2018年夏のとある日、「Fate/Grand Order Duel -collection figure-」を使い、編集部内の実権を懸けて(?)行われた「Gamer聖杯戦争」。ここでは、その模様をお届けしていく。
「Fate/Grand Order」をモチーフとした、フィギュアとボードゲームを融合したアナログゲーム「Fate/Grand Order Duel -collection figure-」(以下、FGO Duel)。今回はGamer編集部内でその「FGO Duel」の大会が開かれると聞き、いても立ってもいられなくなった「FGO」大好きの筆者。フリーランスのライターである筆者は、正確には外部の人間のため、編集部内の実権を握ってあまり意味がないのだが、せっかく参加する以上はやはり優勝を目指したいところだ。
「FGO Duel」は、それぞれ3騎ずつのサーヴァントを編成して戦うターン制のボードゲームだ。9×9のフィールドにサーヴァントを配置し、サーヴァント同士が同じマスに侵入すると戦闘が発生。「FGO」でもお馴染みのコマンドカードを使って攻撃力を算出し、数値の合計が多かった側が勝利となる(防御側が勝った場合、もしくは引き分けの場合は状況は変化しない)。最終的には最奥にある「マスターエリア」に到達するか、相手チームのサーヴァントをすべて撃破すると勝利となる(詳細なルールについては、こちらの記事も参照してみてほしい)。
今回のレギュレーションで使用できるのは第1弾、及び第2弾にラインナップされたサーヴァント達だ。サーヴァント達には、レアリティに合わせたコストが設定されており、今回は公式推奨ルールに従った最大コスト11、及びスキルカードを使用できる上級ルールでの対戦を行った。
第1試合:TOKEN VS ささみ
最初の対戦となったのは、TOKENとささみ。奇しくも、互いのメインアタッカーがクー・フーリンとスカサハという、まさかの師弟対決がいきなり実現することに。TOKENはさっそくアタッカーであるクー・フーリンを前進させる。
ところが、この動きを見たささみは、スカサハの常設スキルである「神殺しB」を発動。基本的に「FGO Duel」では、「セイバーがランサーに強い」といったFGOでのクラス相性に相当するパラメーターは存在していないのだが、スカサハはこのスキルの効果によりアーチャーかバーサーカーに対する攻撃力を無条件+4することができる。当然、相手にアーチャーもバーサーカーもいなければ何の効果もない死にスキルと化すのだが、対象が限定される分、発揮された時にはその効果は絶大。そうとは露知らず、スカサハの前に立ちふさがってしまったクー・フーリンは、初手の攻撃であっさりと撃破されてしまう。
攻撃の中心でもあるクー・フーリンを初手で欠き、かなり落ち込んでいる様子のTOKEN。TOKENは次にマシュを前線に送り込み、ささみのアステリオスへと攻撃を仕掛ける。こちらはお互いの攻撃が延々と失敗する一進一退の攻防が繰り広げられるも、最終的にはささみが防御時にクイックチェインを発動させ、見事にその返す刀で撃破するというトリッキーなプレイを成功させる。
後がなくなったTOKENは、ここから怒涛の粘りを見せ、なんとジャンヌ一騎でアステリオス、スカサハを続け様に撃破。「FGO Duel」では、倒されたサーヴァントのカードもそのまま他のサーヴァントの攻撃に使用できるので、バスターチェインが組みやすく、攻撃力の高いカードが並ぶクーフーリン[オルタ]のカード構成が、ここにきて強さを発揮した結果だった。
サーヴァント2騎を立て続けに撃破したことで形成が逆転し、TOKENはささみのマスターエリアの手前にまで迫り、王手をかける。このターンのメイヴの攻撃をジャンヌが耐えれば、ほぼ勝利は確実と思ったのもつかの間、その前に発動していたアーツチェインも含めたメイヴの攻撃でまさかのジャンヌが撃破。シーソーゲームを制したのはささみとなった。
第2試合:米澤(筆者) VS ヨッシー
2戦目の対戦カードは、筆者 VS ヨッシーだ。後攻となった筆者は、前進してきたヨッシーのジル・ド・レェを、バスターチェインでいきなり撃破するという幸先のいいスタートを切る。だがこの時、ヨッシーはジルを撃破されながらもアーツチェインを発動。これでNP(FGO DuelでのNPは、アーツカードを使用した枚数となる)を一気にためたヨッシーは、開幕からすぐにギルガメッシュのスキル「カリスマA+」を発動。これは、大量のNPを必要とする代わりに味方全体の攻撃力を常時+2するという非常に強力なスキルだ。
筆者は初手の攻撃で、強力なバスターカードを一気に消費してしまっており、残る手持ちのカードは貧弱。これにアーツチェイン、さらにカリスマの補正まで乗ると、当然対抗することは難しい。アステリオスは攻め込んできたエウリュアレに、まったく何もさせてもらえないまま撃破されてしまう。
しかも直後に、そのエウリュアレによって筆者のマーリンまで撃破されてしまうという苦しい展開。この時マーリンは、味方全体の攻撃力を+1する「夢幻のカリスマ」を発動しており、デッキ全体を支援するバッファーの役割を担っていた。サーヴァントが撃破されると、そのスキルの効果も失われるため、かなり痛い戦力ダウン。その上、先程の試合の最後と同様に、エウリュアレはマスターエリア手前に移動したため、一度でもターンを回してしまうとこちらの敗北となる。
しかし奇跡的に、この時の筆者の手持ちにはアルトリアのカードが4枚。「自身のバスターカードの攻撃力を+1」する効果をもつスキル「魔力放出A+」の補正も乗せながら、バスターカード2枚+クイックカード1枚の強力なブレイブチェインを発動させ、なんとかエウリュアレを撃破することに成功した。
これで残るは互いに1騎ずつ、しかもアルトリア VS ギルガメッシュという、「Fate/stay night」のラストバトルを思わせるシチュエーションに、心の中で筆者のテンションも高まる。「UBW」でのアルトリアのマスター・衛宮士郎であれば「ここは俺に任せてセイバーは聖杯を」とカッコいいことを言ってギルガメッシュに立ち向かうところだが、残念ながら筆者には固有結界を扱う能力はないので、アルトリアにすべてを託すしかない。
だがギルガメッシュには「カリスマA+」の攻撃補正が未だ健在なのに対し、こちらの「魔力放出A+」はアルトリアのバスターカードをもっている時でなければ効果が発揮されないため、長期戦は不利。だがお互いに後がないため、ヨッシーも防御に全力を出し尽くさざるを得ず、お互いに攻めあぐねる状況が続く。
一進一退の勝負の最後の決め手となったのは、事前に筆者が発動させていたアーツチェイン。攻撃時の筆者のカードも決定打になりそうな数値ではなく、半分ダメ元の攻撃だったのだが、防御側のヨッシーがアーツチェインを組むことを優先し、数値が低めのカードをチョイスしていたこと、アーツチェインと魔力放出の補正が乗っていたことが功を奏し、ギリギリでギルガメッシュを撃破。どうにもラッキーパンチが決まった感も拭えないが、どうにか経験者としての面目は保つことに成功した。
決勝戦:米澤(筆者) VS ささみ
トーナメント形式といいながらも、参加者は4人なので、第3試合が実質の決勝戦となる。相手は、筆者とのデッキ構成が近いささみだ。
お互いの低コスト枠がアステリオス同士で被ってしまったため、ささみの申し出でアステリオスをマシュへとサーヴァントを変更して対戦を行うことになったのだが、サーヴァントを並べた時にはっと気づく。
アステリオスはクラスがバーサーカーであるため、スカサハの「神殺しB」の対象となってしまうのだ。これでは、アステリオスを積極的に前に出すことができない(もし筆者の方が低コスト枠をマシュに変えていれば、「神殺しB」は完全に死にスキルとなっていた)。
そこで筆者がとったのは、アステリオスが倒されてしまう前に、先にスカサハを倒す「やられる前にやる」作戦。「神殺しB」の補正が乗るのは攻撃時のみのため、同じく攻撃時に攻撃力を+2する「怪力A」をもつアステリオスなら、先手をとって攻撃できれば十分にチャンスはあると考えたからだ。
一回目の攻撃いは、ささみはスカサハのブレイブチェインを発動させて対抗し、筆者の攻撃は失敗に終わる。だが、ここまではある程度想定内だ。
筆者の最初の攻撃はアーツチェインを組んでおり、最悪次のターンにアステリオスが倒されてたとしても、その返す刀で、侵入してきたスカサハをアーツチェインの乗ったマーリンで倒せればいい……という算段だった。しかし、ささみがこの時の防御で強力なカードを軒並み消費していたこと、アーツチェインの補正に、更にバスターチェインを重ねられたという幸運も重なり、「神殺しB」がのったスカサハの攻撃をギリギリで耐えきることに成功。さらにその後「怪力」にアーツチェインを乗せた攻撃で、アステリオスが天敵のスカサハを返り討ちにする大金星を上げる。
そこから試合は一気に急展開に。筆者がやっとの思いで生き残らせたアステリオスだったが、直後に前進してきたメイヴに攻撃され、あっさりと撃破されてしまう。が、そのメイヴもバスターチェインを発動した筆者のマーリンに攻撃され撃沈。ささみのメイヴが倒れたことで、中央のマスターエリアへのルートが空き、なおかつアルトリアとマーリンの2騎が中央へと進軍している状況となり、「マスターエリアへの侵入」という勝利条件が見えてくる。
ささみに残された選択肢は、「一度攻撃を諦めてマスターエリアへの道を塞ぐ」か「マスターエリアに入られる前にサーヴァントを倒す」という2択。本作では、防御側はサーヴァントを失うというリスクがある分、数値勝負では勝利しやすいバランスとなっているので(攻撃側は移動用にカードを1枚消費する必要があり、合計値が引き分けの場合も防御側の勝利となる)、通常なら前者がベターな選択だと言える。
しかし、この時ささみは、+7という全チェイン中最高の補正をもつクイックチェインを発動させており、攻撃を行えばほぼ確実にどちらかは倒せるという状況だった。そのためささみはリスクの高い後者を選択。残ったマシュでこちらのアタッカーであるアルトリアに攻撃をしかけ、これを撃破する。
一方、クイックチェインの補正を含めて攻撃された時点で生き残る目はないと考えていた筆者は、アルトリアを残すことをほぼ諦めて、以降のターンに影響が残るアーツチェインを優先した。というのも、その次のターンのマシュの攻撃からマーリンが生き残りさえすれば、マスターエリアへと侵入し勝利できるからだ。結果として、アルトリアは撃破され、半ば見捨てた形になってしまったものの、アーツチェインの補正が加わり、次のターンでマーリンが生き残る確率は大きく高まった。
完全に後がなくなったささみは、バスターチェインを組んで攻撃を仕掛けてくる。しかし、先程のアーツチェインの+3の補正もあって相殺に成功し、無事マーリンは生存。最後はきっちり移動用に残しておいたカードでマーリンを相手のマスターエリアへと移動させ、勝利を飾ることができた。
実際の対戦の様子
発売から約一ヶ月あまりが経過し、第2弾のラインナップを加えて改めてプレイした「FGO Duel」だが、やはり本当によくできたゲームだということを実感させられる。
結果的には経験者である筆者が優勝したものの、どちらの試合も一歩間違えば敗北していた薄氷の勝利。シンプルな作りとなっている本作のルールは、初めてプレイする人間が教えられながら経験者と遊んでも、すぐ互角に戦えるようになり、本当によくできていると感心させられた。
一方で、運に左右される要素も強いのだが、プレイヤーが戦略の重要性というのも大きく、プレイの度に新しい発見がある。
例えば今回であれば、試合の経過の中でも少し触れた、アルトリアのスキル「魔力解放」は、常時攻撃力をアップされる「カリスマ」などと比べると一見見劣りするように見える。だが、攻撃・防御時を選ばずに使えるという他にないメリットがあり(カリスマなどの常時バフ系は、ほぼ攻撃時のみにしか適応されない)、デッキの枚数が減る終盤は、必然的にアルトリアのバスターカードを引く確率が高まるため、終盤になるに連れどんどん使い勝手が向上していき、今回の対戦でもかなり役立ってくれた。一見ちょっと使い勝手が悪そうでも、使い所を工夫することで生きる場面が出てくるバランスとなっている。
また、今回のプレイではそれぞれがサーヴァントを選んでデッキを編成したが、バスター・アーツ・クイックのカードの割合が一枚変わるだけでも、チェインの組みやすさが大幅に変わってくる。カードの割合は「FGO」とまったく同じなので、ゲームでの性能のイメージをほぼそのまま適応できたり、サーヴァントの編成を考える楽しさは、実に「FGO」的で、アプリ版の楽しさやキャラクター性がボードゲーム向けにうまく消化されている。
惜しむらくは、正式ルールであるコスト11以内でプレイするには、ラインナップには少ない低コストのサーヴァントをランダムで当てる必要があることだが、第2弾ではアステリオスにジル・ド・レェ(キャスター)にエウリュアレ、11月発売予定の第3弾ではジル・ド・レェ(セイバー)にメドゥーサと、星3以下のサーヴァントの種類も充実していくので、正式ルールで遊ぶまでの敷居は下がっていくと思われる。
コストを無視してそれぞれが好きな組み合わせで遊ぶという楽しみ方もあるが、本作はコストごとのサーヴァントのパワーバランスがかなり練られているので、最終的にはコスト内でサーヴァントを組み合わせて遊ぶのがベストになると個人的には感じられた。
今回の「FGO」プレイヤー同士で遊べば、盛り上がること間違いなしの「FGO Duel」。試合展開が速いため観戦している側も退屈せず、今回の編集部での戦いも、誰もが完全に仕事を忘れて勝負に夢中になっていたほどだ。
純粋なコレクションフィギュアとして集めだけでなく、ボードゲームとしての完成度も期待以上の出来となっているので、是非仲間たちと一緒にその楽しさを一度体験してみて欲しい。
「Fate/Grand Order Duel -collection figure-」公式サイト
https://duel.fate-go.jp/