スクウェア・エニックスが2019年9月27日に発売を予定しているPS4用ソフト「トロピコ 6」のプレイレポートをお届けする。
今回紹介する「トロピコ 6」は、2001年に1作目が発売された「トロピコ」シリーズの最新作。カリブ海に浮かぶ島国を指導者「プレジデンテ」として統治、発展させていくことを目指す独裁国家運営シミュレーションだ。開発にはUnreal Engine4を採用しており、島の風景や街並みなどのグラフィックが大幅に進化。マップも全体的に広がり、シリーズで初めて複数の島を同時に開発・運営できるようになっている。
本稿ではそんな「トロピコ 6」の特徴的ないくつかの要素を、プレイレポートを通して紹介していく。
インフラを整備し、国民の支持を勝ち取れ
複数の島が点在する広大な箱庭マップを持つ本作において、ありとあらゆる行動の根幹をなすのが、交通インフラだ。道路がなければ車が通行できず、国民が仕事に行くことも、流通が生まれることもない。施設は機能しない上、そもそも施設を建てるための建設工事すら始まらない。プレジデンテとして、理想の国家運営を実現するための初仕事は、交通網の整備から始まる。
道路はボタン一つで手軽に敷設と撤去が可能で、島と島を繋ぐように結べば自動的に橋が建設される。こうして住居と建設現場を結べば自動的に工事が始まる他、海岸に建設された港と配送業者の倉庫、そして農場や牧場などの施設を結べば、諸外国との貿易も自動的に行われる。
街の各所に交通網を行き渡らせるには細かい整備が必要だが、基本的に道さえ通じてしまえば、あとは国民たちが勝手に仕事をしてくれる。なお、道路や施設の建設はサークル選択式のUIで行われる。ひと目で何があるかわかりやすく、良好な操作感だった。
遠く離れた島を開拓するには、道を繋げて橋をかけたり、上陸のための港を作る必要がある。なにもない野原に一から街を作るのは面倒かもしれないが、未開の島には石炭や金、油田などの鉱物資源が埋蔵されている可能性もあり、開拓の手を広げる価値は充分にある。また手つかずの緑豊かな自然は観光地としても最適であり、コテージやホテルを建設して海外から人を招けば、輸出や公営施設からの収入以外で、大きな収入源となってくれるはずだ。
過去作にも登場した特徴的な要素として、国民一人一人に細かなプロフィールが存在しているという点が挙げられるが、本作においてもそれは健在だ。国民にはそれぞれ名前や年齢の他、最終学歴、職場、裕福度などが独自に設定されている。
またこれだけにとどまらず、食料や娯楽、治安といった、生活の様々な要素に対して感じている「幸福度」というパラメータも存在。これらの数値により、個々の国民がどのように暮らし、どういった部分に幸せや不満を抱えているのかが分かるようになっている。
国民は常に仕事を求めており、工場や港など、仕事のある場所の近くにバラックを建てて住み着く。こうした住居は治安の悪化を招いたり、観光客や住民の不満も呼び込みやすいので、公営住宅を建てて住まいを用意する必要がある。これら住居は裕福度によって住める人に違いが出るため、貧困層には安く住める家を、富裕層には高級住宅をあてがうことになる。なおこれら住居の家賃も収入として国庫に入るため、積極的に建設していって問題はない。
政権には支持率が存在しており、行う政策やインフラや治安といった社会環境などによって上下する。国民ファーストの政治を心がければ問題ないが、支持率が低くなると反体制派が出現するようになり、最終的には暴動を起こすこともある。10年に一度開かれる大統領選挙に敗れるとゲームオーバーになってしまうため、ある程度は国民のご機嫌を取り、支持率を確保しなければならない。
ちなみに反体制派に対しては、秘密裏の暗殺や、事故に見せかけての抹殺ができる。また収容所に入れて良くない考えを改めさせる、なんてことも可能。ただし、そうして処理した国民の親族は、政権に強い怒りを抱いてしまうので注意が必要だ。
さらに、国民はそれぞれに政治的な主義や思想を持っており、同じ主義の人々で派閥を組む。派閥もそれぞれに政府に対する支持率を持っており、政府に対して要求を行い、これに応えたり拒否することで、政権への支持率が変動する。この他、実施する政策や特定の建設物を建てることでも変動していき、関係が悪化した場合、最後通告として突きつけられる要求を達成できないと、制裁措置を講じてくることもある。軍事クーデターを起こされる場合もあるので、こちらの支持率にも気を配っておきたい。
プレジデンテとして激動の時代を生き抜け
前作「トロピコ 5」と同じく、本作でも「植民地」「世界大戦」「冷戦」「現代」の4つの時代が登場。現代に近づくにつれて、実行できる政策や建設できる施設、憲法の種類、テクノロジーなどが増えていく。なお、時代は時間経過や特定のタスクの完了によって移行していくが、意図的に時代を進めず、そのままにしておくこともできる。
最初の植民地時代では、プレイヤーは大統領ではなく植民地を管轄する総督として、宗主国からの独立を目指すことになる。また世界大戦時代には連合国と枢軸国、冷戦時代には西側諸国と東側諸国、現代になるとアメリカやロシア、EUなど時代によって諸外国が変化していく要素も存在。移り変わっていく世界情勢の中での国家運営を楽しめる。
また、新たな要素として「襲撃」が登場している。これは、時間の経過で貯まっていく襲撃ポイントを消費することで、近隣諸国から食料や鉱物資源などを略奪するというもの。さらには近海で遭難している漂流者を救助することで、人口を増やすことも可能。貿易や国内での生産以外でも資源を確保できる。
襲撃では、トレーラーでも触れられているように、外国からランドマークを強奪してくることが可能だ。ランドマークは、アメリカの「自由の女神像」から、イタリアの「コロッセオ」、イギリスの「ストーンヘンジ」、エジプトの「スフィンクス」など多岐に渡る。これらは名所として観光客を呼び込めるうえ、それぞれに支出の軽減や特定効果の上昇など固有のメリットをもたらしてくれる。
我らがプレジデンテはカスタマイズが可能。性別はもちろん、ヒゲや服装、サングラス、咥えている葉巻まで自由にできる。住まいとなる宮殿も外観から建物のレイアウトまで変更可能。ちなみに立地も変更できるため、建設用地の邪魔になることはない。街を一望する山頂に宮殿を構えるというのも、雰囲気が出て良いかもしれない。
なお、外見だけではなく、ボーナス効果をもたらすスキルも付けられるので、キャラメイクに興味がない人も一度は手を付けてみるといいだろう。
ゲームモードは「チュートリアル」の他、特定のタスクをクリアして進めていく「ミッション」と、自由に国家運営をしていける「サンドボックス」が存在。ミッションは様々なイベントを楽しみながら、植民地時代から現代までを腹心の補佐官「ペヌルティーモ」と共に生き延びていくストーリーモードのような楽しみ方ができる。一方サンドボックスは、資源の量や災害の頻度、クリア条件などを細かく設定して、タスクに縛られず、のびのびと遊べるモード。理想の独裁国家を目指して繰り返しプレイできそうだ。
個人的には、自分の作り上げた街が活動する様子を眺める、ジオラマ的な楽しさも感じた。国民はそれぞれマップ中に散らばって独自の生活を送っているため、神様になったような視点でそれらを観察できるシチュエーションにはワクワクした。その他、ゲーム中に出てくる説明文やセリフはどこか皮肉の効いたユニークなものばかりで、丁寧に日本語訳されたおかげでスムーズに楽しめる点にも触れておきたい。
またインフラ整備や国民からの支持率の維持など、細々とした部分に気を使うゲーム性は難しさを感じてしまうかもしれないが、UIは整理されて操作しやすく、建物や人にカーソルを合わせれば、簡単に情報を閲覧できるため、システム面では遊びやすくまとまっている。さらに、重税を課したり投票を操作したりといった独裁者的な政治だけではなく、三権分立や個人の権利を保証するなど、民主的な政治を行う自由度も存在。ライトゲーマーからやりこみ型のプレイヤーまで、幅広く楽しめる作品と言えるだろう。