定の構図のラフ画などが溢れており、ユウナやライトニング、ヴァンとアーシェの姿も見ることができる。
複製画のポートフォリオは、更に必見!
壁に飾れる絵はどうしても点数が限られてしまうということで、今回の個展では膨大な数のポートフォリオも用意されている。
上国料氏が深く関わった「FF XII」のファイルは10本、「FF XIII」は9本、「FF X」は4本、「FF XV」は2本、その他のファイルが1本と、このファイルを眺めているだけで一日居座ってしまいそうなボリュームだ。
この膨大なファイルの中身は、細かなところまで全て描き込まれた街やフィールドの絵もあれば、武器や敵のデザイン、キャラクターなど、上国料氏がどれだけ「FF」という作品の中で絵を描いてきたのかが解るものとなっている。なかには、元の姿がまるで想像つかない書きかけのラフ画まで収録されているので、これは本当に二度と見ることのできないものになることは間違いない。
数百点という絵の中のほんの僅かであるが、その一部をお届けしよう。
5月3日にはサイン会も!その他、上国料氏が襖絵を描いたテレビ番組も放映間近!
5月3日には、ササユリカフェにて、「上国料勇サイン会」が行われる。上国料氏が関わった作品から“好きなキャラ1人”のイラストを添える特別なサイン会で、参加は事前抽選制で60名限定だ。
こちらの申し込みは4月25日水曜12時までとなっており、4月18日の時点で申込者は既に150名近くとのこと。サイン会の詳細や申し込み方法は、ササユリカフェのFacebookページを確認してほしい。
https://www.facebook.com/sasayuricafe/posts/1787608101303211
また、4月21日の21:00からNHK BSプレミアムにて、上国料氏が半年間をかけて挑んだ京都大徳寺・真珠庵の襖絵に挑戦する姿が放送される。こちらもぜひチェックしてほしい。
https://www.nhk.or.jp/docudocu/program/92608/2608134/index.html
上国料氏に、今回の個展についてインタビュー!
――まずは今回の個展の開催にあたって見どころなどをお願いいたします。
上国料氏:去年の春にスクウェア・エニックスを退社して今フリーでやっているんですけれども、それまで19年間ほどずっと「FF」のナンバリングタイトルにアートディレクターという形で関わってきて、その足跡をご覧いただければ、と思います。
本来ならこういうコンセプトアートというものは表に出てくるものではないのですし、実際ファンの方にお見せする機会はないものばかりなのですが、今回本当に貴重な機会を得て、どういうものをベースに「FF」という作品の世界観ができてきたのかという材料をこうして集めてお見せできるので、ファンの方にとっても貴重な展示になると思います。
奇しくも退社してからの開催ということにはなってしまいましたが、「FF」をずっと愛してくれたファンの方たちが楽しんでいただければ嬉しいです。
――今回の展示では、主にコンセプトアートの鉛筆画が拝見できるということですね。
上国料氏:はい。基本は鉛筆画が中心で、「こんなのまで出すの?」っていうくらいラフな作品まで、できるだけ全部出しています。
会場の面積的に壁にかけられる数っていうのは絞られてくるんですが、ポートフォリオのほうには千まではいかずとも数百枚くらいの絵が入っていますので、ファイルを閲覧しながらゆっくりお茶を飲んでいっていただければと思います。いわゆるボツ原稿なども、かなりたくさん出しています。
そもそもゲームを作っていると半分以上はボツになるので、ファンの方が見ると「なにこれ」というものも多いと思いますが、それらも全て表には出なかったけれど、裏で「FF」というタイトルを支えたものということで、そんな風に見ていただけると嬉しいです。
――鉛筆画が中心ということは、基本的にアナログで描かれているんですか?
上国料氏:結構初期のころはアナログだったんですが、最近の「FFXV」くらいはほぼデジタルです。ただ、ここぞというときや自分が気合いをいれて書くときは、鉛筆で描いたほうがいいものが描けることが多いので、鉛筆で描きます。でも結局塗りはPhotoshopでやるので、完全にアナログっていう作品はないんですが、半々くらいというところでしょうか。
――ボツ絵が見られるというのは、本当に貴重な機会ですね。もしかしたらこの何かが実装されていたかもしれない、というような絵もあるということですものね。
上国料氏:そうですね。もうそういったところまで含めて、ファンの方には色々自由に想像して見ていただければと思います。もしかしたら「なんでこれはボツになったんだろう」みたいな複雑な気持ちが沸き起こってくることもあるかもしれませんが、作品というのはなんでもそういう取捨選択ででき上がるものですから。
――数百枚という作品の中でも、今回一番見てほしい作品はどれですか?
上国料氏:僕としては「FFXII」の時が、線画だけで言うならば自分のピークで、この時の線は我ながらもう描けないなと思いますね。この絵を描いた人はもうこの世にいません、くらいの気持ちです(笑)。もちろんそれは僕なので、いるにはいるんですけれど、もうこの線は今の僕には描けないです(笑)。
ただもちろん、「FFX」も「FFXII」も「FFXIII」も「FFXV」も、それぞれのゲームの特徴があって、それぞれのファンがいるわけですから、ファンの方にとっての「これがベスト」っていう作品があるんだろうと思います。
――ゲームのイメージボードとして描かれた作品が大半ですが、上国料さんにとってゲームのイメージボードとはどのようなものでしょう。
上国料氏:イメージボードっていうのはまず最初の取っ掛かりなので、なんとなく雰囲気がつかめればそれで充分といえば充分なんですが、僕は結構欲張りでイメージボードの段階でデザインまで全部完璧に決めてしまわないと気が済まないんです。なのでデザインもしっかり書き込むし、あとはそこにライティングのイメージとかエフェクトのイメージとかまで全部いれちゃうんですね。
僕の場合は頭の中に浮かぶのが静止画ではなく映像なので、その映像を一枚の絵に盛り込んでいこうとするので、割とあれもこれもってなっちゃいます。スタッフにイメージを伝えるために描かれるのがイメージボードですが、できれば一枚ですませたいというか、そこに詰められるだけ詰めるという感じで。
所詮はひとつの作品を作るためのパーツにすぎないんですけれど、本来イメージボードというのはゲームを作るスタッフへのメッセージだけで描かれているものなんですよね。だからこそ、ユーザーにイメージボードを見せるという意識はゼロだったんです。
そうしたら、「FFXII」を作っているときにディレクターの松野さん(松野泰己氏)から「パブリシティに使いたい」と言われて、「いや、これはそういう目的じゃないから」と、とてもびっくりしましたね。
パブリシティに使うものって、CGか、もしくはキャラクターデザインをやっている人のイラストが使われるのが普通で、コンセプトアートっていうものがパブリシティで使われるっていうことがそれまでなかったので。
それくらいのころからちょっとはユーザーさんの目を意識して描くようになったのかもしれないですけど、やっぱり基本的にはあくまでゲームという作品のための、ひとつのパーツです。
僕は自分のことを絵描きだとも思っていませんし、イラストレーターとも思っていません。ただの職人としてしか、自分のことを認識していないですね。ゲームという総合的なエンタメ作品をつくるための技術職という感じでいます。
――今後は、どのような活動をお考えですか?
上国料氏:ゲームに限った話ではなく、もっと色んなことをやりたいなあという感じですね。色んな人と知り合ってフィールドを広げたいです。それは国内海外業種問わずという感じで。今は、請け負う仕事はゲームのお仕事もありますけど、まったく違うお仕事もあって、例のお寺の襖絵もそうですけど、半分ゲーム、半分異業種くらいです。
とはいっても、僕の中ではいまだにそういう職人的な感覚で物を作っているのは変わっていなく、「FF」のアートを描いているときと京都のお寺で襖絵を描いているときの気持ちはほとんど一緒なんですよ。
ようはツールが違うだけで、僕のなかで描きたいイメージを実現させるプロセスはまったく変わっていません。自分の中で培ってきたものをあえて変えようかなと色々考えた時期もありましたが、結局は「変えない」という選択肢になりましたね。
襖絵も前の会社の同僚とかが製作中に見に来てくれたりしていたんですけれど、みんなそれを見て、「本当に、1ミリも寄ろうとしないんですね」って言うんですよ(笑)。
――え、襖絵も上国料節が全開なんですか(笑)。
上国料氏:まったく寄る気ないですね(笑)。みんなが口を揃えて「いっそ清々しいくらいだな」って言うので、それが面白くて(笑)。
――その襖絵のほうは今週末の4月21日に放送ですね。ぜひ見てみます(笑)。
上国料氏:はい、ぜひ。まあそんな感じなので、僕の絵はそれでいいのかなと。
――上国料さんの絵は基本的に線が細かいですけれど、あの線画とか着色まで一枚の絵を仕上げるのに、どれくらいのお時間がかかっているんですか?
上国料氏:物にもよるんですけれど、いわゆるコンセプトアートといわれるやつだと、大体線を引くのに1週間、色を塗るのに1~2週間、ってところです。
それが規模が大きくなってくると1ヶ月かかるときもあれば、頭に明確なイメージがあってあまり悩むことがないときは1週間でできたり3日でできたりっていうこともありますね。大体は平均は10日間~2週間というところです。
2週間くらいかかるものは、「FF」だったら街を作らなければいけないけれどその街のイメージはゼロで、最初のイメージをとにかく描いて決めよう、というような段階の時ですね。その絵はとても大事なものなので、ちゃんと売れる作品を作るために、すごく頑張って描くんですけれども、もうそういうフェーズを通り過ぎ、作品としてのデザインラインが決まっていって、たくさんデザイン画を量産していかなきゃいけないような段階になると、一日二日とかで描いてます。
――今回、サイン会も行われるそうですが、倍率は高そうですか?
上国料氏:僕は正確な人数は聞いていないんですが、申し込みが60名以下なら全員当選ですね(笑)。(※このあと、既に150名近い申し込みがあることが判明)
ひとりひとりの方にイラストを描いてお渡しするので、60名限定という形でやらせていただきます。サイン対象物はササユリカフェで販売される“上国料勇ラフスケッチ集”限定なので、こちらのご購入をお願いしています。他の販売品については、同人誌みたいなものと、ポストカードを出しますので、よろしくお願いします。
――では最後に、会場に来られるファンに一言お願いいたします。
上国料氏:こういうゲームのイメージボードなどの線画っていうのは、恐らく門外不出というか、これまでほとんど外に出たことがないと思います。「FF」は設定資料集も基本的にあまり出しませんし、攻略本とかに掲載されているのはサイズが小さいので、原寸で見れるのはこれが最初で最後でもう二度とないと思うので、ぜひ直接見に来ていただければと思います。
色を塗る前提の絵ですし、いずれはCGになるという前提のもとで描かれている絵なので、描いた立場からすると恥ずかしいものを見られてしまうような気持ちもあったりするんですが、そういうのも含めて楽しんでいただければと思います。
イベント概要
タイトル:「上国料勇展」inササユリカフェ
開催期間:2018年4月19日(木)~5月28日(月)
開催場所:ササユリカフェ
住所:〒167-0042 東京都杉並区西荻北3-16-6小美濃本社ビル4階
展示概要:ファイナルファンタジーシリーズのコンセプトアート、キービジュアル等の原画、線画、ラフデザイン等の展示、個人制作物の原画、資料等の展示
販売情報:オリジナルポストカード・オリジナルスケッチ集などを予定
入場料:飲食物メニューのワンオーダーをお願いいたします。
営業時間:11:30-22:00 (21:30ラストオーダー)
※毎週火曜日・水曜日 定休
貸切や立ち見営業など特別営業となる場合がございます。詳しくはササユリカフェのtwitter(@sasayuricafe)などでご確認ください。
※画面は開発中のものです。
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