スクウェア・エニックスが2020年3月26日に発売したPS4/Xbox One/PC用ソフト「ライフ イズ ストレンジ 2」のプレイレビューをお届けします。
前回の記事ではネタバレ無しのインプレッション記事を掲載しましたが、今回はエピソード3までの内容に踏み込んだものとなっています。ネタバレになる部分もありますので、読まれる際はご注意ください。
痛みを伴う旅に引き込まれていく
本作の主人公であるショーン。彼は隣人であるブレットからメキシコ移民ということで差別を受けていますが、優しい父親や純粋な弟のダニエル、仲のいい幼なじみであるライラに囲まれて幸せに暮らしています。しかし、ハロウィンで仮装をしていたダニエルがブレットに血糊をつけてしまったことで事件が。ダニエルに代わって口論するショーンが不可抗力でブレットのことを失神させてしまいます。さらにパトロール中だった警官が横たわるブレットを見て、殺人事件と勘違い。父親が警官を止めるために近寄りますが、警官が発砲して父を殺してしまいます。その後、爆発のようなものがあり、警官も死亡。動転したショーンはダニエルを抱えて逃亡します。これが「ライフ イズ ストレンジ 2」の衝撃のプロローグです。
前作「ライフ イズ ストレンジ」でも楽しいシーンからの急な悲劇による落差で驚かされるようなことは多かったですが、本作でも同様。前述のような兄弟が旅に出る理由をはじめ、感情を揺り動かされるシーンが多数用意されています。海外ドラマのように思わず「嘘でしょ……」とつぶやいてしまうような衝撃の展開も多く、プレイの止め時が見つかりません。
父を失った幼い兄弟を待つ運命はあまりにも過酷で、「なんでふたりはこんなに理不尽な目に遭わされているのだろう」と悲しくなることもあります。しかし、そんな厳しい状況下でも、ふたりは楽しい思い出を共有したり優しい人物の善意に触れたりしながら、たくましく旅を続けていきます。そこには人生の苦しさや楽しさが圧縮されており、人生の生き方とはなんだろうと考えさせられることも多いです。
波乱万丈な旅を続ける兄弟ですが、とくに衝撃だったのはエピソード3。資金不足に陥ったふたりは、家がない人たちとキャンプ暮らしをしながら違法農園で働くことになります。違法薬物を栽培する作業をしたり、仲間に入れ墨を彫ってもらったりと、日本のアドベンチャーゲームでは体験できないようなアウトローなシーンもあり、興味深くプレイすることができました。
また、プレイヤーの選択肢によっては、女性と一夜をともに過ごすことも……。そういった大人ならではのドラマを盛り込んでいるのも挑戦的です。
個人的に衝撃的だったのはエピソード3ですが、ほかのエピソードも見どころが満載。例えば、エピソード2には番外編である「The Awesome Adventures of Captain Spirit」の主人公だったクリスや彼の父親であるチャールズが登場するのですが、プレイしていると「Captain Spirit」のエピソードが本編とこう繋がるのか! という感動を味わうことができます。
「Captain Spirit」を事前にプレイしていたほうがキャラクターに感情移入できるので、エピソード2をプレイする前にクリアしておくことをオススメします。
また、インプレッション記事でフレンドや世界のプレイヤーがどのような選択を選んだのか統計を見ることができ、比べるのが楽しいと書きましたが、自分の選ばなかったほかの選択を見て「このイベントの展開は必須ではなかったのか」「あの人物は救うことができたのか」などといった驚きも感じることができます。周回プレイで別の選択をしてみたくなる魅力がありますね。
主人公が超能力を持っていないことが本作最大の魅力に
前作「ライフ イズ ストレンジ」は時を戻す能力を手に入れたマックスが主人公で、自在に選択をやり直すことができるのが特徴でした。しかし、今回、超能力を持っているのは主人公のショーンではなく、弟のダニエル。その能力も時を戻すものではなく、念動力のようなものになっています。
これは最初こそ物足りなさを感じましたが、プレイしていくうちに「ライフ イズ ストレンジ」との差別化がおもしろいと感じていきました。前述のとおり、ふたりの兄弟は厳しい境遇に置かれていますが、“いざとなったらやり直せるマックス”と、“どんな状況でも前に進まなければいけない2人”という対比にもなっているように思えました。
ダニエルは子供なのでイタズラに超能力を使ったりするのですが、それを放っておくのか注意するのかプレイヤーが選ぶことになります。そのため、息子を教育するような、もしくはスポーツ選手を育てるトレーナーのような視点でゲームを楽しむことができるようになっています。ダニエルにどのように接するかは物語の重要な分岐にもなっており、「教育」は本作の重要なテーマになっていると感じました。
また、ダニエルの能力の性能はどんどん上がっていき、後半はその強大な力に驚かされることも。彼の能力がどうなっていくのか、ということが物語の大きな引きにもなっています
旅をしていくなかで出会う人々に惹かれていく
兄弟はアメリカからメキシコに移動していくなかで、さまざまな人物に出会うことになります。基本的にエピソードごとにキャラクターが変わるので個々の出番はそれほど多くないですが、それぞれが魅力的で出会ったら忘れることができません。
車で各地を回りながら取材記事を書いて収入を得ているジャーナリストのブロディやアメリカ各地を渡り歩いているストリートシンガー・キャシディなど、世間の常識などからは外れているものの、自分の考えや信念をしっかり持っている大人は、プレイしていて眩しく映る人物です。
個人的にはこれだけ魅力的であれば、もっと出番があってもいいのでは……と思いましたが、あえて別れに名残惜しさを残したほうが旅の物語という感じがしていいのかもしれませんね。
「ライフ イズ ストレンジ 2」は人生を表現したドラマ
前作はひとつの町を舞台に数日間の物語が描かれましたが、本作はさまざまな場所を舞台に長期間の物語が描かれていきます。理不尽な目に遭いながらも前に進んでいく……進むしかないショーンの姿を見ていると、「人生とはこういうものなのだな」と思わされます。前作でも「やり直しがきかないのが人生」「どんな選択をしようとも、それまでの積み重ねは無駄ではない」というテーマを伝えていましたが、それは本作でも同様でした。前作は青春が大きなテーマになっていることに対し、本作では社会問題がピックアップされているなど、アプローチ自体はだいぶ違いますが、プレイしていると、やっぱり根っこの部分は「ライフ イズ ストレンジ」だと思える作品になっています。
前作と同じようにローカライズのクオリティは文句なしですし、BGMの使い方もハイセンス。Unreal Engine 3からUnreal Engine 4になったことで、グラフィックはより洗練されています。前作のファンはもちろん、アドベンチャーゲーム好きやドラマ好きの人ならプレイしてほしい作品になっています。この記事を読んで気になった人にはぜひ手にとってもらいたいです。