回を重ねるごとに規模を大きくしているアナログゲームイベント「ゲームマーケット2018秋」1日目の模様を取材。即売会イベントならではの「こんなゲームもあるのか!」という驚きに満ちたゲーム達を紹介したい。
目次
- こんなゲーム見たことない!同人的なゲームの魅力
- スタンダードで歴史を感じさせる!その上エッジまで立っている「ルターの宗教大改革」
- 賃貸業者の悲哀を感じさせる点がユニーク!「東京アルティメット賃貸」
- 人気の定着した人狼系には“亜種”が光る!「ワンナイトマンション」
- アナログゲームで「怖い」を実現!「万怪談」
- 完成度の高いTRPGのシナリオ集も!「名探偵黒猫と大怪盗キャッツ」
- ユニークなパーティーゲーム3点!「功夫衰弱」「THIS IS IT」「Match Better」
- 今回の目玉!「将軍様、核やめるってよ」これだからゲームマーケットはやめられねえ…!
- 平成最後の冬休み、家族や友達と大いに盛り上がろう!
ただ一言、「ゲーム」と言われたら、あなたはどんなゲームを連想するだろうか? PCゲームやコンシューマーゲームだろうか。それとも露出量の大きいスマホゲーム?ただ、「ゲーム」という言葉に含まれるのはデジタルゲームだけではない。ボードゲームやカードゲームといった「アナログゲーム」だってゲームのひとつだ。
そして、近年「アナログゲーム」は存在感を増している。「ゲームマーケット2018秋」もまた、そんなアナログゲームを扱ったイベントだ。その内容は、企業や個人が製作したゲームを販売するというアナログゲームの即売会。その場で試遊することもできるため、ただ買うだけじゃなく、未知のゲームをプレイする喜びも味わえるのだ。今回は、2018年11月24日に行われた「ゲームマーケット2018秋」1日目を取材。その内容を紹介したい!
こんなゲーム見たことない!同人的なゲームの魅力
筆者が「ゲームマーケット2018秋」で中心的に取材したのは「ゲームマーケット2018春」に引き続いて、個人・グループで同人的に企画・制作したアナログゲーム。企業が商業的なゲームを製作する場合、一定数を販売しなければならない都合上、どうしても企画が制約されてしまう部分がある。
しかし同人的に企画・制作されたアナログゲームはそうではない。「これ面白いだろ!?」「こういうのが好きなんだよ!」という情熱や愛によってゲームが作られるため、非常にエッジの立ったゲームが作られるのだ。そんなゲームと出会えることがこの「ゲームマーケット」の魅力でもある。この記事では、筆者がそうした愛や情熱を感じたゲーム達を紹介したい。
スタンダードで歴史を感じさせる!その上エッジまで立っている「ルターの宗教大改革」
まず最初に紹介したいのが「キリスト新聞社」の「ルターの宗教大改革」。ルターというのはもちろん、歴史上実在した神学者、マルティン・ルターのこと。ルターはカトリックからプロテスタントが誕生する「宗教改革」の中心人物だ。「ルターの宗教大改革」はこの歴史的なテーマをそのままスタンダードなボードゲームに落とし込んだ作品。
プレイヤーは4人の宗教改革者の1人となって、宗教改革を行っていく。その内容は、パトロンに支援を頼み込み資金を集めたり、聖書を研究してイエスの真の教えを追及したり、聖書で得た知識を活版印刷で世に広めたり…と、当時のルター達が行ったことを追体験するもの。また、エンディングも用意されていて、ゲームの結果によって歴史通りの結末を迎えたり、異なる結末を迎えたりする。ボードゲームを通じて歴史ifのおもしろさが楽しめるというのはユニークだ。
歴史的な出来事を真正面からスタンダードなボードゲーム・システムに落とし込んだ本作は、「王道」といってもいいゲームなのだが、扱っているジャンルが宗教ということもあって、エッジが立っていると感じた!
賃貸業者の悲哀を感じさせる点がユニーク!「東京アルティメット賃貸」
非常に身近で、個人の体験などから企画の着想を得ているという点も、個人ゲームならではのポイント。それを感じたのが「東京なかよしデザイン」の「東京アルティメット賃貸」。不動産賃貸をテーマにしたカードゲームだ。ルールは、ノルマとして配られた物件カードで部屋を作り、自分の番になったら提案。より部屋パワーと(HP)の高い部屋がお客さんに選ばれるというもの。選ばれなかった部屋や抱えきれなくなった手札は持ち主のカルマとなって減点対象になる…という辺りに、賃貸業者の苦労を感じさせる点がユニークだ。
人気の定着した人狼系には“亜種”が光る!「ワンナイトマンション」
アナログゲーム系で一般の人も知っているタイトルと言えば、「人狼」がある。「ゲームマーケット」でも「人狼」は人気ジャンルのようで、多くのブースで「人狼」系タイトルが頒布されていた。頒布されている「人狼」系ゲームで多いのは、「狼を探す」という基本は抑えつつ、周辺ルールにオリジナリティを用意したもの。中でも筆者が「これはおもしろそうだ」と感じたのが、「ワンナイトマンション」だ。
「ぎゅんぶく屋」の「ワンナイトマンション」。狼ではなく殺人鬼という形でアレンジされているものの、基本はやはり「殺人鬼(狼)を探す」というルール。だが周辺ルールが非常にユニークで、プレイヤーが役を決める際、カードを二枚引いて自分の手役を決める。自分がとらなかったカードは山に戻し、その上で次のプレイヤーがカードを引く。つまり、各プレイヤーは、自分が選ばなかった=次の人が選んだかもしれない役割を知った上で議論することになるのだ。人狼よりも議論のネタが増えたことで、よりアツい展開を楽しめそうな作品だ。
アナログゲームで「怖い」を実現!「万怪談」
筆者はホラーゲームが大の好物なのだが、アナログゲームで「怖いゲーム」というのにはなかなかお目にかかれない。アナログゲームにもホラーゲームは沢山あるのだが、どうしても怖くないのだ。これはもっともな話で、「怖い」というのは基本的にビジュアルや音、その場のムードで作られる感覚。なので、明るい部屋で多人間が集まってお菓子を食べながらゲームしていては、どうしても「怖い」ムードになりようがない。
ただ、今回出会った「おいしいたにし」の「万怪談」は、バッチリ怖さを味わわせてくれそうだ!「万物語」は怪談を作るカードゲーム。お題カードに沿って6枚の怪談カードを繋ぎ、プレイヤーは怪談を読み上げる。カードに書いてあるフキダシの文章がベースになるものの、実体験や見聞きしたエピソードを絡めて話す必要があるため、紡がれる怪談には自然とリアリティが籠もるというわけ。これは是非とも夏にプレイしたいカードゲームだ!
完成度の高いTRPGのシナリオ集も!「名探偵黒猫と大怪盗キャッツ」
「怖いアナログゲーム」繋がりでいえば、近年はクトゥルフ神話TRPGが人気だ。「ゲームマーケット」でも、クトゥルフ神話TRPG用のシナリオ集が多数、頒布されていた。その中のひとつが「白匣」の「名探偵黒猫と大怪盗キャッツ」。愉快でドタバタしたい、最強の技名を叫びたい!といった点をフィーチャーしているので怖い系ではないものの、ワイワイ盛り上がるのには向いてそう。TPRGのリプレイを動画配信したい!という要望にもよさそうだ。見本誌を見せていただいたところ、内容も見やすく、わかりやすいもので完成度が高い作品だった。
ユニークなパーティーゲーム3点!「功夫衰弱」「THIS IS IT」「Match Better」
ガッツリプレイするアナログゲームももちろん楽しいが、親戚や懇親会的な場で行えるパーティーゲーム的なアナログゲームだって楽しい!そんなパーティーゲーム的なカードゲームで「これは楽しい」と思ったのが「ASOBI.dept」の「功夫衰弱」「THIS IS IT」「Match Better」だ。
「功夫衰弱」は、その名の通りカンフーの技が絵柄となった神経衰弱ゲーム。同じ「技」の絵柄をめくれば自分のカードとなるが、同じ色のカードがその人の得点となる。奥義カードを使うと他人のカードを自分のものにできるといった、いかにもバトルもの的なルールも楽しい。
「THIS IS IT」は提示された三枚のカードの絵柄を、ホワイトボードカードに言葉で表現するというゲーム。自分以外にまったく同じ言葉で表現した人がいればポイントとなる。ゲームの展開上、自然と他の人と「気が合うね!」という体験を重ねていくことになるので、初対面の人とでもスムーズに仲良くなれそうな作品だ。
「Match Better」は、婚活をテーマにしたゲーム。各カードが婚活をする男女を示しており、学歴、容姿、年収といったパラメーターと同時に、結婚相手に求めるオーダーも書かれている。自分のカードに書かれたオーダーを元に他プレイヤーへ自分のカードを提案し、結婚へ導くというのがゲームの目的だ。ただ、オーダーとパラメーターが見合わないこともあるので、そんな時のために「妥協チップ」というものも用意されている。ジョークの通じる相手とお酒を飲みながらプレイしたら超盛り上がりそうだ!
今回の目玉!「将軍様、核やめるってよ」これだからゲームマーケットはやめられねえ…!
同人的に企画されるアナログゲームは、企業ならどう考えても実現できない一線を越えることができる…。それを今回強く感じさせてくれたゲームが、「達磨ゲームズ」の「将軍様、核やめるってよ」だ。タイトルがもうぶっ飛んでいるが、より多くの核を、廃棄物ということにして国内に秘匿できたプレイヤーが勝利というルールのぶっ飛び具合もグレート!
ゲームルールはトランプゲーム「ダウト」のような内容。プレイヤーは自分の番が来たら、山札から引いた3枚のカードを「国内の処理場」「海外の処理場」「山札」に分けておく。これに対し他プレイヤーは「国内の処理場」のカードを査察できるわけだ。あの大統領っぽいお姿のカードもあり、カードもぶっ飛んでいる。忘年会でプレイしたら色んな意味で1年を忘れられそうなゲーム!こういうゲームとの出会いこそ、「ゲームマーケット」の醍醐味だ。
平成最後の冬休み、家族や友達と大いに盛り上がろう!
多人数で気軽に盛り上がれるというのがアナログゲーム最大の強み。忘年会に冬休み、帰省と、人と会う機会が多い年末、ユニークなアナログゲームを試してみるというのはどうだろうか?これまでとは違った盛り上がりが味わえるはずだ。今年は平成最後の冬休み。今までにない娯楽にチャレンジをしてみるのも悪くはないだろう。ちなみにゲームマーケットは東京では春と秋の年二回、関西方面では冬に一回という形で年三回開催されている。残念乍ら今回のゲームマーケットに参加できなかったという人は、次回のゲームマーケットに参加してみてはいかがだろう。きっと、「こんなゲームがあるのか!」という驚きを味わえるはずだ。