10月4日に発売された「WORK×WORK」を直感赴くままに10時間プレイしてみましたので、その状況をゆるく正直に正確に、そして、なんとなくモヤっと伝えていきます。
「WORK×WORK」は、ドット絵のペラっとしたキャラクターの会話シーンやバトルシーンが特徴的なタイトル。メーカー発表では「RPG」となっていて、昔ながらのファンタジーっぽいグラフィックのゲームではあるのですが、どことなく他にはない何かを感じることができました。
シンプルなパッケージ表面を眺めていても、ゲームのヒントは出てこないため、裏面を見てみると、こんな記述がありました。
新感覚! インストラクターバトル!
プレイヤーはインストラクターのようですが、一方で王子っぽいビジュアルのキャラクターが主人公にも見えますし、これはいったいどうしたことでしょうか。早速、「WORK×WORK」に挑戦していくことにします。
パッケージに負けないくらいシンプルなタイトル画面。
これから幕が上がって何が行われるのか、期待が高まります。素直にZLボタンとZRボタンを同時に押してみると、「ニンテンドーeショップ」という気になる項目があります。
そこで「ニンテンドーeショップ」のチケットをパキっと選んでみると、追加シナリオパックを購入できるようになっているのですが、追加シナリオ「ウミウシパック」は2018年12月31日23時59分までは無償配信になっているので、忘れずにゲットしておきましょう。期限を過ぎると200円で提供されるようになるようです。
ちなみに、追加シナリオを有効にするためにはここで一度ゲームを再起動をする必要があります。
続いてゲームを始めると、画面いっぱいに「勇者さまーランド!」と大々的に表示。
音の響き的にもどこかのアトラクション施設の名前が頭に浮かばないこともないのですが、それはまた別の施設。こちらは常夏気分を味わえそうな南国に浮かぶ冒険の島で、魔物たちを薙ぎ倒し、伝説の武器を手に入れて、魔王討伐を目指す勇者体験をできるアトラクション施設。
アトラクション施設の紹介としてはかなりワクワクとさせられるような内容で、そのワクワクを具体的に表現すると、京葉線に乗って舞浜駅まで行き、駅から出た時に目の前に現れる何かに心躍るようなあの感覚があるのですが、最後の一文で頭に「?」が浮かびます。
そうです、そうです、そうなんですよ。このゲームは、勇者を体験できる施設を舞台にしたゲームなのですが、プレイヤー自体がのほほんと勇者体験をするようなゲームではありません。ここで大事になるのが2人の登場人物になります。
王子らしき人物と貧乏学生のような風貌の人物。まずは貧乏学生のような風貌の青年が島に到着する場面。どうやらこの人物は「勇者さまーランド」でアルバイトをしなくてはならないようです。
なぜなら、必死で「ちがいます」を約30回も繰り返しても、一向にこの質問が終わらないため、根負けして選んでしまった「そうです」の一言により、全財産を奪われた上でアルバイト生活に突入することになってしまうからです。どうやら、「勇者さまーランド」のアトラクションで客をダンジョンに案内するインストラクターとして働き始めることになるようですね。
一方、客としてやってきたのは、第18王子、もしくはエルリック王子という、何やら訳がありすぎるような男。
お付きの者を従えているため、高貴な方なのは間違いなさそうですが、「第18王子」という表現が気になります。どうやら、王位継承権が1番から18番に落ちたという不幸な過去があり、王位継承権を元に戻すために魔王を倒さなくてはならない宿命があるようです。
全財産を奪われてインストラクターとしてアルバイト生活を始めた青年と、魔王を倒す目的を持った王子。この2人の出会いが運命を……というには、「勇者さまーランド」はアトラクションだし、勇者になれるといっても仮想の経験だし……と心の中で突っ込みを入れつつも、何かが動き出すことを実感するに至ります。
ちなみに、ここでインストラクターの青年の方の名前を入力するのですが……。
基本的にはゲーム内では「ポチ夫」と呼ばれることになってしまいます。まぁ、これはこれで運命が動いていると言えなくもありません。今後、インストラクターの「ポチ夫」が「エルリック王子」の担当となり、ダンジョンを探索することになります。
「エルリック王子」も名前を変えられてしまいますが……。
インストラクターの仕事は、客をダンジョンへと案内して、誠意を尽くして満足させること。プレイヤー自身の自己満足ではいけません。客を楽しませてこそなんぼです。客のいないところではお金が発生しないため、早速出発ロビーに行くと、冒険を始めることになります。
とりあえず担当している客が「18」とお付きの大臣の「オウク」しかいないのですが、冒険は常に4人まで一緒に行うことができるため、2枠がフリーになっています。「ポチ夫」が無口なため、ナビゲーション役の妖精「ルア」が登場し、フリーの2枠に入るべく「コトリ」と「ジェイソン」が新しい客として登録されたことで、早速ダンジョンに突入することになります。
ダンジョン内の冒険はルートに沿って行われることになります。一般のアトラクション施設にあるアトラクションには、乗り物に乗ってコースに沿って進んでいき、特定の地点で敵と戦うようなモノがありますが、そのようなつくりのアトラクションを具現化したモノと思ってしまっても問題ありません。このゲームの中では、ルートに沿ってダンジョンを攻略していきます。
イベントマスでは会話中心のイベントが発生します。
それに対して敵がいる場所ではバトルが発生します。
バトルでは、客ごとにそれぞれ自由に戦い始めます。「ポチ夫」が何もしなくてもバトルは進行し、客の実力がそのままバトルの結果になります。強いパーティであればそれなりに戦い抜くことができるのですが、ここで大事になるのが「ポチ夫」のインストラクター力になります。
「ポチ夫」は、バトルではアイテムを使ったり、指示を与えたりと、サポート業務に尽力を尽くすことになるのですが、体力がないため、いつでも指示を与えられるわけではないという、微妙な状況にあります。それゆえ、限られたチャンスを有効に活かすことこそが、顧客満足度を上げるための重要な要素になります。
バトルをこなしてダンジョンを進んでいき、ボスを倒すとダンジョンの攻略完了。客ごとに冒険に応じて経験値が入ってレベルアップしていき、客とポチ夫の「なかよし度」があがり、冒険の状況に応じて「ツアー満足度」が決まります。また、ポチ夫個人のインストラクターレベルも上がっていきます。
「ポチ夫」自体は、流されるままにアルバイト生活を始めることになったわけですが、ある事件をきっかけに、働き続けなくてはならない状態になってしまいます。さて、「ポチ夫」の運命は……。
お金を稼がなくてはならなくなった「ポチ夫」。お金を稼ぐためには客をダンジョンへといざなわなくてはなりません。しゃべらず自らの意志も示さない、完全にいじられ役の「ポチ夫」ですが、プレイヤー自身が行動を決めたことに関してはしっかりと実行してくれます。
まずは、ゲームの舞台となる島を見る事にしますが、この全体マップがゲームをプレイする上でのベースとなります。このマップから拠点に入ることによって、ゲームを進めていくことになります。
客が勇者になり切るための武器が必要になります。戦って体力が減った時や状態異常になった時に助けるためのアイテムが必要になります。気持ちよく戦ってもらうためには、出てくるモンスターの弱点だって知っておかなければなりません。インストラクターをこなすためには、担当する客を増やさなくてはなりません。各拠点に入ることで冒険の準備をしていくことになり、改めて出発ロビーに行くと、いよいよ客を冒険へといざなう場面になります。
序盤は強制的に挑戦する冒険が決まってしまうのですが、少しゲームを進めていくと、プレイヤー自身がどの冒険に行くか選べるようになります。
客の冒険は、「メイン」「サブ」「フリー」の3パターンがあります。「メイン」の冒険は、ストーリー進行に影響を与える冒険になります。「サブ」の冒険は、客との「なかよし度」が上がると発生し、客ごとのエピソードを楽しむことができます。「メイン」は冒険をするメンバーが固定されているのに対して、「サブ」は特定のキャラクターに依存する形で冒険に出ることもあり、一部のメンバーを自由に選べるようになっていることがあります。
メンバーを自由に決められるようにはなっている場合でも、ゲームの方である程度バランスの良いメンバーを自動で組み込んでくれているので、このまま冒険を始められますし、メンバーを変えたければプレイヤー自身が選ぶこともできます。
それに対して、「フリー」の冒険では、冒険する客がすべてフリーになっているため、好きなメンバーを選んで冒険をすることができます。どの冒険にも想定レベルが設定されているため、「メイン」や「サブ」の冒険をするにはちょっと厳しい状況の時に、経験値稼ぎの為に「フリー」を活用するようになるのではないかと想定されます。
そこそこ冒険をこなしていくと、実のところ、パーティが強ければ、「ポチ夫」はあまり行動しなくてもいいようになります。そこで、バトルのスピードを「×3」にすると、より快適なバトルを楽しむことができます。
スピードを「×3」にすると曲が早送りになり、動きも3倍になるのですが、この3倍になった楽曲も面白く、心を弾ませながらサクサクとゲームを進めることができます。
しかし、調子に乗ってゲームを進めていると全滅してしまいました。
RPGなので、それなりに理想のパーティというモノが存在します。4人パーティで前衛と後衛があるタイプなので、前衛には体力が多く、物理攻撃をするタイプを並べて、後衛には魔法を使うタイプを並べたくなります。このゲームでは、敵の攻撃を一身に受ける防御主体の「タンク」と物理攻撃ではエース級の活躍をする「せんし」が前衛タイプで、回復役の「ヒーラー」と魔法攻撃のエースとなる「まどうし」が後衛タイプ。また、この4タイプ以外に「バランス」というタイプも用意されています。
単純に考えると「タンク」「せんし」「ヒーラー」「まどうし」のパーティのバランスがよさそうですが、どこかの役割を「バランス」に変えても、それなりのバランスを取れるパーティになるような気がします。では、先ほど全滅をしたパーティを見てみると……。
って、おい!
「フリー」の冒険をする際には、プレイヤー自身がパーティをつくるため、それなりにバランスを取れるのですが、「メイン」の冒険では指定された客で冒険に出なくてはならないため、プレイヤー側でいろいろと配慮する必要に迫られます。今回のパーティの場合、「ポチ夫」は回復役に徹しないといけない、ということになりますよね。
冒険を繰り返す中で、少しずつバトルの攻略が見えてきました。
バトルでは闇雲に攻撃していると効率が悪いので、指示を与えることになります。指示をするときには時間が止まり、指示には「個別指導」「アイテム使用」「全体作戦」「モンスター情報」の4種類あります。
バトルが始まったらすぐに何らかの指示を与えたいのですが、「個別指導」をするといまいち効率がよくないため、「全体作戦」が有効のように感じました。
「全体作戦」には「がんばれグリーン」「ぼこぼこブラック」「てったいホワイト」「がむしゃらレッド」「ようすみブルー」「ガードイエロー」の6種類あり、初期状態は「がんばれグリーン」になります。
ここまでのプレイ経験を踏まえると、最初の指示では「ぼこぼこブラック」を行い、雑魚とはいえでも1体ずつ確実に倒していくのが必勝法のように感じました。
そして、ボス戦では雑魚を一通り倒した後に「がむしゃらレッド」を使って一気に勝負をかけるのも、かなり効果的のように思います。
人によって好みが分かれるとは思いますが、個人的にはゲームの性質上、タイミングよく与えられる命令は2つのみでした。敵の強力な攻撃の際には「ガードイエロー」が効果的だったりするのですが、タイミングを取りにくいので、あまりガードのことは考えず、ダメージを喰らってからアイテムで回復した方がよさそうです。
「アイテム使用」では、アイテムを使うことができるので、体力を回復するアイテムがかなり活躍することになります。実際のところ、「ポチ夫」は持てるアイテムの種類が限られているため、体力回復と倒れた人を復帰させるアイテムを持つと他のアイテムが持てません。それゆえ、毒やショックなど状態異常対策は、ある程度「ポチ夫」をレベルアップさせてからで問題なさそうです。
バトルについては、ある程度パターン化しておいた方が攻略しやすく、攻略スタイルがまとまってくると、スピード「×3」を使いやすくなります。
その後はかなり堅実にゲームを進めることができ、あっという間に10時間が過ぎてしまいました。
「メイン」の冒険だけを進めていくと客のレベル的にすんなりとストーリーを進めていくのが厳しくなっていくため、自然と「サブ」や「フリー」の冒険をするようになっていくのですが、「サブ」を発生させるためには、それぞれの客との「なかよし度」をあげなければならないため、「サブ」や「フリー」の冒険をする際には適度にバランスよく客を楽しませる必要があります。
RPGなので、使用していないキャラクターを育てるのは大変なのではないかという懸念が出てくることがあるかと思いますが、このゲームでは、冒険が終わるごとに、「ポチ夫」の顧客全員に「モンコイン」が配布されることで、全員が少しずつ成長するようになっているため、置いてきぼりを喰らうキャラクターは存在しません。
バトルの際には「ポチ夫」はサポートに徹するつくりになっていますが、この辺りはAIのキャラクターに戦わせるタイプのRPGになれていると、特に抵抗なくプレイができます。また、サポートというのは冒険に出る前から始まっていて、例えば強力な武器を購入しておけば、冒険に出る際にプレイヤー側が何も設定していなくても、客が勝手に強力な武器を装備してくれるため、意識していなくても自然とサポートができている状態になります。お金を儲けても特に使いどころがないため、客が楽をできるところにお金を投入することがとにかく大事なつくりになっています。冒険で武器が壊れたらすぐに補充することも重要になります。
ダンジョン内では、バトル終了時や最終地点に到着した際にいろいろな「おたから」を入手するようになっていて、この「おたから」を客に渡すとツアーの満足度が上がるようにはなっているのですが、その一方で、「おたから」は収集アイテムになっていて、部屋に飾ることもできるため、最低限1つずつは「ポチ夫」の元にキープをしておきたくなります。この収集要素がやり込み要素としてはなかなか効果的で、冒険の旅に客と自分のどちらに「おたから」を割り当てていくかは、常に楽しめるようになっています。
ゲームの中では、メインとなる冒険を行ってストーリーが進行することで日数が経過するようになっているため、「サブ」や「フリー」のツアーで冒険を繰り返してもゲーム内の日数は経過しません。それゆえにゲーム内の日数でゲーム進行を表すのは難しいのですが、今回の10時間のプレイでゲーム内の時間が10日間経過しています。
冒頭で「勇者さまーランド」というアトラクション施設が提示されていて、作り物の施設の中で繰り広げられる作られた冒険としてゲームが進行していくという、いわゆる「普通」のRPGと比べるとかなりズレた内容にはなっているのですが、ストーリーを進めていくと何やら訳ありの環境や人物が多数登場することで、先が気になる中でゲームを進めていくようになっています。「ポチ夫」と「18」だけでなく、登場人物のすべてが気になっていき、絶妙なバランスの中で進んでいく「WORK×WORK」には、仕事を止めてでも遊びたいと思ってしまう魅力が詰まっていました……ので、お借りしたソフトはすぐにお返しします!
プロフィール酒缶(さけかん)/ゲームコレクター15000種類以上のゲームソフトを所有するゲームコレクターをしつつ、フリーの立場でゲームの開発やライターなど、いろいろやりながらゲーム業界内にこっそり生息中。「東京エンカウント弐」にゲームアドバイザーとして協力。関わったゲームソフトは3DSダウンロードソフトウェア「ダンジョンRPG ピクダン2」「謎解きメイズからの脱出」など多数。価格コムでは、ゲームソフトのプロフェッショナルレビュアーを担当している。
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