Steamにて配信中の一人称ウォーキングシミュレーター「NOSTALGIC TRAIN」のプレイインプレッションをお届けする。
個人のインディーゲーム制作者、畳部屋氏が手がけた「NOSTALGIC TRAIN」がSteamにてリリースされた。本作は日本の田舎町を舞台にした一人称視点のウォーキングシミュレーター。発表時からゲーマーを中心に話題となっていたタイトルであり、かくいう筆者も以前から注目していたタイトルだ。今回、リリースを機にインプレッションを書かせてもらうことになったので、さっそくプレイした感想を述べていきたい。
「夏霧」と書かれた駅で、一人目を覚ました「私」。記憶を失っており、なぜ自分がこの場所にいるのかも分からない。さらに不思議なことに、この土地には人の姿がまったくなかった。
プレイヤーである「私」は、自分自身を探すため、「夏霧」を探索することに。
プレイしてまず感じたのは、グラフィックスの美しさだ。Unreal Engine4で描かれた町並みは、非常に美麗で、かつ童心を刺激する懐旧も伴っている。温かみのあるリアリティとでも表現するべきだろうか。
木造校舎、駄菓子屋、単線の鉄道、趣のある神社など。過去に置き忘れてしまった思い出が蘇ってくるような造形の数々を見ていると、いつまでもこの土地に佇んでいたい。そんな気にさせてくれる。
制作者の畳部屋氏が明確な意思を持って本作に取り組んできたことが、ゲーム開始早々からバシバシと伝わってくるのだ。まさに、インディーらしい熱い魂のこもった作品である。
グラフィックス以外にも特筆すべき点はある。美しくもどこか悲しげなBGM、どこまでも切なく、胸が締め付けられるようなストーリーも、本作を構成する上で必要不可欠なピースだ。
なお、夏霧はとある理由から無人なのだが、主人公である「私」は、土地に点在する霧から、人々のストーリーを感じ取ることができる。その霧からは、人の数だけ物語があるように、作中の登場人物たち――とはいってもキャラクターグラフィックスはなくテキストのみなのだが、苦悩、葛藤、哀しみなど、あらゆる感情の渦が流れこんでくる。しかもその題材はとても身近であり、多くの人間が一度は経験したことがあるような、決して他人事ではないエピソードたち。
本作の面白いところは、「私」が、そんな登場人物たちの人生に干渉できること。つまり、彼(彼女)たちの人生を良い方向へと導いてあげることができるのだ。
それゆえ、ストーリーにはしっかりと「光」も含まれており、ネガティブ一辺倒のまま結末を迎えるものではない。切なさや哀愁といった要素の中に存在する本作独特の温かみは、そういった部分から発生しているのかもしれない。
蝉の鳴き声が耳に心地よい、「夏霧」。ちょうどこれからの時期は、本格的な夏の到来だ。「NOSTALGIC TRAIN」をプレイするなら、これ以上ないタイミングと言える。不思議で、哀しくて、少し切ない夏の物語を、ぜひ体験してほしい。
Steam配信ページ
https://store.steampowered.com/app/801260/NOSTALGIC_TRAIN/