「This Is the Police」は、ダークでハードボイルドな警察運営シミュレーション&アドベンチャーゲーム。プレイヤーにモラルを問いかける、重苦しくも奥深い魅力を持った作品だ。

目次
  1. 180日間で50万ドルを貯めろ!なりふり構ってる場合じゃない
  2. 抑えたシブい演出が光る!アドベンチャーパート
  3. This Is 管理職!この街のリアリティを実感させるシミュレーションパート
  4. 推理の楽しさが味わえる!刑事が行う捜査
  5. タブレットでじっくり楽しみたい!大人のためのゲーム

「This Is the Police」は、Weappy Studioによって開発された警察運営シミュレーション&アドベンチャーゲーム。スマートフォン向けゲームといえば、基本的にはコンシューマゲームと比べてカジュアルで、ライトな雰囲気のものが多い。本作も一見するとローポリゴン風のビジュアルからカジュアルな印象だ。

しかし、プレイしてみるとこうしたイメージとは全く異なる作品だということが分かる。グラフィックタッチこそローポリゴン風でポップだが、描かれるシーンはシブくてアダルトな雰囲気満点。ストーリーは勧善懲悪ではないダークでハードボイルドなテイスト。そして、BGMはレコードから流れるジャズ。どこを取っても深く、重苦しい、じっくり咀嚼しなければ味わうことができない大人向けの作品なのだ。

それもそのはず、本作はPC向けにリリースされていた作品。つまり、スマートフォンへの移植版なのだ。この記事では、そんな重厚な本作の魅力をじっくりと紹介したい。

180日間で50万ドルを貯めろ!なりふり構ってる場合じゃない

ゲームの目的は、180日間で50万ドルを貯めること。本作の主人公ジャックは市長からクビを宣告された警察署長。市長のロジャーズは街の権力を完全に掌握した支配者であり、ジャックはロジャーズによって排除された格好だ。定年退職ではなくクビのため、当然ながら退職金は出ない。そこでジャックは、警察を離れる180日後までに50万ドルを稼ごうと決意する。

50万ドルといったら1ドル100円で計算しても5000万円。当然ながら、フツーに警察署長として働いている限りでは180日間で貯めることなどできはしない。現実でもそうだし本作でもそうだ。そこで手段として浮上するのが、不正行為。市内の業者から不正な依頼を受けたり、時にはマフィアと組んで犯罪に加担したり。正義を執行する存在であるはずの警察署長が、巨悪によって翻弄され、悪に手を染めていく…。プレイヤーのモラルへ訴えかけてくるこのダークな世界観こそ、本作のひとつめの魅力だ。

抑えたシブい演出が光る!アドベンチャーパート

ジャックを主人公とした物語は、アドベンチャーパートをメインに展開されていく。アドベンチャーパートは一般的なアドベンチャーゲームと同様、グラフィックとテキストメッセージでストーリーを表現するパートで、時折選択肢が挿入される。

最近のスマートフォンゲームで見かける選択肢は、「選択肢A)任せておけ」「選択肢B)まあ、いいだろう…」のように、言い回しこそ違うものの、同じ意味合いを持っている…ということが多い。しかし本作の選択肢は基本的に、まったく異なる選択肢が表示される。たとえば、「選択肢A)マフィアと契約する」「選択肢B)マフィアと契約しない」という具合だ。ストーリー上重要なシーンでこうした決断を迫られるため、選択肢ひとつ選ぶにも非常に思い悩む!こうして思い悩むからこそ、ジャックの置かれた状況を深く理解できるわけだ。

アドベンチャーパートの見どころはダークなストーリーもさることながら、演出にある。といっても、トリプルAクラスの大作ゲームのようにド派手な演出で魅せてくれるわけじゃない。むしろ本作の演出は、非常に抑えられている。ビジュアル的な見せ方は、複数のグラフィックを並べたコミック的な見せ方。セリフは字幕と音声で表現する形だ。この中で主役と言っていいのが、音声の部分。声優による語りが非常にシブく、本作のハードボイルドな雰囲気とマッチしているのだ。この語りのシブさを抑えられたグラフィック演出が引き立て、本作の独特な世界観を強化している。これが本作ふたつめの魅力だ。

This Is 管理職!この街のリアリティを実感させるシミュレーションパート

本作のもうひとつのパートであるシミュレーションパートでは、警察署長として警察署の運営に当たる。このパートでプレイヤーやることは、どのメンバーにどの事件を担当させるかという割り振りだ。

事件が発生すると、画面左の「通報」欄に表示される。表示された事件を選ぶと詳細が表示されるので、誰に事件を担当させるか選択。事件に割り振る警官・刑事・SWATの能力、疲労度、人数によって事件を解決できるかどうかが決まる。能力が高い上に元気な警官を多数割り振り、さらにSWATも配備すれば何の問題もなく事件を解決してくれるだろう。しかし、能力が低い上に疲労した警官を単独で解決に当たらせれば、事件を解決できなかったり、負傷したり、最悪死亡してしまったりする。その上、場合によっては市民の命が犠牲となってしまうこともあるのだ。

当然、プレイヤーとしてはどの事件にも能力のある警官を割り振りたい。しかし、事件へ割り振った警官は、事件が解決するか、犯人を取り逃がすかするまで警察署に帰ってこない。なので、事件の難易度にあった適切な能力の警官を適切な人数割り振るのが重要になってくるのだ。

ちなみに、警官が死んでしまうのはマイナスに思えるが、実はそうでもない。というのも、プレイヤーの立場からすれば能力のある警官・刑事を多数揃えたいと願うハズだ。ところが、警察署で雇用できる警官の数は限られている。能力のある警官を雇いたいと思っても、人数が上限に達していれば、誰かを辞めさせなければならない。もちろん、警官をクビすること自体は可能だ。しかし、正当な解雇理由がない状態でクビにしてしまうと、裁判を起こされる危険性がある。さらに、リストラを恐れたスタッフのパフォーマンス低下を招く可能性まである。この辺り、一般の会社で管理職を経験した人なら胃が痛くなってくるんじゃないだろうか?非常にリアルだ。

ただ本作の舞台は一般企業ではない。凶悪事件にも対応しなければならない警察だ。そう、能力が低い警官には、事件で殉職してもらえればいい、というワケ。もちろん、そうそう都合よく死んでもらえるとは限らない。そこで、マフィアの出番。事件のどさくさに紛れて殺してもらえばいいのだ。アドベンチャーパートのみならず、シミュレーションパートでもこのダークさ!

なお、警官が死んでもスタッフが減少するだけだが、市民が犠牲になってしまうと市長の心証が悪くなる。ジャックの敵である市長の心証が悪くなっても別にどうということはないように思えるが、シミュレーションパートで市長は警察署のアップグレード機能を担っている。市にオーダーを出すことで、給料をアップしあり、警官や刑事の雇用数をアップしたりできるのだ。このため、市民を犠牲にしたり、市からの依頼についてはできる限り最優先で取り組んだほうがいい。

このシミュレーションパート、人材リソースをやりくりするゲームとしてもおもしろいのだが、プレイしていて印象に残るのは人間臭さの部分。たとえば警官たちは疲労度が貯まると一日休ませてくれと申し出てくる。ここまでは本作以外の運営シミュレーションでもよくあるものだが、本作の場合、スタッフがウソをついているケースがあるのだ。

つまり、サボりたいから理由をでっち上げて欠勤申請しているというワケ。プレイヤーは欠勤理由を見て、ウソか本当かを考えて許可を出す。なんとも人間臭いシステムだ。また、市民からの不正な依頼を警官に担当させると、警官が勝手に辞めてしまうこともある。警察より報酬がたんまりもらえるから、辞めます…というわけだ。

これも人間臭くて、初めてみた時には思わず笑ってしまった。シミュレーションパートでのこうした人間臭さは、本作のみっつめの魅力といえる。人間臭いからこそ、本作の舞台であるフリーバーグ市が、実在しているかのようにリアルに感じられるのだ。

推理の楽しさが味わえる!刑事が行う捜査

なお、シミュレーションパートで発生する事件には2種類存在している。ひとつは、ケンカや暴行といったその場で取り押さえるタイプの事件で、警官に担当させる。もうひとつは、殺人事件やマフィアの構成員の逮捕といった捜査が必要なタイプの事件。後者のタイプの事件は、刑事に担当させることになる。

この2種類の事件、ただ担当させるスタッフが異なるというだけではなく、ゲーム的にも解決方法が異なっている。警官に担当させる事件は、基本的に警官を割り振ったら待つだけでいい。場合によっては警官から指示を仰がれ、選択肢で適切な行動を選ぶことになるが、たいていの場合、警官の能力によって解決される。

一方、刑事が担当する事件では、刑事が捜査の結果獲得した情報を整理する必要がある。情報は複数の「写真」の形で提示され、プレイヤーがこの「写真」を正しい順番に並べ替えることで、事件を解決に導くのだ。推理アドベンチャーゲームほど入り組んだ事件が発生することはないものの、推理の楽しさはしっかり味わえる。

タブレットでじっくり楽しみたい!大人のためのゲーム

本作は有料の買い切りゲームとして配信されており、iOS版840円、Android版860円と、スマホゲームとしてはなかなか強気な価格設定をしている。本作に興味を持った人の中には、本当にこの価格分楽しめるのか?と思う人もいるだろう。この問いに筆者がプレイした経験から答えるなら、パルプ・ノワールやフィルム・ノワールで繰り返し描かれてきた「人間臭いキャラクター達が様々な事情から犯罪に身を投じていく」という世界観が好みという人であれば、購入して損はない。そもそも、クエンティン・タランティーノ作品やコーエン兄弟作品が好きな人は、この記事を読んで既にビビッと心が反応してるのではないだろうか。

ただ一点、注意したいところが画面サイズだ。PC向けのゲームをスマートフォン向けに移植したためか、画面サイズの小さな端末では、文字が読みづらい。筆者が使用しているスマートフォンはiPhone7Plusなので結構大きめの画面サイズを持っているが、それでも文字が読みづらいと感じる時があった。なので、快適にプレイしたいなら、タブレット端末でプレイすることをオススメしたい。

ちなみに、画面サイズが小さいことでタッチしづらいと感じることはなかったので、純粋に文字サイズだけが問題だ。なので、画面サイズの小さなスマートフォンを使っている場合、他の端末でプレイした方が満足度は高いだろう。

App Store
https://itunes.apple.com/jp/app/id1435461053?mt=8

Google Play
https://play.google.com/store/apps/details?id=com.hg.titp

※メーカー発表情報を基に掲載しています。掲載画像には、開発中のものが含まれている場合があります。

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