パシフィコ横浜にて8月22日~24日にわたって開催の「CEDEC 2018」。ここでは、8月22日に行われたセッション「e-sportsでなにかをしたい人たちへ」の内容をお届けする。

本セッションでは、グルーブシンク代表取締役の松井悠氏が大会運営やコミュニティシーンのサポートなどを長年続けてきた経験を元に、e-sportsでなにかをしたい人たちへ向けたTipsが紹介された。

セッション冒頭では、e-sportsとはそもそも何なのか? という大枠の部分が紹介された。「ぶっちゃけe-sportsは儲かるのか?」という疑問に対して「メシは食えます」と自身の経験を語る。日本国内でe-sportsで大きく儲けたという話はまだ聞こえてこないが、日々e-sportsに関する仕事をしながら生活の糧を得ることは十分にできているという。

松井悠氏

また、会場では一本のドキュメンタリー映像も紹介される。これは2017年7月に行われた「league of legends」学生世界大会のドキュメンタリー映像で、選手たちが大会を通じて得たものや実力主義世界の厳しさなどが詰まったものとなっている。

松井氏はe-sportsを、ゲームが持つ様々な楽しみ方の内のあくまで1つであると位置づける。デジタルゲームの持つ競技性にフォーカスしたこの文化は、誰が一番強いのか草の根でコミュニティが生まれ、次第に名誉や賞金などの価値が付いたものだ。

e-sportsを理解する上で忘れてはならないのが、シーンの中に「デベロッパー」、「パブリッシャー」、「プレイヤー」という3種類のポジションの人々が存在する点だ。フィジカルスポーツとの違いはこの点にあり、デベロッパーにとってのe-sportsはコンテンツの1つであり、パブリッシャーにとってのe-sportsはプロモーションの1つであり、プレイヤーにとってのe-sportsはエンドコンテンツの1つである。e-sportsをビジネスとして捉える際、それぞれの立場を理解しておくことが重要だという。

また、e-sportsでなにをするか考える際は、どのポジションに立つか、どうビジネスに活用するか、そして改めて自社のビジネスモデルを考える必要があると、松井氏は話す。例としてF2Pモデルとパッケージモデルの活用方法が紹介された。

e-sports大会を実施する際に気になるのは賞金や課金アイテム周りの金銭的な部分だろう。これらの疑問について松井氏は、「まだ誰も立件されていないのでぶっちゃけわからないんです」と話す。しかし“危ない橋”であることは間違いないようで、必ず、お金が支払える大会の開催方法や、お金を支払える対象と上限などを社内の法務に確認してから開催して欲しいと警鐘を鳴らした。

タイトルがe-sportsとして盛り上がっていくために、開発者・パブリッシャーに手を貸して欲しいことも紹介される。開発者にお願いしたいことはゲーム視聴の拡張だという。「誰と誰が何をしているか」「いま試合はどちらが優勢か」などといった情報が可視化されることで、ゲームを見るというカルチャーがより広がりをみせる。

パブリッシャーへは、イベント・大会のガイドライン作成を提案。現在はゲームを使った2次利用の規約が定まっておらず、パブリッシャーに問い合わせても黙認という形での許可しか取れないことが多いという。ガイドラインの作成は大変だとは思うと前置きしつつ、これが出来るとコミュニティが大手を振って自発的にイベントを行ってくれるので双方にメリットがあると語り、まずはテスト運用からでも協力して欲しいとお願いした。

また、プレイヤーには自分たちのことを「客」だと思わないで欲しいと呼びかける。パブリッシャーやデベロッパーにビジネスパートーナーとして認識してもらうことができれば、3者が一体となって新しいe-sportsシーンを作ることができるのではないかと松井氏は考えているようだ。

最後に松井氏は、デベロッパーがゲームを開発してくれていること、パブリッシャーがゲームを流通させてくれていること、プレイヤーがカルチャーを作り上げていること、これらをお互いに理解した上で、「e-sports」をキーワードに一緒になれるいい機会なのではないかと、昨今のe-sportsブームを表現。お互いに歩み寄って「もっといいシーン」を作りませんか? と述べ、本セッションを締めくくった。

※メーカー発表情報を基に掲載しています。掲載画像には、開発中のものが含まれている場合があります。

コメントを投稿する

この記事に関する意見や疑問などコメントを投稿してください。コメントポリシー

関連ワード
  • CEDEC 2018
  • 松井悠
  • 取材